紙の本
一人の男にまつわる8人の女たち
2017/12/12 06:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぺるっち - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を手に取ったとき、最初に解説を読みました。壇蜜さんが「自分もまた影山と関わりあった女の一人」になった気持ちになりますとあって、それで購入したものです。
8人の女性たちの話の中に登場する影山という男。一話一話読み進めるたびに、「影山」という男の輪郭が浮かんできます。彼にとって「女」ってどういう存在だったんだろうと思わずにいられない、そんなお話でした。
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【著者の新境地にして釧路ノワールの傑作、誕生──】貧しさから這い上がり夜の支配者となった男。彼は外道を生きる孤独な男か? 女たちの夢の男か? 謎の男をめぐる八人の女の物語。
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指が六本あった男を柱とした女たちの物語。そして、舞台は釧路。もうどっぷり桜木さんの世界。ウラルの相羽と霧を思い出す。影山の魅力と道東の空気、女、充分味わえました。
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あらすじ(背表紙より)
没落した社長夫人が新聞に見つけた訃報、それはかつて焦がれた六本指の少年のものだった。霧たちこめる釧路で生まれた男が、自らの過剰を切り落とし、夜の支配者へとのしあがる。男の名は影山博人。貧しく苛烈な少年時代を経て成熟していった男は、女たちに何を残したのか―。謎の男をめぐる八人の女たちの物語。
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北の大地に生まれた指を6本持つ男の奇妙な物語。バラックで生まれ異常な環境で育った影山博人が、出会う女たちを虜にしていく。各エピソードに出てくる博人だが、毎回時代が違うので、雰囲気もだいぶ違う。あるときは寡黙な青年、あるときはヤクザ、あるときは実業家として現れる。短編をまとめたようなので、物語のリンクが薄く物足りなさもある。1話の冒頭で博人が死ぬことを予告される。最期は意外な形だった。桜木が描く北の大地はいつも悲しい。
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北海道や釧路を舞台にした、恋愛小説、いや違うな。影のような男に惹かれる女たちの内面を、釧路の重たい曇と湿った空気の中で、淡々と綴ってゆく作品。これは恋愛小説じゃないな、でも何だろう?主人公は、短編それぞれの女性たちだが、長篇としてとらえば、主人公は影山博人、ということになる。この影山、極貧から裏社会をのしあがっていくのだが、しかし、そののしあがるプロセスそのものは、ついぞ語られない。一方で最も印象的なのは、影山が子供の頃住んでいた「下の町」、長屋が並んだ、小さな集落の描写だ。なぜだろう。そこに、彼の原点があり、この小説の源泉があるように感じるから、だろうか。その影山の一生は、ただ、各々の短編で、その断面が切り取られて描かれるのみだ。したがって、影山に感情移入は進まない。もちろん、短編の主人公である女性たち、への感情移入も、ない。そして、物語のスパイスは、裏社会で疲労される暴力。その暴力の描き方は、伊坂幸太郎にも似た、かなりリアルで厳しいもの。辛い。暴力を経験したことがない人間には余計、刺激が強い。自分の弱さを感じる。物語をつらぬく、凄まじい寂寥感。そう、寂寥感という言葉がぴたりとあてはまる。暗さ、重さ、暴力。それらを包む、寂寥感。女性が読んでどう感じるのかも聞いてみたい小説。
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いつもの桜木紫乃とはちょっと違う。
桜木紫乃が描く塗れ場は 全く色がなく ラブシーンを書かせたら こんな下手な作家はいないといつも思っていた。だけど ブルースは どの話も色がある。
桜木紫乃が描く話には 男女問わず 好感を持てる人が登場しない。好きになれないから 感情移入できない。それでも読ませるのだから それはそれで相当な腕だといつも思っていた。
だけど 影山博人は魅力的だ。非情だったり 優しかったり そのときどき いろんな顔をみせるけど それこそカメレオンのように どの顔も魅力的だ。
なぜ まちこなんだろう。関係とタイミングで言えば 圭の方が自然な流れじゃない?と思うけど 圭じゃ 博人のそばにいるには 弱くて優しすぎるのか。
まちこは博人に似てるのかな?それにしても ここまで家族になれる?最終話がちょっとゴーインな気はするものの 読後感が良いのも ちょっと今までと違う。
変わらぬものは しぶとく たくましい北のオンナたち。
そして釧路の湿った空気。
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同じ桜木紫乃さんの小説で、似たようなつくりの作品を読んだことがある。
軸にあるのは1人の人物で、主役を変えつつその1人の人物について語るような内容の短編集なのだけど、最後までその人物が語る場面は出てこないから、その人物が実際は何を思っていたのかは分からないまま…という実に謎めいたつくり。
