紙の本
あえて中枢
2019/04/12 10:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
被差別部落出身の政治家が相反する利害関係者間の調停役を務めながら、自分自身も差別を乗り越えるための自助努力をした経緯。自公連立の裏側や小泉政権誕生秘話も実の興味深い話だ。
投稿元:
レビューを見る
普段ノンフィクションなんか読みつけない人間をぐいぐいひきつけるこの文章力はピカイチ。
類稀なる力作だ。
投稿元:
レビューを見る
このルポの凄いところは、「抵抗勢力」「闇将軍」「影の首相」と呼ばれた野中広務を丸裸にしている点だ。あんな強面の政治家がまさか部落出身者であるとは。田中角栄をミニ版にした感じの、政治の舵取りがとてもよく理解できた。両者に共通するのは、金作りのうまさ・多数派工作の巧みさ、そして意外ことに、と言うよりも、両者の出自から当然のことだが、弱者に対する優しさがある。この作品の中でハンセン病患者たちの厚い信頼が紹介されているが、小泉政権がやったかのように思えた政府の方向転換も、野中氏の仕事を小泉が美味しい処取りしただけだった。よく考えたら、小泉や安倍のように出自の良い二世・三世首相はもともと権力側なので,何でも思い通りが当然の政治家たちなのである。苦労が無い分、優しさも無いということか。ただ如何せん野中氏は田中角栄と違い、政治の方向性・理想型・ビジョンが無かったのが悔やまれる。
(日頃は威勢が良いことばかり言うが)麻生太郎のような出自の良い政治家には、偽物のニオイがぷんぷんする。口先だけの「国民」「政治」「国家」。この本は野中広務という土着な、いかにも日本を体現する一人の政治家を追いかけるとともに、政治のありよう、国家の品格、真に国民中心の政治のまだまだ遠いことを知らせる一冊である。文庫版には元外務官僚の佐藤優氏と筆者の対談が収録されていてお奨めである。
投稿元:
レビューを見る
ホントはハードカバーの方を読んだんだけど、文庫の方が買いやすいのでこっちの方をご紹介。つか、最近読み終わったのにブックオフで100円コーナにあったときはガックリきた。
それはそうと、野中広務という政治家はいきなり出てきた感があったんだが、政治の世界に足を突っ込むきっかけから、最後の転落まで丁寧に網羅してあっておもしろかった。
でもやっぱり野中広務という政治家には国をどのような方向に向かわせようという気概なんかなく、功名心と自分の出自である部落への差別と如何に戦うかしかなかったんだなあと。この人はナンバー2の人というか調整の人なんだなぁと、改めて実感。そういう意味では小選挙区政治の白黒はっきり付ける時代には向いておらず、様々な色が混在する中選挙区時代の政治家なんだね。
でもここまで人のインセンティブに敏感な政治家がいないのも確かで、その意味では今の自民党の政治家はは小粒になったなと憂えざるを得ない。
ということで今の時代でもいろいろ考えさせてくれるという意味ではこの人の政治家人生を学ぶのは政治学徒としては非常に有益だと思うよ。
投稿元:
レビューを見る
野中広務が現役でブイブイ言わせてた頃の、濃い政治家メンツが出てきて、あの頃を知る人間にはかなり面白いのだろうが、当時まだ子供だった自分にはうっすらとしかイメージがなく退屈だった。被差別体験も本人の口から語られるものはほとんど無いので、それを期待して読むと肩透かしの印象。
パワーゲームの描写が多く、読んでいてだんだん「政治って何なんだろう」と嫌な気分になってしまった。
投稿元:
レビューを見る
部落出身者なのに権力に食い込んだとうことぐらいしか知らなかったから、どんな人だったのかと思い読書。
かなりのボリュームだったから途中で終了。
部落を黙らせることができる政治家として、部落出身だった野中広務は頭角を現してきた。
地方の主要産業は公共工事だと言われるが、企業献金の額と票の量によって公共事業を割り振るというあからさまな構図があり、それを当然としていた時代があったとうこと。
政治的能力とは、結局は金の流れを作ることなんだと実感したしだい。
そのやり方は泥臭くスマートじゃないけど、その根っこに勉強家で努力家という素質があったのだなと感心。
被差別階級に対する親身な暖かいまなざしは、被差別部落出身であるという出生を利用し成り上がってきた野中からすれば、至極当然の姿なのかもしれない。
権力の仕組みって普遍的なものなんだと勉強になりました。
投稿元:
レビューを見る
2010.1.25読了。
筆者の愛情のある視点に、思わず感情移入。
昨今の裕福な家庭に育ったエリート2世総理大臣と比べると、地方出身で弱者の目で社会を見ることのできる政治家は本当に少なく、野中氏は実務的であったので本当に貴重であったと思う。惜しむらくは大きな絵を描けなかったことか。
投稿元:
レビューを見る
一般社会の裏側に存在する権力社会と被差別社会
被差別社会の苛烈な環境で育ったことで身につけた裏側社会での生き方は、
