ルポ タックスヘイブン 秘密文書が暴く、税逃れのリアル
著者 朝日新聞ICIJ取材班
反響を呼んだ朝日新聞連載「パラダイス文書を歩く」の書籍化。バミューダ諸島、アフリカのブルキナファソなど現場を歩いて浮かび上がったタックスヘイブンの実態、日本の大企業の関わ...
ルポ タックスヘイブン 秘密文書が暴く、税逃れのリアル
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商品説明
反響を呼んだ朝日新聞連載「パラダイス文書を歩く」の書籍化。バミューダ諸島、アフリカのブルキナファソなど現場を歩いて浮かび上がったタックスヘイブンの実態、日本の大企業の関わりを示す新たな取材成果など、さらなる税逃れの闇を描く。池上彰氏が解説。
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読売・産経・日経の新聞記事と比較しながら
2018/05/26 13:14
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投稿者:4,617th - この投稿者のレビュー一覧を見る
テーマが2つ有るので新書とはいえ分厚いです。が、どちらも易しく書かれているのでスラスラ読めます。
タックスヘイブンについては易し過ぎるので、誤解や曲解につながりそうな程です。BEPSの理解が不十分な私は『パラダイス文書』など、もう少し勉強してみる気になりました。アフリカの天然資源から得た利益をアフリカの貧困対策に利用できない一因がタックスヘイブンのように書かれていますが…。
リークの報道について書かれている、とりわけ第4章は読む価値があります。映画『スノーデン』のように、ジャーナリストの誇りが伝わってきます。傲慢や誤報と紙一重かもしれず、結果的に大スクープだったとしてもリアル過ぎて逆恨みされるなど、割りを考えていては務まらない職業。くれぐれも惚れないように。
「どんな経緯で得られた情報であっても、公益にかなう限り報道は適法」という原則が、西側の主要国では認められてきた(p.66)という難しい論点に頭を抱えましたが、パナマ、パラダイスに続く第3のバズーカ砲が今日も発射準備中であることを期待しています。
「お金持ちは努力したから富を築いた」「貧乏人は怠け者」多く日本人はそう思っていないだろうか
2018/05/06 08:25
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年、1月16日オックスファムは格差問題に関する最新の報告書「99%のための経済」を発表。世界で最も豊かな8人が世界の貧しい半分の36億人に匹敵する資産を所有していることを明らかにした。
オックスファムは、さらに告発している。「納めるべき税金はなるべく回避する。支払うべき賃金はなるべく抑える。カネの力で政治を動かし、経済のルールを自分たちの都合のよいように書き換える。こうした方針を取る大企業や大富豪が、格差の拡大を加速させています」「1988年から2011年にかけて、世界人口の最も貧しい1割の人々の収入増は、65ドルにすぎませんでしたが、同時期に、最も豊かな1割の人々の収入増は、11,800ドル、彼らのおおよそ182倍も増加しています」と。
「お金持ちは努力したから富を築いた」「貧乏人は怠け者」多く日本人はそう思っていないだろうか。
本書を読むと、お金持ちがオックスファムの指摘する「納めるべき税金はなるべく回避する」「カネの力で政治を動かし、経済のルールを自分たちの都合のよいように書き換える」ことの事実がよくわかる。
すでにジャーナリストのグローバルなつながりで、パナマ文書でタックスヘイブン(租税回避)の実態が明らかにされているが、本書は、パナマ文書後、タックスヘイブンの地バミューダで開業しているタックスヘイブンを指南する法律事務所「アップルビー」から流失したパラダイス文書からその実態を明らかにしている。こうした一連の調査報道で、トランプ政権とロシアのつながりがクローズアップされ大統領は窮地に立たされたこと、パナマ文書で明らかになったマルタの首相の疑惑を追及していたマルタの女性記者が報道直前に爆殺されたことも記憶に新しい。
本書では「世界中の個人富裕層のうち、ほぼ半分は米国と日本に住んでいる」「お金のあるところには魅力的な提案が舞い込み、さらに資産を増やしていく。ではそのしわ寄せはどこへ行くのか」と問い、発展途上国こそが「税逃れの最大の被害者」とアフリカ・ブルキナファソの鉱山会社とブルキナファソの人々の生活を紹介する。豊かな天然資源を持つアフリカ大陸。しかし、ほとんどの国では国民は貧しい。元国連事務総長のコフィ・アナンは「アフリカは国際支援で受け取る二倍の金額を不正な資金流出によって失っている。いくつかの起業が不道徳な税逃れをするために何百万人ものアフリカ人たちが、必要な栄養、健康、教育のない生活をしていることは受け入れがたい」と述べている。タックスヘイブンは、むしろ貧しい人たちほど「被害者」になっていることがパラダイス文書は明らかにした。
パラダイス文書の流出元アップルビーの顧客は、アメリカがダントツ1位三万件越え。日本は一千件で世界18位。イギリスの本拠を置くNGOの研究者は、「企業の税逃れによって、日本では2013年に468億ドル(5兆円規模)の税収が失われた」と推計し、米国、中国に次ぐ規模だと指摘している。
日本でも、生活保護費の削減、医療・介護・年金など社会保障が高齢化を理由に削減され続けている。大学への助成金が減らされ、学費の高騰は続いている。ちゃんと、とるところから税金を取れば、こんな国民いじめをしなくてもいいのに。本書で紹介されたアフリカの状況が重なる。
富裕層と巨大企業の税逃れの実態
2019/06/16 22:11
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投稿者:MIC - この投稿者のレビュー一覧を見る
朝日新聞の記者チームがNHK、共同通信とともに、「パラダイス文書」を入手した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に加わり、共同でその分析を行い、2017年に一斉にタックスヘイブンに関する報道をするまでの過程と、「パラダイス文書」から分かったタックスヘイブンの実態を叙述したものです。テラ級の文書の山を限られた人数で発掘して分析しているので、その労力には敬意を払いたいです。
NHKもチームに加わっていたことから、すでにNHKで報道された内容と重なる部分が多かったです。ですので、誰が関わっていたか、はそれほど目新しい発見はありませんでした。
本書の興味深い点は、まず、ICIJが情報漏えいを防いぎながら、入手文書を共有、分析し、一斉発表するに至るまでの経緯です。他の著書とは異なり、分析と報道を行った当事者が語っていることなので、当たり前ですがリアルですし、そこまで今の報道機関はやるのか、と驚かされました。報道関係の仕事に就きたいという人は、必読です。
次に、単に誰がタックスヘイブンを利用して儲けているか、というところで話を終わらせず、それがタックスヘイブン所在地自身を含む、世界中でどのように貧富の格差のひずみを生んでいるか、ということを、世界各地での取材によって論じていることです。
タックスヘイブンを利用する手数料を払って税金逃れができるのは、一部の富裕層と企業のみです。そもそもタックスヘイブンがあるから即問題なのではなくて、グローバルに活躍する法律専門家が、世界各国の法体系の違いを突いて、巧みに複雑なシステム(合法!)を構築して富裕層を税金逃れに導くことで儲けていることにより、タックスヘイブンが問題になるのです。
そのため、そんな法律専門家集団に莫大なお金を払えない庶民は税金から逃れられません。そのため、富裕層が税金を払わず、庶民が税金を負担するという、庶民だけでなく国家自体を没落させていくシステムが世界中で構築されています。
貧富の格差が広がり混沌とする現代社会において、このような富裕層を守る、目に見えない合法システムが形成されており、その影響は実は相当に広汎に及んでいることを、再確認させてくれる書でした。