堀江敏幸さんとの縁を感じずにはいられない
2023/06/12 11:29
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
市井のアメリカ人の悲喜こもごもを切り取った短編集。ユーモアの利かせ方とか会話の描写が伝統的なアメリカ文学っぽいけど、題材は多様かつ現代的だからとっつきやすい。訳者解説にも書かれてる通り、俳優業と映像制作の経験の長さ故の「絵になる描写」が巧い。
もう一つのポイントとして、どの物語の中にもタイプライターが登場するのが面白い。タイプライターを主題にした作品「心の中で思うこと」(これが一番好きだった)もあれば、さりげなく登場する作品もある。各話の終わりにタイプライターのモノクロ写真も付いてて、筆者のタイプライター愛が感じられる。
そういえば裏表紙にコメントを寄せている堀江敏幸さんもタイプライターを扱った散文を書いてるし、お互いに市井の人々を扱う穏やかな作風は近しいものがあると思う。この本の最後を締めくくる「スティーブ・ウォンはパーフェクト」は丁寧なボウリング描写と抑えめのセリフが光る良い短編なんだけど、堀江敏幸ファンだから「雪沼とその周辺」に収録されてるボウリングを題材にした短編「スタンス・ドット」を思い出して、なおさら縁を感じた。
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トムハンクス「変わったタイプ」https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/590151/ 読んだ。あのトムハンクス、の短編集。日本もタレントの本があるけど比較にならないな(伊丹十三を除く)物語自体がとてもよくて、文章もいいんだけど原文読んでないからもしかしたら訳者の力かも。読んでるとその場面が浮かぶのが印象的(おわり
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意外にも(失礼!)、ちゃんと小説だった。それも小気味のよい短編小説。タイプライター繋がりという趣向も趣味がよい。
『アポロ13』『プライベート・ライアン』『ターミナル』などのトム・ハンクス出演映画を彷彿とさせられるような作品も何点かあって、それもうまく味付けされ生かされている。
中でも『過去は大事なもの』はジャック・フィニイ風かなあと思いながら読み進めると、ああ『ビッグ』なのかなと思い、しかし幕切れには全く別の後味が用意されていて、その手際に感心してしまった。
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装丁から、挟み込まれた古いタイプライターの写真のそれぞれ、そして、挿入された新聞記者のコラム。更に愛すべき「変わったタイプ」の短編達。
どの作品もすぐにでも映画のように情景が生き生きと浮かんでくる。古い映画のファンの私には、慣れ親しんだシチュエーションやら趣向、そして想いを感じ取るだけで楽しい時間だった。
中でも「Go See Costas」のラストでは思わず涙、分っているんだけどね。ちょっと間を持たされたから、その分ね。上手いなぁ。
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小説家トム・ハンクスのデヴュー作は、17篇の作品を收めた450ページもの作品集となった。
初めての作品集というわりにはずいぶんと書きためたものだ。どれもおもしろい。これぞ短編小説の醍醐味。筋を追いながら、先へ先へと気持ちを走らせながら読んだ。
「クリスマス・イヴ、1953年」「過去は大事なもの」「コスタスに会え」あたりが好み。
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トム・ハンクスが小説を書いたと聞いて驚いた。読んでもう一度驚いた。
知名度に寄りかかって奇をてらうではない、正統派の短編小説である。
しかし、驚くことではないのかもしれない。
脚本も手掛け、監督もこなしたことがある。その才は演じることだけに留まってはいないのだ。
真面目で温かく、ユーモアもあり、ちょっぴりシニカル。
作品の手触りはどこか、俳優としての著者の佇まいにも似ているようにも思われる。
ハンクスは相当な読書家であり、タイプライター蒐集家としても知られているという。
本書中の短編にはタイプライターが渋い脇役・重要な小道具としてそこここに顔を出す。