同じく裏側社会である権力社会で生き抜く術となり、
野中を権力の中枢へと導いた、のかな
生々しい政治の世界が垣間見られる良書
ただし、権力者に認められるクダリがことごとく浅く、さらに裏側があるのではと思ってしまう
投稿元:
レビューを見る
自民党の代議士、野中広務の評伝。存命の人物に関する伝記を読むことはあまりないのですが、何かで紹介されていて興味を持ったので読んでみました。
タイトルにある「差別」とはいわゆる部落差別のことで、氏が部落出身であるが故に受けた多くの辛く悔しい体験がその政治活動の原動力になっていたことを示している。数えきれないほどの修羅場をくぐった、まさに叩き上げの政治家だと言えるだろう。
しかし、読んでいて感じたのは(恐らく筆者の意図もそこにあるのだろうが)、彼のルーツと政治手法は別の問題だという点だ。彼が使った手法は要するに土建政治であり、金と酒と女で人を抱き込み、ライバルのスキャンダルを探しだして追い落とすといった権謀術数が描かれている。人間的には魅力的だったかも知れないが、政治面で共感できることはほぼ皆無だ。
彼が政界を引退することになった出来事は、そういう旧来の政治手法が通用しなくなったことを意味していると解釈できるだろう。もし実際にそういう時代変化があったなら歓迎すべきことだが、本当に変化があったかどうか、まだわからない。
投稿元:
レビューを見る
知らない世界を知りたくて読了。権力闘争の果てにある政治の世界を垣間見た。部落差別に対する考え方や、逆差別、非干渉など非常に難しい問題だと改めて思った。政治家としての野中広務はやはり妖怪。
投稿元:
レビューを見る
元共同通信社記者である著者による、講談社ノンフィクション賞受賞作。
被差別部落出身でありながら、様々な苦難にぶつかりながらも自民党の幹事長まで務めた野中広務という政治家について、その軌跡を赤裸々に綴ったノンフィクション作品。
野中自身も、この著書の出版にはかなり嫌な思いを持っていたようである。
野中広務といえば、ありとあらゆる権謀術数を駆使して権力を握ってきた印象が強いが、その出自のためか、反面弱者に対する慈しみの思いも強く持っていることがわかる。
部落問題という、腫れ物に触るようにして扱われてきた非常にデリケートなテーマ(私はそうは思っていないが)ではあるが、ジャーナリストとして中立的な観点から書かれており、ノンフィクションとして非常に秀逸である。
投稿元:
レビューを見る
2010.09.28 (81) 「差別と日本人」読了後、会社の帰りに下高井戸の啓文堂で購入。買って少し読んで読むのを中断して結構経ったが、再開してからは一気読み。別段差別については大きく語られておらず野中氏の評伝。面白いが田中角栄のようなスケールはなし。今の日本に政治家はいない。
投稿元:
レビューを見る
イマドキ、野中さんですか?という感じだけれど
これがどうして、とても面白い。野中さん自体は過去の人でもあるが、
今、議会で跳梁跋扈している人の名前も多数。
(特に小沢一郎の動きは中盤の見どころですね)
(あと、小渕が想像以上にかわゆい)
今読んでも、日本議会の流れ、についていくらかの視野を与えてくれる。
時局上の問題だけでなく、
この本はあるタイプの政治家についての示唆も行っており、
野中のような媒介タイプの政治家の威力と限界を検証しているものとなっている。
(とはいえ、そのような道筋でしか、彼は出自の問題故に政治家たりえなかっただろう)
総じて、ネタとして面白く、かつ時期を過ぎても
政治についての思考材料として十分耐用に足るものだと言える。
ただ、正直に言えば最後の対談で
「野中がこの本を不快に思いつつ、訴えれば勝てるだろうに訴えないことが、この本の内容を保証し、彼が一流であることを証だてる」
という内容のことを言っているがこの内容は文章にして書くのは厭らしすぎる。
この佐藤という男はおそらく魚住君より下品である。
そして、最後に佐高君という先輩的な人物が
解説という名前の要約を書いているが、しがらみというしがらみは
議院などとは関係なく、社会のすみずみにあるということを証明している。
投稿元:
レビューを見る
被差別部落で生まれてから、市議、県議、副知事、国会議員と成り上がり「影の総理」と言われるまでの野中広務の半生。
投稿元:
レビューを見る
10年前に買ったのを、今になって読む気になりました。野中さん、すごい人だった。
大物政治家がバンバン出てきて政治史を知る上でも面白いし、被差別部落史としても興味深いし、野中さんかっけー。田中角栄なんて「悪の権化」みたいな印象持たされてたけど、地元の人や民衆にとってはありがたい政策をやってきた人なんだね。金のある時代だからできた政治手腕だろうとは思うけど。
あとがきに「彼の引退は(中略)平和と繁栄を志向してきた戦後の終焉を象徴する出来事だった。新たな時代には平等と平和の四文字はない。」とあり、文庫が出て10年後の今、確かにそんな世の中になっていてゾッとする。