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  • 販売開始日: 2018/06/08
  • 出版社: 新潮社
  • レーベル: 新潮選書
  • ISBN:978-4-10-603820-4
一般書

未完の西郷隆盛―日本人はなぜ論じ続けるのか―(新潮選書)

著者 先崎彰容

アジアか西洋か。道徳か経済か。天皇か革命か――日本人はいつも自らの理想とする「国のかたち」を西郷に投影し、「第二の維新」による「もう一つの日本」の実現を求めてきた。福澤諭...

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未完の西郷隆盛―日本人はなぜ論じ続けるのか―(新潮選書)

税込 1,144 10pt

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商品説明

アジアか西洋か。道徳か経済か。天皇か革命か――日本人はいつも自らの理想とする「国のかたち」を西郷に投影し、「第二の維新」による「もう一つの日本」の実現を求めてきた。福澤諭吉から中江兆民、頭山満、丸山眞男、橋川文三、三島由紀夫、江藤淳、司馬遼太郎まで、近代化の是非を問い続けてきた思想家たちの一五〇年。

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みんなのレビュー3件

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評価内訳

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近代のもつ毒への処方せん

2018/10/12 22:58

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:せきた - この投稿者のレビュー一覧を見る

19世紀、欧米から日本に押し寄せた侵略を伴う「近代」という波。
 近代は個人の欲望の解放、秩序の破壊という毒を含みもつ。日本がこの毒杯をあおる時、服毒死(植民地化、属国化)、発狂(自己喪失)することなく生き残るにはどんな血清を打たなければならないのか。西郷はこの問いを考え抜き、行動した。
 本書は、現代まで続く福沢諭吉、橋川文三らの論者による近代への批判・相対化の思考過程で道しるべとなってきた西郷の思想と行動を考察するもの。
 個人の幸福追求と利害調整、自己と他者、日本をして日本たらしめているもの、ヤポネシア論、文明の普遍性、生と死の論理等々、西郷はどの観点から照らしても乱反射するプリズムのような魅力を帯びている。
 明治維新150年の節目に、近代との間のとり方を考えさせられる書。

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西郷の最後と、その評価について考える。

2018/06/25 15:46

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:気まぐれネット購入者 - この投稿者のレビュー一覧を見る

西郷が最後に求めたものは一体なんだったのであろうか。維新後の国家を考えるが故に、士族という比較的に公徳がある人材をいかに活用したかったのであろうか。
西南の役に勝利して専制政治を実現しようなどという発想は無かったはずだ。
では、なぜ西郷があのような晩年を辿ったのか。本書は、その評価について考えさせられる書籍である。未完とタイトルにあるとおり決定的な結論を明示せず、ある意味その評価を読者に委ねているのだろう。
しかし、読み解くには難しい内容であると思った。前提になる知識などが揃っていないと読み込めないのだ。
ほかにも情報を得て、いま一度、読み込んでみたいと思う良い書籍であるという意味でお薦めしたい一冊です。

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西郷隆盛を理解するための試行錯誤

2018/01/20 10:24

2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る

タイトルに「未完」とあるように、本書は著者が西郷隆盛を理解するための試行錯誤、中間報告である。このことは、「あとがき」に著者自身が記している。本年(平成30年)は明治維新150年、NHKの大河ドラマが「西郷どん」ということから、出版社の商業ベースに追いまくられたという印象が強い一書だった。終章まで含むと全6章からなる。情報革命、ルソー、アジア、天皇、戦争、そして未完という章立てになっている。
 読了後、ハーバート・ノーマンの思考法に類似していると思った。ハーバート・ノーマンとは、カナダ人外交官、日本通としてGHQに招聘された思想史家。『日本における近代国家の成立』は丸山正男ら、戦後思想界の知識人に高く評価され、いまだ、この影響力は日本に色濃く残っている。ハーバート・ノーマンは大きな枠組みを構成し、そこに適合する史実を張り付けていく手法をとった。いわば、勝者であるGHQにとって都合のよい歴史観を日本に植え付けた。近年、評論家の江崎道朗氏の研究により、コミンテルン・スパイであることが露呈している。
 西郷さんと言えば、「征韓論」。西郷さんを信奉するアジア主義者は「侵略者」という単純な図式になっているのが現代である。しかし、アジア主義者はアジアの解放を推進しており、真逆にあるはずだが、いまだ是正されないことに、現代日本の思想界の不幸となっている。これはアジア主義の代表格である玄洋社を「テロリズム」でひとくくりにするのと同じ。欧米の植民地を解放したことは「テロリズム」だったのかと疑問を呈したい。根本は、「征韓論」の本来の原因が解明されずに、朝鮮併合を永遠に糾弾する材料として、「征韓論」の背後にある事由を解き明かす作業を止めてはいまいか。
 少し気になったのは、夏目漱石のこと。夏目漱石は二松学舎に学び、東京帝国大学予備門長の杉浦重剛を生涯の師とした。杉浦は上海の東亜同文書院の第二代院長も務めたアジア主義者である。同時に陽明学の中江藤樹を超えて見せると豪語した物理学者。イギリス留学経験もある。岩波書店創業者の岩波茂雄を支援した人としても著名。頭山満とは盟友関係にある。漱石自身も後藤新平の右腕といわれた中村是公とは東京帝大からの親友。漱石は西洋かぶれでもなんでもなく、非常な愛国者でありアジア主義者であると思うのだが。
 本書を読み進みながら、やはり、西郷隆盛という人物を理解するには、まだまだ相当な年月が必要と思った。さほど、幕末から明治にかけての人々、例えば梅田雲浜などの理解が現代日本で進んでいないと痛感した次第。

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