紙の本
力量の素晴らしさ
2020/11/21 21:04
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投稿者:るい - この投稿者のレビュー一覧を見る
川越宗一さんの講演を聞く前に読もうと初めて、手を伸ばしました。
諸般の事情で講演に行くことが叶わず、残念でしたが、本を手にしたことができた事だけでも良かったです。
薩摩藩 久高、朝鮮国 明鐘、琉球国 真下、
立場も身分も違う3人のそれぞれの出会いと3人の出会いが、上手く描かれていて、自然で、力量の素晴らしさを感じました。
不自然に感じたのは、薩摩藩の時代を描きながら、鹿児島の表記があったこと。講演会に行っていたら、鹿児島と表記された意図を質問したかったです。再度、読み、他の作品も読みたいと思います。
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面白い。この絶対的に楽しくない時代の、楽しくない戦の、楽しくない身分の物語をこんなにも面白く描くなんて、すごい。
礼記も論語も儒教も知らない私だけど、何も知らないからこそ分からないまま素直に読めたのかも。
時代が変わろうと、国が変わろうと、立場が変わろうと、人として生きていく上で一番大切なもの、守らなければならないもの、は最後まで変わらないのかもしれない。
天地の間で参となることができなくても燦たりえる人生を求めて生きていくこと、他者を敬い、自分にとっての「礼」を信じて生きていくこと、それはたとえ分かり合えなくても受け入れるという、今の時代にも必要な「道」を示してくれているのだろう。
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正直まったく期待せず、読みたい本と本の谷間に読んだのだけど、これがまあ思いもがけない、良作というか、傑作というか快作で、どんどん先が読みたくなって困ったほどだ。薩摩、朝鮮、琉球で生まれた三者が、絡み合いながらそれぞれの生を進む。その描写の生き生きとした表現もさることながら、軽い冗談めかしたような台詞が自然で、それがまた作品の真実味、物語を彩っているように思う。作家の川越宗一氏の他の作品を読みたいと思ったら、どうもこの作品が世に出ている最初の作品らしい(恐らく)。あぁ、早く次回作が読みたいけど、たぶんこの方の書き方、内容で一冊書くのは恐ろしい労力だろう。気長に次回作を待ちたい作家さんだ。
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朝鮮出兵、琉球侵攻が、薩摩、朝鮮、琉球の人物達の視点から描かれる。それぞれの人物達が絡み合い、最後は一点に集約されていく。読んでいて、とてもワクワクした。
そもそも沖縄や琉球を描いた歴史小説は、今まで読んだことが無かった。
「礼を守り」生きていこう、と思わせてくれた一冊。
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誰の生き様に一番熱くなった?!
そう問われれば、断然、明鐘!
最底辺の身分から学問を修めて国を理不尽を変えようと立ち上がった最中の戦禍を経た彼が勝ち取った答え。
「生きろ」と。
「自分の来し方、行く末を自分が生きるため」にまっすぐ立ち上がる姿ったら!
クライマックスの「俺は洪明鐘。俺を囲む全てに由って生まれ、全てと共に生きてゆく者だ」は鳥肌モノ!!
高らかに生きている、生きていくと宣言する明鐘のまっすぐ力強いまなざしがページを突き破って届くよう!!
題名にある『天地に燦たり』をかみしめるラストは万感!
生まれた国も文化も言葉も立場も全く異なる3人の男がさいごのさいごで言葉を交わす姿を見送って浮かんだのは「ふ~…余は満足じゃ」。
いやはやもって松本清張賞侮りがたし!
