紙の本
腑に落ちる本
2020/04/20 09:38
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
地名好きのオタクの本か、と思って、それでも面白そうだから読んでみた。
読んでみて、「失礼しました!」。
歴史的、文化史的、国語学的、社会学的と、
さまざまなしっかりした考察に裏打ちされた本だ。
歴史的な背景を持つ地名への愛に満ちていて、
それが失われることへの哀愁があふれているが、
破壊者達を激しく攻撃はしない。
ただ失われゆくものを悲しむだけ。
それでも、多数決による新地名を嘆き、
えせ科学的な災害地名に警鐘を鳴らし、
福島の地名を変えよと主張するリゾート開発業者に異を唱えるあたり、
気骨にもあふれている。
個人的には、友人が住む「おゆみ野」について知れたのがよかった。
訪れたことはないが、新興住宅地的な名前だな、「あゆみ」じゃないのか?
とか不審に思っていたのだけど、
生実という難読漢字ゆえに読みやすく変えたという
まことに腑に落ちる説明であった。
そう、この本は地名にまつわるいろんなことが
腑に落ちる本でした。
紙の本
盛りだくさんの内容です
2019/12/09 17:58
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
地名に関する知識が盛りだくさん、ボリューム満点の内容です。
できれば、歴史に強いと読みやすいと思います。
古来の日本の地名を簡単に消滅させまいとする著者の気持ちが伝わる内容です。
紙の本
人気の地名、忌避される地名
2019/12/06 21:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治以降、市町村合併や町名の地番整理によって消滅した地名は著者によると、百万の単位にのぼるらしい。地名消滅の事例として、◆ブランド地名の拡大、例えば東京の銀座は時代を追うごとに拡張を重ね、明治期に比べ11.8倍の面積となり、これに伴い多くの地名が消滅◆忌避された地名の消滅、「下」、「北」、「新田」などの付く地名、例えば小田急線の下北沢駅の所在地は北沢二丁目、かつては下北沢。昭和7年に大東京市が誕生した際、上北沢は存続し、下北沢は北沢と改名◆従来からある地名を捨て、東、西、南、北、中央等をつける改名。例えば、さいたま市の区名選定委員会では、学識経験者の多くが地理・地名に関する専門家ではなく、地理の専門家の有益な意見を黙殺して、平凡な名称になった経緯等々。
地図・地名に関する書籍を多く執筆している著者が、全国各地の地名変遷の事例を紹介、安易なひらがな・カタカナ地名、キラキラ地名の増加に警鐘を鳴らしている。また、地名の文字に拘泥して、土地の安全性を云々することは、多くの地名が改名・変遷していることを踏まえると、無意味であると指摘している。
著者曰く、「地名は絶対不変たるべしとまでは、断言しないが、今よりもう少し歴史的地名に敬意をもって接することが必要ではないだろうか。」全く同感である。
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<目次>
第1章 地名の成り立ちと由来
第2章 駅名と地名の関係
第3章 キラキラ地名が生まれる事情
第4章 土地の安全性が地名でわかるのか
第5章 地名を崩壊させないために
<内容>
平成の市町村合併が終わり、多くの市町村が消えていった。また地名も激減している。地名そのものの危機とその状況を丁寧に書いたもの。
「高輪ゲートウェイ」がきっかけのようだが、著者の言う通り、手遅れの可能性も…。どの時代の地名ならいいのか?というラインもないが、昔からそう呼ばれているわけと使用頻度が、地名を使うかどうかのラインではないか?誰もが「ああ」というものが地名だろう!
