煮詰まったジャムのような
2020/10/07 21:30
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投稿者:ゴムの木 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初のジャムの話が特に印象的。
このような老い方をしてはいけない。
親子の間に走った塞ぎきれない亀裂が痛々しい。
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キャンディーインポケット
控えめな女の子が誰と仲良くすれば効率的になるかという、
思春期の甘酸っぱい思いがぐっとくる物語でした。
思春期の女の子の心情がよく表れていて過去に遡っている気がしました。
ジャムの果て
家庭を一番に考えて子育て、家事に尽くしていたのに、
それが卒業となると途端に子供から見放されてた母親の物語。
夫にも子供にも自分を犠牲にしてまで尽くしてきた
人生なのに、それから解き放たれた時の心情が寂しくて切なくて
こんな思いを母親はしていたかと思うと胸が詰まります。
家庭から離れても自分の行き場の無い気持ちと孤独感も切なかったです。
空を根ざして
結婚したい女性とまだ結婚に踏ん切りのつかない男性の心模様。
どちらの気持ちも細やかに描かれていてリアルです。
結婚前の男性は一度はこんな気持ちになるのかなと思ったりしました。
五つ星をつけてよ
離婚をして実家に戻った女性が母親の介護をする。
そこでホームヘルパーへの悪い噂を耳にしてしまという物語。
母親の介護をしている時の心情がつぶさに表されていて、
母親に対してもヘルパーに対しても刻々と心情が変化していくのが
よく表されていて一番ドキドキした気分で読みました。
こうゆう事での悪い噂は聞きたくないと強く思いました。
ウォーター・アンダー・ザブリッジ
バンドを組んでいた男性を好きになりその頃の自分と
今の娘を投影しながら描かれた物語。
この作品だけはネットのレビューやSNSが登場することなく、
描かれていて他の作品とは少し違うテイストでふんわりと柔らかい
印象を持った作品でした。
親となったならばこうやって投影してしまうから
つい口を出しすぎたり束縛をしてしまうのかとも思えました。
君に落ちる彗星
専業主婦たちのブログアップについての物語。
ブログアップする人の心情、それを観ている人の心情など
ブログにまつわる人それぞれの心情がとても細かく書かれていて
思わず同じような人がいたなと笑ってしまいそうでした。
ただラストが「おや?」という気持ちになり、
この部分は必要ではないような気もして
不思議な印象になってしまいました。
どの作品も描写が細かく心情に関してはとてもリアルだったので、
こんな人達が何処かにいるだろうかと思ってしまいます。
日常のある一部分だけを切り取り、それを心地よい言葉で
表現をされていて言葉ではいい表せない満足感がありました。
タイトルでネット関係についてだけの作品の内容かと思いましたが、
それが出てくるのはほんの僅かでそれ以上に
心の通った人間らしさがたっぷりと出た作品でした。
あとがきで彩瀬まるさんの解説がよく書かれていて、
この作品をきっかけに他の作品も読んでみたいと思いました。
短編も良いでう長編を読んでみたいと思います。
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どこかで見たことある名前と思ってたら、すでに一冊読んでた方でした。
タイトルと装丁はポップで可愛いけれど、内容はきゅっとなったり、読んでて苦しくなったりしました。
携帯電話ができて、インターネットが普及して、
いろんな情報がダイレクトに届くなか、
情報に踊らされたり、その沼にはまってしまったり、
誰かから承認されないと満たされなかったり。
確かにショッピングサイトの評価を見て、購入を決めたりするし、ブログに反応があれば嬉しいし、いいねが、つけば嬉しいし。
でも渇望してる気持ちは満たされず。
他者の目、ことば、評価にさらされて
じゃあ自分はどうするのか。
改めて自分のいまの状況を考えさせられる一冊。
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なんだろ?
臭いものの蓋を開けてしまったような
違和感?居心地の悪さ?ザワザワ感?
