紙の本
エンペラーズホリデー
2011/09/26 23:42
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画「英国王のスピーチ」は面白かった。よく考えてみれば、旧敵国の宣戦布告スピーチがクライマックスな訳で、そこを日本人が興味深くみれてしまうのも妙な話だが、そうした大状況の中での、一個人の孤独な戦いをよく映像化できていた。そのジョージ6世の娘を描いた「クイーン」も面白かった。日本でも同じような映画ができないものだろうかと思ったら、ちょうとよい格好の「青年」がいた。
20歳前後の青年が海外旅行をするのは、今となっては珍しくもないが、彼の父も祖父も海外に出たことはなかった。自分が初めてである。おつきの者に囲まれるのは国内にいるときと変わらないにしても、その程度は全然異なり、解放感を大いに感じることができた。何より、日本で会うことのできない、多くの海外の人にも会うことができた。皆、きちんと遇してくれた。「外に出る」ということについては、さんざん心配されたが、「習うより慣れろ」ということなのだろう、大方無難にこなせたし、この半年で自分の成長を感じることができた。これから担う「仕事」では、自分の理想が少しずつでも活かせるようになるのではないか。
その青年は帰路の船上で、こんな感じで大いに希望に胸をふくらませていたのではないだろうか。本書では、そんな一青年の教育環境からはじまり、記者会見、周囲の者の回顧録や政治状況といったものから、その一生を描いていく。没後20年をこえたが、おもいのほか、さまざまな資料が出まわるようになり、興味深い逸話や発言も多く収録されている。それだけでも興味深いが、それ以上に著者のストーリーテリングもうまい。
私の頃の昭和天皇イメージとは、なにより「感情を表に出さない人物」だった。長年仕えた侍従が亡くなったときの受け答えも「あ、そう」だったという報道がされたこともある。「天皇」とはそういう存在なのだと思った。しかし、それは「長い戦後」を生きてきたがゆえの言動とも解釈できる。近代戦における「敗戦国」の元首が無傷で残ったのは、おそらく「彼」だけだろう。もちろん、それだけに背負うものが多くなったのでもある。
本書によると、昭和天皇は、かなり頻繁にさまざまな積極的な発言・言動をしている。初期からの侍従が引退するときには「泣いた」とも言う。戦後の発言も意外に多く積極的だ。ただ、報道されなかっただけである。弟の発言に不満をもって、それを解消する意図もあって、回顧録の続編「拝聴禄」を入江侍従長と作成していたのは、とても人間臭く、かえって微笑ましい。
「『理性の君主』の孤独」というサブタイトルがうかがええるように、筆者の基本線は、大正デモクラシーという時代の子として昭和天皇という位置づけといってよいだろう。洋行帰り以後の宮中改革からはじまり、文字通りの立憲君主制の理想への気概も小さくなかったはずだ。ところが、周囲にいたはずの政党政治の選良たちもいつしか亡くなり、時代とともにその「同志」は減っていったわけである。また本書から改めて気づかされるのが、大衆社会化の影響である。昭和天皇の報道のされ方によるイメージ形成から、天皇自身がごく若いころから「新聞をよく読む」という習慣を身につけるている点など、興味深い。
かの英国王がスピーチをしなくてはならなかったのと、事情と似ているところもあれば、異なる部分もある。ただし、両者ともかなり生真面目に自らの役割をまっとうしようとしている。英国王はそれゆえに死期が早まったともされる。日本の彼は、「その後」の長い人生を生きることになった。そんな彼を支える思い出の一つが、一青年としての海外旅行だったという。
もしその青年の映画をつくるのであれば、「エンペラーズホリデー」と名づけてみたい。
紙の本
集大成的なまとまりと充実した内容
2011/08/07 12:45
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新書判ではあるが、これまでに明らかになった資料をもとに、昭和天皇に関する研究として集大成的なまとまりと充実した内容をもっている。東宮御学問所の教育、皇太子時代の欧州旅行によって、どのような政治思想形成がなされたのか、その結果としてどのような理想と責任感を持って天皇として職務を行ってきたかが、その仕事ぶりが、浮き彫りにされている。旧でも新でも憲法に則り立憲君主としての義務と責任を生真面目に遂行しようとして、孤立した姿がある。
「昭和天皇の政治思想の特色は、儒教の徳治主義を基盤としているだけに道徳主義的な色彩が強いことである。天皇は、国家において、そうした信仰や信念に相当する役割を果たしてきておりこれからも果たし得る、という認識が昭和天皇にはあった。」という見解は目新しいようだ。
本書を読んだ感想として、勝海舟が福沢諭吉の批判にたいして答えた「毀誉褒貶は人にあり。賞罰は我にあり。」というような言葉が思い浮かんだ。
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昭和は64年まで。
2011/04/22 20:56
