なんだか不思議なお話
2019/06/11 21:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ショウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の内容を理解するには、あとがきまで読まないと難しいかもしれない。途中まではシンプルなサクセスストーリーに見えるのだけれど、後半からはお話がガラッと変わる。個人的にはシンプルなサクセスストーリーのままで最後まで進んだのも見てみたかったのだけれど、まぁこれはこれで。
ただ、とにかく難しい。英語から日本語への翻訳で意味が変わってしまったのか、比喩的な表現が多くて、これは何を指しているのかなど分かりにくい部分も多くあった。文体は軽くかなり読み進めやすいと感じた。
サクセスストーリー部分まではちょっと不思議な科学話、みたいな様相だったのだけれど、その後はかなり複雑で不思議なお話。人を選ぶかもしれないけれど、表紙の絵でジャケ買いするならいいかもしれない。
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著者の最新作。
あらすじや装丁と、終盤の展開にギャップがあって、完全に予想を裏切られた。また、一種の『お仕事小説』という側面もある。
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「いいもの食べなきゃね。それが自分の血となり肉となるんだから」
「春になったら、苦みのある山菜を食べて、体に春がきたよーって知らせてやるの」
とは、私の友人の名言である。
食べることが好きで、美味しいものが好きで、食事というものに、それなりに重きをおく人だ。
そういう人が友人であり、家族もそうであり、自身もそうである私にとって、主人公ロイスは、全く未知の存在だった。
彼女は、まともなものを、食べたことがない。
自称ベジタリアンであっても、皿に緑のものを載せたことがない。
それなりの味覚が備わっていて、
『完璧にかりっと揚がっていて、ファストフード店のフライドポテトなんて目じゃない。塩がたっぷりまぶされていて、どんどん食べられたフライドポテト』(33頁)
などと食べ物について語れることが奇跡のようなものだ。
そしてその職場はといえば、私からすれば、これは人間の居場所ではない。
『人間の労働環境を刷新するのがわれわれのミッションなんだから』(13頁)と、ロボットアームに人の代わりをさせるべく、たくさんのプログラマが仕事をしている。
日々、日夜、帰宅も出来ず、もはや帰宅する気もなく、まともな食事を採らず、むしろその存在すら知らず・・・・・・
ミッションとやらのために人が人間性を失ってどうするのかと、悲しくなってしまった。
そんな一プログラマたるロイスが、ひょんなことから美味しいものに出会う。
パン種(スターターあるいはカルチャー)を手に入れ、
あろうことか、パンをこね始める。
それから色んな人に出会って、人間性を取り戻して、
イケメンに恋して、お洒落に目覚めて、
「きみ、けっこうかわいいんだな」とか言われて、
最終回には、そのイケメンと、ステキな店をオープンしてるんでしょう?
あの月9か朝ドラみたいにー!
・・・・・・と、なるかどうかは、読んでいただきたい。
ドラマにあまり詳しくはないが、たぶん、この本のような展開のドラマも映画も、今までなかったのではないか。
あまり類をみない物語なのだ。
感心するのは、この本に「否定的」な描き方が無い点である。
食べ物についても、主人公についても、人々についても、あんな職場の経営者や従業員たちについてさえだ。
ロイスのプログラマとしての性分は、むしろ肯定的に、物語を運ぶ力となっている。
彼女がプログラムに取り組む様子を知って、私はロボットアームに人間的なものを見た。
簡易食糧たる吸引ゼリーには、大きな夢と理想を感じた。
さらには「絶対的肯定」もない。
こういったテーマの本にありがちな、自家菜園万歳といったことがない。
原始と文明、資本と反資本を対峙させて、どちらかを絶対とするような、そんな陳腐な問答はない。
なにかにつけ「攻撃的な否定」「絶対的な肯定」が氾濫する昨今、この「否定しない」物語は、稀有で嬉しい存在ではないか。
実際、私にしてもオーガニックでバランスのとれた食事だけをとってはいない。
インスタントやファストフードを食べることもあるし、むしろけっこう好きなほうだ。
冒頭の友人だって、ドーンとすごいラーメン写真をSNSに挙げては、私をビックリさせてくれる。
それが現実、今ある世界だ。否定してどうなるというのか。
お気づきだろうが、これはミステリーではなく、
ましてやコージーミステリーではない。
よって殺人はなく、探偵もおらず、巻末にレシピもない。
スターター(カルチャー)も、マズグのサンドイッチも、レンバス・ケーキ、サワードウ・ピザ、"失恋男のためのうたげ"、
そしてあのスパイシースープのレシピもない!
