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呪(しゅ)の血脈
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一般書

電子書籍

呪(しゅ)の血脈

著者 加門 七海

好奇心が猫を殺す……この事件もちょっとした好奇心がきっかけだったのかも知れない。大学で民俗学を学ぶ宮地紀之は、諏訪信仰の野外調査のさなか、北アルプス山中で鎌が幹に打ち込ま...

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呪(しゅ)の血脈

486 (税込)

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商品説明

好奇心が猫を殺す……この事件もちょっとした好奇心がきっかけだったのかも知れない。大学で民俗学を学ぶ宮地紀之は、諏訪信仰の野外調査のさなか、北アルプス山中で鎌が幹に打ち込まれた奇妙な神木を発見する。いけないことと知りながら、学問的興味からその鎌を木から削り出してしまう宮地。だがその行為を村人に発見されて、彼は神木に神を再び封印するための“祭”に参加させられることになってしまう。とりあえず儀式が執り行われるまでの間に、祭について調べて回った宮地は、件の村の神主の血筋をもつ高藤正哉とその妹の梓の存在を知り、連絡を取る。が、それが忌まわしき“裏”の祭りを引き起こしてしまう“出会い”になることを彼はまだ知らなかった…。
 神封じ、土着信仰など、民俗学をテーマにした迫真のネオ・モダンホラー。

●加門七海(かもん・ななみ)
東京都生まれ。オカルト・風水・民俗学などに造詣が深く、怪談、エッセイ、フィールドワーク作品などを著す。最新刊は『お咒い日和 その解説と実際』(KADOKAWA)。小説に『目嚢』『祝山』『鳥辺野にて』など、エッセイ『猫怪々』『霊能動物館』『墨東地霊散歩』など多数。

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評価内訳

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電子書籍

すべての意味を解いた時につながるモノ

2019/01/02 14:17

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る

早くに父を亡くし、母と妹が暮らす小さな家庭を支える高藤正哉。
このところ正哉は凄惨な事故死の現場を目撃してばかりだ。繁華街ではギャングじみた少年達が「缶蹴り」と称し、周囲を無差別に巻き込む遊びに興じ、物騒きわまりない。
生来の口べたに、自覚するほどのぶっきらぼうさで、仕事にも社会にもなじめない正哉。帰るべき家庭もとうに行き詰まっていた。

そして大学で民俗学を学ぶ宮地紀之。大学や学会”政治”に身を置けない彼は自説を確立して名を挙げるべく、諏訪信仰のフィールドワークに熱を上げていた。しかし鎌木村で犯した禁忌により、住民に「祭り」の催行を余儀なくしてしまう。村で出会った少女がささやく「なにがあっても知らないから」。

まだインターネットが世間に普及し始めた時勢、だが冒頭から往時のランドマークが登場し、力点も別のところにある。その甲斐もあり十数年が過ぎた現在でも違和感なく読める。
コンピュータがまだまだマニアやオタクのおもちゃだった時代、心霊や怪異とネットとの相性が抜群である事を見抜いていた作家は少ない。ネットの向こうにもいるのも人であり、知能こそ人には及ばないが亡霊じみたスクリプト群は数多い。慧眼である。

そのネット上に忽然と姿を現した『天音』(あまね)、占い師か新興宗教か。妹の梓に降ってわいた「お言葉」。
『天音』の正体を調べるうち、宮地は高藤が鎌木村の神官の家系と偶然に知り高藤家を訪ねる。
PCのモニターを通じて梓のもとに顕れた『お言葉』。梓は事実の断片とお言葉を持つと、なにか悟ったように行方をくらましてしまう。正哉と宮地は梓を捜索し祭りを完遂させるため急きょ長野へと旅立つ。

中長編では珍しく、めったに感情も出さず、黙りこくってなにを考えているか分からない、時折車内で紫煙をくゆらすだけの主人公。
考えがないわけではない、がさつだが乱暴をするわけでもない。殺伐としていて読んでいても息が詰まるが、この演出は文章でしかなしえない。

本書で特記したいのは「裏の祭り」「表の祭り」と奇怪さを前面に出しつつ、名前や音に隠された意図を読者から巧妙に隠している点だ。
土着信仰や神事がもつ真の意味、ある意味で駄洒落、掛詞や縁語の類だが、それを解いていくと多くの忌み事や荒ぶる神の正体が露わになる。
なぜ我々が今でも忌み詞を避けるのか。なぜ同じモノにいくつもの名前を冠するのか、その理由と具体的な手法を作中で見事にまとめている。作者の本領発揮である。

畳みかけるような展開で、立ち止まることも逡巡することも許されず、次々に選択と決断を迫られる正哉、どうにか追いすがろうとする宮地。
綿密な知識で構成され、その断片同士をわずかにずらす事で読者に違和感を与え新たな謎へ引き込んでいく。
新しい神、その一柱を立てようと画策する新興企業、正哉が持つもの、早世した父を惑わした正体、祭りの本懐、終盤の惨劇でそれらは「一本の柱」としてつながる…。

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