前読んだ作品は女性がその“軸”だったけれど、今回の“軸”は男性。
生まれつき手足の指が6本あり、恵まれない家庭で育った影山博人。彼はとても人の目を惹く容姿をしていて、そして女を抱くのがとてつもなく巧い。
影のある少年だった影山は、男娼を経て、裏社会を牛耳る大物となる。
その影山と関わった女たちが語り部となり(それは過去の話だったり現在の話だったりするのだけど)誰の心にも濃く残る影山とのエピソードを語る。
時系列が行ったり来たりするところも、バラバラな感じで影山という男の雰囲気によく合っている。
桜木紫乃さんの描く北海道のモノクロな感じの描写がとても好き。出てくる女たちが総じて何かしらに困窮しているから、その描写からとても寒々しいものを感じ取れる。
影山はけして彼女たちを見える形で救うわけではないのに、彼に惹かれ彼に焦がれることが、もしかしたら彼女たちを救ってきたのかもしれない。
良い思い出とは言えないのに忘れることが出来ない。それくらい、強烈な魅力のある男なのだと思う。
桜木作品を、私はたまにとても欲する。
それは綺麗すぎない世界なのに、登場人物たちがある種の綺麗さを捨てきれていないせいなのかも。
諦めと祈りに、とても近い。
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闇にどんどん引き込まれてしまうような一冊。
性、金、血、ドロドロと渦巻く汚い泥のような生活を、淡々と綴る筆者の描き方が、とっても爽やかで大人の青春というのか、ダークファンタジーのような本。
つい、深入りして、つい、目が離せなくなって、つい、追体験をしそうになる。
あとがきが壇蜜で、私もこの中の女の一人で、、、
っていうあとがきは、なんだかなるほどなぁ。たしかに、なんかわかるかも。と、思ってしまう説得力のある内容で、壇蜜なかなかやるな。と、思ってしまいました。笑笑
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霧がたちこめる釧路で生まれた六本指の男・影山博人。貧しく苛烈な少年時代を経て夜の支配者にのしあがった男は、女たちに何を残したのか。謎の男をめぐる八人の女たちの物語。
とにかく影山の存在感が圧倒的。冷酷で感情がないように見えて、何故か一部の女たちの心を救っていく。そのルーツは母に対する憎しみから生まれたコンプレックスなのか。それとも、一種の罪滅ぼしなのか。
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作品紹介では影山博人を中心に描かれた印象を受けるが、実際に読むと女性側からその影山、というか男性との関係をそれぞれの価値観や距離、その人がその関係に至るまでの人生過程が程よい描写で描かれている。北海道のなんとも言えない風景が映し出される作品。男性が読むとより女性ってそういう視点を持ち合わせているのかと考えさせられるような印象の文脈も。
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人々の闇の部分、あったかさ、弱さ、いろんな面がみれた。底辺から這いつくばって生きていく主人公。切なくも温かい、どうか幸せに生きてほしい。
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「男の美しさ」をすべて持っている男。本作のあらすじを簡単に言い表すならば、そんな男の少年時代から命を落とすまでの連作短編集。
彼には生まれつき6本の指があり、愛想はなく、色気がある。その時々に彼にハマった女たちの目線で描かれます。
表紙から想像する雰囲気も、話中で流れる音楽も、何かにつけて昭和の色が濃いなぁと思ったら、テレビのニュースから舞台が昭和であることがわかる。
映像化したらR-18指定になりそうだけど、桜木紫乃の世界はいつもエロティックなのに品があって、薄っぺらさを感じない。なんだかとても哀しくなる。
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「あれこれ考えるなら明日の自分のことにしろ」
影山の言葉。いろいろな過去、影を背負っている男が言うと響く。多くを語らない男が唯一、感情があり、相手のために自分の思いを語る。
「慣れる、人間、血が通っている限りだいたいのことには、慣れるようにできている」
今、現在にも響く言葉だ。
影山と言う男が魅力的だ。影のある男で信じたらよくないと思っても信じてみたくなるような、たまに見せる笑顔がずるい。悪い男だからこそか、彼の優しさか、女の寂しさ悲しさにすぐ気がつき、女の心の器を満たす。感情が薄いようにみえるが誰よりも熱く、読まれたら潰されることを知っているから、表に出さないだけ。感情を見せられない環境にいただけ。敵にするのはこわいけど、最期どういう姿でどう立ち回るか見てみたいと思ってしまう存在。性別関係なく惚れてしまうだろう。
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それぞれの過去がある男と女が影山ヒロト
と言う町の闇を担う男の幻影に囚われ
ながら、その町で生きている。
ヒロトの義理の娘莉奈は、ヒロトを亡くした
事でヒロトの代理を自ら担い町の暗部で
生きる事を選択した。
釧路と言う海辺の町で、ヒロトの幻影に
縋りながらそこから動く事も出来ず
冷たい湿った釧路の海風が莉奈やヒロトを
逃すまいとしている様だ。