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和天皇について書かれた他の本でも言える事だが、大体サンフランシスコ講和条約までしか書かれていない。タブーになっているとは思えないので、多分、サンフランシスコ講和条約以降の昭和天皇・宮中を扱った資料が殆どないからだろう。
逆に言えば、昭和27年以降の事柄は、まだ生々しい現代史にあたるのだろうか。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和天皇を知ることで、昭和の歴史も知ることができます。若く出天皇として即位されて、そんな人生だったのか。
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勇気ある行動。実証中心との標榜であるが、まあ偏りもなく資料を客観的に用いる姿勢は好感が持てる。しかし、孤独な君主とは洋の東西古今を問わないものだ。
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古川隆久『昭和天皇 「理性の君主」の孤独』(中公新書、2011年3月)税別1,000円
【構成】
第1章 思想形成
1 東宮御学問所
2 訪欧旅行
3 摂政就任
第2章 天皇となる
1 田中内閣への不信
2 首相叱責事件
3 ロンドン海軍軍縮条約問題
第3章 理想の挫折
1 満洲事変
2 五・一五事件
3 天皇機関説事件と二・二六事件
第4章 苦悩の「政談」
1 日中戦争
2 防共協定強化問題
3 太平洋戦争開戦
4 終戦の「聖断」
第5章 戦後
1 退位問題
2 講和問題と内奏
3 「拝聴録」への道
日本大学文理学部教授・古川隆久(1962-)による昭和天皇の政治史である。2011年度のサントリー学芸賞(政治・経済部門)受賞作である。http://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/detail/2011sk2.html
昭和天皇にまつわる書物は山のようにある。本書でも指摘されているように平成に入ってからの史料公開の進展により、研究水準も著しく向上している。
評者のごく主観的な印象では、井上清を源流にする「戦争責任論」、つまり戦前の国策決定に昭和天皇がいかに携わってきたのかという点が強調されてきたように感じる。
昭和天皇は、立憲君主として、憲法の規定する輔弼者の決定には従うという姿勢を大原則として自らを強く律していた。しかし、その一方で、その輔弼者が自らが求める「理想」と大きく乖離した内容の裁可を求めた場合に、それに対して「不満」「否定」の意を表明する。
批判論は、大原則よりも、大原則からはみ出た意見表明、国策決定への関与を取り上げて、それが不十分、誤りであったと指摘する。評者自身、そのような批判論にあまり共感ができなかった。
本書はそのような批判的評伝とは明らかに一線を画している。
本書は、昭和天皇が求める理想的な政治、つまり内政にあっては徳治主義、外交にあっては国際協調主義をどれだけ強く求めていたかという点が強調される。その上で、現実の政治過程の中でその理想が挫折していく様が繰り返されていく。
政治の表舞台に現れない御下問と内奏のやり取りを拾っていくことで、戦間期の協調外交路線が衰退し、帝国陸軍のごり押しによる大陸政策や三国同盟がぐいぐいと進められていく様子が浮き彫りにされる。
昭和天皇は、摂政時代から繰り返しテロの脅威にさらされ、軍部の青年将校や右翼からは「軟弱」「平和主義者」として強い批判を受けてきた。昭和天皇が信頼を寄せていた側近や政治家も次々とテロの標的となり、天皇の側から離れていった。
政治思想も、側近人事も孤立化していった非常に困難な状況下にあってもなお、昭和天皇が陸軍に対してブレーキをかけんとしていた姿勢は十分に評価する必要があるのではないだろうか。
軍人勅諭を奉じ、軍旗を掲げ、皇軍を名乗る帝国陸軍が、現職の天皇位にある大元帥・昭和天皇の意図を汲もうとしないどころか、強く抗弁し、時には虚偽の答弁までする。まして、天皇以外の組織・個人に対して���天皇直隷・統帥権の独立を盾に反対意見を封殺するのである。吐き気を催すほど不愉快な組織である。
最終的には太平洋戦争という全く無謀な戦争を仕掛けるという異常な時代にあって、国制の最高位者が「理性的で」「正常な平和」を求める姿勢を持ち、帝国陸軍や排外主義にたける国民世論と対峙しなければならなかった。昭和天皇の苦悩はいかばかりであったろうか。
本書を読み、太平洋戦争開戦前の戦争回避指示や、「開戦の詔勅」に込められた「豈に朕が志ならんや」の言葉の重みが大きく変わった。もっと大げさに言えば、昭和戦前期の見方が変わった。
この時期の歴史については、山ほど文献が出ているが、本書はその中でもまず最初に読むべき一冊に数えられるだろう。このような研究が、学者向けの専門書ではなく、新書という一般の人が広く読める媒体で出版されたことは本当に幸運なことだと思う。
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メモ
