紙の本
この閉塞感はどこで暮らしていても
2018/05/11 12:27
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
初見の作家さんです。
タイトル買いでした、「勝ち逃げ」なら知っているけれど「負け逃げ」って言葉があったかなぁと興味を惹かれました。
この作品が書籍としてデビュー作になるそうです。
連作短編集とも読めますし、あるいは長編の群像劇とも読めました。
地方の小さな村の閉塞感が全体を通して流れていて、その中でもがくように足掻くように暮らす登場人物たちのお話。
この作品では地方や村を閉塞感の象徴として描いているけれど、きっと東京や大阪で暮らしていても何割かの人々は同じような、似たような感覚の中で毎日は送っているように私には感じられました。
自分が置かれた状況に気がついた時から、人はその状況から逃れるかのように、また青い鳥を探すがの如く生きていくのかなぁと考えた読後でした。
2作目が出たら是非読んでみたい作家さんです。
でも似たようなテーマだったらちょっと残念に思ってしまう気もします。
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国道沿いだけが夜でも明るい田舎町の男女の連作集。
そこに住む人達の田舎町という意識が醸し出す閉塞感がずっと漂うストーリー。
皆が現状に満足せず、だからと言って未来に夢を持っているわけでもなく、そのため、若者が中心の話なのに爽快感はひとつも感じられません。
それぞれに事情があり、それぞれがその事情ゆえ鬱屈としたものを抱えている。
でも、そこに興味が湧き、読む手を止めることは出来ませんでした。
田舎、ふるさとが、懐かしく良いイメージの場所になるのには、先の人生によるものなのでしょうか。
興味深い作品でした。
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どこに行っても、どこに逃げても、不自由はつきまとう。
それは自由があるからこそ、不自由だと感じる。
閉塞感の先には自由があるはずだと、何も見えてないにも関わらず希望を見いだすからこそ感じる不自由さ。
別にみんな外に逃げ出すのが本当の願望なわけではない。
ただ自由に、自分が選んだ相手と繋がりたい。
その願いは単純で陳腐だ。だけどその願いが簡単には叶わないからこそ強く願う。
小林が想像する前原と現実の前原は違うし、
ヒデジの腕の中にいる妙ちゃんと現実の妙ちゃんは違うし、
田上が感じている野口と現実の野口も違う。
逆も同じだと思う。
それでも本当に繋がりたいと願うと電話やMDウォークマンで繋がることができてしまう。
だから見えない自由をずっと追い続けてしまう気がする。
小林が好きだった。
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ある村を舞台に、圧倒的な閉塞感とそこから逃れるために必死なひとびとを描いた連作。
物語自体はカタルシスもなく、落ちるべきところに収束していくのであまり面白みはない。
(構造としては、わりとありきたりな一作目から広げてよく収斂させている。収斂させないほうが素敵だったけど)
ただ解説の重松さんも語るとおり、衝動の濃さは印象的。
つぎの作品に期待したい。
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閉塞感にページを繰る手がちょっと止まった。なんて息苦しいんだろう。
自分が感じている閉塞感に通じていて、本当に苦しかった。
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とある田舎の若者やオジサンオバサンの話。
田舎の閉塞感から来る闇、って感じ?
