僕らの世界が終わる頃（新潮文庫nex）

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【あらすじ】
不登校になって早一年、14歳の工藤渉は暇を持て余し、軽い気持ちで小説を書き始める。物語を作るのは想像以上に難しく、だが驚くほど楽しかった。初めての小説『ルール・オブ・ルール』をネット上で公開すると、予想外の反響が。けれどその途端、渉の身辺で怪事が続く。脅迫メール、不審な電話、そして作中の場面に酷似した殺人未遂事件。現実と物語が交錯する高次元ミステリー!!

【感想】

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遠田志帆さんのイラストに惹かれて、あらすじも気になって購入。

自分がきっかけで友だちをイジメの被害者にしてしまい、校舎から転落させてしまった。それをきっかけに学校に行けなくなり、引きこもりとなった少年が主人公。多分高校生？なのかな？と思いますがカバーイラストと、描写的に中学生な気もしてしまい年齢があやふやです。

引きこもり生活の中でふと小説を書いてみたところ、その通りに事件が起きてしまう……

というあらすじ。

一瞬ホラーファンタジーっぽいですが、しっかり現実的なミステリーっていうのが気に入りました。

四時間一気読み。なんて贅沢な休日でしょう……

引きこもりの主人公の鬱々としたリアルな感情が丁寧に描かれているので、そうした感情を経験したことある方や、感情移入しやすい方は休日に読むのがオススメです（笑）平日はきつい。





Ｄ

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ハヤカワ文庫の長編が面白かったので、こちらも購入。
テンポの良いサスペンスで読みやすかった。
あと、個人的には、作中作の救いがないバージョンを読んでみたい（作中ではアンチも湧いたって設定だけど、そんな酷い話じゃないよなぁ。普通に面白そうじゃん？w）。

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最初苦手なタイプかと思ったけど、途中から怒涛の展開で一気読み。以下すごいネタバレです。
↓
苦手と思ったのはまず設定。引きこもり中学生が初めてネットで小説を書いていきなり大ブーム、とか、その小説の登場人物がいかにも類型的で面白くないとか、なりすましの文体模倣がうますぎるとか（超ネタバレしますが、プロのライターだからってそんな模倣できません笑 だからそれも伏線だと思って、犯人はもうひとり裏にいると思ってた。ぶっちゃけ兄貴か、主人公の二重人格を疑ってた）。あと冒頭でいきなり友だちが飛び降りるのも、すぐ死ぬ感動うつ系なのかな…と嫌な予感がした。でもテンポがいいからついつい読み進め。そして「彼女たちを救いたい」からの展開の熱さよ。これは小説に限らず、心血注いで何かをつくった経験のあるひとは滾るだろうなと思った。私はかなり体温上がった。正直つっこみたいところはちょこちょこあるし、もうちょい毒気のあるほうが好みだけど、面白く読みました。装丁もかっこいいね！

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ネットに投稿した小説に似た事件。
必死に自分の世界を作り上げていた人の作品に乗っ取り事件を起こすのは間違っているし、作者を侮辱しているのでは。
引きこもりが世間的に良くないのは分かるが、自分の両親から世間帯がという言葉と共に今の状況を否定されるのは一番苦しいと思う。

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引きこもりの中学生がネットへ投稿したミステリー小説。そのとおりに事件が起き始める。ミステリー。

ちからは弱いですが、不穏な空気がながれてて、先が気になります。ただ、この本自体がたぶんラノベ寄りな理由もあってか、主人公の書く小説もラノベ的で、ちょっと軽い（ラノベ読者寄り）なストーリーという感じを受けました。
本格ミステリーを求めていると、すこし物足りないかもしれません。

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僕は、禁忌の物語を生み出してしまったのか。
不登校になって早一年、14歳の工藤渉は暇を持て余し、軽い気持ちで小説を書き始める。
物語を作るのは想像以上に難しく、だが驚くほど楽しかった。
初めての小説『ルール・オブ・ルール』をネット上で公開すると、予想外の反響が。
けれどその途端、渉の身辺で怪事が続く。
脅迫メ ール、不審な電話、そして作中の場面に酷似した殺人未遂事件。
現実と物語が交錯する高次元ミステリー !!
(アマゾンより引用)

最初、お兄ちゃん疑ってた(笑)

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03月-26。2.5点。
引きこもりの中学生、ネットの掲示板に小説を公開すると、瞬く間に人気が。一方、ストーリーを模倣した事件が起こり。。

