窪美澄氏の衝撃作です!生きることとは、幸せとはということを改めて考えさせられる作品です!
2020/05/27 11:30
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『ふがいない僕は空を見た』や『晴天の迷いクジラ』など魅力的な作品を次々に世に送り出してこられた窪美澄氏の衝撃作です!内容は、渋谷で出会った謎の女性に勧められて主人公のミツキは国が設立したお見合いシステム「アカガミ」に志願します。異性と話すことすらままならない彼女にとって、国の教えはすべてが異様なものでした。そして、そこでパートナーに選ばれたサツキとの暮らしを通じて、次第にミツキは恋愛や性を知っていくようになります。しかし、手厚いサポートに隠された「アカガミ」の真の姿とは一体何なのでしょうか?その続きは、ぜひ、同書をお読みください。
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
恋愛も結婚も国の政策に則って進められる時代。
新しい家族を作るためにお見合い制度「アカガミ」に志願します。
この制度を利用すると育児も手厚い優遇を受けられる。
美味しい話にはウラがある、なかなかゾッとする目的があります。
なんだか全くの絵空事とも思えない感じがしました。
ドライな近未来の生と性
2018/10/11 00:39
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
超少子化の近未来の日本を舞台にした究極のマッチングシステムの小説。カップルを「番」と呼び、同居→妊娠→出産のプロセスを全面的に管理する。恋愛に淡白な世界観の描写がリアルでなかなかうすら寒い上に、性と生を描く窪さんにしてはかなりドライな書き味に感じて新鮮。
「アカガミ」の世界では20代はほとんど恋愛をせず、同世代の妊婦を見ると嫌悪感すら覚えるし、そもそも仕事以外で他人と会話するのも億劫だし、風俗もアルコールも高齢者向けのサービスとして扱われている。この光景はここ何年かでも指折りのリアルな近未来の描写に思えた。
現状に警鐘を鳴らす問題提起小説としてそこそこ読ませる
2019/05/10 05:07
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「アカガミ」の制度の全容は最後まで詳細には描写されることはないのですが、どうやら制度で生まれた子どもたちは「国に使われる」という噂には言及されます。まあ、そこまでお金をかけて結婚・出産を国が支援するのですからなんらかの見返りを国が求めても当然と言えば当然ですね。制度の名称であるアカガミが召集令状の赤紙を連想させることから、どのような使われ方であるのかが暗示されているようです。
少子化・未婚化に対する政策として昭和的家族の形成を支援するというのは現政権のような思想的傾向を持つ政権であれば考え付きそうな復古主義です。同じように少子化をテーマにした村田沙耶香の『殺人出産』のような斬新さはなく、比較的ストレートな設定で、現在の日本の空気をより直接的に反映しているように思えます。10年後か100年後かの違いかもしれませんが。
他人に興味を持たない、関りを面倒くさいと思う、セックスに対する汚いイメージなどが作品中で問題にされていますが、そういう若者のメンタルが問題なのであれば、短期的には赤紙のようなサポートシステムもいいかもしれませんが中長期的には根本的な子育て及び教育システムの見直しが必要でしょう。子供たちを型にはめて自主性を奪い、同調圧力にさらすからこそ自分の思考を止め、積極性に欠く、強制されない限り他人と関わろうとしない無気力で死にたがりの人間が形成されるわけで、まずはそこから変えないとどんどん不自然な対症療法的なシステムができて破滅に向かうしかないように思えるんですけどね。
何はともあれ、この作品は現状に警鐘を鳴らす問題提起小説としてそこそこ読ませるものがあります。また、生きる気力をあまり持たなかった若者たちが恐る恐る手探りしながら人間関係を築いていく過程の不安や恐怖、乗り越えた時の喜びなどの細やかな描写に魅力があります。
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
パッと見、
村田沙耶香作品的な「こんな世界だったらどうなっちゃうんだろう」発進の
作品かな、と思うのだけれど、
主人公の立ち位置がそれほどスタンダードではない。
人物の話として読むと設定が邪魔をするし、
そういう社会の物語とすると、人物が邪魔をする。
社会自体も「誰が認めた?」と言いたくなるようなシロモノ。
近い未来に設定されているのがリアリティを遠ざける。
メッセージを込めようとして、イマイチ伝わってこなかった物語。
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急増する若者の「生/性」離れに、国が始動させたお見合いシステム「アカガミ」。
人が出会い、想い合い、つながり、新しい生命が誕生することは普通ではなく、奇跡的なことなんだなぁ。
少しずつ距離を詰めるミツキとサツキがとても愛おしい。
国のサポートを受け、何の不自由もなく整えられる環境。それは飼われているのでは?