こじらせ感。
読んでいる間はずっといや〜な気持ちだったけど
読後感はそれほど悪くなかった。
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閉ざされたような小さな田舎町。
そこで生きていくもの、出ていこうとするもの、出ていけないもの。それぞれの立場で思い悩みながら、諦めたり受け入れたり。僕の災いと蠅が好き。
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凄かった。
大して不幸でもないのに不自由しか感じない、そんな作者の言葉が的確にこの小説の描く窮屈さや息苦しさを表現していると思います。
野口という誰とでも体の関係を結んでしまう、ヤリマン女子高生。クラスメイトと関係を結ばずひたすら爆音をイヤホンからながす男子高校生。
その物語から派生して、脇役だと思っていたクラスメイトや担任の物語が展開される。いわゆる群像劇になっています。
窪美澄さんが好きというだけあって、心情表現のこまやかさも、読者を惹きつける展開も、窪さんのそれを彷彿とさせるものがあります。
二十代で中年の男女の心情にリアリティをもたらす筆致は見事。
どんな登場人物も自分とは違うのに同調してしまったし、彼や彼女がそこに至るまでの感情の流れや、自分を抑えきれないほどのハジけるような感覚の描写が素晴らしかった。
どの短編も読み始めてどうしてこんなにくすぶってるのか、理解できないまま読み進める。
それが次第に明かされるストーリーや、不可解ながらつながっていく人間関係、自分自身のことでも思った通りにはできないもどかしさ、それらを通して、その人物の気持ちが伝わってくる。
村というものに捕らえらて生きている彼らの物語に、終盤では清々しさが加わる。
なにも解決したわけじゃないのに、本当に自分で選んだことがあるとこんなにも気持ちが変わるのかなと思いました。
こういう小説は息苦しさだけで終わることも多い中、それだけではないものが、読後で得られました。
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https://lib.tezukayama-u.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=489948
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田舎で暮らす人々の鬱屈した気持ちやそこから逃れようと渇望する姿を描いた短編連作。
明るい未来が描かれるような話はなく、どうしようもなく暗い結末の話が多い。それでもなぜか希望を感じてしまう。
高校生の話もいいが、個人的には教師である2人の話がよかった。人には受け入れてもらえる異性がどれだけ必要か、そんなことを考えさせられる。
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今住んでいる田舎から逃げたい……でもそれは負ける事
誰とでも寝る同級生の野口とセックスしたい田上
右足が生まれつき悪くこの田舎の全ての男と寝ると豪語する野口
高校のうだつのあがらない教師秀雄
その秀雄と不倫をする同僚教師妙子
それぞれが今住んでる田舎に対して不満をもらす。
「この田舎から逃げたい」と
表紙のイラストが綺麗だったので中身を確認せずに購入
内容はあまり期待していなかったのですが面白かった。
関わっていく人間が順番に描かれています。
教師同士の不倫の話が入り込みましたが最後、何故か寂しい気持ちになりました。
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とある村の住人を主人公にした短編集。ある話ではただのサブキャラなのに、ある話では主人公になったりするのが面白かった
全体的にとてもドロドロで、主人公も含めてみんな嘘ついてて、世の中もこんな感じで、みんな嘘ついてるのかなぁなんて思った(笑)
個人的には、僕の災いと蝿とけもの道が面白かった。最初はただの嫌なキャラだったヒデジが最後にはいい人になってたのが、不思議な感じと思った
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『純喫茶磯辺』(2008)の麻生久美子の台詞「私、ヤリマンなの」は衝撃的でした。本作はその衝撃にも引けを取らない一文「野口は、この村いちばんのヤリマンだ」で始まります。
でもそんな野口とヤッたことはない田上の目線による第1章。その目線は同級生や教師に移り、〆は野口で。
本作を手に取るきっかけは帯を見たからだという人が多いはず。辻村深月、窪美澄、三浦しをん、重松清って、どんな豪華メンバー。これらの推し人全員好きという読者はきっと多い。私もそうだから素通りできませんでした。
若い作家の本を読むと、面白いけど若いなぁ重みはないなぁと思うことがよくあります。この人はそうじゃない。こんなくたびれたオッサンとオバハンの不倫を哀切を持って描き切る。
村の端から端まで噂がすぐに広がる田舎で、後悔の念を抱いたまま生きる。いちばん冴えないと思っていた教師ヒデジだけは、後悔がないように見えました。
イライラして、悲しくなって、どんよりして、スキップ。そんな読後感。次作も読みたいと思わせられる作家です。私はかなり好み。
映画『純喫茶磯辺』の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/681ad5479b92388dd421291230c97ac5
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田舎の閉塞感のある村に住む高校生や大人の男女の生活が描かれている。何もない村。この村にいても未来はないのにこのままここで大人になり親と同じような生活をするんだろうという予感。その暗い色に満ちている。村の外への憧れと村への失望。内に溜まっていたものが溢れたときの衝動。その先に何があるのか。でも何かせずにはいられないそれぞれのラスト。この閉塞感と村に住む人たちの感情がとても丁寧でリアルに描かれている。今後に注目していきたい作家さん。
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中高生の時の感覚を思い出した。
なぜかこれを読んだ後、成人向けの漫画を買ってしまった。一人暮らしで、誰にも咎められないのに。