漱石と日本の近代(下)(新潮選書)
著者 石原千秋
都市空間に住む家族の物語を描き続けた漱石。明治民法によって家の中にも権利の意識が持ち込まれ、近代的「個」の自覚、生活に浸透する資本主義、家族を離れた愛など、新たなテーマが...
漱石と日本の近代(下)(新潮選書)
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商品説明
都市空間に住む家族の物語を描き続けた漱石。明治民法によって家の中にも権利の意識が持ち込まれ、近代的「個」の自覚、生活に浸透する資本主義、家族を離れた愛など、新たなテーマが見出されていった。中でも漱石にとって最も謎に満ち、惹かれた対象は「女の心」だった……。後期六作品を中心に時代と格闘した文豪像を発見する試み。
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「門」の解釈が秀逸
2020/10/31 10:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
子どもの頃,夏休みだったのだろう昼頃NHKのテレビで漱石の朗読番組をやっていた。たぶん偶然に見て,そのときの作品が「門」であった。それ以来,熱狂的な漱石ファンになった。とりわけ「門」が好きだった。今から思うとずいぶんませた子供だ。なぜなのかずっと不思議だった。石原先生によると主人公の宗助は勤勉というエトスを内面化していない。つまり怠け者なのだ。そうかつまり評者も働きたくなかったのだな…と今更ながら合点した。幸い30代半ばからずっと半分引退生活者をしている。なんとか生活が成り立ったからありがたい。高等遊民こそ人間的な暮らしだ。
さて,上巻は楽しく読めたのだが,下巻は重苦しい。「門」以降「明暗」まで思い作品が並ぶのだから仕方がない。しかし文学研究とはこんな面倒くさいことをしなければならないのか。文学部に行かなくてよかったと今更ながら思った。
ところでこの本は科研費をもらって書いたらしい。科研費何に使ったのかしらん?古書でも買ったのかな?漱石の自筆原稿なんて今や博物館行きだろうし…。
先行研究を踏まえた読解
2020/03/06 18:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
石原千秋による漱石論の下巻。
本書では、「門」「彼岸過迄」「行人」「こころ」「道草」「明暗」といった、漱石の後期作品を取り扱う。一般的には「門」は前期三部作にくくられるが、本書ではあえて下巻で取り扱っている。
先行研究を踏まえた詳細な読解によって新しい見方を得られた。例えば、「彼岸過迄」は全編を「敬太郎」が聞き手として聞いており、さらに敬太郎には聞き手としての資格が乏しいのではないかという指摘や、小説の構成と作品ない世界の時間軸のずれによって、須永は救われたように見えるが、須永は結局救われていないという指摘。また、「こころ」は「先生」が「K」に先駆けて「静」に求婚したという見方が強いが、「静」のほうが「先生」を誘惑し、「K」の自殺の罪は「先生」と「静」の二人によるものではないかという見方にはハッとさせられた。