「アカガミ」はやはり「赤紙」であった?
まだ先を見守りたいところで終わってしまったけど、微かな希望が見えた気がする。
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若者たちは人との交流を煩わくなって、友達や恋人がいないという、極端な未来の話で設定が面白かった!!その後はどうなったのか、終わり方がモヤモヤしたので星三つ。
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後半かなり盛り上げておいて、尻切れとんぼ感が否めない。
解説では、最後のサツキの笑みは「圧倒的な肯定の力」として記載されているけれど、わたしには怖くてたまらなかった。これからどうなるかわからない3人の生活、不適合の意味、ミツキの母親、ログ、描かれていないことが多くてもやもや。また、赤ん坊が泣いている=ミルクしか頭に浮かばないミツキとサツキの今後にも、不安を感じざるを得ません。
個人的に思ったこと。ミツキの生い立ちや現在の母親との関係を考えた時に、こんなにも簡単にサツキや赤ん坊を受け入れることができるのだろうか。ところどころでミツキはアカガミという制度に対して疑問を感じている。けれど、「守られている」ことでその疑問を封印してしまう。そこを封印させずに向き合って命とか生きることの素晴らしさを描いていくのが窪さんの作品らしいんじゃないかなー、なんて勝手なことを思ってみたり。
ログの「恋愛や、出産や、子育てに費やされなかった時間を甘くみてはいけない。その時間は女に必要なものよ。その時間が全部、自分にだけ向けられたとき女は狂うの」という言葉にも苛立ちを隠せない。その意図や背景をもっと知りたい。ログの子どもの話も出てくるけど、うーん、もう少し描いてほしかったな、という印象。
現在放映されている「結婚相手は抽選で」というドラマとテーマが似通っていて、「結婚」というものを、「子どもを残すためのシステム」として考えていて。国家が予算を組んで行う事業である以上、ただただお金をつぎ込むだけでなく、そこにはお金をつぎ込んだ分の見返りを求められる。軍隊を彷彿とさせるような。でも、子どもって産めばいいもんではなくて、子育てって、壮絶で。その壮絶を、子どもの立場で経験している人は、結構いる。
現在も晩婚化やいろいろな生き方を認めていく時代の中で、どんどん少子化はすすんでいく。「若い人が日本を支えていくんだから、子どもは宝だ」とか「このままでは社会保険制度が成り立たなくなる」とか、そんなことは知ったこっちゃなくて。だったら、来るべきそんな将来に備えて制度を作りかえることが政治家の役割なんじゃないの?と思う。世の中の人が全員、子どもを持つことに肯定的とは限らない。子どもを持てない人だっている。ミツキとサツキのように、子どもを持ってから「こんなはずでは」と思う家族だっている。それを全部認めていけるような社会にするのであれば、少子化を対策なんてしちゃダメだって。少子化だっていいじゃない。ひとりひとりは輝いて生きてるんだ。
ログの言う「狂う」生き方かもしれないけれど、それがどうしてダメだっていうんだ。結婚して子どもを産み育てることだけが、幸せじゃない。
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舞台は2030年代の日本。
若者が他人への興味を失い、恋愛や結婚をしなくなり、どんどん進んで行く少子高齢化。
この辺はリアリティもあり、実際今の日本が少しずつ近付いている未来に思えた。
「アカガミ」という国の制度自体も突拍子もないものには感じられない。
「アカガミ」を通じて主人公ミツキとサツキが少しずつ心を通わせて行く過程や、妊娠した後のサツキの変化、またそれにとまどうサツキの気持ちの描写も良かったと思う。
そこまで丁寧に描いていた分、ラストに起きる急転直下と終わり方については、少し雑というか、放り出されたカンジがした。
謎も多く残ってるし、「アカガミ」側の対応も合理的なものとは思えなかった。
消化不良である…。
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少子化問題から、過去を描く。
