人口減少社会が持続的であるためになすべきことを多角的に論考
2020/03/29 15:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本にとって喫緊の課題となっている「人口減少社会への対応」に興味のある方にお薦めできる1冊である。
筆者は、人口減少社会が持続的であるためになすべきことを多角的に提案する。ドイツ以北の欧州を手本にしたコミュニティ重視のまちづくりや、鎮守の森・自然エネルギーコミュニティプロジェクトなど、耳を傾ける価値のある提案も登場する。著者のリベラルな思想には賛否があるかもしれないが、高度経済成長の呪縛をいまだに引きずり、経済成長がすべてを解決するという幻想に取り憑かれた日本にとって興味深い論点を提示しているのも間違いない。
筆者は人口減少社会の意味から説き起こし、コミュニティやローカライゼーションの重要性について論じる。その後、人類史における人口減少の意味を位置づけ、ポスト成長社会を議論する。さらに持続可能な社会保障、持続可能な医療、持続可能な福祉社会といった時宜にかなった論点について持論を展開する。死生観といった話題を取り上げるのも本書の特徴である。
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地方の過疎化や少子高齢化等の現代で問題とされているこれらの事象は、政策として狙った結果であって問題ではないという斬新な考えである。
しかし経済規模が縮小していく日本に於いては、人間古来のライフスタイルを取り入れ、身体を動かし、長く働き、コミュニティを大切にすると提言されています。
進化生物学の考えを取り入れた合理的なアプローチですね。
その為にも、北欧などの街や交流の作りを学び、取り入れていく必要があるとも提言されています。
しかし著者は経済や社会保障に関して無知すぎるのか、生産性向上を捨てるだの、政策立案者に廻すと民主党政権時代に戻りそうな世間知らずです。
そして途中からだいぶスピリチュアルな展開になっていき、ついていけませんでした。
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数字が極端に苦手な私にも、グラフや表が豊富にあってわかりやすかった。
イントロダクションで紹介されていたヨーロッパの「歩いて楽しめる街」の紹介はウットリした。
高齢化社会で、車乗るのも高齢者は控えろとなって、町の商店街はなくなり、車利用が前提のアメリカ型の郊外型ショッピングモールしかないということであれば、生活が回らないし、買い物や散策の日常的な楽しみさえもなくなる。
姫路や高松の例のような街がもっと増えてほしい。
アメリカばかりを追いすぎて、今もまだそこから抜け出せない。ヨーロッパ大好きな私でさえ、手放しでヨーロッパ礼賛はできないけれど、自然、生命に優しい未来、持続可能な社会を目指して進んでいくことを願う。
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## 感想
- 2019年ベスト3に入る。面白い!
- ドイツと似ている日本。どのように社会を作っていけば良いのか、が書かれた本。地域経済っぽい話が入っていたり大学のセンセイらしい切り口で書かれているのも良かった。
- 最後の方、なぜか哲学的なスピリチュアルな話もあったが、それはこの人の趣味っぽいのでご愛嬌(悪い感じではない、むしろ個人的には好き)
## メモ
人口学者のルッツ「20世紀が人口増加の世紀だったとすれば、21世紀は世界人口の増加の終焉と入口高齢化の世紀となるだろう」とあるが、日本はこの先頭を走っている。
p178
人口減少が確定している社会において、富の分配が求められてる中、トレードオフが苦手な日本人は、将来世代まで判断を先延ばしにした結果、1000兆円の借金を抱えることになった。
pt266
死生観を大きく3つに分けると、神道的な層、仏教(キリスト教)的な層、唯物論的な層、の3つがある。
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2050年の日本は、持続可能なのか。
AIが導き出した未来シナリオに基づき考察していきます。
「都市集中型」か「地方分散型」か。
東京一極集中と地方衰退により格差は拡大しますが、財政は改善されていく。
地方への人口分散により格差は縮小し、幸福感は増大しますが財政は悪化する。
どちらをとるのか、それとも他の道があるのか。
ジャンルを横断した研究から、10の論点と提言が示されます。
超お勧めです。
