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いちばんここに似合う人
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教える娘。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で、頭がはちきれそうな中年女。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人...
いちばんここに似合う人
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いちばんここに似合う人 (CREST BOOKS)
商品説明
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教える娘。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で、頭がはちきれそうな中年女。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人――。強烈な個性と奇妙な優しさに満ちた16の短篇を、物語の声にぴったりと寄り添う岸本佐知子訳で。フランク・オコナー国際短篇賞受賞。
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紙の本
「ヘン」だけど現実と地続きの物語、「いちばんここに似合う人」。
2011/04/25 16:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わったら「卒業」のラストのダスティン・ホフマンみたいに叫
びたくなった。「ミランダぁぁぁぁぁ!!!!」。いやいやだって、こ
れはスゴい。希なる才能、ってのはこういう人のことをいうのだな。ミ
ランダ・ジュライ、映画監督で小説家、16の物語を集めたこの短篇集は
フランク・オコナー国際短篇賞も受賞してる。第一回Twitter文学賞海外
部門の第一位でもありました。
収録された短篇は、どれもが奇妙、というかかなりヘン。シニカルな
笑いに溢れ、不思議な読後感を持っている、例えば、英国のウィリアム
王子に対する妄想で頭がはちきれそうな中年女の話とか海もプールもな
い町で泳げない老人たちに洗面器一つで泳ぎを教える女の話、会った事
もない友人の妹に劣情を催す老人の話(この結末はぶっとぶ)などなど。
しかし、この「ヘン」は確実に現実と地続きなのである。ククククッと
笑い、アホか、とつぶやきながら読み進めていくうちに、主人公たちの
孤独にコトリと突き当たる。たぶん、それは自分も持っているものだか
らアヤヤヤヤとなってしまうのだ。でも、ミランダは「それがデフォル
トなのよ」「そんなもんなのよ」「別に珍しくもなんともないのよ」っ
て言ってるような気がする。否定も肯定もせず、ただ側にいてくれるだ
けの人、のような小説。いいなぁ、ミランダ・ジュライ。いったいどこ
から、彼女のような才能はやってくるのだろう?訳者、岸本佐知子にも
感謝!!!
ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より
紙の本
人生はうまいこと行かないことだらけだと登場人物が嘆けば嘆くほど、その通りだと私は共感してしまう
2019/01/31 21:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画監督でもあるミランダ・ジュライの表題作を含む短編集。寂しい独身女、寂しい独身男、寂しい夫婦の物語。韓国系男性(既婚)に惚れてしまう独身女「共通パティオ」、架空の妹に合わせるといって家に男を連れ込むホモセクシュアルな独身男「妹」、”影”と出会った少女時代を引きずる独身女「2003年のメイクラブ」など、どの作品も悲しい女と男が登場して一つとして心が洗われる、というかハッピーになる作品がない。といってこの作品集がもちろん嫌いなわけではなくて、心が洗われないところが好きだ。人生はうまいこと行かないことだらけだと登場人物が嘆けば嘆くほど、その通りだと私は共感してしまう
紙の本
映画監督が書いた小説、って聞くと、眉に唾をつけたくなりますが、これがなかなか、どころか大変に面白い。まず、水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘っていうだけで笑えます。
2011/08/09 20:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
黄色い本が好きです。昔、風水が爆発的に受けていたときのテレビ番組で(思えば、あの頃は地上波受信ができたのです・・・)、金色を幸せを招く色として紹介していました。そして、黄色を金色に準ずるものと位置づけていました。うーん、ホントかな、なんだか急に自身がなくなってきましたが、どもかくその影響で私にとって黄と金色は特別な位置を占めるようになったのです。
しかし、どうも今回ばかりは居心地が悪い。黄色もやけにきついし、タイトル文字もしっくりきません。こういうシンプルなカバーは、ある意味、使用フォントとレイアウトが全てなんですが、ピンと来ない。
*
Original Jacket Design by John Fulbrook 3
Design by Shinchosha Book Design Division
*
とありますが、オリジナルデザインに問題があったのかもしれません。新潮社装幀室らしからぬ、とだけ言っておきます。それにしてもカバーに
No one
belongs
here more
than you.
Stories by
Miranda
July
とだけいれて失敗すると、凄く外した気がします。さて、内容ですがクレストブックらしくカバー折り返しに
*
No one belongs here more than you.
