紙の本
逮捕する過程の教訓事例
2019/06/07 22:32
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
女子大の教授になった元警察官の物語である。これがシリーズになるとは思わなかったが、2作目で世界が広がってきたような気がする。今野敏の小説は所謂警察小説が多いのだが、事件に主眼を置く、探偵小説のような趣の話はあまり多くはない。どちらかといえば、警察関係者を広い範囲で捉え、それぞれの職務でのあり方や抱える問題点を読者に教えてくれる。
本書は三宿女子大学という架空の大学で、学長の友人ということで教授になった元警察官、小早川が主人公である。警察学校長経験者という経歴に学長の眼が止まったのであろう。前作では教授としての仕事はまだ駆け出しであったが、管轄の警察署の刑事課関係者が出入りするようになった。
今回は全くの誤解から警察署の巡査部長が小早川教授を犯人と目星をつけ、徹底的に追い回すという話である。実はこれが権力を持つ警察の怖い点である。近頃では電車内での痴漢事件で、訴えられた人がそのまま逮捕され、ひどい場合は職を失うことが少なくなく、話題になっている。
ここでの問題はさしたる証拠もなく、被害者の訴えのみを根拠に逮捕するという警察当局の姿勢であろう。駅の事務室に同行し、警察官が呼ばれると警察署に同行したが最後、何を主張しても聴いてもらえず、かといって訴える側にも証拠を示すことは困難である。このような状態でも逮捕されてしまうと、拘留期間が相当期間に及び、勤務できない状態が続く。
これは今回警察側の取り調べの様子がリアルに再現されているので、見どころの一つである。この場合は相手がOBの小早川であってもそうなので、何のコネもない一般人であればこれでは済まないと思われる。痴漢事件に限らず担当の捜査官によってはよりひどい場合も想像される。
読者にとってはこれが本書の最も注目される点である。小早川教授は警視庁捜査一課の刑事に加わってもらい、何とか難を逃れている。これにはゼミの女子学生も憤慨するところが描かれている。こういうことは稀であることが望ましいが、実態は一般人が知る由もない。
とはいうものの、被疑者は必ずしもOBでもなければ、一般人でもない。
百戦錬磨の犯罪者が普通なので、そう弱腰で当たる訳にもいかないのは納得できるところである。その見極めやバランスは想像以上に困難であることが伺えるのである。是非シリーズ続編を願いたい。
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1作目と印象はさほど変わらないが、元警察官が冤罪に巻き込まれる設定は面白い。が、もう1件の冤罪逆転無罪が本当は有罪だったのは予定調和的で幻滅。まあ女子大のゼミ舞台なのでエンタメ小説としては勿論水準以上。
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大学のゼミという角度からの切り口は斬新。今回は実際の犯罪捜査に寄りがちだったので、よくある素人探偵ものに成り下がってしまわないかが心配。とか言ってる時点で次回作に期待しているわけだが。
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継続捜査ゼミシリーズ 第2弾
元警察官で三宿女子大で教鞭をとる小早川のゼミの今回のテーマは冤罪。
学園祭のミスコンについて、反対する高樹と議論を交わすことになった小早川だったが、面会後に彼女は何者かに襲われてしまう。
所轄の刑事から被疑者扱いをされ、小早川自身が冤罪の対象になりかねない状況に。
ゼミ生たちは、先生を救うべく情報収集に動き、事件の背景に迫る。
冤罪が生まれる状況、法の不完全さに教訓を得ながら、司法を学ぶ登場人物に感銘をうけます。
まだまだ続くシリーズですかね。
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警察の捜査が正義の暴走である危険性を考える反面、まんまと罪を逃れる人もいることもある。
それでも最後にはスッキリした読後感を与えてくれる。流石です。
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未解決事件を取り上げるため「継続捜査ゼミ」と呼ばれる小早川ゼミの5人の女子大生は、冤罪をテーマにしようとする。小早川は、授業で学内ミスコン反対のビラを配る女子学生高樹晶に会うが、高樹は小早川と話をした直後、何者かに襲われ救急車で運ばれた。その後、高樹に対する傷害容疑で小早川が任意同行されることに――警察に疑われ続ける教授に代わり、ゼミ生たちが協力して事件の真相を明らかにしていく。
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登場人物のキャラクタもしっかり定着して、それぞれが生き生きしている本作である。そして今回は、ゼミでは冤罪事件を取り上げるのだが、小早川自身が冤罪の被害者にされかけるという、なんとも言えないタイミングの良さ(悪さかもしれないが)で、冤罪ということについて様々な角度から考えさせられる。立場が違うと見え方がこうも違うものかと思わされることもあり、ひとつ歯車を掛け違うと、どこまでも修正が効かなくなってエスカレートしていく怖さも味わった。なにより、小早川ゼミの結束力が強まった物語であったと思う。次の活躍が愉しみなシリーズである。
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主人公にここまで感情移入できてしまうほど相対する刑事の無能っぷりがすごい。しかし違う側面から見るとその無能さが逆に有能と評価されてしまうことがあるのは恐ろしいと感じた。また冤罪だけでなく無実が確定したが実は有罪だったということもあり得るということを教えられた。
