紙の本
時代の風の中に、個人の人生がある
2020/01/14 09:07
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投稿者:魚太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦中、戦後、高度成長期、オイルショック、バブル経済、その崩壊、大震災…。その時代にそれぞれの年齢で生きて成長した人間の、それぞれの人生。個人の創生が時代に多大な影響を受ける。時代の中で、ひとは生きる。
紙の本
小説技術
2019/07/18 17:02
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投稿者:ぷりしら - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公が6人。
その6人は交錯することなく、それぞれの祖父母や両親についても語られる。
主人公6人以外に固有名詞はなく、個人の物語とともに昭和〜平成の日本の歴史も語られる。
これだけの事をストーリーを渋滞させる事なく書き切る技術が凄いと思う。
が、小説として面白いかはまた別の話し。
私は面白く読めたが、平板に感じる人も居ると思う。
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12歳から10年刻みで62歳まで、6人の主人公とそれぞれの両親、さらに祖父母という三代にわたる家族の歴史。つまり、36人の人生が語られている。そしてそれがそのまま日本の昭和史、そして来年で終わる平成の歴史となっている。この小説で日本の現代史を見つめる橋本治の眼差しは絶望感に満ちている。日本はもう滅びる。彼はそう言っている。
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2.8
年齢が10歳づつ違う6人の男、昭生・豊生・常生・夢生・凪生・凡生を軸にそれぞれの父母・祖父母の人生まで遡る。
昭和・平成という時代を登場人物の目を通してなぞる感じ。
正直、登場人物が多過ぎて整理するのに苦労したが、読み終わってみればそれぞれの人間関係をしっかり把握する必要の無い小説だった。
A striking passage
老いたかな・・と思う人間の上に老いは静かに積もっていく
そこを照らす光が消えていく時、一瞬だけ輝いて美しい残像を見せる。
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初出 2017年「新潮」
これを小説と思って読むとがっかりする。これは「庶民版昭和平成社会経済史」である。
10歳ずつ違う10代から60代の名前のある6人の男たちですらのっぺらぼうで、その時代のザ・日本人であり、まして〇〇の父、母、兄、妻などとだけ呼ばれる人々は平凡な群衆の一人でしかない。
しかし、没個性だからこそ、時代を色濃く反映させるありふれた庶民の姿なのだ。
最後までふーん、とだけ思って読んでしまったが、5歳の子が離婚する両親のどちらを選ばせられる場面は胸が詰まった。
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戦前から平成のポケモンGOが登場するまでの期間で、登場人物が時代に流され、振り回され、翻弄される様が描かれている。それぞれの時代で10歳の歳が離れた人物6人が描かれており、読者はどこかの人物に感情移入することになる。決して幸せな世の中が書かれているわけではない。自分と照らし合わせると、自分より幸せに生きている人もいるし、そうではない人もいる。マクロな歴史の中で個人の歴史が語られているようで、そういえば、あの時はあんな感じだったなと自分の当時を思い浮かべながら読み進めた。登場人物の関連が唐突なので、読みやすい本ではないと思う。伝わるものは多くあるので、うまく言えないが何かを得たような気がするし、得たことを認めたくないような気もする。顔では泣けないが、心の内側で泣きたくなるような読書体験だった。
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この本の登場人物には、感情がない。よく言えば冷静だが、悪く言えば常に第三者的で常に他人事である。物語としては、つまらない。
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12歳から62歳までの6人の男たちと、その父母、そして祖父母たちの「人生とその歴史」。敗戦からポケモンGOまで、次々と語られる日本の歴史。さまざまな事件や事故、世相など、そのどこかに自分の生があり、自分の親たちの生があり、だけどだれもその主人公ではなく、その他大勢の誰かである。
6人の男たちは自分の人生を生きている。でもなぜか、みんなそれほど必死ではない。彼らの親や祖父母の必死さに比べてなぜかみんな淡々と流れるように生きている。どの時代のどの場所にも彼らはいて、そして自分の人生を生きている。彼らの親たちと彼らの間にはどんな違いがあるのか。彼らが持たない「必死さ」が、名前を付けられなかった石なのか。
登場人物が多く、年代も行ったり来たりするので、誰の話でいつの時代で、と読みながらメモを取る。けれど後半はそんな年表など必要なくなってくる。誰が誰で今日がいつで何が起こっていたとしても、それは結局みんな自分の人生であり、誰かの人生でもあるのだから。
