大都市問題を考える
2015/10/13 08:55
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「大阪都問題」を考えるときに、一つは、政党をどう考えるか:自治体の領域に拘束されない政党という権力核による一元化の観点--このとき問題になるのが、都市と農村という社会的亀裂にそった再編ができるのか、ということ。もう一つは、都市というものをどう考えるか:集権的に都市をつくったとして、これが本当に収益を生み出させるのか。こうしたことを導きの糸にしながら、都市と国家の問題を考えるきっかけとなる本である。
大都市における対立軸
2015/10/13 08:45
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
個別的利益と集合的利益の対立、首都と大都市の対立、大都市と地方の対立という3つの対立軸を、近代日本の歴史を通して、大阪を舞台にして見ていく、ということが、現在の政治状況を読み解く参考になる。都市問題を解決しようとする専門官僚制の論理と納税者の論理の問題、選挙制度の問題など、単に大阪だけの問題ではない。
大阪都構想を歴史的に考える
2016/11/30 07:29
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投稿者:dzoe - この投稿者のレビュー一覧を見る
話題となった「大阪都構想」を、現在の視点からだけではなく、歴史的な視点から考察していった本です。歴代の府知事・市長選や、それぞれの主張をもとに「大阪都構想」をとらえていっています。
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良書。巻末の参考文献、注記を見るだけで、筆者が本書の執筆のために過去の大都市研究の膨大な蓄積を踏まえて、大都市の歴史を整理、今後の大都市のあり方を書いたことが伝わってくる。大都市について論じる人は必ず読むべき書。
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連綿と続く、国家と大都市(大阪)の抗争を、近代から現代に至る歴史の中にプロットし、大都市の抱える問題と打開への道程をレクチャーしてくれます。
いわゆる「大阪都構想」なるものが、歴史の中でいく度となく、浮かんでは消えてきたことを知りました。また、このような構想が出てくる必然性もよくわかりました。頭が整理できた感じです。
明晰な人が語ると、錯綜する物事も見通しが良くなり、理解しやすくなるというお手本ですね。論者の若さに驚きました。更に研鑽を積まれ、ご活躍されるよう期待します。(^-^)/
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大阪を事例として、大都市制度の変遷についてまとめられている。
筆者によると、大阪都構想などの大都市制度改革は、二つの論理を内包しているとする。一つは、都市経営の観点からすると、二重行政の撤廃などの効率化を目指し、国際競争力を高めるというものである。いまひとつは、住民に密着した行政サービスを遂行するというものである。このように、部分と全体に関する二つの論理が内包されているため、二つの論理が、衝突してしまうケースもありうる。そのために、いかにして二つの論理のバランスをとるかがポイントになる、と筆者は論じている。
大都市制度の在り方は、地味なテーマではある。しかしながら、近年、大都市制度は各都市で提案されており、政治の世界において、ホットなテーマであると言えよう。本書は大阪を事例にしているが、他の都市でも大都市制度の在り方をめぐる議論は多く存在しており、大阪のみならず、大都市制度に興味がある方は、本書を読むことを勧める。
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国内第二の都市であり、最大の地方都市である大阪が
その制度上持つ矛盾とそこから生じる問題、
そしてそれに対する解決案を
橋下市長の大阪都構想をもとに解説する一冊。
歴史を振り返りつつ体型的に説明されるため
内容を細かく理解できずとも方向性はわかりやすい。
大阪都構想をよりよく理解するのに適していると感じる。
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廃藩置県以降の大阪市の行政の歴史。
橋下徹の主張する「大阪(日本)維新の会」が唱える、「大阪都構想」まで。
もうかなり以前にも府市一体化の話があったことなどは、新たな知識を得ることができたが、本書の内容が、ただただ行政史中心の内容が多かったことが残念。
期待しすぎていたのかも。
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「大阪都構想」が注目される「大阪」を題材に、近代以降の大都市行政の歴史を丁寧にたどりながら、日本における大都市の問題を論じている。
大都市をめぐっては、戦前から現代に通じる3つの対立軸―市長VS地方議会、東京VSその他の大都市、大都市VS全国(あるいは農村)―があるとし、それにそって分析を進めている。また、大都市行政に普遍的なものとして「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」というトレードオフの関係をもつ2つの論理の存在を指摘し、「大阪都構想」にもその2つの論理が内在していると指摘する。そして、それらをいかにバランスさせるかが重要であると主張している。
本書は、大阪の都市行政(市政・府政)の歴史、そして、それを通じての日本の都市行政の歴史が非常によくまとまっていると感じた。また、大阪都構想を橋下徹氏の個人的なパーソナリティと結びつけるのではなく、政策として客観的に分析しようとしているのにも好感が持てた。
