二度読み必須の名作
2018/01/01 14:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
何となくの違和感はありつつも、全く予想していなかった展開に唖然。この作品はもう一回読んでこそ、味が分かる作品だと思います。前作が良かっただけに、正直そんな期待してなかったのですが、途中までもなかなか面白く、更に最終パートでガツンとやられ、最後には、思わず涙も出そうなストーリー。前作と合わせて名作です!是非このシリーズの第三弾もいろんな意味で期待したいです。
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全体を貫く冬の章と、春、夏、初秋、晩秋と続く短編。構成がとても巧みです。解決に至る終盤で思わず声が出ちゃったけど、なんか気持ちいい解決編だった。これは答えを知った上で、もう一度頭から読みたい。
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途中から違和感を感じて、視点人物が違っているのではないか、というところまでは思い至るも、最後に現れる光景にはそれ以上の衝撃が待ち受けていた。過酷な環境に生きることを強いられた子供たちの悲痛な叫びと、それに答えようとする大人たちの思いがそれぞれ胸に届いてくる。
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やられた。久しぶりに。
日常の謎的な連作集なのだけど、それがある事件へと繋がる。
いやはや、この手の作りはわりとありがちなのに、今回は完敗。
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<ALBATROSSES NEVER FLAPS >
個々の話の真相、全体に構えられた著者の仕掛けには気付いたけれど、大切な事には何一つ気づけなかった。
終盤、「彼女」が放つ5文字の言葉。「○○○○○」の言葉に会って、自分は全くわかっていなかった事に気づいた。
もし仮に万が一、このシリーズが映像化されるなんて事があったら(前作も今作もそれが難しい事は読めばわかるけど)、この「アルバトロスは羽ばたかない」を先にするのもいいのかもしれない。
もちろん、「七つの海を照らす星」からの方が感情移入や登場人物の成長が感じられるのは明白。それでも、信じられないほど驚きと痛みを感じ入り、祈る事を止められない、静かなエネルギーに触れる事ができるのは、今作→前作→今作だと思う。
つまり、前作を読んだことのない人も是非、今作からでも読んでほしい。
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連作短編集。殺人までは起こらず、いわゆる学園モノの日常の謎作品。正直そんな好きな分野じゃないけど、これ(というか、前作も含めた本シリーズ)は面白い。それぞれの短編集だけでも味わい深いけど、本作に通底する、一番大きな事件にしても、その切なさにやられる。素敵な物語でした。
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面白かったよー。さらりと読める本格ものを求めていたのに思ったより凝った仕掛けで満足満足。
「転換」へのこだわりを感じる一冊。違和感の正体には気づけても、それによる帰結に気づける人はいるのだろうか。全然わからんかったなぁ。
登場人物がポンポン出てきて焦る、こういう感じの物語かなと思ったらなんのことはない著者の2作目だったという。気が向いたら読もう。
文庫本にしてはちょっと高いなと思ったのは内緒だ。内容にしては相応だと思いますので何卒よしなに。
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ミステリーというのはいくつもの作法・・・というか約束事、パターンといってもいい・・・があると思うんだけど、ミステリーを読み慣れていれば時折感じる違和感が「作法」のひとつに当たると気づいたかもしれない。
でも私はずーっと、「なんかおかしいところがあるな・・・?」と思いつつも根本的なところを疑わなかったので、最後の最後にまぁびっくりしたことといったら!
前作と舞台は同じ七海学園周辺。現在の事故について不可解なところを調べていく章と、過去の事件を振り返る章が交互に書かれている。過去の中で明かされるほんのちょっとしたことが、現在の手がかりになったりする――ほんとうに巧みにヒントがひそんでいて、すごいなあと感心しきり。二周目はそのヒントを見つける楽しみもある。
やわらかな心の子供たち、彼らと真剣に向き合う大人たち。双方の悩み、葛藤、勇気や優しさがとめどなく流れてきて、人ってこんなにも感情豊かなものだったんだな、と思う。奔流のようだけど息苦しくはならない筆致がふしぎで素敵。
ああそれにしても・・・このあと、彼女がいったいどうなるのか、リアルに心配してしまう。当人の不在と周りの語りによっていっそうはっきりと浮かび上がる、その人の良さや輝きってあるけど、なんだかあまりにも手触りがあって、友達の友達みたいな気がしている。
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良い話だなぁ、悲しい話だなぁ、では終わらない、これはミステリなのだ。
短編を連作した長編ミステリ。凄まじい読み応え。
ガツンと頭をトンカチで打たれたような衝撃。
でも……だけど……しかし……、またいつもの日常の七海学園の日々を読むことができるのか……、切実な問題である。
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まさかの冒頭からのミスリード。すっかり騙された!読み返してみれば、犯人も最初にちゃんと書いてある!読者の先入観と文章表現でここまでできるとは!