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退官した元刑事と5人の女子大生が過去の事件を洗うシリーズ第二弾。過去と書きつつも今回はキャンパス内で起こった障害事件で主人公小早川が警察に疑われることになり、その流れで「冤罪」をテーマに過去の事件を扱いつつ現在の事件の真相を明らかにしていく。。
面白かったです。読み終わってみると結構いろんなテーマを扱ってた割にはごちゃごちゃすることなく綺麗にまとまっていた印象。シリーズキャラも段々と生き生きして動き出してきた感がありますし。次回作もでたら是非読みたいです。
今回、主人公である小早川は無実でありながら警察に疑われ続け、「冤罪」を強く意識していくわけですが、読んでる方は警察の横暴なやり口や口調にそれなりに憤りを感じるわけです。でも小早川は毅然とした態度を貫きつつも「考えてみたら自分も現役のときは・・」となにかにつけて思い返して反省したりもするのでなんとはなしにもやもやと。どないやねん、と。
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冤罪の設定がかなり無理があると思われる。
それ以外の警察の逮捕から起訴までの流れや考え方は理解できて勉強になつたが。
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女子大のミスコンに反対する女子大生が襲われる
最後に会ったのは教授。刑事が疑われ任意同行
ゼミの課題は冤罪。冤罪事件の当事者、被疑者と刑事にインタビュー。
犯人はミスコン優勝候補のストカー、大学職員
冤罪事件後、被疑者は暴力事件をおこし起訴
教授を尋問した刑事は謝罪
推薦されない後輩刑事のシナリオ通りに捜査していた
事件後、無事に署長推薦
ミスコンイベントのメンバーは動機なし、合コンで確認
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やっぱりこのシリーズあまり合わないみたい。
2年前に一作目を読んでおり、その時のレビューを読んだら、今と同じような感想だった。
女子大生のキャラが終わるまでキャラ立ちしないまま。
ストーリーは、大学内で、ミスコン反対派のリーダーが襲撃され、最後に会っていた、警察OBの小早川が執拗に取り調べを受ける。
襲われた学生の話を聞いた時点で、犯人に思い当たれよ、無能か?と読んでいて思っていたくらい予想通りのストーリーだった。残念。
ところでエムエスってなんだ?
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このシリーズ女子大生に聞き取りさせるとか有り得ない設定に、前回も不満たらたらだったけど、今回もあろうことか警視庁の刑事が女子大生の調査に期待するとか、もはや冗談としか思えない。
とはいえ、その有り得なさに慣れたのと、今野さんの警察解説書のようなわかりやすさについ一気読み。
今野さん、こういう手抜きの作品はいいから、骨のある刑事ものをもっと書いて下さいな。
でも、第3弾が出たら、また読んじゃうんだろうな~。あ、これって、このシリーズが好きってことか?
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お?★4つですか
女子大に退官後教授として働く小早川
美人の5人に囲まれての継続捜査ゼミ
未解決事件を取り上げるいつもの流れ
今回は現場の巡査部長の反感を買った
為に、なぜか被疑者になる小早川教授
冤罪ってこうやってできるんだなと思
わせて、別の視点へ我々を誘い込む物
語の巧みさに浸れる良い作品です
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『継続捜査ゼミ』の続編!
今回のテーマはミスコンと冤罪だ。
ゼミの教授であり、元警察官(元警察学校長だなんて!遥か彼方の階級じゃないか)の小早川が、傷害の嫌疑をかけられてしまう。
ゼミ生も、襲われた学生も、小早川の無実を訴えるが、現職の刑事は頑なに小早川を責め、執拗になまでにこだわる。
本件の真犯人は特に意外性もなかったし、ミスコン反対派のリーダーで、怪我を負わされた高樹がそうなった経緯も拍子抜けだった。
もっとも、人が何かをする経緯など、そんな大それたものばかりではない。
単純で、身近なことから物事が始まるものだし、それを悪いというのではない。
が、刺激を求めてしまうのは人間の性(一般化してもいいと思うのだが)。
それもあって、私は小早川を狙う刑事、担当係長である大滝がなぜこうも小早川犯人説に拘るのかが気になった。
正義感もあり、部下思いの良い上司であると何度も示唆されるが、決定打には至らず、理由が明かされた時には少し考えさせられた。
警察官の、悪を許さない姿勢、信念、職務に忠実たらんとする責任感は専門職ならではだし、それが日本の安全を保っている。
ただ、そこに行き過ぎが出てきてしまうと、一般人の人生を壊してしまう。
何度か語られる社会学用語、「暴力装置」の意味を、「装置」自身が心に留めなければ、自らと、それが守護するものを破壊することにつながるのだ。
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シリーズ第二弾。
前作が唐突な展開やキャラ紹介に四苦八苦していたような感じがして、いまいちミステリーに乗り込めなかったのですが、本作も女子大生キャラ分けがよくわからないところもありますが、ミステリーとしては納得できる出来でした。
特に冤罪に焦点を当ててる点や思い込みの危険性についてなど、重いテーマであることも軽すぎなくて良かったです。
続編があれば読むと思います。