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで
水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国の
ウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそう
な中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友
人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)――。孤
独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮や
かに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞
を受賞した女性監督による、初めての小説集。フ
ランク・オコナー国際短篇賞受賞作。
*
目次に従って各話を簡単に紹介しておきましょう。
「共同パティオ」The Shared Patio:パティを共有する子どもが欲しい夫妻と、自分の権利をさり気無く主張する娘
「水泳チーム」The Swim Team:水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘
「マジェスティ」Majesty:英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女
「階段の男」The Man on the Stairs:寝入った恋人の横で、外の階段にいる男の気配を感じる女
「妹」The Sister:会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人
「その人」This Person:とてつもなく素晴らしいことが起きようとしている男
「ロマンスだった」It Was Romance:ナプキンで目を隠し、指示されるままにロマンスのことを思う40人の女たち
「何も必要としない何か」Something That Needs Nothing:家を出て二人暮らしを始めたものの家賃すらままならない女たち
「わたしはドアにキスをする」I Kiss a Door:エレノアが歌うライヴで出会った彼女の父親は、信じられないほどハンサム
「ラム・キエンの男の子」The Boy From Lam Kien:恐怖はいつも家を出て二十七歩めで襲ってくる。そこで出会った男の子
「2003年のメイク・ラブ」Making Love in 2003:家財道具一切を車に突っ込んで教師の家に押しかけた作家志望の女子学生
「十の本当のこと」Ten True Things:ソーイング教室にいたこともある秘書が興味を抱くのは自分を雇っている会計士の彼女
「動き」The Moves:父が死ぬ前に娘の私に教えてくれたのは、女の人をイかせる指づかい
「モン・プレジール」Mon Plaisir:子どもがいないセックスレス夫婦が応募したのは映画のエキストラ
「あざ」Birthmark:ポートワイン母斑と呼ばれるあざを取るのを、整形手術費用が安くなるまでまっていた女の術後の人生
「子供にお話を聞かせる方法」How to Tell Stories to Children:長いことつきあっていたサラとトム夫妻に子どもができた。少女の名前はライアン
訳者あとがき 岸本 佐知子
以上です。
笑ったのは「動き」。いやはや、そんな感じで読みました。「水泳チーム」もなかなかいい。これだけでいい映画ができます。いや、当然ですね、だってミランダ・ジュライはカンヌ映画祭新人賞受賞の映画監督なのですから。暗い室内でじっくり撮ってもいいですが、明るい空の下、水とは無縁の砂漠で撮っても様になりそうです。
「モン・プレジール」も、読んでいて微笑がこぼれる。「わたしはドアにキスをする」「ラム・キエンの男の子」「2003年のメイク・ラブ」は、どこかで読んだような、そんな気持ちにさせる親しみやすい作品。日本の作家で言えば小川洋子あたりが一番近いかもしれません。ともかく、笑えてもどこか物悲しい。小川ファンなら、スンナリ入っていけること請け合いです。
紙の本
自由奔放なのに寂しげな短編集
2016/05/18 23:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は映画監督ミランダ・ジュライの短編集です。
不器用な生き方をする人達を題材にしていて、会ったこともない他人の妹に恋する独身中年、洗面器ひとつで老人に水泳を教えようとする少女が登場します。癖のある人をありのままに描写していて、岸本さんの奔放な訳文とマッチしています。かなりロックです。性描写も少なからずありますが、飾り気のないありのままの人々が描かれています。
荒削りな作品が好きな方はぜひ。
紙の本
読者の想像力を掻き立てる作品集。
2011/10/10 15:45
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
岸本佐知子訳。16編からなる短編集。
フランク・オコナー国際短編賞受賞。
作者のミランダ・ジュライは1974年生まれのパフォーマンス・アーティストで、映画監督や脚本家としても活躍しています。
読者の想像力を掻き立てる作品集なのですが、やはり女性向きと言えるのでしょう。
凄く感性豊かな作家だと思うので、一般的に感受性の強い女性が読まれたら満足できるのでしょうか。
そして女性が読まれたら各登場人物に自分の中の似た部分を感じ取り投影出来るでしょう。
そうですね、作品中に“自分の物語”を見つけることができる楽しみがあるのでしょう。
逆に男性読者の私はちょっと共感できないところがあったのですが、どの編の主人公も自分の世界というものを持っていて、その自分の世界というのが孤独という言葉と紙一重であって、そこをどう見極め楽しめるかがこの作品の
評価が決まるのだと思われます。
作品の内容が肌に合うかどうかは別として、作者の発想の斬新さには度肝を抜かれます。
そうですね、お洒落と感じるか退廃的すぎると感じるか微妙ですね。
作者本人がきっとキュートな人なのだろうという先入観があって、登場人物が総じてキュートじゃない点が。
男性読者は贅沢です(笑)
それにしてもいろんな人生がありますよね。
各編、孤独で妄想的な主人公が登場します。
とりわけ印象的なのは「水泳チーム」ですかね。
水が一滴もない場所で老人たちに水泳を教える主人公、滑稽ですよね。
でも滑稽では片づけれない何かがあるのですね。
それ以外の各編も奇妙な話が多いです。
凄く柔軟性のある頭脳を持ち合わせてなければ書けないなという内容のものが多くって、少々面食らいました。
ついていけない部分もあります。
そして現実逃避的ともとれるような話が多いのですが、読者によっては作品集全体を通して自分自身のアイデンティティー探しに一役を買うような作品集になりうることも可能かなとも思われます。
私の場合はちょっと無理だったのですが(笑)
少し余談ですが、岸本さんの訳は上手すぎてあまりにもすんなりと入ってくるのですが、本作に関しては多少なりとも英語をかじったことのある人間であれば原書で読んでみたい衝動に駆られます。
どのような言葉を用いて書かれてるか興味をそそられるのですね。
たとえば日本人作家が同じように描けばジュライが描くようにお洒落に感じないと思います。
そのお洒落さを味わうためにも機会があれば原書に挑戦したい一冊ですね