連作短編ミステリーで、日常の謎は先の読めるものもあったけど、前作よりも納得感のいく仕上がり。大枠は転落事故を追う探偵小説。入れ子構造で、辻褄が合わないなと読んでいて若干混乱するのも作者の計算の内だったというわけで…。
日常パートがなーんだその程度のミスリードか。なら本題の結末もだいたい読めるな、なーんて決して油断してはいけない作品。
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2018.04.08
児童養護施設・七海学園シリーズ2作目
母親に殺されかけた子 スタジアムでの大量失踪事件 寄せ書きを隠す事件 子供の面会を迫る父親 の短編4つと、全体を通しての墜落事件
トリックが秀逸かつ伏線も各所に丁寧に散りばめられている
仕掛けありきで話がしょーもないということもないのもイイ
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文庫になったら買おう、と思ってから何年が経ったでしょうか。こうして文庫で読めるのが嬉しいです。かなり期待して読み始めましたが、期待に違わぬ素晴らしい作品でした。
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読みながら何かが隠されているような違和感をずっと感じていたら、ああ、そういうことでしたか。こういうトリック(?)はミステリの世界ではよくあることなのでしょうか。
このシリーズをもっともっと読みたいのに2作目でヒロインにこの仕打ちはひどい。どのように復帰させてくれるのか期待しています。
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著者のシリーズ前作「七つの海を照らす星」は読んでいないが十分に楽しめた。
謎の真相部分は、ちょっと強引とも思えるところもあるが、綿密な構成で叙述ミステリとして一級品だと思う。
本筋は暗くて重い内容だが、構成している「冬」以外の各章は、それぞれ完結した短編ミステリとも云える内容であると同時に、登場人物が置かれた状況をユーモアも交えて描いている。そのため読後感も悪くない。
是非、前作だけだなく後作の「空耳の森」も読んでみたい。
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総合評価 ★★★★★
前作,「七つの海を照らす星」を読んでから読んでほしい逸品。「七つの星を照らす星」を読まずに,この作品から読んでも十分楽しめるが,最後の衝撃は★2つほど下がってしまうだろう。この作品のキモは,メインとなる物語の語り手である「私」が前作「七つの海を照らす星」の語り手であった「北沢春菜」ではなく,北沢春菜友人の「野中佳音」であるという叙述トリックが使われている点である。そして,七海西高校の屋上から転落して意識不明の重体となっている女性が「鷺宮瞭」ではなく「北沢春菜」なのである。屋上から墜落した女性を「鷺宮瞭」だと誤信させる叙述トリックが仕掛けられている。確かに,読んでいる途中で「何かおかしい」と感じる部分がある。結構あからさまにメインの物語の語り手が「北沢春奈」ではないと感じさせる伏線が張られている。しかし,七海西高校の屋上から墜落したのが「北沢春奈」で,その犯人が「鷺宮瞭」かどうかを「野中佳音」が探っている話とまで見抜くことは容易ではない。春の章,夏の章,秋の章 冬の章として描かれる作品の語り手は「北沢春奈」。前作「七つの海を照らす星」の語り手も「北沢春奈」であり,仮に語り手が「北沢春奈」でなかったとしても,まさか屋上から墜落して意識不明の重体となっているのが「北沢春奈」とはなかなか思えない。可能性から無意識のうちに削除してしまう。しかし,あとでそう分かってから読むと,十分な伏線が張られているのに気付く。人間が書けているからこそ存在する本当の驚きがある。もっとも,「驚かす」ための技術を駆使していないとここまでの「どんでんがえし」は演出できない。ミステリ作家としての実力も非常に高い。春の章から冬の章までの作品のデキも及第点以上。総合的に見て,控えめに言っても傑作。文句なしに★5を付けることができる作品。こういう作品を年に1回くらいは読みたいものだ。
サプライズ ★★★★★
語り手が野中佳音であることもサプライズだが,屋上から落ちて意識不明の重体となっているのが北沢春奈だと分かったときの衝撃が凄すぎる。ただ,驚かそうとして書かれている作品ではないのに,この衝撃。もちろん,驚かそうと思って書かれているのは間違いないのだが,見事に全てが上手くはまっている。伏線も十二分に張られており,納得のサプライズ。文句なしに★5