夢中で一気読みした本ではあるが、私は絶対的な肯定ができない。
「レシピがない!」
この一点が、不満で残念で残酷な一冊なのだから。
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版元の創元社さんでパンを焼くブームのきっかけになった作品というのをツイッターで見かけ、気になって読んでみました。解説が池澤春菜さんで、パンを焼いてみたくなります。
不思議なスターター(パン酵母)を譲られてサワードウ(天然酵母のどっしりしたパン)を焼くようになってから、かなり不健康なプログラマー生活をやっていたロイスが変わっていく。一風変わったお店が集められたファーマーズマーケットのオープンを前にいろいろ問題が持ち上がってついにスターターの正体が……過去と現在が絡み合って物語が進むのと、ロイスの性別を意識させない感じが好き。
パンに顔のように見える亀裂が出来たり、スターターが歌うような音を出したりと、ちょっと不気味さを残したまま話が進んでいくので、もしかしたらパラサイトイヴみたいな展開が来るのではと途中思っていました。(当たらずも遠からず?)
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おもしろかった。お腹すいた。パン食べたい。
新しいものと古いものの共存が、ユニークな形で成り立ってておもしろい。
ベルリンでどんなレストランが出来上がるのか、想像すると楽しい。
わたしもダブルスパイシー食べてみたい。
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サンフランシスコってサワードウが名物なんだ。知らなかったな〜。
終盤、昔話のような展開で意外な方向へ。でもロボットアームをすてて素朴なほうへ回帰するのじゃなく、新しい道を探そうとするところがいいよね。
それをいうなら、ブラック企業のような会社も、パンを焼き始めてすぐにやめるのかなと思ったら意外と粘り強く働きつづけていたし、そこらへんに著者の信念が現れているみたい。おもしろかったです。
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現代的であり、ファンタジーでもあり、
ロイスの性格がいいせいで出会う事柄が面白い方向に進む。
面白い小説でした。
パン食べよう。
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ノンフィクションかと思わせるような小説である。きっとある程度は実体験があると思う。
主人公はロボットを制御するシステムを開発するIT企業で働く若者だが、ひょんなことでパンの発酵種(スターター)を入手し、それで作ったパンがおいしく、いろいろと認められてパン屋になるといったストーリーである。
このパンは「サワードゥ」sourdoughという馴染みうすい種類で食べたことがあるかかどうか分からないようなもので、なおかつサンフランシスコの近辺で繰り広げられる話なので土地勘というか、雰囲気が伝わらないのだ。
そんなに美味しいパンを食べてみたいと何度も思うくらいだったのだが、パン作りが好きな人には本書はおもしろく読めると思う。サンフランシスコに詳しいなら猶更である。
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http://kariabookdiary.jp/2019/08/31/sourdough/
感想はブログにて
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日々の労働に疲れ果てていたロイスが気まぐれで頼んだデリバリー。その美味しさにつられて常連となったもののその店が閉店することになり、彼女はパン種を譲ってもらう。そのパン種は実に奇妙で、夜中に歌ったり出来上がったパンに笑顔を刻んだりさせる…
というなんだなんだという序盤から、あれよあれよと不思議な世界が展開していきます。やたら規模の大きな謎の地下マーケットや代々受け継がれるパン種の秘密、そしてロボットアームが卵を割りパンをこねる……コメディのようで実際読んでいて笑える描写や比喩も少なくないのですが、その実、活力を見失っていた女性が自己を取り戻し生きる道を見つけていくお話でもあり、彼女の行動や選択ひとつひとつを気持ちよく追っかけて読んでいくのでとても軽やかな気分になれました。
こういう話では、だから現代のシステム化された労働は!ブラック企業は!自然こそ素晴らしい!みたいな極論に走りそうですが、そんな単純には描かれてないのが子の本のいいところです。
先端技術開発に携わる女性が主人公が、その現代の最新技術を生かしてこその展開になっています。つまり「文明と文化の共存」が楽しく愉快に、ちょうどいい程度のファンタジックさを添えて描かれているんですね。そのバランス感覚がちょうどいいな、と思えました。