軽いタッチで重めの話。作中作がイマイチ抽象的な文章のため、感情移入できず。

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読みやすい。
ミステリー初心者でも、スラスラ読めると思う。
なかなか強くなれない主人公。
家族、友達から、距離をとってしまい、最後には、自分自身が消えてしまいたいと思うまでに。
心がつぶれそうになりながらも、そこから這い上がって、行動するまでも読みどころのひとつ。

「味方だよ」と言ってくれる人がいるっていいですよね。

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普段ミステリーはまったく読まないからほぼ初だったが、面白かった。最後は続きが気になって少し夜更かししてしまった。

主人公が強くなっていくところも、完璧かのように思えた兄や兄の友人が弱い一面も持っていたところも良かった。

最後の方まで犯人が誰なのか分からなかった。

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あまり続きが気にならず、読み終わるのに時間がかかってしまった。登場人物の誰にも感情移入出来ずストーリーに入り込めなかった。

帯の「難攻不落のミステリー」は言い過ぎで、期待し過ぎた為返ってチープな印象が残った。何の先入観も持たずに読んだ方が楽しめた気がする。

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とても面白かった！
普段ミステリー小説は読まないけどサクサク読めて、読みすやすかった。

現代版ミステリーって感じだった。

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気になる展開でハラハラするシーンもあったのですが、
いかんせんちょっと中だるみしました。
渉くん、もう少し動いて欲しいかった…()

扱っている題材や、
作中作など色んなギミックがあるので面白いなぁと思うのですが、
普通そんなに踏ん切りついて動けるようになる？というリアリストの視点と、
早く動いてほしいなぁ焦ったいなぁという読者的視点と、
両親に人の心はないのか！？
息子の学校で起きた事件何も知らないわけではなかろう！？という気持ちと、
色んな感情になりながら読んでいました。

えてしてこういう時って会話が少ない、から起きる色々ってあるよなぁとつくづく思います。
漫画や小説やドラマであるモノローグなんてそれそのまま言葉にしたらすぐ解決したよ！とか。
それじゃ話にならないのですが。

しかし犯人に関してはちょっと腑に落ちないというか、
確かにそうかーという部分もある物の
取ってつけた感じがしてしまい。
あまり納得がいかなかったので星3というところです。

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あなたは、小説を書いたことがあるでしょうか？

実のところこの質問には、”はい”と答える一定数の方がいらっしゃるのではないかと予想しています。そもそもブクログは本好きのみなさんの集まりです。そんな中には発表せずとも自分の趣味で物語を書いたことがあるという方も少なからずいらっしゃるのではないかと思います。私はそもそも本を読み始めてまだ5年という人間であり、残念ながら小説を書いたことはありません。

しかし、今までに900冊以上の小説ばかりを読んできた身には、その行為にとても憧れる思いはあります。それは、小説を読めば読むほどに自分の中に湧き上がってくる思いとも言えます。他の方が書かれた小説を読んでいると、自分だったらこんな変な名前を主人公に付けないのに…、物語の舞台はこうした方がもっと雰囲気がでるのに…、そしてこんな結末はないでしょ、せめて…とさまざまな思いも湧き上がります。

　『物語を書く。自分の手で、自分の考えたキャラやストーリーを、動かす』。

そんな行為に憧れるのはもしかすると小説にトライする第一歩なのかもしれません。

さてここに、『これくらい、自分にも書けるんじゃないか？』という思いの先に小説の世界に足を踏み入れていく一人の中学生が主人公となる物語があります。そんな中学生が小説を『ノベルサイト』に発表していく様を見るこの作品。そんな先にまさかの事態に巻き込まれていくこの作品。そしてそれは、『それが、この事件の始まりだった』と”現実と物語が交錯する”先に展開する”ミステリ”な物語です。

