紙の本
人身売買の闇は終わらない
2017/12/14 21:59
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えたとき、感情を持っていかれたかのように唖然とした。リトアニアから人身売買でスウェーデンに連れてこられたリディアの命を懸けた告発を、なんと主人公が握りつぶしてしまう。読了すると主人公の真実を公表するかしないかの苦悩はまったくの無駄だったし、人身売買に携わった者たちも野放しのままになっている。リディアの真実を公表したところで、人身売買の黒幕が捕まるわけではないのだが、それでも少女の願いが届くことなく人身売買が続く様子は彼女の死はいったい何だったのかと思わざるを得ない。
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「制裁」の刑事達が登場するシリーズ二作目
前回同様、読み終えた時の
現実の問題を突きつけられた重みが凄い。
前回のあとがきにもあったように、物語はフィクションではあるが、モデルになった人。事件事象は存在している事実。
そして日本でも同様の問題がある事実。
ラストの終わり方は途中で予想が出来たけど
「そうであって欲しくない」という
思いのまま読み進めて、嫌な汗をかいていたら
放り投げられてしまった。
登場人物紹介の並び順が、刑事達をメインにしていないあたりがにくい。
過激な方法で目撃者から証言を得ようとするベテラン刑事に、汚れ仕事をさせていると自覚していながらも自分では一歩踏み出せないパートナー
彼にも決断しなくてはならない場面が回ってくるあたりが好き。
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最後の3行に、、、帯の煽りは期待せず読んでいた。
最初から最後まで重苦しく、緊張感ある展開。それでいて読みやすく、一気に読める。
破綻もなく、最後まで一気に持っていかれた。
女である身としては、なんども繰り返される苦しい描写がなんとも辛かった。
そして、最後の3行には、、、、久しぶりに心底驚き、その余韻に浸りました。1作目も読もうと思います。
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6月-1。3.0点。
リトアニアから連れてこられた売春婦が、立てこもり事件を起こす。要求は通訳としてある刑事を寄越せと。
一方、主人公の恋人をケガさせた服役囚が出所。追い詰めようとする。
うーん、スウェーデンの実情を描いたらしいが、暗い。
ラストはえっと言う感じだが、残り100頁くらいで何となく想像がついてしまった。
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いま流行りの?北欧の警察小説。北欧物の英米物との違いは、主人公がやたら泥臭い事。英米物にも泥臭い主人公はいるにはいるが、北欧物の場合、警察官と言う職業を感じさせないほど、ものすごく泥臭い。そしてもう一つ北欧物の特徴(?)は、なんとなく漂うその“暗さ”。暗いのは、北欧の気候を反映しているんですかね?そのの泥臭さと、暗さで、なんとも言えない全体的な雰囲気が形作られている。
そしてこの作品、最後の2行が衝撃的。頭のどこかで、そうなることをうっすらと感じてはいたんですが、文字にして読んでみると、ものすごく衝撃的です。いやぁ、なんだかな。
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これと似た現実が世界にはいくらでもあるんだと思うと、作者には、愚かな警官2人の代わりに現実を綴ってくれてありがとう、という気持ち。
リディアとアレナの声を胸に刻む。二度とこんな事が起こらないように、とリディアが命をかけた翌日に新しい2人。あり得ないけどこういうことはきっと今も起こっている。有能な警部でもこういうことをし得る、ということも作者のメッセージの1つ。
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面白いし読みやすいけど、カタルシスが味わえないのは作者の狙い。胸のつかえは残ったまま。人身売買許すまじ、自分には何ができるだろう。
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東欧における女性の人身売買問題は西欧だけでなく、日本も大きなマーケットの一つのようだ。
騙して借金させ、異国の地でその返済のために毎日十数人との売春を行う。
その重いテーマを単なる犯罪ミステリーとして描くのではなく、「恥」として登場人物たちの気持ちの中に深い自責の念を呼び起こす。ラストも秀逸。
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【ネタバレ】
不愉快な結末、予想を覆す…と煽っているものの、想定の範疇のラスト、主人公たちの不実…、こう書くと駄作極まりない作品のようだが、小説としてはオモロいのである。
主人公だから、有能な警察官だから、過去の不幸と戦い正義を貫こうとする人物だから…といってその人物の行動すべてが正しいわけではないのである。
