商品説明
第160回芥川賞受賞! それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。 あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。すべては取り換え可能であったという答えを残して。
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紙の本
参考書のようにマーカーで線を引いて
2019/10/27 12:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:1ベクトル - この投稿者のレビュー一覧を見る
仮想通貨を捉える視点の斬新性と登場人物の会話の鮮やかさに、一冊はマーカーで重要なところに線を引き、同時に真っさらなもう一冊が欲しくなり、私の家には単行本版が二冊あります。とてもいい小説だと思います。第160回芥川龍之介賞を受賞されたのも宜なるかな。会話に知性が刺激され、かつ素敵です。
紙の本
青春小説の王道
2019/03/28 16:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第160回芥川賞受賞作(2019年)。
仮想通貨の世界を描いていると聞いただけで、もしかしたら私にはこの作品は無理かもしれないと感じていたが、読み終わってみると、確かに仮想通貨の世界はどのように成り立っていて、主人公の青年がそれに関わっている仕事のことも理解できなかったのだが、それらの部分を外してみれば、この作品は青春小説の王道のような仕掛けになっていることに気がつく。
主人公である中本青年(僕という人称で物語は進む)、「ニムロッド」というネームをもつ同僚の小説家志望の青年、そして離婚経験がある今は中本と交際している女性田久保紀子。
男二人と女が一人。
彼らが織りなす世界は、例えばアロン・ドロンが主演したフランス映画の「冒険者たち」(1967年)と同じではないか。
均衡しながらあやういバランスが壊れていく。
それは凱旋門にプロペラ機で突っ込むことと仮想通貨を採掘することの違いがあるだけのような気がする。
山田詠美選考委員は「選評」で、この作品には「小説のおもしろさすべてが詰まっている」と絶賛している。
また川上弘美委員は「小説としての強度を感じる」と評している。
二人の委員が使っている「小説」という言葉には造られたものという意味があるのだろうか。だとしたら、「ニムロッド」が作中で描くSF的な小説もまた造られていくバベルの塔のようなものであるのだろう。
もっといえば、青春そのものがいつか崩れ落ちるバベルの塔ではないか。
紙の本
心地良い虚無感に包まれる
2020/08/30 23:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
サーバ管理の本業の傍らで仮想通貨をかじることになる主人公と、小説家志望の同僚ニムロッドの掛け合いを中心とした中篇。虚無から価値を産み出す仮想通貨を扱ったストーリーが、登場人物のどこか人生に対して投げやりな雰囲気と相まって、現代的な虚無感を表現している。
ストーリーの合間に挟まる、飛行機開発史における役に立たなかった機体の話も良い。人は何のためにこんな飛行機を造ったのか、誰も止めることはできなかったのか。仮想通貨にしろIT土方にしろ、というより今の社会で、何のために何かを生産しているのか、人はなぜ…みたいな心地良い虚無に包まれる一冊
紙の本
さまざまな方の評は見たけれど・・・・
2019/03/01 22:29
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:玉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
レビューを書いてくださるみなさん、ありがとうございます。
新聞等の書評を読んでも、きれいごとすぎて・・・。
特に、芥川賞については、えっと思うことがたびたび。
自分がピンとこなかった映画を評論家が激賞、ということは、
今回もありました。
この本のレビューの中にも、
正直に私と同じような感覚を書いてくださっている方もいらっしゃいます。
的外れになってはいけませんが、私は、
ここまで、この本がほめられることに違和感があります。
ごめんなさい。
紙の本
ネット文章から芥川賞か
2020/01/23 20:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者は、確信犯的にネットにある文章を並べて小説を書いている。自分の言葉で紡ぐ小説に意味がないと言わんばかりだ。どうせ世界はこうなるからという諦念感も振りまく。東方洋上に去る、という旧日本海軍太田正一の言葉がとても気に入ったのだろう。どうせ、自分の言葉なんていうものは存在しない。小説なんてものも、意味はない。そう言いたいように読める。
でも、この小説は芥川賞にとった。賞にふさわしいと判断された。いいのか審査員。選評にある「哀惜」「エロティック」という言葉は、一読者の感覚だがどうも縁遠い。