『中学に行かなくなってから、もうすぐ一年が経つ』と、『ドアにもたれかかって床に座り込んだまま、もはや自分の一部と化した室内を見回す』のは主人公の工藤渉(くどう わたる)。そんな渉の耳には十一歳年上の『兄の貴史(たかふみ)と、両親の』『笑い声が』階下から聞こえてきます。『彼らがこんなふうに明るい声を出すのは珍しい』と思う渉は、それが『妻の智美と生まれたばかりの娘、未来を連れて』貴史が『実家を訪れたからだ』と思います。そんな声に耳をすます渉は、『貴史の親しい友人たちも訪れ』ていることに気づきます。『高校のとき兄の同級生だった笹倉利秀』、『高校時代に副会長として兄と共に生徒会で活躍していた、柏木麻衣子』と声の主を思う渉は『学校にも行かず、引きこもっている自分の現状に居たたまれなさを覚え、彼らと顔を合わせること』などできないと思います。そんな中、『オレたち、そろそろ帰るけど、ちょっとだけ顔出さないか？』と『ドア越し』に貴史から声をかけられるも返事ができない渉。やがて、貴史たちは帰っていきました。そんな渉の『脳裏に、忌まわしい記憶がフラッシュバックし』ます。『一年前のあの出来事…中庭に倒れた同級生の身体。地面に飛散した血。『わた…が落ちればよ…たのに』と震える声で一人の少女が眼差しを向けます。
場面は変わり、『朝、目が覚めると、父はもう出勤していた』という中、母親が出かけたというメモを見る渉は『今日こそ、実行に移せそうな気がし』、『駅前のバスターミナルに向かう』も結局、バスには乗れずそのまま帰宅します。『僕はたぶん、「死にたい」んじゃない。「いなくなりたい」んだ。ここから。僕のしたことから』と思う渉。
再度場面は変わり、別の日、誰もいない家で『気まぐれに購入した』『ライトノベルの文庫本を手に取った』渉は『「Sノベル大賞受賞作・期待の大型新人！」と煽り文句』の先に書かれた『ありふれた学園ファンタジー』を読み『なんだ、これ。これが本当に受賞作…？』と感じます。そして、作者のブログにアクセスした渉は『誰でもいいから人を殺して死刑になりたかった』という動機で犯人が起こした事件当日、そこにいくはずがこの小説執筆に夢中になって出かけなかったために難を逃れたことが書かれていました。『起きた〈事件〉を』『作者が自分を主人公とした都合のいい舞台装置に使っている気が』する渉。そして、『作中でいくつか気になった箇所』等含めた感想を書き込んだ渉は、昔から『「自分ならこうするのに」などとあれこれ考えるのが単純に好き』でした。夕方になり、再度ブログを開くと『外野が口出しするのは簡単。所詮書く人間にしかわからない』という作者の一文が記されているのを見る渉は『なんだ、それ…』、『というか、これくらい、自分にも書けるんじゃないか？』と思います。『物語を書く。自分の手で、自分の考えたキャラクターを、動かす』。『一度そう思い立つと、なんだか落ち着かない気分にな』った渉は『ワープロソフトを開』きます。とは言え『無から有を生み出すという行為』に戸惑う渉には『文章が何も思いつ』きません。しかし、『さっきの作者からの返信』に『反発心がよみがえ』る渉の『頭の中に、地面に倒れているクラスメイトの姿が浮かん』できます。やがて、『ゆっくりと指を動か』し始めた渉。『全ては、赤い色に沈んでいた…』と打ち進める渉は『決めた。美少女キャラクターたちが、猟奇的な事件に巻き込まれる話にしよう』と書き進めます。『この町には、得体の知れない殺人鬼がいるのだと。ー それが、この事件の始まりだった』と打つ渉は、『書いているうちに、次第に物語の中に引き込まれていくのを感じ』ます。そして、『この小説を誰かに読んで欲しい…』という『欲求が、じりじりと強くなっていく』渉は、『モバイルシティ』という『ノベルサイト』を見つけ、投稿します。『引きこもりの十四歳が書いた、ホラーミステリ』、『実在する町を舞台に、恐ろしい惨劇が開幕する！』と煽り文句をつける渉。そして、『作者名・匿名少年。タイトル「ルール・オブ・ルール」』として『小説を登録し』ました。とは言え思ったほどにはアクセスは増えない一方で、『執筆意欲は失せること』なく、『どんどん彼女たちの物語に夢中になっていく』渉。そんな中、『閲覧数が、徐々に増え始め』、『ますます熱を入れ』る渉は『この物語の先を知りたいのは誰よりも自分自身なのかもしれない』と感じます。そんな中、リアル世界で小説に書いた出来事と似た事件が発生します。リアル世界と架空世界が交錯する予想だにできない展開に巻き込まれていく渉の物語が描かれていきます。

“不登校になって早一年、14歳の工藤渉は暇を持て余し、軽い気持ちで小説を書き始める。物語を作るのは想像以上に難しく、だが驚くほど楽しかった。初めての小説『ルール・オブ・ルール』をネット上で公開すると、予想外の反響が。けれどその途端、渉の身辺で怪事が続く。脅迫メール、不審な電話、そして作中の場面に酷似した殺人未遂事件。現実と物語が交錯する高次元ミステリー!!”という内容紹介に思わずポチッと”カートに入れる”ボタンを押してしまったこの作品。”僕は、小説家か、殺人者か。”と記された本の帯と、その表紙に描かれた少年の眼差しが強いインパクトをもって、これは読まねばという思いにさせてくれます。

