読割 50
電子書籍
P+D BOOKS 長い道・同級会
著者 柏原兵三
「少年時代」の原点となった疎開文学の傑作。太平洋戦争末期、東京から富山の漁村に疎開した小学5年生の杉村潔。その潔に対して屈折した感情をいだく地元の少年、竹下進。進は潔に表...
P+D BOOKS 長い道・同級会
05/02まで通常990円
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長い道・同級会 (P+D BOOKS)
商品説明
「少年時代」の原点となった疎開文学の傑作。
太平洋戦争末期、東京から富山の漁村に疎開した小学5年生の杉村潔。その潔に対して屈折した感情をいだく地元の少年、竹下進。進は潔に表面上は友好的に接しながらも、裏で陰湿な悪事を繰り返し、潔はそれに戸惑う。
都会からの疎開児への地元っ子の愛憎を中心に、戦争の影にゆれる海辺の村で繰り広げられる人間模様を描いた自伝的作品。
のちに「少年時代」として漫画化、映画化もされた。特別に映画「少年時代」の脚本を手掛けた山田太一氏の解説(1989年執筆)も併録。
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紙の本
時の移ろいによる「現実の非情さ」を実感する後日譚
2021/11/29 10:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔読んだ本が無性に読みたくなることがある。でも手許に見つからず、押入れの奥にある引越し荷物の一番下かと思うのだが、未整理の箱を開梱して探し出すのが億劫で大抵は諦めてしまう。
作家柏原兵三の『長い道』を読み返したい私は、最近(齢を取ると三年前でもこんな感覚になる)、小学館から刊行された単行本の本書を見つけた。
嬉しいのは、疎開の地、父方の故郷富山の漁村に帰省中の柏原が、芥川賞の受賞祝賀会を兼ねた祝宴での一コマを記す、『同級会』という『長い道』の続編ならぬ「後日譚」が併録されていることだ。
東京から戦火を避けて村に疎開した都会っ子だった柏原は、一種の異邦人そのままに、今度は東京で名を挙げた作家として地元の元田舎っ子たちに迎えられる。
縁故疎開が終戦により突然終わりを告げてから二十数年ぶりに元悪童たちと再会するとなれば、お互いすっかり容貌体型も変わり、仕事や家族を持つ大人となっているから、少年の頃のような化学反応(摩擦)は起こるまい。
この作品では「梶潔」と名のる作者柏原は、かつて通った小学校での「同級会」で、出席者の名前と仇名を次々に答えて皆を驚かせる。
もっとも、私が驚いたのは、「ボスで級長だった永井福雄」(『長い道』では竹下進)が「昭和三十一年の夏」に「(大学を)翌年の春卒業し、日銀に就職が内定していたというのに」「日本脳炎にかかって死んでいた」衝撃の事実が披露されるくだりだ。
判っていたことだが、少年はいつまでも少年のままではいられない。戦時下で奇跡的に平和で長閑に描かれた田舎の風景も、二度と戻らない。
こうして『長い道』の読者は、『同級会』で時の移ろいによる「現実の非情さ」を実感し、作者の急逝で『長い道』続編の「成長物語」を手にする望みが完全に潰えたことを、残酷に知るのだ。