でも、どの話も 分かる。
黒板に爪たてて キーッて音した感じ。
だけど 全部読んだ。
最後まで読めないパターンかな と思ってたのに
読んでしまった。
そう、読んでしまった…のだ。
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「キャンディ・イン・ポケット」通学の30分間だけの友達。見た目も付き合う人も世界が違い、なんとなく一緒に登校してるだけなんだろなと思われていると感じている沙耶。控えめで内気な感情や憧れ。後半に向かい少しずつ感情が溢れ出していく鮮やかさ。後悔と喜びの間で揺れながらも前に進む沙耶が素敵。
「ジャムの果て」ジャムの描写がいい。気分のいい時には光り色鮮やかに、子供達への不満を感じた後には鈍くどろりと重たいようなものに。良かれと思ってたことが押し付けだと言われ今までの自分はなんだったのかという失望。ジャムとうまく絡み合って面白い仕上がり。
6編全てに人への想いや距離感や他人の肯定、自分自身への肯定と、こうだったはずという思いをなかなか消せない日常が描かれていて面白かった。
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5つの短編の中でも、特に「キャンディ・イン・ポケット」の情景描写や人物の心の中を表現した言葉が特に気に入った。人物が生き生きと描かれていて、詩的な表現も多く、気に入った。女性の視点から描かれた男性は、こんな風に頼りなげに映っているのかという現実も感じた。
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久々のTぬオススメ本。ということで短編集。
う~ん、この本はジャンル付けが難しい。
自分なんかと思っている女子高生の話はちょっとわかるような気もしたけれど、
ジャム作りに没頭する母親にはウザイと思われるのも仕方ないとは思いつつ、それ以上にもう少し母親に優しくできないものかと思ったり。
まだ中学生なのに暴走してしまった女の子が母親になって自分が嫌っていた大人と同じようになっていたことを気づき、
娘と向き合うところなどは良かった。
どうしても人の評価を気にしてしまうとか、ほんとに今どきはそうだよなぁと思わせる話ばかりなのだけど、
どれも微妙に読後感を引きずる感じの本だった。
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PC上で輝く星(レビュー)だけが、進むべき道を照らしてくれる…。ネットのレビュー、ブログ、SNSなど、評価して評価されながら生きる人々の心を鮮やかに描き出す6編。
物を買うにも、お店の雰囲気も、小説や映画の善し悪しも、今じゃ全てが星次第。そこに自分の考えはないのかと言いつつも、こうやって星を付けてる自分がいる。何とも言えない世の中だが、匿名性が高い分、その評価には本音や真実が含まれていることも確かである。星を数えるのも見つけるのも自分自身である。本作の登場人物のように、自己を失わないことが大切だ。
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SNS中毒みたいなストーリーなのかなと思ってたけどどれも違った。
でもキャンディ・イン・ポケットは好きなお話だった。女子学生あるあるとゆうか、人気者やかっこいい先輩の側にいる事が一種のステータスのような。
あとは結局何が言いたかったのかあまり理解出来なかった。特にウォーター・アンダー・ザ・ブリッジは漣くんが何故あんなに執着したのか分からないままだった。もっと人物像を書いてほしかったな。
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どれもかなり・・・鮮烈な印象をそれぞれに受けた。面白い、というのとは少し違うような。
「他人が物や他者に下した評価」を簡単に知ることができる昨今、そこにクチコミのような信頼度やリアリティはなく、どれくらい参考にするかは自分で決めなくてはならない。けど、その自分の物差しもハッキリ定まりきらないのがつらいところ。他人の評価に右往左往する人を、わらうことはできないなと思う。
表題作は"星を気にする人"そのままの話だが、女子高生の友情についての『キャンディ・イン・ポケット』や、元アイドルのブログを書く側と見る側から描いた『君に落ちる彗星』でも、自分の中の評価軸について考えさせられる。
「三年間、そばにいてくれた相手を、どうして信じられなかったのだろう。」
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04
めっっちゃすき。
誰もが持ってて、でも隠している暗いところを
ちくちくと攻撃してくる。
全部好きだけど、読み終わって二週間経ってもタイトルも内容も覚えているのは キャンディインマイポケット、ジャムの果て、五つ星をつけてよ。
高校生の時、自分よりレベルの高い友達と一緒にいると誇らしさと劣等感があるよね。でも対等じゃないって思ってるから、一歩引いたりしたよね。
ジャムの果てはもうつらい。つらいからこそ心にすごく残る。最後裸足でどこに行ったんだろうか。
五つ星をつけてよ はもーーわかるわかる!