熱中度 ★★★☆☆
熱中度はそれほどでもない。春の章,夏の章,初秋の章,晩秋の章といった個々の短編のデキは十分面白い。しかし,「七つの海を照らす星」に収録されていた短編同様,いずれもよくできた作品であり,先が気になって読むのをやめられない,という作品でない。むしろ,じっくり楽しみたい作品といえる。そういった作品と冬の章という核となる作品を関連付け,個々の短編に冬の章で捜査をしているのが北沢春奈ではなく野中佳音であり,屋上から墜落したのが鷺宮瞭ではなく北沢春奈であるということが分かる伏線をちりばめているという構成が見事という作品である。熱中度としては★3で。
インパクト ★★★★☆
最後の最後でそれまで読み,頭の中で思い描いていた構���が一変する構成は見事としかいいようがない。このどんでん返しは相当なインパクトがある。残念なのは冬の章のどんでん返しのインパクトが強すぎて個々の短編のインパクトが落ちてしまうことか。個々の短編も十分楽しめるデキなので,その点が惜しい。ここの短編が持つ雰囲気と冬の章のどんでん返しのギャップが魅力なのだが,そのせいで冬の章しか頭に残らない。インパクトは★4か。
キャラクター★★★★★
北沢春奈だけでなく,冬の章の語り手である野中佳音の考えていることが分かるという構成が面白い。北沢春奈は非常に魅力的なキャラクターであるが,野中佳音も負けないくらい魅力的なキャラクターである。ただ,野中佳音を北沢春奈と誤信させる叙述トリックを使っており,非常に効果的であることから,野中佳音の心中はそこまで掘り下げられていない。北沢春奈から見た野中佳音と冬の章の野中佳音の心の中は相当ギャップがあり,そのギャップが意外性につながっている。それは北沢春奈から見た章での野中佳音が完全なモブキャラとなっているということにつながる。そういった意味では★5までは付けにくい。★4か。
読後感 ★★☆☆☆
北沢春奈が屋上から墜落しており,意識不明の重体であるという展開は,どうやっても読後感がよくならない。北沢春奈が意識を取り戻すだろうという描写がされているが,結局この作品では意識は戻らない。七海学園の生徒が北沢春奈を慕っている点が書かれるほど,この点がつらくなる。人間が書けているだけに読後感にはうら寂しさがあるということだろう。結構読後感はつらい,物寂しい作品である。その分心に残るということでもあるのだが。★2で。
希少価値 ★☆☆☆☆
傑作であり,ネットなどでも評価が高い。あまり売れている様子がないのが残念だが,大きな本屋では間違いなく置いてある。ただし,七つの海を照らす星が置いていないことも多い。この作品は七つの海を照らす星を読んでから読んでほしいのだが。将来的には隠れた名作といった位置付けになってしまうかもしれないが,創元推理文庫に入っているので,これだけの作品であれば細々とながら手に入るだろう。希少価値は付かないと思う。★1で。
メモ
〇「北沢春奈です」と答えるとああ,とあちらも納得した顔で手近なソファに案内してくれた。
→「北沢春奈です」は名前ではなく,事案の対象として「北沢春奈の件です」の意味。あとで読むと納得がいく。見事な書き方
〇 表現に抵抗はあったが,ええ,とうなずく。
→野中佳音は臨時で教えているだけで勤めてすらいないので,「先生」という表現に抵抗があるのは納得。これは北沢春奈が主体でも違和感がないのが上手い。
〇 去年は,七海学園の子どもたちをめぐるたくさんの小さな事件があった。その多くに私と海王さん,そして私の親友が深く関わっていた。
→私と私の親友のどちらが「北沢春奈」で「野中佳音」でも意味が通じる。見事な叙述トリック
〇 「瞭さんが屋上にいるのを見た」という茜の話。最初は「瞭のほかに誰が屋上にいたのか」を「北沢春奈」が探している話かと思うのだが,真相は「瞭のほかに北沢春奈を殺害できる人物が屋上にいた��か」を探す野中佳音の話だったことが分かる。
〇 高村くんとの関係。北沢春奈だけでなく野中佳音も高村と旧知の仲だった。これも綺麗なミスリードとなっている。
〇 「そういえば前にも北沢にCDのこと訊かれたな」,「そうか,そういえばそうだったよね。」結構微妙な伏線。「前にも」は「北沢」ではなく「CDのことを訊かれたという点にかかっている。」「そうか,そういえばそうだったよね」は,北沢の答えとしては違和感がある。伏線として違和感を感じることができる点
