日本書紀の謎を解く 述作者は誰か
著者 著:森博達
七二〇年に完成した日本書紀全三十巻は、わが国最初の正史である。その記述に用いられた漢字の音韻や語法を分析した結果、渡来中国人が著わしたα群と日本人が書き継いだβ群の混在が...
日本書紀の謎を解く 述作者は誰か
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商品説明
七二〇年に完成した日本書紀全三十巻は、わが国最初の正史である。その記述に用いられた漢字の音韻や語法を分析した結果、渡来中国人が著わしたα群と日本人が書き継いだβ群の混在が浮き彫りになり、各巻の性格や成立順序が明らかとなってきた。記述内容の虚実が厳密に判別できることで、書紀研究は新たな局面を迎えたといえる。本書は、これまでわからなかった述作者を具体的に推定するなど、書紀成立の真相に迫る論考である。
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学術ノンフィクションの傑作
2007/08/14 00:03
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
古代史研究では、古事記もそうだけれど、日本書紀の記述の信頼性というのはつねに大きな問題だ。なにぶん、文献史料がそもそも書紀、古事記程度しかない時代についてのことなので、書紀の周辺史料から書紀の信頼性を確定することができない。批判的記紀研究の先駆け津田左右吉の議論においても、やはり具体的な根拠に欠けるせいか、そうも言えるし、こうも言えるという感じで議論が明確な叩き台を得られていないように思える。これまで、書紀を用いて古代史を論ずる前に行われるべき文献学が手薄だったと著者は指摘している。
この本では、記述の表記、文体といった形式面つまり「いかに書かれているか」という観点から、書紀を徹底的に分析していくという試みになっている。いわば文献学的吟味を経て、最終的に「誰が書いているか?」を推理していくという謎解きが展開されていく。
この文献学的研究による謎解きが滅法面白い。先が気になって仕方がないうえに、謎が解かれていく推論の展開がエキサイティングな学術エンターテイメントとして楽しめる。まるで推理小説のような面白さだと学術書やノンフィクションを褒める人がいるけれど、こういう面白い研究書を読むと、話が逆だと言いたくなる。推理小説が学問的探求のような面白さを持っていることがある、と言わねばならない。現実にある、本当の謎を解いていく、解こうとする面白さは、推理小説では味わえない。
で、この本の何がそんなに面白いのかというと、全三十巻の「日本書紀」という歴史書の文体、表記、文法を様々な観点から分析することで、それぞれの巻ごとに決定的な違いが見られること、その違いから述作者がどの言語に習熟している人物なのかを判別し、その情報を元に、書紀の各巻の書かれた順番と作者をすら推理してしまうというアクロバティック(トンデモという意味ではない)ともいえる論理展開だ。一種の犯人探しゲームといえる。
その犯人探しには平安以前の上代日本語の表記、文法、音韻の専門的知識、さらに漢語で書かれた書紀を分析するのに必須の当時の中国語のそれとを総動員していて、なおかつ契沖から本居宣長、橋本進吉、そして夭逝の秀才有坂秀世といった国語学、日本語学における偉大な学者たちの学説をおさらいしつつ書かれているので、読者は近世から現代に至る研究史のエッセンスを知ることができる。
それらの方法から、書紀がまず大きく二つの群に分けられることがわかる。一つは中国語ネイティブが書いたとおぼしき中国語原音に乗っ取った万葉仮名が用いられているものと、日本人が倭音に依拠して万葉仮名を用いたものとの二つだ。最初の群においては、「ミズ」を「ミツ」と表記するなど中国語ネイティブ特有の誤記が見られることも指摘されている。これらの情報から、書紀の編修過程と述作者を具体的に特定していく。
いやあ、凄い。音韻、文法といったほとんど文字情報しかない状況から、日本書紀が立体的な像を結んでいくさまは暗号解読にも似た面白さがある。述作者と編修過程の具体的状況については論拠が少なく、やや安易に結論づけているきらいはあるが、途中の議論の展開は手堅く説得的で、隙がない。少なくとも私にはそう見える。
専門的な知識が逐一解説付きで紹介され、好奇心を刺激されながら、日本書紀中国人述作説にいたる謎解きが展開していくわけで、これが面白くないわけがない。一般向け学術書の理想的な一例といってもいいのではないか。学術ノンフィクションの珠玉の一冊。
以下に詳細記事あり
「壁の中」から
日本書紀
2021/01/14 16:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本書紀の音韻や文章などにふれられているので、面白いといえば面白いが、あまり興味がない部分もあり、難しかった。