海外文学はどうしても合うかな、どうかなと考えながら読み始めるのですが、序盤の文体の軽やかさから一気に話に惹きこまれて、大変楽しく読ませて頂けました。
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IT企業のSEとしてハードな生活を続けるロイスは宅配レストランのパンとスープを食べることで活力を得ていた。そのお気に入りのお店が不法就労で閉店することになり、ヘビーユーザーのロイスにパン種をくれた。小麦を足し音楽を聴かせることで種は生き続ける。ロイスのプログラミングによるロボットアームとパン種が奇跡を起こす。
菌が増殖する不思議さがポイントの一つ。ちょっとファンタジックでサイエンスノベルといった感じ。
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たまたま知り合いが興味を持った本をSNSにアップしていたのを見て、ついつい入手。
パンを作るのが好きで、自分で生地をこねたりすることに癒しを感じていたので、この本の内容も大変興味深く読みました。
ストーリーはファンタジーなのですが、パン作りと新たなテクノロジーが融合したかと思うと、摩訶不思議な菌の世界に。微生物や菌類といったジャンルも好きなので、これまた楽しみながら読みました。
読み終わってとにかくパンを作りたくなりましたが、特にサワードゥを作ってみたいです。
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IT企業に勤務し疲れ果てたロイスは、近所の宅配レストランのパンとスープに活力をもらう。その店主が去る際に譲ってくれたパン種は実に不思議。歌を聴いて育ち、焼き上がったパンには笑顔が浮かぶ。
パンを作るのが好きなので読み始めた作品ですが、これは一体ファンタジーなのか何なのかと思いながら読み進めた。
ロボットとの融合、菌の増殖が出てきたりと、読み終わってみれば現実的な部分と少しのファンタジー要素が混ざり合った話なのかと思うが、そういうのはあまりこだわらずに読んだ方がいいのかもしれない。
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図書館で。姉が面白かったよ、というので借りてみました。
サワードウ、天然酵母パンだと思ってたんですがそうでもないんですかね。海外ではそちらの方が主流というのはよくわかる気がする。
日本のふわふわのカロリー高そうなバターやら牛乳やらの入ったパンよりも、みっちりどっちりしたパンの方が自分も好きだな。何より食事には合う気がする。
というわけで謎の兄弟からパン種をもらったプログラマーのスローライフ回帰、みたいな話。個人的には人からもらったパン種ですぐに商売に持っていく辺りアメリカ的だなぁと思う。というか、食品を売るのに調理師免許とかそう言うのは必要ないんだろうか?小説だから割愛しているんだろうか?ま、それはそれとして。
得体のしれない出自だけど、出来たパンが美味しいから!と作って近所に配ったり職場の同僚に配るのはわかる。でも食堂に卸してくれと言われて快諾する辺りからんんん?と言う感じ。私ならパン種をくれた兄弟に断ってからとか、体制を整えてから(例えばロイス会とか隣人に共同事業を持ちかけるとか)出店しようかと思うけど…良くも悪くも個人主義だなぁ、アメリカは。後は修行もせず自己流で作ったパンに絶大の自信を持つのもちょっとんん?と言う感じ。主人公は別にパン職人になりたい訳ではないんだろうけど…。だったら売るとか有名になるとかそう言う方向じゃ無くて職場の食事改善とかそういう方向に行けば良いのになぁとか思いました。
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翻訳の独特の言い回しやテンポに苦戦した。あとロイスたちが途中で誰が誰だかよくわからなく…。
主人公の心情に深く入り込んで、それをぐちゃぐちゃかき混ぜるみたいな小説じゃなくて、そういうところはさらりと描写して進んでいくところが、なんと言うか、新鮮だった。
登場人物たちの繋がりや関係がドライというか、ベタベタしてなくて誰にも肩入れしてないところも。
心身ともに疲れた主人公がおいしい食事と提供者に癒されて、自分も食事を作って人生が変わっていくっていうストーリーは日本でもよく見かけるけど、謎のサワードウ・ロボットアーム・未来食的アプローチなどの要素が散りばめられてて癒し小説に収まらないエネルギィッシュな小説になっているなと感じました。
まぁ正直キャラクターたちの行動理由や考え方などは、あまり理解できなかったけど、なんというかアメリカの爽やかさ、カラッとした雰囲気、みたいなものを感じた。
あと社畜はどこの国でも似たようなものなのだな、と思ったw