そんなこの作品最大のポイントは”小説内小説”が登場するということです。小説の中で別の小説の存在が意味を持つという”小説内小説”は私が大好きな構成の作品でもあります。今までに数多くの作品に触れてきましたがここで整理をしておきたいと思います。

　● “小説内小説”を4つのタイプに整理してみます(※ 永久保存版(笑))
　　タイプ① 小説の中で書名が匂わされるも当該小説の内容を読者が知ることができないもの
　　　・恩田陸さん「三月は深き紅の淵を」: 小説の中に同名の小説が書名のみ(読めない)登場します。
　　　・湊かなえさん「Nのために」: 小説の中に「灼熱バード」という小説が書名のみ(読めない)登場します。
　　　・角田光代さん「私のなかの彼女」: 小説の中に「うららかな実」という小説が書名のみ(読めない)登場します。

　　タイプ② 小説の中に登場した小説がリアル世界で実際に刊行されたもの
　　　・辻村深月さん「V.T.R.」: 「スロウハイツの神様」の登場人物・チヨダ・コーキのデビュー作という位置付けの物語
　　　・有川浩さん「レインツリーの国」: 「図書館内覧」内に、新人作家が書いた恋愛小説として登場する物語
　　　・村山早紀さん「風の丘のルルー」: 「その本の物語」の中で、病室で眠り続ける友人に主人公が朗読した物語

　　タイプ③ 小説の中に登場した小説が外側の小説と交錯しながら展開するもの
　　　・桜木紫乃さん「砂上」: 一人の作家が誕生する瞬間を、実体験を内と外の小説を絡み合わせながら描く物語
　　　・斜線堂由紀さん「私が大好きな小説家を殺すまで」: 内側の小説を途中まで外側の小説とそのまま一体化させるという巧みな構成で展開する物語
　　　・加納朋子さん「ななつのこ」: 主人公が書店で見つけた同名小説「ななつのこ」が外側の物語と一体化して魅せる物語
　　　・奥田亜希子さん「透明人間は204号室の夢を見る」: “書けないときの苦しみは窒息に似ている”という作家の苦しみの先に同名小説の誕生を見る物語

　　タイプ④ その他、変化球的な構成
　　　・三浦しをんさん「ロマンス小説の七日間」: 英国中世騎士道ロマンス小説を、翻訳の過程で勝手に作り変える主人公を描く物語
　　　・金原ひとみさん「オートフィクション」: 一人の作家が”自伝的創作”を作品中で仕上げていくことで書き上がったのがこの作品という複雑な体裁（これって金原さん自身の自伝？）
　　　・深緑野分さん「この本を盗む者は」: 5つの章に登場する5つのジャンルの小説がそれぞれの世界で魅せてくれる贅沢な物語

いかがでしょうか？四つに分類してみましたがそれぞれに興味深い世界で魅せてくれる作品ばかりです。こ���やってまとめていると読み返したくもなってもきます。一方で、これら”小説内小説”の中にあってこの作品の特徴は”小説内小説”の中でも最もメジャーと言えるタイプ③の形式で展開していきます。そして、この作品は小説内に記されていく小説の分量が半端ないものであることが特徴です。ゴシック体で内側の小説が分かりやすく記されていくこともあって、外側の小説と判別できなくなるようなことはありませんし、内側の小説だけでも読み味を感じるくらいに展開していくところは一冊で二冊の小説を読んでいるかのような贅沢な読書の時間を味わえます。

そして、この作品最大の特徴がそんな内と外の物語が交錯するように展開していくところです。内側の物語と外側の物語はこの物語を記していく主人公・工藤渉が初めて書く物語ということもあってさまざまなものを身近に置き換えて設定していきます。では、そんな内側の物語の設定を見てみましょう。

　● 小説「ルール・オブ・ルール」
　　・作者: 匿名少年(工藤渉)

　　・作品紹介:
　　　　- 引きこもりの十四歳が書いた、ホラーミステリ
　　　　- 社会と隔絶する作者が今、世界を壊す。これは虚構か現実か
　　　　- 実在する町を舞台に、恐ろしい惨劇が開幕する！

　　・作品概要: 美少女キャラクターたちが、猟奇的な事件に巻き込まれる話

　　・表紙: 夕暮れに沈みゆく町並みのシルエットを映したネット上でシェアされている素材を使用

　　・舞台: 見山市(内側) ← 美山市(外側)
　　　　　 久瀬公園(内側) ← 久世公園(外側)
　　　　　 聖心学園(内側) ← 清新学院(外側)
　　　　　 高等部(内側) ← 中等部(外側)

