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王室と不敬罪 プミポン国王とタイの混迷
著者 岩佐淳士
穏やかな国民性で日本人に人気のタイ。だが、そんな明るいイメージの裏に、想像を絶するタブーがある。それは「王室」だ。ごく一般の人が、SNSに投稿した何気ないひと言によって「...
王室と不敬罪 プミポン国王とタイの混迷
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王室と不敬罪 プミポン国王とタイの混迷 (文春新書)
商品説明
穏やかな国民性で日本人に人気のタイ。だが、そんな明るいイメージの裏に、想像を絶するタブーがある。それは「王室」だ。
ごく一般の人が、SNSに投稿した何気ないひと言によって「不敬罪」に問われ、30年近い懲役を科せられることもある。
現在のタイの発展の最大の功労者は、2016年に死去したプミポン国王である。プミポン国王は第二次大戦後、王制の下でのタイ式民主主義を推し進め、数々の政治危機から国を救った。タイを繁栄と安定に導いた王室は、次第に絶対的な存在と目されるようになった。
だが、1990年代以降、そんな王室に“対抗”する勢力が台頭してきた。タクシン元首相である。タクシンは地方農村への援助や公共投資によって貧しい人々の心を掴んだ。王室周辺は、そんなタクシンに警戒感を強めてゆく。結局、2006年にクーデターによってタクシンは国を追われた。
しかしタクシン追放後、王室の権威はますます権力闘争に利用されるようになった。
政治家、軍部、司法の重鎮たちが、政敵を追い落とすために「反王室」のレッテル貼り争いに興じる。経済格差が進行し、国民も分断の度合いを深めている。
だが、不敬罪は海外メディアにも適用されるため、そんなタイの情勢は抑制的にしか伝えられてこなかった。タイに関する報道は核心に触れられず、読者に理解しづらいものだった。
本書は、不敬罪で投獄された人の肉声やクーデターを実行した軍部関係者のインタビューなど、深い取材によって得られた貴重な情報が豊富に盛り込まれている。
タイにおける王室とは何なのか? このテーマは、皇室を戴く日本人にとっても無関心ではありえない。
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紙の本
「タクシン兄妹と軍部」と改名した方がいいのでは?
2018/08/18 22:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題と違って、内容はタクシン・インラック兄妹と軍部との対立がバンコクを中心とした今までの受益層とタクシン支持者との溝がタイを分断して、それに加えて先王ラーマ9世の高齢化と何かと問題の多い現国王ラーマ10世への王位継承が重なってしまった。
タイの不敬罪は外国人にも適用されるので、慎重になっているのかもしれないが、著者はタクシン寄りらしく、それが文章に滲み出ている。タクシン・インラック兄妹が軍部などからは嫌われているにしろ、合法的に首相の座に就いたわけだから、消滅したタイ共産党あたりとは違うはずだ。よく言えばポピュリズム、有り体にいえば人気取りで税金をばらまいて支持層を作り出したタクシンの手法が貧困層の支持を集めたにしろ、この本にも出て来るように、かつては国王と王室を前面に出したサリット元帥の手法ではないか。
「タイ王室に批判的な著作で知られる」元ロイター通信記者の書いた記事の要約が172頁に引用されているが、ウボンラット王女は離婚したアメリカ人男性との結婚で王族ではなくなっている。現国王の姉妹は独身のシリントーン王女以外は結婚した時点で王族ではなくなって、離婚歴がある。だから王位継承権はシリントーン王女だけが持っている。天皇制批判のライターの書く作文には、例えば天皇や皇族には納税の義務がないといった自らの間違いによって批判をするものだが、この記者もそういう人なのだろうか?
この本でも書かれているようにピブーン元帥を中心とした人民党革命とラーマ7世の退位が王権の失墜につながったが、人民党もタイ軍が中心となっているから、今の軍部との連続性があるはずなのに見えてこない。ピブーン元帥をクーデターで追い落としたサリット元帥が中心となって、専制王制を廃した軍部が「国王を中心とした民主主義」体制を作り出し、自らが失墜させた王室の権威を反共の名の下に復権させたた事になる。
タイの軍部が不敬罪を乱用するのは、まだ話が分からないでもないが、隣国のカンボジアはポル・ポト派の幹部から粛清を逃れてヴェトナムで救国戦線を旗揚げした現人民党は不敬罪を成立して、救国党を解党に追い込んだが、これはタイの真似なのだろうか?
紙の本
プミポン国王とタクシン首相
2019/05/06 18:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にま玉子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
20数年前タイを訪れました。当時、シーナカリン太后が亡くなったばかりで喪服を着た女性を数多く目にしました。二度目はプミポン国王50周年の年、バンコク(グルンテープの方が正しいか?)は言うまでもなく、アユタヤやスコータイもお祝いムード。そして、バスやデパートなど公共の場は言うまでもなく一般の家庭でもプミポン国王夫妻の写真、肖像画が飾ってあるのを見て、話でしか聞いたことのない、戦前の日本みたいだなと感じたものです。
この本を読んで久しぶりにタイに触れたわけですが、私は概ね良い本だと思います。背丈にあった暮らしを民衆に促すプミポン国王、それに対し経済的恩恵を施し貧困層の支持を集めたタクシン。国の重したるプミポン国王が亡くなっても新国王の元でのタイが幸福な国であってほしい、そう願います。