アレクサンドル・デュマの独特の世界が楽しめる一冊です!
2020/05/10 11:22
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、19世紀のフランス人小説家であり、劇作家であったアレクサンドル・デュマの作品です。同書は、我が国で初の邦訳版で、デュマの他の作品とはまた違った面白さが味わえる作品です。内容は、ある日、一人の男が市長の自宅へやってきて突然、「女房を殺して、捕まえてもらいに来た」と言います。その場に居合わせた作家デュマや市長らは、男の自宅の血塗られた地下室を見に行くことになりました。そして、男の自供の妥当性をめぐる議論が行われるのですが、それがいつしか各人が見聞きした奇怪な出来事を披露しあう夜へと発展していくというストーリーです。ぜひ、デュマの小説世界を楽しんでみませんか!
愛と情熱と不可思議。
2019/11/19 20:33
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
デュマ版『百物語』。妻を殺した男の証言から、死と肉体の関わりの話が始まる。若きデュマが聞き手に加わり、怪異を全く信じぬ医師、信仰深い僧、市長、曰くあり気な貴婦人が集まって不可思議な体験談を語る。
話が終わった後に何かが起こる訳でないが、読み手の感性のままに鑑賞しよう。
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間違えて削除してしまった。再度、ブログから感想上げ直しします。
ブログから感想を移しました。
枠形式といわれる物語の中に物語に込められていく語られていくのですが、タイトルの翻訳は大変だったでしょうね。
アラビアンナイトは枠形式の代表です。一つの物語の中にいくつも入っているので、私はマトリョーシカっぽいとか言ってましたが。
この形式はインド文学から大陸を流れて、アラビアでこうした形でまとまったものですので、興味がある方はアラビアンナイトは手に入れやすいですし、一度、読まれることをお勧めします。
インド文学だと「屍鬼二十五話」「ラーマーヤナ」、「カターサリット・ナーガラ―」「マハバーラタ」などが著名です。どれも面白いですよ、大好き。
百物語のような形式も面白かったのですが、物語としては科学的に怪異を解こうと始まる物語が、いつの間にか単なる怪談になるのは勿体ないなと思ってしまった
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怪奇、というか奇妙な話のオムニバス。超常現象だけでなく、それと科学との対立も描かれていたり。あるいは当時の歴史背景が細やかに描かれていたり。いろいろな読みどころがあります。
ギロチンのくだりがもう何ともいえず恐ろしいなあ。個人的には死に至る苦痛は恐ろしいものの、死そのものに関してはあまり恐ろしいと思わないのですが。これは……嫌かも。そして当時のフランスの時勢が、歴史などではさらっとやった程度でしたが。こんなにも恐ろしいことが行われていただなんて! ある意味、幽霊よりなによりも恐ろしいことかもしれないなあ。
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はしがき
第1章 フォントネ=オ=ローズ市、デジアヌ通り
第2章 セルジャン小路
第3章 調書
第4章 スカロンの家
第5章 シャルロット・コルデーの頬打ち
第6章 ソランジュ
第7章 アルベール
第8章 猫、執達吏、そして骸骨
第9章 サン=ドニの王墓
第10章 ラルティファイユ
第11章 髪の腕輪
第12章 カルパチア山脈
第13章 ブランコヴェアヌの城
第14章 ふたりの兄弟
第15章 ハンゴー修道院
年譜
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殺人の場に偶然居合わせた著者が、出会った市長宅に招かれ、
集った人々から奇怪な体験談を聞くことになる。
短編を枠物語の形式で綴っていく幻想怪奇譚。
年表有り。
「この人殺し!」生首がしゃべったことが発端。
死とは?死体が動くことはありうるのか?
当時の科学の論議から始まり、集った人々が語っていく。
市長ルドリュー・・・ギロチンの犠牲者の怒りと悲しみ。
医師ロベール・・・判事のもとに訪れるのは呪いの産物か?
ルノワール士爵・・・サン=ドニの王墓の事件と亡霊たち。
ムール神父・・・死刑となった盗賊との約束は果たされるのか。
アリエット氏・・・商人の妻が遭遇する不可思議な出来事の数々。
グレゴリスカ夫人・・・敵対する兄弟。弟の死。毎夜訪れる者とは?
デュマ版「百物語」という感じ。
実在の人物や歴史に架空の人物も混ざり、幻想的な印象です。
生首はしゃべり、憤怒し、口づけする。
死体はメダルを守るために抵抗し、呪い、悪しきものに憑依され、
或いは吸血鬼となり邪な想いで夜な夜な訪れる。
と、なかなか怖い話が揃っています。
その時代の歴史的背景(フランス革命や王政復古)、
地理的条件(モルダヴィア等)に思い巡らしながら読むのも、一興。
余談ですが、実在の人物でサン=ドニの王墓の話を語る
アレクサンドル・ルノワールに興味を持ってしまいました。
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1850年頃の連載物。
死がこんなにも身近なものであるその空気感、
時代的な思想や背景描写、宗教観、
うまく出している、見事な訳出でした。
ゾクゾクする怪奇話の連続なはずが、
神父の章ではこころをぐいと掴まれました。
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こないだまで見てたドラマで主役のルシファーが「今までさぞひどいことを地獄で行ってきたんだろう恐ろしい!」みたいな一方的な罵りを浴びることがあって「違うよー。本人の罪悪感がリアルになるだけだよー。だからどんな悪人でも罪の意識がない人にとっては地獄は全然恐くないよー」と優しく解りやすく解説する。生きてるうちに罪悪感でびくびくし、現実ではない出来事に対して怖がる。お化け、幽霊、妖怪、そういったものはいると思う人には重要だし、信じない人には存在しないもんで。要するにさ、何が悪魔か、何が悪かを決めるのは自分なんだ。
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19世紀ヨーロッパ、主人公である作者は旅先で不可思議な事件に関わり、その縁で集まった人々がそれぞれの不可思議な体験を語る。
はじめに事件が起き、集まった人々がそれについて語り合っているところなど何となく推理小説のような状況だが、人々の話はHowdunitではなく、怪奇な事象に対して否定的な唯物論者に対しての百物語へと発展していく。
語られる幻想的な短編はそれぞれ魅力的で、夢中になって一冊読んでしまった。訳も大変読みやすい。
全体を通して、とくに王侯貴族の描かれ方などに他の時代物作品と通じるデュマらしさがある。なんと多彩な作家なのだろう。もっと幻想文学作品を読んでみたいものだ。
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怪奇幻想譚好きは絶対読んだ方が良い。流石「三銃士」を書いたデュマだけあって面白い!