物語の舞台を見ると、まさに身近な環境が物語に落とし込まれていることが分かります。このことが物語が展開するに当たって大きな意味をもってきますが、初めて物語を書くに当たってはリアル世界をほとんどそのままに描いていける分書きやすいのは間違いないと思います。そして、そんな内と外の結び付きは登場人物にも適用されていきます。

　『女の子って、どんなふうに書けばいいんだろう…？複数の少女たちをどう作り上げればいい？』

そんな風に考える渉は、

　『自分の周りにいる異性をモデルにしてみたらどうだろう。それをとっかかりにキャラクターのイメージを膨らませれば、もしかしたら、うまくいくかもしれない』。

という結論に達します。そして、四人の登場人物一人ひとりのイメージ付けを以下のように設定していきます。

　　・登場人物:
　　　- 門倉詩織: 正義感が強く優しい性格の主人公
　　　　　→ 主人公だけは特定の誰かをモデルにするのではなく、自分の理想に近い人物像を当てはめる
　　　- 神凪レイ: 詩織の親友で、生徒会で活躍するクールな少女
　　　　　→ 高校時代に副会長として兄と共に生徒会で活躍していた、柏木麻衣子をモデル

　　　- 白石さくら: おっとりした性格で、屈託のない少女
　　　　　→ 一年前のあの日、こわばった表情を自分に向けた同級生の女子をモデル

　　　- 鳳綾: 強気な性格で周りと群れない女���
　　　　　→ よくも悪くも渉の知っている中で一番目立つ女子をモデル

なるほど。私は小説を書いたことがありませんがこんな風に登場人物を考えていくのはとても面白そうです。『頭を悩ませながら、一人一人の登場人物に生命を吹き込んでいく』という表現が登場しますが、まさしく創造主になったような気分が味わえそうなものでもあります。なるほど、私も小説を書いてみたくなってきました(笑)

さて、そんなこの作品は『中学に行かなくなってから、もうすぐ一年が経つ』という主人公の工藤渉が『Sノベル大賞受賞作・期待の大型新人！』と宣伝文句が記された『ライトノベルの文庫本』に掲載されていた小説を読み、ブログで感想を作者に伝えたことをきっかけに動き出します。『外野が口出しするのは簡単。所詮書く人間にしかわからない』と当該作者から言われたことに反発を覚える渉。そんな渉は上記した「ルール・オブ・ルール」を『モバイルシティ』という『ノベルサイト』に投稿します。最初は注目されなかったもののやがてじわじわと脚光を浴びるようになる「ルール・オブ・ルール」。それだけであれば、なんの問題もなかったところが、内容紹介にある通り、

　“渉の身辺で怪事が続く。脅迫メ ール、不審な電話、そして作中の場面に酷似した殺人未遂事件”

というように次から次へと謎めいたことが起こり、渉の身辺が慌ただしくなっていきます。それだけであればたまたまということもありえます。しかし、それだけではないのがこの作品です。とは言え、ネタバレとなるためこれ以上触れることは避けたいと思いますが、本の帯にはこんな記述がなされていることだけは触れておきたいと思います。

　“引きこもりの14歳・渉が書いた物語をなぞるように起きる、数々の事件。渉を恨む何者かの仕業か、それとも ー”。

そんな物語は間違いなく”ミステリ”の様相を見せていきます。”小説内小説”という設定を巧みに活かしながら大胆に展開していく物語。それだけで一つの物語を読んでいる気分になる内側の物語の面白さにのめり込む一方で、それを包み込む外側の物語の面白さも展開するという二重唱のごとく展開していく物語は少し強引な展開という気もしないではありませんが、それでもキッチリとすべての謎を解き明かしてくれます。そして訪れる物語の結末。そこには、練りに練られた巧みな構成に唸る他ない、彩坂さんの上手さを感じる物語の姿がありました。

　『まさか ー この奇妙な事件には、一年前のあの出来事が関係しているのだろうか？ 自分が引き起こしてしまった、取り返しのつかない夏の日の出来事』

そんな思いの先に、身近に次々と発生する不可解な出来事に対峙していく主人公の渉。この作品には”小説内小説”という構成の下に巧みに織り上げられた”ミステリ”な物語が描かれていました。内側の小説に思わずのめり込んでしまうこの作品。それを巧みに包含していく外側の物語にも惹かれていくこの作品。

“僕は、小説家か、殺人者か”と大きく記された本の帯の言葉に、読後なるほどねと唸らされるとても良くできた作品だと思いました。