作品の冒頭にタイプライターの写真が出てくるのも楽しいところだ。
エネルギッシュすぎる恋人に振り回される男、第二次大戦の帰還兵、大女優の相手役を射止めた若き俳優、ぎくしゃくした家庭のティーンエージャー、スターになるのを夢見て田舎からニューヨークに出てきた女優の卵、アメリカに渡ったギリシャ移民。
さまざまな人のさまざまな人生の1シーン。
どんなに平平凡凡と思われる人の人生も、どこかしら何かしら変わったところはあるだろう。波瀾万丈か、と言われればそうとは言えないが、それでも、どこかドラマチックな部分というのはあるものだ。
そんな味わいの短編集である。
どの作品の登場人物もキャラクターがよく描き出されており、シーンは鮮烈に映像的である。同時に、どことなくあれこれと映画を思い出させる。著者自身が出演した「プライベート・ライアン」であったり、「アポロ13」であったり、あるいはそうではない「アメリカ・アメリカ」であったり、「ある日どこかで」であったり。
著者自身がそうした映画を念頭に置いていたのかどうかは別として、エピソードの際立ち方が映画に似ているように感じられる。
ストーリーはひねり過ぎず、どちらかというとシンプルだ。古き佳き「アメリカ」をそこここに感じさせる。
すべての作品を非常に堪能したとは言い切れないのだが、個人的によかったのは、「光の街のジャンケット」、「ようこそ、マーズへ」、「配役は誰だ」あたりだろうか。
実のところ、このうち1編はバスで読んでいて、久しぶりに停留所を1つ乗り過ごした。意外な展開というわけではないが、なかなか楽しかった。
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もう各方面で絶賛されていて、わたしの感想も同じだからいまさら書くことないなあ、って思うんだけど、とにかくよかった!
今の話もあり、昔の話もあり、タイムマシンが出てくるSFあり、脚本あり、新聞記事の体裁もあり、映画業界の話あり、戦争の話あり、移民の話あり、ロマコメ映画にできそうな話あり、本当にバラエティに富んだ短編が17編。なにがすばらしいって、テーマとしては重かったり悲しかったりするものもあるんだけど、それでも全部が全部、ユーモアがあってファニーで温かい、ってこと。ぜんぜん嫌な気持ちにならない。いかにも「よきアメリカ」って感じがする。
……でも、トム・ハンクスのいい人そうな人柄(っていうか、実際に接したことがあるわけじゃないから、こういう人っぽいって勝手に思っているってことだけど)がすけて見えるような気がしながら読んでるからいっそうそう感じるのかもしれないけど。(個人的にファンだし……小説読んでさらに好きになったわ!)。
俳優としても小説家としてもすばらしいっていったいどういう人間よ、と。俳優として優れているから、いろいろな人物の心を「声」として表現できるってことなのかも。
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「変わったタイプ」
初の小説集。
トム・ハンクスという名前を見た時、同姓同名だと思ったら、調べてみたら本当にあのトム・ハンクスだった。とひと驚き。日本でもよくある作家デビューなのかと期待半分疑い半分でいたら、ちゃんと小説を保った文章と表現、人物描写やストーリー性を感じる。と言うか、アメリカらしさ、そう、カントリーを感じる。ふた驚き。じゃあカントリーさって何?て考えた時、うまい表現が出来ない。完全にアメリカ文学における知識不足である。
しかし、初の小説「アラン・ビーン、他四名」が掲載されたのは、「ニューヨーカー」(2014年10月27日号)は、アリス・マンロー、J・D・サリンジャーのような錚々たる作家が名を連ねていたいわば文芸の聖地たるスペースであり、であれば、初小説に続いて書き上げられたその他16篇の完成度が高くても不思議はない。どれもナイス。
個人的には「へとへとの三週間」が一番読みやすく、映像も浮かびやすく、アンナにぴったりの男でなければよい、とのフリからの終わりもユーモラス。
タイトルは「変わったタイプ」でUncommon Type。これに関しては、堀江敏幸の言葉がぴったし。「正しい意味でUncommonなのは、登場人物を迎え入れる世界ではなく、この短篇集の書き手のほうだろう」。タイプライターマニアだからこんなに上手く書けるのか(な訳ない)。
ちなみに、これら16篇は編集者に何篇は書いてみれば?と言われて書いてしまったらしい。え、貴方は天才ですか?