〇 「ショーヘイ」として短編に出てくる少年が「松平士朗」であることが分かる。これもちょっとした叙述トリック
〇 「つい1ヶ月ほど前,晩秋の激しい雨が降った夜に起きた事件のことを,その時の海王さんの厳しい言葉を,思い出しながら,私はそう考えた」という一文。これも「誰に対することば」がはっきり書いていないので,北沢春奈の言葉とも,野中佳音の言葉ともとれる。
〇 茜は文化祭の日,眼鏡ではなくコンタクトだった。しかし,「冬の章」の主体の人物は茜がコンタクトをしていることを知らない。この点も「冬の章」の主体が北沢春奈ではないという伏線となっている。
〇 冬の章のミスディレクションその1。西野香澄美。西野は女性しか愛せず,織裳や鷺宮を好きだった。鷺宮に拒否された西野は鷺宮にヴァーミリオン・サンズというカフェを利用した売春を教える。しかし,香澄美は高所恐怖症であり,犯人(ここでは一見鷺宮瞭を突き落とした犯人に思える。)ではない。
〇 冬の章のミスディレクションその2。茜。茜が眼鏡をかけていなくて,瞭が屋上にいることを知っていたのは茜も屋上にいたから。茜が瞭を突き落とした犯人なのか(この段階では瞭を突き落とした犯人を捜しているように読める。)。しかし,茜はコンタクトをしている。そのことは北沢春奈は当然知っている。しかし,野中佳音は知らなかった。ここで直接,茜に確認する。
〇 冬の章のミスディレクションその3。高村。高村は文化祭の日,七海西高校に来ていた。高村と北沢春奈とのサッカー大会での再会は偶然ではなく,高村が仕組んだことだった。屋上は西校舎以外にはいない。屋上からテニスボールを当てて鷺宮瞭を突き落とすといった(ちょっとバカミスチックな)トリックは成立しない。
〇 結局,鷺宮瞭を突き落とすことができる人はいなかった。ここで真相が明かされる。鷺宮瞭が屋上にいたことは分かっていた。突き落とされたのは北沢春奈だった。野中佳音は,鷺宮瞭以外の人物が犯人でないことを願って別の人物が犯人でないかを探っていたのだ。
〇 春の章
母親に殺されそうになったと思っている一ノ瀬界という少年の話。母親は自分自身が小さい頃にいてよい思い出のある「七海学園」に界を入所させるために,あえて住居不定になった上で,飛び地である灯台のある当たり界を突き落としたという話。伏線としては茜がコンタクトをしていること,野中佳音がハイキングに行っていたことなどが描かれる。話としては一ノ瀬界の母「真知」という女性の話が心に残る。ミステリとしての面白さはそれほどでもないが,なかなかインパクトのある話。★3で。
〇 夏の章
城青学園の生徒がサッカーの試合���会場から姿を消す話。ミステリとしてのトリックも上々で,そもそも延長選で試合をしていたのが城青学園ではなく女子の選抜チームだったというオチ。いくらなんでも延長選で男子チームが女子チームに代わっていたら気付くだろうとも思うが,話としては面白い。ミステリの古典,ホームズやチェスタトンにありそうな話。★3で。伏線として,高村駆と再会する。高村駆と北沢春奈が高校時代の同級生であったことが書かれているが,高村駆と野中佳音が面識があることもそれとなく描かれている。ヴァーミリアン・サンズというカフェが登場
〇 初秋の章
鷺宮瞭が偶然出会ったモーリと呼ばれる織裳莉央という女子高生からCD-Rをもらう。しかし,再生できない。また,樹里亜という七海学園の新入生が転校前にもらった寄せ書きが無くなる。犯人はエリカという少女だった。寄せ書きは縦読みで樹里亜に対する悪口が書かれていた。過去に同様の手紙をもらったことがあるエリカが気付き,樹里亜が気付く前に隠し,処分した。鷺宮瞭がもらったCD-Rは表と裏が逆になっており,表面だと思われる方にデータが入っていた。日常の謎的なミステリ。二つの小さな謎が描かれる。チェスタトン風の謎解き。話はテンポよく進み読みやすいが謎としては平均点程度。★3で。
〇 晩秋の章
望という少女が七海学園に預けられる。刑務所に入っていた望の父が出所し,望を連れ戻そうとする話。望の父は宅配屋を装って侵入するが,そこに,娘に会わせろとすごむ酒に酔った別の男がいた。その男は職員の小泉の父親だったというオチ。小泉の父親を望の父親と思わせる叙述トリックが使われている。ちょい役で出ていた小泉の父が登場するという展開はちょっとしたサプライズ。宅配屋が望の父だったというオチもうまい。4つの短編の中ではこれが秀逸。★4で。ここでは「あなたは子どもたちのことを思うばかりにだんだん危険を顧みなくなっていませんか」という海王さんの言葉が伏線になっている。