その人物が義や仁や情に基づいて行動したとしても、それが万人にとっての義や仁や情に当てはまらないこともままあるのである。
「不愉快な話」=「面白くない作品」
多くの場合この指標は成り立つのだが、この作品はイコールではないと証明している。不愉快だがオモロい。憤りはすごく感じるが読ませる。だからこその☆5つである。
しかし、この2人(エーヴェルトとスヴェン)は、この後、どの面下げて警察官をやっていくのだろう。不愉快ながら楽しみである。
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エーヴェルト警部シリーズの2作目。
北欧社会に蔓延る闇を主に話が進み、結末は…。
嫌な読後感だけれど、物語が、世界全体に蔓延る闇を描いているようで、気持ちに突き刺さるものがある。
北欧社会の社会が抱える闇は、東欧諸国にもつながり、そして、日本にも蔓延っている…。
世界全体の問題。
シリーズ3作目を読むつもりだが、エーヴェルト、スヴェンともに、心に深い傷をもったまま、仕事をしていくことになるのか…。
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シリーズ最初から再読している最中、もちろんタイトルだけで内容を思い出すのは無理なのだが読み始めると記憶がよみがえって二度目ならではの細部の読みも深くなる。それにしても2作目は後味の悪さがどんよりと立ち込めて気持ちが悪い。後でこれも決着がつくのだろうか、楽しみに読み進めたい。
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エーベルト・グレーンス警部シリーズ第二作。
もはや苦行だ。
相変わらず苛烈な暴力の描写に、
正義の無力さ、人生の虚しさの熱帯雨林をかき分けて前進するような苦行。
その行程の果てにあるものは、
心洗われる大瀑布でもなければ、
失われた古代遺跡でもない。
前作で登場した囚人が刑務所から出所して話ははじまるが、
そこに外国から騙されて連れてこられた売春婦たちがからんでくる。
酷い暴力の被害者の彼女が、銃と爆弾を持って立てこもった目的はなにか。
グレーンス警部と囚人の因縁が明らかになり、
自分の恋人に重傷を負わせ人生を破壊したその犯罪者を、
傷害からくる事故死を殺人の罪で追い込むのはまだ良いとして、
亡くなった刑事仲間の犯罪を隠蔽するのは納得できない。
著者という現地の案内人に連れられ、
蚊やヒルに襲われ夜に怯えながら進んだ
密林の奥にあったのは、
馬をも飲み込む底無し沼だった。
人の心の闇という名の。
いや、ここが終着点ではないのかもしれない。
救いは次の作品にあるのかも。
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続きが気になって一気読み。
胸糞悪い終わり方は小説ならではなのかな。。。
テレビドラマでは味わえない喪失感。
読み終えて少し立ってから気づいた。
レーナは夫が死んだ翌日に、新しい少女の仕入れに出向いているのでは。。。
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グレーンス刑事シリーズ第二弾。
相変わらず重く、苦しく、辛い、だけどずっと読んでいたい。そんなザ・北欧小説という感じ。
売春斡旋業者から大怪我を負いながらも逃げ出した女が、病院の死体安置所に人質を取って立て篭もる。要求はグレーンス刑事の親友と話をすること。なぜ人身売買により他国から売られた女が、立てこもり事件を起こすのか。一方、グレーンス刑事の恋人が脳に障害を持つきっかけとなった事故。その事故を誘引した犯罪者が刑期を終え出所することに。。。
今作も2部構成。売春婦リディアが起こした立て篭もり事件の顛末と、そのことで明らかとなったある真相をめぐる二人の刑事の苦悩が描かれる。
真相については途中でなんとなく察することができる。ラストについても同様。ただ、物語の構成が素晴らしく、読んでいても全く飽きがこない。
救いはなく。希望も叩き折られる。だけど、素晴らしい小説。
ボックス21とは何か。題名もとても秀逸。
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「制裁」以上に、夢中になって読んだ。
満員電車に乗るのが全く苦にならないほど。
なんだったら、この本が読めるから電車に乗るのが待ち遠しかったほど。
恋人(だったのか?本当に)に裏切られ、船内で殴られた瞬間に希望が粉々に打ち砕かれ、自分の身体が自分のものではないと思いながら、絶望の日々を過ごすリディアを思うと、胸が締め付けられる。
リディアの命とプライドを賭けた立て篭もり、真実が白日の元に晒されて欲しかった。
彼女の心が壊れることと引き換えに保持していた「ボックス21」、このタイトルにも胸打たれる。
しかもこの売春斡旋はフィクションではない。
こんなに辛すぎる思いをする女性は、この世にただの1人もいてほしくない。
そしてラスト3行の衝撃。
「だからコイツやって言ってたやん」と誰にともなく独り言。分かってはいたもののやはり衝撃。