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タイトルに惹かれて購入。
普段、電車で通り過ぎる駅名やニュースで聞く地名など改めて由来について着目すると、「地名にも歴史あり」というのを実感しました。
本書では、様々な地名・駅名を挙げて、分析をしています。比較的、関東の地名や駅名が多く載せられているので、関東の人には親しみがあるかと思います。
こうして、由来について改めて見ると、「あーたしかに」と思ってしまった地名が続々とありました。
合併されて消滅してしまった地名や新たな地名が誕生したりと何かのきっかけでないと、あまり意識しません。
近年では、漢字とカタカナ、漢字とひらがなの組み合わせも目立ちます。なんとなく漢字のみだった硬いイメージから丸みを帯びた柔らかいイメージへと変化することは、時代の流れでもありますが、なんとなく違和感もあります。その例が「高輪ゲートウェイ」駅。何年か経ったら、慣れるかもしれませんが、これで良いのかなぁと思ってしまうこともあります。近い将来、このような組み合わせが当たり前になるかもしれません。
地名で考えると、色々と合併されて覚えやすくなる反面、消えた地名が寂しくなります。何十年か経ったら、多くの人の記憶から忘れ去られるかもしれません。
自分自身としましては、生まれた故郷・今まで育った場所の地名・駅名だけでも記憶の片隅に残していけたらなと思います。
世間としましては、何かの商品や店名などに昔の地名を加えて、未来へと残してほしいなと思いました。
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高輪ゲートウェイ駅のことを書いたネット記事で紹介されているのを見て手にした新書。
地名の由来から、駅名との関係、合併だとか住居表示法とかでどんどん崩壊させられてきた地名について。
実家は平成の大合併を免れて、生まれた時から変更なし。川の上流下流で上下の地名が残ったまま。田舎っぽい名前ではあるものの、残さないといけないんだろうなと思った。
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久しぶりの新書。タイトルに興味をもち本屋で衝動買い。自分の知ってる地域の地名の由来などは読んでて面白かった。歴史的価値のある地名が消えてただの整理番号のような住居表示になってしまった事が残念って言う本だった。
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今尾さんらしい本であった。ただ、今までの著作を読んでいない人には取っつきにくいかも。図表を多用するとより分かりやすくなると思う。
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地名にもキラキラネームの波は押し寄せて
います。
市町村の合併などで新しい名前の地名が生
まれます。その名称はまさしくキラキラネ
ームのオンパレードです。
ひらがなだけで表現する⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎市、地名と
は全く関係なくイメージだけで選ばれた
⚪︎⚪︎ヶ丘など、もはやその地名がどこの県
にあるのか判別できなくなっています。
なぜそうなるのか。
誰からも文句が出ない名前に落ち着いた感
があるキラキラ地名が決定されるプロセス
や、そもそも以前の地名は何だったのか。
今となっては以前の地名のままの方が良か
ったのでは?と思わせるくらい過去の歴史
を紐解いて、地名にこだわりぬき、キラキ
ラ地名の幼稚さを知らしめる一冊です。
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確かに昭和平成令和で地名が大きく変わった。社会システムが農業系から初めて離れたのだから仕方ない、と個人的には思うのだが。
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地名には古来からの遺産的な要素があり、現代の価値観で軽々に帰るべきではないという論旨。
この地名にはこういう由来がある、という実例が豊富に紹介されており、知識が深められて楽しかった。
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なるほど、と思ったのは地名はどの範囲に限定するかによって命名の視点が異なる、という話。例えば、鬱蒼たる松林の中では「松の木」のような地名は特徴にならないため、「一本松」といった地名は見渡す限りの原っぱに命名されることが多いとか、平らな台地にはクボの地名が多いとか。
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由緒ある地名が簡単に消滅する時勢に警鐘を鳴らす一冊。
キラキラネームと同様に地名にもひらがなとカタカナが流行。特に平成の大合併で激変している。難読地名をひらがなにした「こあら(小荒)」はよいとして、あるかぽーと(下関市)、メルヘンランド(小矢部市)、豊幌はみんぐ町(江別市)など。
合成地名も今ではそうと気づかないほど定着していることも。谷津・久々田・鷺沼で津田沼とか鳥羽(と)、吉野(よ)、新田(し)、成相(な)で豊科。
最近では災害地名が有名だが本書は具体的な場所がはっきりしない災害地名は当てにならないことを指摘している。