これだけ情報も物も溢れる世界で、自分の評価に自信がなくなって失敗したくないからレビュー参考にして
そしたら自分の意見に自信がなくなっちゃった。
最後、自分自身の評価を下せてよかった。
20200116
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私はこれから目を逸したくて桜蔭を受験したし、今は舞台の上の推しを追っているのかもしれない。どこまでも日常。痛いほどの日常。フィクションなんだけど、そこにドラマは無くて、ただただ日常。これを書ききれる、言語化しきれる作者さんはすごいなぁ…
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感動!とか、おもしろかった!とか、後味悪く怖かった、とか、鮮明な感想をもたせない。ただ、胸にジュワッと何かが残る。作者の奥田さんはどんな意図で、この年代、性別、状況の違う人たちを描いたのだろう…。
母に五ツ星をつけてほしい感情は、自分にもある。バランスとって生きていきたいな〰️、という願望をもつ自分も奥田さんにかかると、闇や穴があるのかな。
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ここで日々星をつけている者にとっては、なんとも言えない気持ちになるタイトル。それだけに、刺さる部分の多い一冊でした。
なんといっても設定といい心理描写といい、絶妙かつそして鋭い。奥田亜希子さんの作品は初読でしたが、絶妙かつ鋭い今を切り取る感性と、それを生かした心理描写に感嘆した短編集です。
収録作品は6編。いずれもネットやSNSが話に関わってくる。そうした現在的なものを扱いつつ、そこから浮かび上がる人の普遍的な心理を鮮やかに描き切ります。
表題作『五つ星をつけてよ』は、ネットのレビューを読み込む女性が主人公。ある日自分の母の介護ヘルパーの悪い噂を耳にした彼女は……。
「五つ星をつけてよ」という感覚は自分にはよく理解できる。このサイトでもそうだけど自分がいいと思ったものが、ほかの人が低評価で、なおかつその低評価レビューにたくさん「いいね」がついてることがある。
『でも自分は面白かったから』と強がっても、心のモヤモヤは晴れない。
主人公は自分は好意を抱いているヘルパーさんの悪い評価を聞くにつけ、自分以外の誰かの物差し、肯定を求め「五つ星をつけてよ」と思うのだけど、身に覚えのある感情を場面を通して鮮やかに描いていて、非常に印象的だった。
他に印象的な短編だと多感な時期の少女を描いた2編『キャンディ・イン・ボックス』と『ウォーター・アンダー・ザ・ブリッジ』も良い。
高校の卒業式の日の女子高生の友情を描いた前者は、ある事実の隠し方と明かし方が上手く、そこから一気に彼女への共感の感覚が深くなる。
そして、語り手の少女が友人のある一面を知った時の感情の描き方の鮮やかさといい、青春小説として抜群に素晴らしい出来の作品。
後者の短編は、この時期特有の青臭さや、なんだか盛り上がってしまう感情と、それへのシニカルな描き方が好印象の短編。
上記三編は爽やかな印象が強い短編ですが、一方で苦みの残る後の三編も、それらとまったく遜色のない完成度。『ジャムの果て』で描かれる親子関係、「空に根ざして」の男女関係、そして『君に落ちる彗星』の閉塞感のあるそれぞれの人生の断片。
ネット、SNSと現代の道具を使い、今を生きる人の心理を鮮やかに切り取った、個人的に刺さるところの多い短編ばかりの一冊でした。
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6篇の短編集。著者の「リバース&リバース」が面白かったので、他のも読んでみたくなって手に取りました。
「キャンディ・イン・ポケット」がいちばん好みだった。
主人公にはそこまで自分を卑下したり、へりくだらなくても、、、と思ったけれど、そうなってしまう気持ちもわかるから、原田先輩とのやり取りからのくだりは胸が熱くなって泣いた。
他の話も面白かったんだけど、余韻が残るほどはハマらなかったので星3つです。