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トム・ハンクスが書いた小説。脚本形式や新聞コラム形式を交えた短編集。青春もの家族ものSFなど内容も様々。面白い作品もあるが、今後好んで読むタイプの作品ではないかな。タイプライターが随所に出てくるので、そういえば彼はコレクターだったな、と思いながら読んだ。
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む、むちゃくちゃおもしろかった! 今年のベスト3に確実に入る。大好き。
クレストブックスの宣伝小冊子に「トム・ハンクスという名前が邪魔なくらい」のクオリティ、と書いてあったのを読んで、「ほんとかなぁ?」と疑いを抱きつつ読んだのですが・・・最初の作品でもうすっかりハートをわし掴みにされてしまった。そのあとの作品もぜんぶ、最後まで見事におもしろかった。
俳優や監督としてのトム・ハンクスは、私にとっては好きでも嫌いでもない、という位置づけでしたが、この本を読んで、すっかりまるごとファンになってしまった。
SF、戦争もの、コメディ、ファンタジーと、ジャンルがいろいろで、見識の広さにまず驚かされます。語りも巧妙で、くすくす笑っていたかと思うと、いきなりシリアスな流れになったりと、読むのがやめられず。
戦場の話など、すごくリアルで胸に迫ってくるような描写もあり、彼の演じた役たちがこのリアリズムに大きく寄与しているのかなぁ、などと想像すると同時に、それをどう伝えるか、ってこともいつも考えてたんだろうなぁ、とも思う。
読んでいると、トム・ハンクスが俳優として出演していた映画よりも、製作側にまわっていたドラマや映画の方が私はしきりに思い出された。
特に『フロム・ジ・アース/人類、月に立つ』を思い出した。(『アポロ13』よりも)
あのドラマシリーズの中ではアポロ12号が私の一番のお気に入りエピソードだったんだけど、『アラン・ビーン、ほか四名』はそのスピンオフみたいな作品。今確認したら、アポロ12号の回は彼も脚本に参加しているんですね。
ドラマの「人類にとっては小さな一歩だが、俺たちには大きな一歩だ!」っていうセリフに大笑いしたのを、読みながら思い出しました。トム・ハンクス自身もあのアポロ12号のエピソードは気に入ってたんじゃないかな、なんて思ってしまった。
この本を読み終わった後、たまたまだけど、アマゾンプライムで途中になっていたドラマ『バンド・オブ・ブラザース』の続きを見た。昼休みに毎日1話ずつ見ていて、この時は偶然にもトム・ハンクスが監督した回(5話目)だった。
このドラマは非常に地味で、淡々としていて、衝撃的な展開も特にないんだけど、後でじわじわくる良品で、読みながら思い出していた映像作品の一つ。
で、狙ったわけじゃないだろうけど、この回はタイプライターが出てきて、記憶の中の爆撃の音とタイプを打つ音が重なるという演出があったりもする。
メガホンを持ちつつ、作家としての目も同時に動かしている、というトム・ハンクスをときどき想像しながら見た。
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タイプライターはちょろっと触ったことがあるくらいだが、打鍵音愛好者なので、カタカタカタと脳内に響かせながら読んだ。チーン!
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タイプライターをキーワードにした短編集。ノスタルジックな雰囲気を持つ。
時代も背景も様々だけれど、ちょっとほっこりする。
トム・ハンクスの名に恥じない(??)なあ。
期待以上でした。
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大変優しくて、おしゃれなオムニバス形式の映画を見ている気分になる。大変ビジュアル的で読みながらキャスティングを考えてしまう。安らぐタイプのちょっといいストーリー。そこかしこ、ぶっと笑う箇所もあり。例えばトルネードの季節にオクラホマ西部のアマゾン配送センターでフルタイムの社員をしながら、ネイビーシールズの訓練を受けているようなものだ、とか(笑)。アンコモンタイプのタイプはタイプライター、型、様式、種類、人間のタイプとかいろんな意味でちょっと違うタイプ(いい意味で)。
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ひと癖ある主人公はどれもトム・ハンクスが演じる役のように感じられ、頭に浮かぶのはユーモアたっぷりのセリフとニヤッとした笑顔ばかり。時にはしんみりとさせる場面もあり飽きさせません。
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正統派のアメリカの短編集。
正統派の、というのは大学の創作科出身的でない、ということ。
そんな言い方したら失礼かな。
出版のきっかけになったという、「アラン・ビーン、ほか4名」が特に好き。