大河ドラマ「西郷どん」はこれからが面白いはず
2018/07/11 15:21
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKの大河ドラマは正月に始まって、12月まで1年間続く歴史ドラマです。
なので6月あたりがちょうど折り返しでしょうか。
今年(2018年)の大河ドラマは林真理子さん原作の「西郷(せご)どん」。明治維新の功労者西郷隆盛が主人公で、ドラマはちょうど西郷が二度の島流しを経て、これから京都に出て幕末を迎える頃となっています。
小説ではなく歴史上から見た西郷隆盛を描いた本書でいえば、269ページのうち100ページ少しあたりですから、西郷の人生は大きく前半と後半、にわかれるのかもしれません。
この本の著者磯田道史氏の章立てでいえば、三つ。
第一部が「青春と挫折」で月照との心中事件まで、次が「復活と策動」で島送りから戊辰戦争まで、最後が「失意と天命」で西南戦争で49歳で亡くなるまで、と分かれていて、西郷隆盛を知る上で、とてもわかりやすい区分でした。
さすが大河ドラマで時代考証を担当している磯田道史氏だけのことはあります。
あのドラマで西郷がしばしば鰻獲りをするシーンがありますが、実際西郷は鰻が好きだったそうです。
では磯田氏は西郷隆盛をどんな人物と見ているかというと、自他の区別がなく、「一緒にいるとやがて餅みたいに共感で膨れ上がり、一体化してしまう」そんな性格であったと記しています。
そのあたり、最後には道を分けることになる大久保利通との違いなのでしょう。
さらに西郷にとって「人生はいわば緩慢な自殺に近いもの」だとも書いています。
これから大河ドラマを楽しむには欠かせない新書です。
大河ドラマの副読本
2018/05/12 22:00
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
調査の時間がなかったのか、古文書を地道に紐解き、史実を検証するいつものスタイルではなく、数ある西郷本を参照して書いた評伝です。
西郷の事績を賞賛するだけでなく、目的達成のためには手段を選ばない西郷のダークな側面もバランス良く描いています。結果として、西郷は身内を含め膨大な人たちを死地に送り込みました。実弟の西郷従道や従弟の大山巌は西郷の悪口を言い合っていたとのこと。案外、磯田氏も維新の最大の立役者であることは認めつつ、西郷はあまり好きではないのではないかと思いました。
大河ドラマの副読本としてお勧めします。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
西郷隆盛の人物像に迫っていて、おもしろかったです。大河ドラマでも描き切れていなかった西郷隆盛を知れました。
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私自身が今までふれたことのある西郷隆盛像とは一線を引く、聖人君子ではない描かれ方に興味を惹かれました。
緩慢な自殺としての、人生。
死の影。
偉人であることには変わりなく、影の部分にも魅力を感じることのできる姿がそこにありました。
当時の考え方についても具体的に紹介されており、背景と合わせて人物のあり方が描かれているのもいいなと思いました。
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磯田氏のこの本と司馬遼太郎氏の翔ぶが如く読んだ。もちろん磯田氏は古文書から日本歴史家として歴史を忠実にかかれている。それに対し司馬氏はあくまでも小説家であるため、史実は忠実に再現され、それに創作部分をくわえられている。両書に描かれている共通部分が史実として私は捉えている。
この歳になって、古文書から読み通すのは極めて困難なため、複数の本を読んで自分なりの西郷隆盛像を作り上げることしかできません。ただし、真実と創作の部分の見極めが出来ないといけませんがね。
そのためにも、歴史家の磯田氏のこのような本が大変貴重です。
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まずまず。
今まで知らなかった、認識と違っていた西郷隆盛を知ることが出来た。明治維新の中心人物である事は間違いない。私欲がない事が人気の理由だろう。
薩摩藩は特異な組織で、太平の江戸時代に軍事に備えていたことが幕末に生きた。
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毀誉褒貶の多い(「毀」「貶」の割合が勝ってるかな?)今年の大河ドラマ『西郷どん』。その時代考証を担当している磯田道史氏による「大西郷とは何者か?」論。
その生涯を軸とし、幕末の薩摩藩の状況、取り巻く人々、歴史の流れなど、史料を駆使してさまざまな視座から“西郷どん”の人となりを語り下ろす。
【以下、ネタバレあり】
やはり西郷さんは「純」そのものの人だったんだな。と言うのが率直な感想。ただ、「純」という言葉にもいろんな意味があるわけで、まさにつかみどころがない。文中にもあるとおり「面倒くさいヤツ」だったのだろう。
けっこう躁うつ気質だったみたいだけど、そのあたりを中野信子先生にも解き明かしてもらいたいと思う。