昭和天皇論。彼については賛否両論あるが、時事能力に長けた学者肌で頭脳明晰だったようだ。欧米に親近感を抱いており、国際協調を望み、平和主義者かつリベラルで国体の欺瞞を見抜き国民に近い皇室を目指した。君主としての自覚があり、戦前のみならず新憲法下でも政治的な発言をしたとされる。しかし、満州事変を経て軍部や右翼が台頭し、思想的にも孤立して戦争を抑えられなかった。戦後は戦争責任論に苦しめられた。
彼の在位期間中を中心に89年の生涯は壮絶だったし、戦争責任はないわけではないが、国体という大義名分で軍部や政治家に利用された悲劇の人ということもできると思う。
主権者としての天皇や先の大戦の賛美、一方で象徴としての天皇制を否定することはないが、そろそろ客観的に考えるべきだと思う。
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全てを理解できたわけではなかったけど、初めてきちんと昭和天皇の生涯を追い、知ることができて良かった。
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客観的史料に基づき客観的に論述しているという印象。
意外と昭和天皇のことってよく知らなかったんだなぁと認識をあらたにした。
A級戦犯合祀以来、靖国神社を訪問しなくなった(富田メモ)というのも驚き。これは最近読んだ他の本にも書いてあったが。
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昭和天皇の普遍主義的思想がいかに形成され立憲君主制を理想としながらも、一連の戦争により思想的に孤立していったか。国体としての存在がどのように軍部に利用されたか。昭和天皇の視点から第一次世界大戦後から太平洋戦争という時代を見るのに非常に有益なものだった。
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実証史学の手法が駆使されており、まさに「昭和天皇の実像を知りたい」という欲求にこたえてくれる良書。ことこまかに史料の出典が示されていることに信頼が持てる。昭和天皇がほんとにリベラルな平和主義者であり、それゆえ孤独に陥っていたことがよくわかる。どれだけ憲法で強大な「権力」が規定されていても、実際に「権威」が受容されていないと、いかに無力であるかということも再認識した。
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ありそうでなかった「昭和天皇の伝記」。新書で400ページを超える大作だ。
国を意のままに操れる絶対君主ではなく、立憲君主とは何とも難しい立場だ。すべてが思い通りに行くわけではないし、「やーめた」と最近の日本総理大臣のようにあっさりと地位を放り出せるわけでもない。そんな難しい立場で史上最高の天皇在位期間を全うした昭和天皇。超人的な忍耐力を持った人だ。
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実証史学の手続きに忠実に,昭和天皇の実像に迫る,とても良い本だった。ただ,新書なのにかなり重たくて,読了までに8時間ほど要した。夏休みのサイパンで半分,帰国して残りの半分。あとからふりかえってみてびっくり。
昭和天皇の側近が遺した日記などの一次資料から,様々な回顧録までを適切に史料批判しつつ論を組み立てており,信頼に足る評伝といえる。かつては史料が乏しく,またイデオロギーの時代だったので,昭和天皇の伝記は書く者の政治的立場が強烈に出ていたそうだが,本書は極めて中立的。
昭和天皇は,1901年生れで,思想形成を大正時代に終えている。大正デモクラシーと言うように,自由主義的な雰囲気の溢れた時代に教育を受けた。誰しも生れる時期は選べないが,こうして平和主義者,国際協調論者としての天皇をいただくことになったのは不幸中の幸いだったかも。
元老西園寺が健在だった昭和のはじめころまでは,天皇の考えが周りにも支持されていた感じなのだが,満州事変が起こり,日中戦争が始まってくると,だんだんと天皇の周りから人が消えていき,天皇は徐々に孤立してしまう。
陸軍は天皇を軟弱者とし,一部が暴走して政府要人や天皇の側近を狙うテロが頻発。そのような中で,戦争を回避しようとする天皇の考えはなかなか賛同を得られなくなっていった。
結局対米開戦のやむなきに至ってしまうが,一旦始まった戦争は,やりぬかなくてはならない。敗色が濃くなってくると,昭和天皇はなんとかもう一度戦果をあげて,有利な条件で終戦できないかと考えるが,それも空しく,沖縄が陥ち,二発の原発が落とされて,最後は聖断によってポツダム宣言を受諾。
最後まで徹底抗戦論者も少なくなく,クーデターや天皇に対するテロの恐れも大いにあったが,終戦の聖断は下された。良き立憲君主たろうとした天皇個人の想いがこの決断に表れたのだろう。実際に玉音を収録したレコードが,一部軍人によって強奪未遂にあっている。