やや誤解されている点と思われるが、実は近年において地方の人口減少が顕著であるのも、 以上のように高度成長期に若い世代が”ごっそり”抜け、いわば残った層が現在高齢となり、 亡くなるようになっているという面が大きいのである。実際、たとえば秋田県を見ても、若者を中心とする人口流出が圧倒的に大きかったのは1960年代前後の高度成長期であり、近年の流出(社会減)は当時に比べればずっと小さい。
したがって現在私たちが直面している地方の人口減少問題は、実は“高度成長期に起こったことの負の遺産”という側面が大きいのであり、若い世代のローカル志向など、近年新たに生じている現象はむしろ希望がもてるものが多いという認識が重要ではないだろうか。
97ページ
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人口減少社会のデザインと具体的な政策提言や対策論を期待するがそういった本ではない。
数値やグラフなどが出てくるが既に有名になっていて周知の事実のことばかり。
著者の主張を述べるものの論拠や具体的な数字の裏付け資料が乏しく著者の頭の中の話だけでしかない。
そもそもの著者のイデオロギー的な主張が反資本主義、反経済発展。
それ以前に経済学的な知識が怪しい。でたらめを流してるテレビのワイドショーレベルの知識のよう。
政策らしきものの主張が民主党そのもの。
内容についても中盤以降はやたらスピリチュアルで哲学的な話になり論外。
著者の経歴を見てみるとどうやら専門は哲学史のようでまぁそれも納得。あと著者は団塊の世代のど真ん中でこのイデオロギー的な主張にも納得。
既に経済発展で利益を得た世代が十分に経済発展したから今からは縮小均衡でいいと言う。
同世代らしい傲慢な考え方。
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http://yasu-san.hatenablog.com/entry/2020/04/11/060612
目次
イントロダクション:AIが示す日本社会の未来--2050年、日本は持続可能か?
第1章 人口減少社会の意味--日本・世界・地球
第2章 コミュニティとまちづくり・地域再生
第3章 人類史の中の人口減少・ポスト成長社会
第4章 社会保障と資本主義の進化
第5章 医療への新たな視点
第6章 死生観の再構築
第7章 持続可能な福祉社会--地球倫理の可能性
https://str.toyokeizai.net/books/9784492396476/
AIが示す日本社会の未来
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/314355.html
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資本主義における、市場への政府介入について、今までずっともやっていた部分が整理された。
また、少子高齢化による課題認識も、データを基に丁寧に説明している内容がとても納得できる。
現代の課題を社会的、経済的な面の過去の経緯から解説している良書だと思う。
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幅広い分野に言及されており全般通して興味深かった。
悲観的な「日本はもうダメだ」という内容かと漠然と想像していたが、そんなことはなく。意識の大転換ができるならば、日本という社会の持続可能性を信じられる気がした。
…とはいえ、日本社会の延命より、いかに自分が日本を出て生きていける人間になるかを考える方が現実的かな。
人類の次なる拡大・成長フェーズは宇宙開発?と個人的には思うところ。
ーーー備忘ーーー
高度な発展が世界に行き渡り、人口が維持・減少フェーズに入るのは(日本だけでなく)地球規模での展望。超長期的なトレンドから見ても、次は「拡大・成長」の時代から第3次「定常化」の時代。持続可能で幸福な社会の実現に必要なのは"人間らしい"あり方のデザイン。
・カイシャ・家族に偏らない地域コミュニティの形成
・高度な情報消費・効率追求の先の「life(生命/生活)」志向
・富の再配分としての税・社会保障(部分的BI)
日本は社会保障における福祉・負担のスタンスを議論せず、まだいない将来の世代にツケ回ししてきた。その結果が1000兆円にのぼる国の借金。これは異常事態。
高度経済成長の成功体験が、経済成長が全てを解決するという思い込みを強固にした。その思想の染み付いた層が政治を動かしている。皮肉にも当時の政策の"成功"が新陳代謝のない大都市と、地方の過疎・大都市の過密を招いた。
経済成長に対する信仰と議論の先送り、アメリカの中途半端な模倣でここまで来てしまった。
日本の持続可能性が高まるのは都市一極集中型よりも地方分散型のあり方。情報化は分散化と相性が良い。
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この本では人口減少社会における問題点と、その解決策となる案が提言されている。