ギロチンで切断された後も喋る生首、幽霊、呪い、吸血鬼……辺りのキーワードが好きな人にはオススメです。
ただの怪奇幻想譚ではなく、人体実験やメスメリズムなど、当時の『科学』の視点も組み入れつつ、18世紀~19世紀辺りのフランスの歴史も絡めて物語を描いてるのがこれまた手が込んでる。(実際に歴史上存在する人を登場人物にしているあたり、山風にも通ずる感じの面白さ…)
タイトルの「千霊一霊」は「千夜一夜」リスペクトから来てるらしいですが、市長の家に招待された客が順番に自分たちが体験した不思議な怪奇幻想譚を語るという体裁、「千夜一夜」というより、日本人にはなじみ深い「百物語」のお作法ですね。本邦初訳。
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アレクサンドル・デュマによる怪奇ロマン中編。
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27歳の作家アレクサンドル・デュマは、狩猟のためにフォントネを訪れていた。
狩りも一段落ついたところでデュマは血塗れの男を目撃する。
男は石切夫のジャックマンと名乗り、市長の家の玄関先で告白する。「俺は自分の女房を殺した。捕まえてくれ」
市長のルドリュは警察官たちと共に現場検証に向かうが、ジャックマンは現場に戻ることを激しく拒絶する。
どうにか現場であるジャックマンの自宅についた一行は、血塗れの地下室で首を切られた女房の遺体を見る。
ただでさえ凄惨な事件だが、殺人犯ジャックマンはさらに恐るべきことを告げる。「斬り落とした女房の首が俺に向かって喋りかけてきたんだ!」
翌日。
デュマは証人としてルドリュ市長の自宅に呼ばれる。その場に集まったのは、警視のクザン、現実主義の医師のロベール、自称不死者の文人エッテイラ、神秘主義者司祭のムール、博物館創始者のルノワール子爵、青白い顔をした美女グレゴリスカ夫人。
彼らの話題はジャックマンの証言のことに。切り落とされた首にはまだ意識があるのか?死んだ人間の意思がこの世に留まることがあるのか?
彼らは一人ひとり、自分が見聞きした不可思議な経験を語ってゆく。
ルドリュ市長
若い頃身を焦がした恋とその悲痛な終わり、しかし死んだ恋人の意思としか思えない不思議な出来事を語る。
ロベール医師
殺人犯に有罪宣告をした判事が、死者が戻ってきたとしか思われない経験をして衰弱していく姿。
ルノワール子爵
フランス革命で暴かれた国王たちの墓。だが王の遺体を侮辱した男はは不思議な人影に招かれて…。
ムール神父
人間には善良な性と邪悪な性がある。死ぬときに人の意識に残るのが前者なら天国に行くし、後者なら地獄に落ちるだろう。ムール神父が、あるならず者の魂を救おうとしてとった行為とは。ならず者の善意は勝ったのか。
エッテイラ
亡夫の遺言を果たすため、その意思に導かれた未亡人の話。
グレゴリスカ夫人
ポーランド出身のグレゴリスカ夫人の家族はロシアからの独立の戦士だった。一族の城に敵が迫り、修道院に匿われに旅に出た彼女は、モルタヴィア領で領主の息子に囚われる。独立、戦争、王家、吸血鬼伝説…。
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物語の背景は、フランス革命も終わったものの、人々の記憶にはまだ新しいという時代だ。登場人物たちの間に、恐怖の時代を共に生き延びたという共有感がある。
処刑方法としてのギロチンについて、一瞬で命を奪うから人道的という理由もある反面、斬られた首が動いたり喋ったりしたという目撃談もたくさんあったらしい。この処刑方法については、作者デュマの熱意を感じるのだが、彼の時代にも議論が交わされていたのだろう。
あとがきに書かれた作者アレクサンドル・デュマの経歴がなんというか…作品よりもドラマチックというか人騒がせというか(苦笑)、やはり面白いものを残す人は本人も強烈なんだなあと思う。
…女性問題も��産問題も色々やらかしてるのに、庶子達が面倒みてくれたって、よくできた子供たちだとも思った。
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デュマが偶然居合わせた殺人怪奇事件から物語が発展していく。
物語は事件の解決がテーマではなく、偶然集まった人々が体験したそれぞれの怪奇現象がテーマ。
フランスの時代背景もよくわかり、それぞれの幽霊話も描写が鮮明でどんどん物語に引き込まれ、あっという間に読み終わった。
解説部分もアレクサンドルデュマをもっと知れて興味深かった。