確かに現代の若者は、あまり恋愛をしないのかもしれない。
会社の若い子達を見ていても、そんな気配すら感じられない人ばかり。
この話はそんな若者たちを国がカップリングして出産まで導いていく。
それが、アカガミ。
応募すれば、自分だけではなくて家族もが生活の補償をされる。
そして、妊娠した暁にはもっと手厚い生活が待っている。
ただ…その先に待っているものは…
戦争の時代の赤紙…やはりそれを彷彿とさせる…
2021.6.12
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他者に関心を持てなくなり関係性の希薄になった未来。
アカガミ制度に志願することで国から手厚い保護を受けながら
初めての恋、初めての夫婦生活、初めての出産を通して生きる実感を取り戻していく若者たち。
その裏に何があったとしても、その過程で得たものを支えにして...。
このラストから希望を汲み取るのは難しいけど過程の部分を思い返すことで希望も持てるんじゃないかなという感じが。
自分の人生に不意に現れた他者こそが希望の光。
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少し前に村田沙耶香の『消滅世界』を読んだばっかりだったので、作品が放つ匂いとでもいうのでしょうか、設定や世界観などの類似性に驚きました。念のためですがパクリとかいってるわけじゃないですよ。2作とも河出書房新社の「文藝」が初出で、発表もほぼ同時期なので、恐らく編集部が似たようなテーマでオーダーを出したのでしょうね。どちらも面白いですが、個人的な好みでいうと主人公たちの心情や行動により納得感があるという点で、本作のほうに軍配をあげたいです。まあ『消滅世界』は『殺人出産』との対比で評価を下げた面があるので、著者の他の作品を読んだら印象が変わるかもしれないのですが。
ところで、窪さんがこういうSFチックな作品を書かれる方だとは全然思っていなかったので、読み終えてちょっとびっくりしました。もちろん窪さんらしい官能描写もあるにはあるのですが、既読の作品と比べると随分おとなしめな印象です。意外性のあるラストを含めて、著者の新しい一面を見ることができる作品だと思います。ただ、設定を今から十数年後にしたのはちょっと早すぎたんじゃないかという気はしました。これほどの意識の変化がこんな短期間で起きるというのは、さすがにちょっと無理があると思ったので。
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物語の舞台は未来の日本。急増する若者の自殺と性、恋愛離れ。
国はお見合いシステムを始動させるが、、、
ミツキをアカガミに誘うログの位置付けも何となく謎なまま。
ミツキの母親も何となく放ったらし感があり、何処と無く落ちが纏まらない印象が(^^;;
アカガミは言葉から想像出来てしまったり、、、
何とも不思議な世界観だったが、私の好みではなかったなぁ。。
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読みたいと思ってたんだけども、いざ読んでみるとなんか違うというか、著者の他の作品の方が好きかな…。
私も半年以内には出産する身なので、あの終わりだと却って子宮を使った女性の方が狂ってしまうと感じる。
サツキは解放されて、そこではじめて生まれたのかもしれないけど。まあタイトルで想像出来るっちゃ出来るんだけど、希望を見せたいなら最後のサツキで急にまとめるんじゃなくて、ミツキサイドも描いて欲しかった。
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アカガミというシステムにより人口動態を維持しようとする国家プロジェクトの設定はとても面白い。現代の結婚観や家族観、性に対する拒否感を考えるとあり得ないとも言い切れないし、未来を考えるうえで避けては通れない仕組みなのではと思わされる。
一方で本筋となるこのアカガミシステムは、情報統制という古い仕組みがベースとなっており、ラストの展開も、国家プロジェクトからしたら本当にそうなる?という疑問符のつく内容であるところが残念。