土地のイメージが地価に影響することもあるので、部外者があまり言うべきでひないが、せっかくの由緒ある地名、大切にしてほしいものだ。
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地名崩壊
著者:今尾恵介
発行:2019年11月10日
角川新書
大阪市でも1980年代に住居表示が変わり、例えばミナミの畳屋町が東心斎橋となるなど、雰囲気のある町名が消えていった。北区でも、梅ヶ枝町、老松町、空心町などが、みんな西天満や東天満になった。
この本によると、「心斎橋」という地名はもともとなかったらしい。ブランド地名として行政がグルになって増やしていったということになる。
1923年の関東大震災による復興事業、1962年に実施された住居表示法、平成の大合併により、歴史を感じる地名がどんどん抹殺された、とくに1962年の住居表示法は「地名ジェノサイド」を招いたと著者は嘆いている。
また、最近、続々と誕生している政令指定都市の区名についても、元々ある地名」は候補から外すという「民主主義」が横行していると嘆く。
地名は、馴染んでいればどうということはないものだけど、昔を知っている者にとって、単純なブランド化や安直な「平等化」による地名変更はなんとも嘆かわしいに違いない。
思惑が入り乱れて、結局、意味不明の長いものになる鉄道の新駅名にやるせなさを感じている身として、同感する部分がある。
****(メモ)******
(冗談みたいな地名)
・福岡県宗像(むなかた)市に「くりえいと」という地名がある。愛称とかではなく正式地名。
・山形県酒田市の旧市街地東側にある「こあら」という地名は、「古荒(こあら)新田」にちなむ。廃田を意味する古荒を復旧させて新田とした土地だったが、新しい住宅地として動物をイメージする「こあら」としているのだろう。これも正式地名。
・札幌市の北に隣接する当別町に「スウェーデンヒルズ」という地名がある(愛称でなく正式地名)。スウェーデン住宅が並ぶ新興住宅地。
・東京にあった八重洲町(今は丸の内2)は、オランダ人ヤン・ヨーステンの屋敷にちなんだというのが有力説。
(ブランド地名)
・駅名でワンランク上の住宅地の響きを持つのが「○○ケ丘」だが、元祖はおそらく大阪の夕陽丘駅あたりだろう。
・不動産が高く売れる地名、すなわちブランド地名。商業地なら銀座、住宅地なら田園調布や成城、芦屋など。そのエリアは広がっていっている。銀座のエリアが広がったのは、関東大震災の復興事業が始まり。
・品川区の戸越銀座商店街は、全国にある繁華街における「銀座」命名とは事情が違う。関東大震災で壊滅的な被害を受けた銀座での大量がれきを引き取って水はけの悪かった地面に敷き詰めたという縁があったので、「戸越銀座」と命名した。ただし町名は「戸越」だった。
・成城にある8棟からなる大規模マンションは、1棟だけ狛江市内にほぼ入っているのに、住居表示を「世田谷区成城」とするのに成功した。「一体とした建物」との解釈で代表地番表示にできたのだろう。この棟の住民は世田谷区民として世田谷区に住民税を納めるが、固定資産税は狛江市にも納めているという珍現象が起きている。
(駅名)
・地名階層とは、地球>アジア>日本>関東地方>東京都>千代田区>丸の内、というようなこと。新幹線���駅名は地名階層が上である必要。ターミナル駅の大阪駅は「梅田駅」だと地方の人にわかりにくい。
・関東での最初に営業運転した電車は大師電気鉄道の六郷橋付近から大師までの間。川崎駅を起点としなかったのは、人力車組合の激しい反対があったから。
・「浦和」駅は全部で8つある。浦和駅、北浦和駅、南浦和駅、西浦和駅、東浦和駅、中浦和駅、武蔵浦和駅、浦和美園駅。乗り換えの間違いを防ぐため、それぞれの地名を採用せず、機能一本槍の地名ばかりになったと著者は嘆く。
・八戸駅は元々支線の八戸線上にあったが、幹線を走る列車の乗客にわかりやすいよう、東北本線の乗換駅であった尻内駅を1971年に八戸と改称し、旧八戸駅を本八戸(ほんはちのへ)駅とした。
・ニュータウンの駅は「中央」がつく駅が多い。千里中央駅、日生中央駅など。
・新大阪など「新」がつく駅名のうち、現存する最も古い駅は京急の新子安駅、1910年開業。今はない駅名では、名鉄の新一宮駅で、1900年ごろに一ノ宮駅から新一宮駅に(尾西鉄道)。そして、2005年に名鉄一宮に変わった。
(合併後の地名)
・中国の武漢市は、1949年に武昌市、漢口市、漢陽県が合併してできた。
・1874年、筑摩県時代の安曇郡で、上鳥羽村、下鳥羽村、吉野村、本村、成相町村、成相新田町村が合併。鳥羽(と)、吉野(よ)、新田(し)、成相(な)の頭文字をつなげ、豊科村(長野県安曇野市)になった。そして、更科や埴科(はにしな)、明科といったシナのつく地名の多い信州らしい地名を創出した高等テクニックには舌を巻く。
(珍現象、雑学)
・世田谷区の自由が丘駅前はかつての水田地帯で、自由が丘という谷から南へ歩けば、奥沢という大地に上がっていくという逆転現象が起きている。
・かつて東京に存在した「淀橋区」は、1947年の統合で23区となったときに新宿区となったが、淀橋という町名は残った。ここに1967年に創業したのがヨドバシカメラ。
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知人が持っていたものをたまたま借りることになり読んだ一冊。
わかりやすさ、管理のしやすさを追及することによって、大事な歴史や文化、伝承が失われていくことを憂えている。