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安楽死・尊厳死の現在 最終段階の医療と自己決定
著者 松田純 著
21世紀初頭、世界で初めてオランダで合法化された安楽死。同国では年間6000人を超え、増加の一途である。容認の流れは、自己決定意識の拡大と超高齢化社会の進行のなか、ベルギ...
安楽死・尊厳死の現在 最終段階の医療と自己決定
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安楽死・尊厳死の現在 最終段階の医療と自己決定 (中公新書)
商品説明
21世紀初頭、世界で初めてオランダで合法化された安楽死。同国では年間6000人を超え、増加の一途である。容認の流れは、自己決定意識の拡大と超高齢化社会の進行のなか、ベルギー、スイス、カナダ、米国へと拡散。他方で精神疾患や認知症の人々への適用をめぐり問題も噴出している。本書は、“先進”各国の実態から、尊厳死と称する日本での問題、人類の自死をめぐる思想史を繙き、「死の医療化」と言われるその実態を描く。
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紙の本
誰もが直面する死の問題を考える
2020/04/12 11:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本ではあまり馴染みのない安楽死や尊厳死。私がこのテーマに興味を持ったのは世界一キライなあなたという洋画がきっかけだった。映画は事故で体が不自由になっった男性が、愛する恋人に生きてほしいと切望されながらも死を選択する物語だ。海外ではそんな選択肢があるのだと知り衝撃だった。
本書では安楽死を合法化する国それぞれの法律の内容やまた合法化されるに至った背景、さらに古くから様々な人々に考察されてきた安楽死や自殺の思想の歴史も知ることができる。
医師が患者に致死薬を注射して死なせる安楽死が合法化されている国が、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、オーストラリアのヴィクトリア州にあり、スイスやアメリカのいくつかの州では患者自らが医師に処方された致死薬を服用して自死する医師介助自殺が合法化されている。法律の内容に差異はあるもののいずれも苦痛を取り除く方法がなく、他に手段のない場合などに本人の意思が優先されて実行されるものだが、過去に安楽死を望みながらも認知症を患い抵抗した患者を押さえつけてまで安楽死をさせた例もあったという。
自己決定権を最優先しながらも、認知症で生きていても苦しいだけだという他者の意識がそこに入り込んでしまった結果起きた事件だったのではないかと思うと、本書でも取り上げられているナチスドイツの障害者等の大量虐殺が思い起こされた。古くから優生思想をふくめ安楽死には様々な議論があり、ニーチェも死を自己決定することで人間は生きるに値すると言っている。後にナチスにこの思想は利用されてしまうのだが、本書では人間は誰しも年をとれば他者に全面的に依存して看取られるものであり、誰しも自由にして依存的な存在であるのだとしている。そんな脆弱な人間であるからこそ、他者を思いやり、互いに支え合いながら生きる、そこが人間の高貴な部分なのだと。
超高齢化社会で死にまつわる様々な問題に直面しているが、本書の最後にあるように、たとえ病気で思い通りにならなくなっても、なんとか乗り越えようと前向きにいきることこそが健康というものであるというポジティブヘルスの考えがオランダで広がってきているように、それを助ける技術がますます発展することで死以外の選択肢を選び生きようとする人が増え、支え合いの社会が構築される未来を思いながら、自らにも関わるこの問題に真剣に向き合っていく必要性を深く感じた。