あの瞬間の茄子の輝きが忘れられない
2017/07/24 22:50
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
離婚して会社をやめた男の断片的な回想録的小説です。物や記憶に対する固執が強い作風で、堀江敏幸さんが帯を書くのも分かります。
ドライでフラットな語り口のせいか、「元妻の写真を切り取って風景写真に貼ったアルバムを作る」この男が何故か気持ち悪く見えない不思議な感覚に陥りました。その割に茄子と餃子の描写がやたら巧いし旨そう。この情熱を人間描写に込めろよ(笑)と言いたいけど、アンバランスさが癖になりました。
どこか他人事のように自分に起きたことを振り返り、記録したり忘れたりする様が人間らしくないようでいて、とても人間らしく思える点も面白いです。
無味乾燥な勤め先に咲く花
2024/02/03 17:00
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
高田馬場から神田川を渡った先にある、雑居ビルが思い浮かんできます。離婚で傷ついた市瀬の心を光照らす千絵ちゃんは、まさに職場の天使ですね。
とにかく千絵ちゃん
2023/11/30 15:47
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投稿者:302 - この投稿者のレビュー一覧を見る
さらさらと読み進み、感情が動くことも特に無く。
何度読んでも記憶にない部分がありそう。
印象に残ったのは千絵ちゃんの髪型だけ。
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言ってしまえば、語り手がくよくよと過去のことを思い出したり忘れたりするだけの小説が、なんでこんなにも愛おしいのか。いや、離婚した妻やかつての職場の同僚の女の子との日々に、くよくよと思いを馳せる、ただそれだけであるからこそ生まれる愛おしさなのかもしれない。読むとお酒が飲みたくなって、餃子が食べたくなって、今は忘れてしまっているいつかの誰かのことを思い出したくなった。「お茶の時間」以外は雑誌掲載時に読んでいたけれども、こうして連作として一冊にまとまったものを読むと、当時とはまた違った感じがするものだ、と、日記を見返すような心で。
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何事にもさしてこだわりがなくどうでもいいのか、それともなぜそこ?という些細な何かにこだわり続けているのか、よくわからない主人公。
元妻、千絵ちゃん、諸乃と、異なる時間に現れた3人の女性との出来事や感情が、重複したり予感したり思い出したりするので、時々混乱する。
ポイントは、日記と茄子、ということになるだろうか?
特に茄子の素揚げの描写が秀逸。
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わあ(失笑)くよくよねちねちする話なのに、きゅんきゅんした。一文字も読み逃してしまわないよう、たまに懐古的になりすぎて読み飛ばしたくなったりしながら読んだ。
今後何回も何回もねちねち読みます、わたしは。
茄子の輝きで気持ちが感情的になってしまって、文化はちゃんと読めなかった。なんか文の途中でしゃべってる人がかわる。私の着てる服の話なのに、こう見えるとか、見えないとか言うの。
わたしの持ってる透明じゃない袋に本が入ってるけど、なんて本なのかは見えない、とか。茄子の方にもあった、自分が証明写真を撮ろうとしてるのに、外側からは足しか見えない、とか。はぐらかされてるみたいで、茄子の輝きで冷静さを失ったわたしには、ちょっと難しかったので、再読の時読み直し。
図書館で借りたの、買おうか迷って。表紙の茄子の絵、ちょっと輝きすぎてお漬け物のようだと思った(本文では揚げ浸し)。もっと黒紫に輝いてたら、生っぽかったら買っちゃってたな。
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日記や写真や日常につられて頭の中で、あてにならない記憶や、事実と異なる情報で上書きを繰り返された思い出、妄想が、うだうだと繰り返される。
たまに脳内の出来事なのか現実かどうかも分からなくなって、なかなかサクサクすすまない。でもなぜか付き合ってしまい、そして愛着が湧いてしまった。
いや、湧いたと言い切るのがためらわれるくらい、ぞわっとするページもあったが…。
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最後の1編、なにも考えずすすんで、ちょっとビックリした。あれ?あれ?て。
で、連作の6編。顔の記憶なんて、そんなんだよ。で、あんがい、細かな出で立ちや食べたものなんかが鮮明で。日記と写真。
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タイトルに惹かれて。
喜怒哀楽の間の気持ちと、様々な状況の変化の中で一人の人ができることを丁寧に。
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好きだわ。なんてことない毎日のあれこれと離婚した妻のことをぐだぐたと頭の中で考え続ける。普通なら面白くもなんともない脳内ぐるぐるがとびきりの文章で読ませる物語になる、いいねぇ、好きだわ。三人の女たちとの距離感もこのぐるぐる主人公らしくてなんともかんとも。「好きだ」とか「愛してる」とは熱量のちがう何かをずっと保ち続けるこのオトコ、じつは僧なんじゃないか、心の僧。そして植物的な感じのする彼が匂いという動物的なものにこだわるのも異質な感じがしていい。
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装丁に惹かれて手に取ってみました。
何とも不思議な世界観。
一人の男の20代半から30代にかけての日記のような話。妄想語りのような文が楽しめます。
息抜きにゆるくゆっくり読みたい時におすすめ。
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記憶と記録と思い出と思い、想い。
ある男の思った事、考えた事、覚えている事、忘れかけている事。思い描いた事。
色々考え、共感した。
茄子の輝きが脳裏に焼き付いている。
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市瀬の個人的な生活が淡々と綴られた短編が7つ.市瀬が勤める会社やアパートの辺りは以前よく出かけていた場所だったので,情景を思い出しながら読めた.勤め先の千絵ちゃんが物語の中で大きな存在感を示していた.オノをアパートに泊めてやり,後日偶然出会う話も楽しめた.都会に住む普通の男性の日常を空の上から俯瞰したような感じだ.
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書評を読んで興味を持った本。
少し不気味さをもった男性の独り言をずーーっと聞いているような文体だったが、これがなかなかクセになる。人に読ませる為の、理路整然とした独り言ではなく、本当に自分のつぶやきを文字起こしされたのではないか?と思うような、時々飛んでいたり、重複していたり、リアルな独り言だった。そして、そんな内容をちゃんと本にして、しかもちゃんと読み進めさせられる作者の才能に感嘆した。
旅行アルバムの所はかなり怖かった。時々、この人変かな?と思わせる事はあったが、あそこまでだったとは・・。淡々とした無害なつぶやきを散々読んだ最後にこのような一場面が出てきて、とても小説が引き締まったと感じた。なかなかの作者だな、と思い興味を持ったので、違う本も読む事に。
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以前勤めていた会社の、もう二度と会うことのない同僚を想う、というシチュエーションは、好きな小説でもある保坂和志の「コーリング」を思わせる。「コーリング」はふと思いを馳せる事がコミュニケーションたり得るか、というテーマだったように思うが、こちらは、関係が絶たれてから、孤独の中で記憶が劣化し、本当の意味で関係が消滅していく事をテーマにしているように思った。特に、元妻の合成写真を作り続ける章など。だから、すごく暗いし救いのない気分になる。しかし、その分、最後のサービスが利いてくる。過去を思い返す事が多く、その都度複雑な気分になる自分としてはこういう話は好きだ。
あと、出てくる地名がいちいち自分に関係する地名でびっくりした。宇都宮、神田川、青物横丁など。これは単なる偶然だけど、たまたまその場所を知っているだけで、同郷の人に偶然あったかのように、感情移入できるもんなんだな、と思った。