印象に残ったのは農村型コミュニティから都市型コミュニティへの転換が課題であるということ。
「社会的孤立」的な状況が見られる中で、「集団を超えて個人と個人がつながる」ような関係性をいかに育てていくかが日本社会の最大の課題として挙げられている。
筆者はこの課題の解決策として、「コミュニティ空間」として都市というハードの面を中心とした提案をしているが、個人的にはこの本ではあまり言及されていない、教育にこそ都市型コミュニティを形成するための鍵があると思っている。
教室は小さな社会である。
そう言われるからこそ、この本に描かれている人口減少社会における課題と教室における課題はリンクしているように感じた。
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全体的にデータに基づいて説得力のある文章だと感じた。
人口減少は避けられないが、どこかで下げ止まった後、定常状態をいかに持続可能にするかが重要。そのためには、若者への人生前半の社会保障による少子化対策が有効。その財源として、税金や社会保障による国民の負担増を考える必要がある。高福祉高負担を選択したヨーロッパ、低福祉低負担を選択したアメリカに対して、日本は高福祉でありながら負担増の議論を先送りしてきた。負担増を考えるとき、家族以外への扶助の精神がないという現代日本人の孤立感が問題となる。そこで、コミュニティ感を高めるための都市デザインが重要となる。
今後の展望として、著者は多極集中が良いと考えている。極となる都市は多く存在し、それぞれの極は分散ではなく集約されて歩行者中心のコミュニティ空間になっているというものである。
ヨーロッパの都市は、都市の中心部から自動車交通を排除し、歩いて楽しめる空間、緩やかなコミュニティ的つながりを感じられる街が多い。一方、アメリカの街は自動車中心にできていて、人が歩いて楽しめる空間が少ない。例えば、郊外ショッピングモール型の都市像が指向された。アメリカをモデルにした日本も同様。
自分がアメリカよりイギリスやフランスの方を居心地がいいと感じた理由の一つはこれかもしれない。アメリカは街が悪い意味で大きく広いという感想を持ったのに対して、イギリスやフランスの方が歩き回っていて楽しめると感じた。
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人生前半の社会保障の強化、都市・福祉・経済政策の統合など共感できる点や勉強になる点も多かった。
特に以下については興味深かった。
・現在の地方都市の空洞化は、1980、90年代のアメリカモデルを模倣した政策の「成功」の帰結。
・女性の就業率が高い国の方が概して出生率が高い。
・現在の地方の人口減少問題は高度成長期に起こったことの負の遺産。
・人間の観念、思想、倫理、価値原理といったものはその時代状況における人間の生存を保障するための手段として生まれるのではないか。
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図書館でかりて読んでみたけど、自分の置かれている状況が時期的に良くなかったのか、読みづらかった。
手元においてもう一度読みたい。
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現在は、拡大・成長の時代から成熟・定常化の移行期にあるが、前時代の流れに固執する勢力と新しい時代に向かう流れがせめぎあっている時代と思う。ただ持続可能な社会を考えるとこれまでの拡大・成長路線で行くのは無理なのは火を見るより明らかであり、そこに歴史の必然性を感じる。医療や健康に関しては、コミュニティやまちづくり、環境といった領域を含む広い視点からとらえなおして、包括的な政策展開や実践を行うことが必要という提言は非常に共感できる。また社会保障の人生前半への強化、具体的には教育や住宅問題など、というのは今後の持続可能な社会には必要であり、そのような政策転換が必要と思われる。また東京一極集中から、地方などに多極集中すること、そして地域のコミュニティを重視していくことなど、もっともな考えだと思う。財源問題は消費税しかないというのは少し考えは違うところであるが、全体的に持続可能な社会への提言は納得できるものであり、本書を読み、なぜか未来に希望が持てた。
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読んでから時間がたってしまい忘れてしまった。
けっこういい評価が並んでいるので、もういちど読んでみよう。
こういうデータや示唆に富む本は、通勤には向かないかもしれない。家でメモをとりながら読むべきか。