良きものを読みました。
読みごたえと上品さを兼ね備えた作家・川越宗一デビュー作。
次作も要チェック。
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読み応えあり。
島津の一武将から見た関白の九州征伐。
被差別民から見た関白の唐入り。
一官史から見た島津の琉球征伐。
それぞれ視点を交えながらアジアの侵略の嵐を書き連ねる。各章のメインは一人だが三人とも通しで出ていて、人が変われば見る景色も変わる。
描写がコロッと変わるのが面白い。
最後は各章の主人公が首里城の扁額の下に勢ぞろい。「天地に燦たり。」
主題が一際大きく見える。
物語の切り口が凄く鮮やかだ。次作も期待。
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ちょっと読み辛いところがあるが、最後まで一気に読んだ。島津と朝鮮と琉球を絡めた、三様の立場を越えた生きざまが描かれ、礼こそこの結論であると示唆してる。読んで現代は、いかに礼を忘れているかと気づかされた。
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朝鮮出兵前後の薩摩朝鮮琉球という動乱まっただ中の舞台で、人間たろうとする男たちにアツい気持ちになりました。舞台がダイナミックに動くからこそ、その中で登場人物たちが追い求める"礼"がどういったものかが浮かび上がってきます。
また物語のベースとなっている、沖縄や朝鮮、薩摩の文化、そして儒教についても詳しく知りたいと感じました。そういう意味で世界の広がる一冊です。
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秀吉の朝鮮出兵を主な舞台として、三人の男の生きざまを追い、描く。一人は殺戮やまぬ世を厭いながら、その道を進まざるを得ない人生に苦悩を覚える薩摩の武士。一人は卑しく貧しい身分の出でありながら、学問を志し聖人となるを目指す朝鮮の若者。一人は大切に思う自分の国のために、ひょうひょうと各国を渡り歩く琉球の密偵。三者の人生が少しずつ絡まりつつ、ラストに向かって収斂されていく。舞台の転換が頻繁ともいえるので、読み進めるのに多少のつまづきは正直あった。でも、それを補って余りある構成力、なかなかの1冊だ。
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朝鮮出兵を経て島津の琉球出兵まで,島津藩,朝鮮,琉球側のそれぞれの立場から一人を出して「王」とは何かを求めさせている.単なる戦記物ではなく「礼」がキーワードで,人たるもののあり方を戦いの中で見つめるといった趣向.朝鮮戦争の折に病を得て亡くなった島津家の跡取り久保が好きだった.本当に残念.
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第25回 松本清張賞
秀吉の朝鮮出兵にそれぞれの立場で関わり、翻弄される
島津の士 大野久高
島津や倭に飲み込まれそうな琉球国の密偵 真市
人としては扱われず 下賤の者 白丁として迫害を受けながらも 儒学を学び 自分で道を切り開いていく 朝鮮国 洪明鍾
自分の信じる「王」を探し、儒教思想を根底に「礼」とは何か、「人とは」・・・
戦乱のアジアで生き抜いていく主人公たち
戦国時代の戦ものなのだが・・・・難しかった。
とくに
日本の武士独特の似たような名前のオンパレード、そして
訳の分からない 武士階級の職名
琉球と韓国での場面は感情移入しやすかったのだが・・・・
島津側になると とんと頭に入らなかった。
私みたいなエセではなく、歴女・時代小説好きにはお勧めでしょう。
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歴史小説ってそのまま史実なぞるだけじゃ面白くないよね
エンターテイメントじゃないと
本当かぁ?って思ってもそれはご愛敬(^^)
辛いところが多くて名前もややこしくて難解なところもあるけど
キャラが立ってきて物語が始まれば入っていけます
自分が歴史小説読めるなんて(笑)
もともと池上永一「テンペスト」好きならっていうオススメ本だったんです
和々さんに感謝
分かり合えないことがあっても心を寄せ合えば大丈夫だと思います
自分と違った考えであっても、理解すること
現代こそ、いろんな生き方の人がいる…心にとめておきたいです
それから、誠実であることも
組踊みてきてよかった
音的に琉歌のイメージがわくし
~おみなりが手巾(てさじ)とかね
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島津の武将、白丁から出世した朝鮮の官吏、琉球の密偵、相入れない価値観を持つ三人が最後に交わっていく過程が読み応えあった。三人が苛烈な人生を送る中で答えを見つけていき、それが首里で交わるラストが印象的だった。
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豊臣から徳川の時代にかけて、薩摩、朝鮮、琉球に生まれた三人の男たちが出会い、それぞれの生きる道を見いだしていく。
戦い続けることに意義を見いだせない島津の武将と、被差別民出身でありながら実力でのし上がり儒学者となる男、弱い立場の琉球国を愛し島津や朝鮮を行き来する密偵、この三者三様の悩みを抱えた主人公たちの設定がうまい。
先に読んでしまった『熱源』に比べると、デビュー作ということもあり堅く説明口調の文章は読みにくいが、彼らの人間味が表に立つ部分は、俄然ストーリーが生きてくる。
沖縄には守礼の門があるが、今までは単なる観光名所のひとつとしか捕らえていなかった。が、この作品で「守礼之邦」という言葉に触れ、そこに込められた礼を守ることの重みを痛感した。
『熱源』も、やはり少数民族であるアイヌを取り上げている。誰もが知っているような歴史の派手な部分よりも、その陰で悩む一個人を取り上げた人間ドラマのほうが興味深い。
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『熱源』に劣らぬ熱さ!
『熱源』と同じく実在の歴史に根差した物語だが、よりフィクション性が高く、著者の想いがストレートに込められている気がする。知らんけど。
創作人物の鍾明や真市のセリフが妙に現代的だったり、笑いを誘う仕掛けがあったりするところも面白い。