ところで、ドラマの時代考証では史実と脚本とのせめぎ合いがあるみたいで、時代考証担当者も妥協を強いられることが多いのだとか。(歴史が得意ではない)脚本家にまかせたツケは、当の脚本家や制作者、時代考証担当者だけではなく、視聴者含むすべての関係者にも回ってくるんだぞと戒めておきたい(何様?)。
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西郷隆盛について、知らなかったエピソードがいっぱい。西郷隆盛が矛盾の塊でありながらも人気が高く、大久保利通がなぜ不人気なのか、の理由の一端がわかる。
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2018.7.12 読了
西郷にまつわる文献や証言をもとにコンパクトに生涯、思想がまとめられている。
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今年の大河ドラマの主人公の西郷隆盛。
そのドラマ『西郷どん』で時代考証を担当している磯田道史さんが、様々な文献から西郷隆盛の人物像を掘り下げる。
西郷は純粋すぎるからこれだと思ったらひたすらそれに向かって突き進む熱い男。
それゆえに人を惹きつけ魅了するが、事を成す為には手段を択ばないので周りには常に死の影が。
そんな西郷の為人がどのように形成されていったのかに興味がある人におすすめ。
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磯田氏の人気の秘密は、埋もれていた古文書を掘り出し、拾い集めて、ミクロの視点で歴史を解釈して見せることにあるでしょう。
西郷隆盛という人間は体格も、人物スケールも大きい。
いわばマクロの代表のような人です。
それを、ミクロから解釈して見せるのですから、面白くないはずがない。
この組み合わせですから、成功が約束されたようなものです。
ミクロの視点は本を読んでもらうしかないのですが、例えば西郷の下男の証言がちょくちょく出てくる。
この下男は西南の役の相当最後の部分まで西郷に付き従っていたようですが、ハイレベルな視点とは正反対だけれど、これほど身近に仕えていた人物ですから、人物をあぶりだすには格好の視点なのです。
西郷という人間は評価が分かれると思います。
磯田氏はどちらかと言うと、あえて欠点を多く書いているので、好意的には描いていない。
しかし、彼が歴史で果たした役割の大きさには全面的に認めている。
NHKは見ていないが、あの男優で西郷の心の闇の部分を描けているのか、はなはだ疑問ではあります。
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今や司馬遼太郎の後継者として引っ張りだこの著者であるが、本作も実に西郷を調べ尽くしている。西郷の周りでは多くの人間が死んでいくというのは言い得て妙である。司馬遼太郎の「翔ぶが如く」でも地元では西郷はあまりよく思われていないと書かれていたと思う、多分西郷は時代の破壊者として生まれてきたのであろう。ところで本作はひとつの論文としては面白いのだけれど、これを「翔ぶが如く」や「花神」のような歴史小説とするにはもっと筆力が入りそうだが、最近の史実を無視したトンデモ歴史小説を書くぐらいならやめたほうがよさそうに思う。
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今NHKで「せごどん」を放映していますが、本当の西郷吉之助とはどういう人物だったんだろうと読み始めました。
西郷さんはどうも色々な顔を持っていたようですが、人に影響されやすい側面もあったようです。影響されると一気にそっちの方向に行ってしまう。残酷でもあったし、無情でもあった。頑固でもあったようです。
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西郷の幼少期から西南戦争での自決までをわかりやすく書いていただき、西郷の何がすごかったか、またとても面倒くさい人間であったことがよくわかる内容でした。明治維新とは西郷と大久保のふたりによってなし得た事がよくわかる内容で面白かったです。
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傷のある金の玉(西郷)と、まったく傷のない銀の玉(大久保)という
評価が分かりやすい
筆遣い、州の最後の点を、丸を描くのを楽しむようにしていたそう。
得意の密偵、事前の情報収集が得意。相手方の意見分散など把握する
非情、味方が全員死んでから援軍を求めろ
不器用で失敗も多い、鹿児島で兵を集めてからの函館到着は榎本降伏後
弟の戦死で鬱状態
ムラの多いリーダー(足利尊氏に似ている)
東北諸藩、日本海側が豊か。飢饉の時は山形の庄内平野(酒田)をめざして移動した。米蔵があり豪商もいて飢え死にしなくてすむ
戊辰戦争、佐賀藩の軍備が決めて。鶴ヶ岡城にアームストロング砲を撃ち込んだ
情実の黒田
勝と大久保の「大奥騙し事件」。新政府軍の駐留は3日程度だけ、と言って天璋院と和宮に江戸城を出てもらう
大久保、形から入って人を納得させるのが好き
西郷は無頓着
薩摩はトップダウン型。下は識字率も低くボトムアップ型はムリ
岩倉はともかく天皇と朝廷大事、武家に猜疑心
独創性あり明るく異色の貧乏公家で和歌も下手
西郷、鉄道は無駄と考えていた
子供みたいに純心だが策謀を巡らすといくらでも悪辣な事を思いついた
天才的な革命家、人を選ぶ事の抜群な上手さ