終戦後は,戦争責任を背負いながら長く公務をこなした。戦争を主導したのが自身ではないとしても,開戦を決断し,厖大な犠牲を出してしまったことについては責任を痛感していたようだ。摂政時代を含めて70年もの間,苛酷な立場に立たされてきた昭和天皇。やはり偉大な人物だったと思う。
昭和天皇は,摂政宮時代からずっと趣味として生物学をやっていて,もちろん進化論などもよく知っていた。それでいて戦前には現人神とかされていたわけで,その辺,居心地の悪さもかなりあったんじゃないだろうか。
もともと生物と歴史に興味があり,どちらに取り組んだらいいか,というときに,歴史は政治的に差し障りあるよねってことで生物学を選んだそうだが,生物学もなかなか考えさせられるところがあったんじゃないかな。理系の学問をやってると,社会に対してもちゃんとした見方できるような気が。少なくともそういう素養がついてくるような気がするな。
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本書は、昭和史をより深く解明した良書であると思った。1989年(昭和64年)の昭和天皇の死去を契機とし、昭和天皇の側近や深く関わった人々の日記や書簡が明らかになってくることにより、昭和史の政策決定に関わる奥の院の様子がだんだんと解明されてきたことは興味深い。
本書は「昭和天皇ほど評価が分かれる歴史上の著名人は少ない」と語る。最近まで宮内庁は、発信する情報量の少なさからマスコミから[菊のカーテン]と揶揄されてきた。昭和史の大きなエポックである日中戦争とそれに続く太平洋戦争についても、その開戰に至る詳細な政治的過程が全てわかっているわけではない。今に至るまで「なぜ、負ける戦争に突入したのか?」という疑問は誰しもが抱いていると思う。太平洋戦争においては、日本人だけでも310万人の死者、アジア全域では1000万人とも2000万人ともいわれる死者を出し、現在でも総理や天皇がアジアの戦争関連国に行くと、「お詫び」の言葉からはじまらざるを得ない。戦争への道は、大きな誤った政策であったことは明らかであるのに、それについての統一した国民的認識はいまだに成立していないように思える。昭和の戦争についての名称さえ「太平洋戦争」「大東亜戦争」とバラバラである。成熟した歴史認識が成立していない理由の一つに、政策決定の詳細が明らかにされていないことがあるのではないかと思われる。本書は、その貴重な奥の院をより明らかにしていると思った。
本書によると、昭和天皇は一貫して英明な君主であるように描かれている。「思想形成」では「神格化とは無縁の大正デモクラシーの空気をたっぷりと吸収した青年君主」の姿が描かれ、1921年(大正10年)の摂政就任においては「意欲的な皇室改革に邁進」する姿がみえる。日本が戦争に傾斜していく過程では、昭和天皇は親英米で協調外交路線をもちつつも、強硬な陸軍に引きずられる姿が描かれている。1929年(昭和4年)の張作霖爆殺事件や1931年(昭和6年)の満州事変においては、「決定を現地軍が実行しない場合に天皇の権威が損なわれる」という理由で陸軍に譲歩する姿が描かれ、「昭和天皇の協調外交路線はすっかり時流から外れた考え方になってしまった」と昭和天皇をかばうかのように本書では評価する。そしてだんだんと軍部の発言力が強化されていき、「昭和天皇が国政を掌握するのが困難に」なったとみる。1937年(昭和12年)の盧溝橋事件、その後の三国同盟締結そして日米開戦においては、昭和天皇が努力しつつも、状況に流される姿が詳細に検証されている。
本書は、歴史的事実を昭和天皇に目一杯好意的に解釈した本であると感じた。側近の日記等を数多く引用した解釈には一定の説得力はあるが、ここまで昭和天皇が無謀な戦争政策に抵抗している姿が真実ならば、なぜ陸軍が従わなかったのかと疑問を持つ。ましてや時代は絶対天皇制の時代である。ちょっと違和感がつきまとう。
もしこれが事実だったとしても、現在では一般的には上司と部下の意見が違った時に、部下の意見に迎合して大失敗した場合は、上司の意見を無視した部下が悪いのか、指導力がない上司が悪いのか。部下の人事権は上司が握っている以上、上司に全ての責任があるの���当たり前のことである。まだまだ昭和天皇については歴史の検証が必要であると思った。
本書によると1976年~1985年にかけて作成された「拝聴録」や「大東亜戦争御回顧録原稿」(独白録)等、計14袋の関係資料が行方不明だという。宮内庁の管理下で重要文書が行方不明などありえないとしか思えず、意図的な隠蔽と言われても仕方がないのではないかと感じた。1945年(昭和21年)の敗戦時に公文書の焼却を命じた閣議決定もそうだが、歴史の記録は国家と国民の共有財産であるという認識が欠けているのではないかと感じた。
本書を昭和の時代を解明するために高く評価すると共に、この時代は、まだまだ解明が必要であると思うものである。
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終戦の聖断を下した時、昭和天皇は44歳だったという書評を何処かで読んで、自分の生きた昭和を体現する昭和天皇に関心が出てこの本を読んで見た。流石にサントリー学芸賞を受賞するだけのしっかりとした内容。読みごたえあり。