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日本の戦後から今に至るまで、10代から60代の男性とその人達を取り巻く親世代、子世代を通して日本の姿を描いている。小説というより、ドキュメンタリーといった感じだ。
自分は自分なりに道を選んできたつもりでいたが、個々の選択は、その時代の勢いや世相というものに大きく影響されている。
違う時代を生きる親子が互いに伝え合うことをしなければ、知っておくべき事実や知恵は受け継がれず、世代間の理解はないままただ内向きに生きる人が増えるのでは…この国はどうなっていくのだろうか。
深く考えさせられたが、ほのかな希望も感じられた。2019.1.2
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10歳ずつ年の離れた6人の男性とその父母、祖父母の人生や主な出来事を通じて、昭和初期から平成晩年までの世相が描かれる。
登場人物は各世代を象徴しているだけで、特段の意味を持つわけではない。
人物への感情移入が難しい、という意味では叙事詩なのかと思うが、作者が裏に込めたメッセージを拾うのも容易ではない。
巻末で再現する冒頭の夢のシーンも、難解な演劇を見せられた気分になる。
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ついつい手が伸びてしまう昭和回顧小説。
しかも『桃尻娘』シリーズで自分の人生感に少なからぬ影響を与えてくれた橋本治の著作となれば読まずにはいられない。
昭和回顧と書いたが、この小説が舞台にしているのは、戦時中から戦後、そして平成の現代にまで至る長い長い時間。
昭和28(1953)年生まれの昭生を筆頭に、豊生、常生、夢生、凪生、平成15(2003)年生まれの凡生まで、10歳違いの6人の男を軸に、その祖父母や父母兄弟の人生の断片を拾っていく。
数多い登場人物のエピソードが時代の流れに沿ってあちこち行ったり来たりするので、いつ誰に何が起こったのかメモしながら読みたくなってくるが。
戦後復興から高度成長、オイルショック、安定成長、バブル景気と崩壊、失われた20年…といった経済社会の浮き沈みにその時々の社会的事件や習俗を絡ませて背景とし、家族観や学歴やジェンダー観など世代間の価値観の移り変わりを浮かび上がらせてゆく。
橋本さんなので、もうちょっと反権力な志向が見え隠れするかなと想像していたが、極めて客観的な視点で語られる。
10歳違いという等差の物差しが使われているがゆえ、ジェネレーションギャップも実に平等に炙り出される。
自分の場合、1973年生まれの常生とほぼ同世代なので、例えばファミコンの登場のインパクトなどは共感して捉えられる一方、父母の世代や、今会社の部下として接している歳下の世代がどのような時代を経ていかなる価値観を獲得してきたのかについても省みることができる。
極めて完成度の高い時代絵巻、日本人図鑑と言えるのではなかろうか。
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乱れた白髪頭に皺だらけの小さな顔をした母親をみた昭生は、「年寄りが噴き出した」と思った
人というものは、人の孤独を安らげるために存在するものであるらしい。
生きて立ち働く女が家の中にいると、空気が穏やかになる
人の不在が人に働きかけることがある
かつて若者だった大人は、根拠のない夢を変わらずにみている。しかし、当の若者には絶望しかない
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昭和、平成という時代を読みながら振り返った。一気に読んだので、一気に時代を駆け抜けた気がした。時代が変わっていくのを実感できた。
自分の親、自分の子供を理解できないのは、ひょっとして昔からそうなのかもしれないが、この時代の変化の速さはやはり今までにないものではないのか。1世代違っても、なかなか理解し合うのは難しい。
自分で生き方を選んでいるように思えても、時代だったり、家庭環境だったりに選ばせられているということもよく描かれていた。
橋本治さんのエッセイ、評論は何冊か読んだことがあったが、小説はあまり記憶にない。
年末に、年が明けたらこの小説を読もうと思っていたら、まさかのご逝去だった。
この小説の中に、昭和の終焉とともに亡くなられた偉大な人たちが列挙されているが、橋本さん自身が平成の終わりに一緒に連れて行かれることになるとは。
"前へ進まなければいけない時に、豊生の父は後ろを振り返る。振り返ろうと思っているわけではないが、消えて行ったものをぼんやりと追っている。前へ進もうとして、どう進んだら良いのかが分からないのだ。" 97ページ
"小学生の常生には、まだゲームに没頭しなければならないほどの強い抑圧がなかったし、そのゲームはすぐ飽きてしまう程度に単純だった。" 183ページ
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昭生62歳、豊生52歳、常生42歳、夢生32歳、凪生22歳、凡生12歳。それぞれの男の父母、祖父祖母まで遡りながらから、今に至る日本の歴史の中で彼らはどう思い、どう生きてきたか。戦前から平成までの時間の中で社会を振り返えさせる。自分は昭生が生まれた時と同じなので、過去を振りかえさせられた。
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10歳づつ年齢の違う6人の主人公の生活をまとめた小説。
昭和から平成にかけての日本の社会史の資料としては有益かもしれない。
小説としては楽しめず、途中で中断。再読不要。