個人的には、大都市は、日本経済、また地域経済を牽引する重要な役割をもった存在だと考えており、一元的なリーダーシップによって企業体としての都市全体の利益を見据えた経営を目指す「都市官僚制の論理」がより強化されるべきだと思う。その点で、大阪都構想というのは都市としての力を強化するための一つの解答になりうるのではないかと感じた。著者は、「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」のトレードオフ性を強調するが、私は、2つの論理は都と特別区等との役割分担により両立可能なのではないかと思う。
「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」をどのような手続きでバランスさせるか、という点についての、著者の提案である「都市における政党政治の創出」については、興味深くはあるが、地方自治に一律に国政のような政党政治を持ち込むことにはいささか懸念がある。ただし、大都市に限定して、地方議員選挙に比例代表制を導入したり、議院内閣制的な仕組みを導入することは検討に値すると思う。現行の地方自治法は、大都市であっても、小規模な町村であっても、一律に同様の二元代表制を規定しているが、本書を読んで、それぞれの自治体の性格に応じて、統治システムを選択可能にする多元的な自治制度が望ましいという思いを新たにした。
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2012年刊行。
著者は大阪大学法学研究科准教授。
過日、大阪市の住民投票で否決された大阪都構想。
本書は投票前の段階ではあるが、大阪を定点とし、都道府県と市と国、地方自治の過去と現在、そして未来を語った書だ。
私自身、大阪をはじめとする地方自治体の在り方・将来像について、大阪都構想はもとより、さほど関心を持ってこなかったツケが本書読破で来てしまった。
そんな読後感である。
すなわち、
① 都道府県、市、さらには政令指定都市の権限・財源・政治運営の仕組み、異同につき十分な理解をしていない。
② 現実の大阪市、大阪府、府内の他市の財政状況につき情報を入手していない。
③ 二重行政の問題の理解不足の露呈。
かかる個人的な問題点を把握できただけでも良しとすべきか。
ただし、
① 大阪都構想(あるいはこれに類する制度改革・政令指定都市の解体)で、無駄の削減が可能か。本書で言われる無駄は、結局、バブル期・バブル崩壊期の事業計画の甘さに起因しているだけではないか。
② 人口減少が前提となる中で、これまでの同様の府市の対立構図が維持できるのか。共倒れにならないか。
③ 結局、国との税源分配の問題に帰着しないか。
という想念も湧いたところである。
さて、かなり多様な視点で書かれている本書。対立軸としては以下の如し。
① 大阪府と大阪市(都道府県と市町村)
② 東京と大阪
③ 大阪と他の中核都市
④ 京阪神
➄ 地方自治体と国
⑥ 都市と農村
⑦ 市街地と郊外
⑧ 大阪等日本の都市と他国の都市
あるいは、別の切り口として、
⑴ 戦前と戦後、そして平成時代の史的変遷
⑵ 官僚的側面と納税者という地位的・人的側面、
あるいはそれらの対抗関係
⑶ 選挙制度を含む政治面と、
税務・予算分配という財務面、
都市問題(かつては公害・上下水道などのインフラ整備。現在は高齢者・医療介護など)
という3つの側面という多様な視座が、本書ではキーとなっている。
これらは、かなり混乱させがちな多様性レベルであり、確かに良くまとめ上げたなぁ、という印象の一方、流石に判り難いよ、という印象とが混在する。
要再読か。
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2020年、2度目となる大阪都構想住民投票が否決で終わった。
日本で二番目の経済圏の中心である大阪市、そして大阪府が今後どのようになっていくのか、本書をヒントに追っていきたい。
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160213 中央図書館
別に橋下徹のビジョンを批判したりする内容ではない。地方都市の政治論である。「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」の相剋が、首長の意思を引き裂き、国家と大都市の軋轢につながる。
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首都東京以外の大都市が直面する問題が、明確に整理されている。東京の後背地となるのか、それとも地方中核都市の自律的発展を後押しするのか、という選択肢を提示しているが、そこにあるのは現行システム上弱体化せざるを得ない都市の不満である。
ところで都市と農村との関係は、金とリーダーシップの流れだけで整理できるものではない。食糧その他の供給地として、人の供給地として、地方の大都市以外の場所との関係性をこれからどのように考えていくのかが一つの課題となるだろう。
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大都市に存在する対立軸の1つに、市長と地方議会の対立がある。戦後、市長は有権者から直接選ばれるようになったため、その正当性より議会の影響力を抑えられるようになった。確かに自民党長期政権は、地方議員から市長への影響力を強めた。だが、長期政権の動揺の中、都市全体の利益を主張して議会の多数派から支持を得るような改革派首長が登場している。
大都市では人口流入の減少・流出の増加が続く中、経済成長し続けるために開発事業が行われてきた。民間企業が参入できない地域を開発し、新たな市場を生み出すという「都市官僚制の論理」である。それが成功するうちは良いが、失敗が重なると事業ごとに民営化による効率化を図る「納税者の論理」が浮上してくる。大阪都構想はこれら2つの論理を含んでいるものであり、その両立は容易くない。