トリックにかける情熱は好きだけれど、読みたいのはこれじゃない。
2010/10/17 15:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
賛否両論あるようだけれど、『葉桜の季節に君を想うということ』を読んだとき、素直に「やられたーっ!!!」と思った。以来定期的に歌野作品を読み続けてきて想うことは、読者に対するサービス精神が旺盛な作家だということである。
本を読むとき、わたしたちは必ずと言っていいほど想像力を働かせる。登場人物の言葉づかいや家族構成から年齢を量ったり、設定や雰囲気を読みとって作品の世界観を想像の中で構築したりする。わたしたちはその作業を無意識のうちに行っている。
その無意識の行為を逆手にとったのが、いわゆる叙述トリックである。読者の「思い込み」を利用して、著者はトリックをしかけてくる。これは映像では味わうことのできない楽しみ。小説だからこそ可能なトリックといえる。
本書にも、読者の「思い込み」を利用したちょっとした叙述トリックが至る所に張り巡らされている。そして読者は、その小さな仕掛けにいちいち「は?」とあっけにとられてしまう。こういう小細工は嫌いじゃない。歌野さんのサービス精神はやっぱりいいなぁ…と感心さえしてしまった。
そして最終章で読者は、著者が用意した大掛かりな――しかしある意味地味な――仕掛けに気付く。ここでも「あぁ、歌野さんはこれがしたかったのかぁ」と、著者の意図がよくわかる。
そう。理解はできる。
できるのだけれど…
「わたしが読みたい歌野さんはこういうのじゃないっ!!!」
と思ってしまった。
トリックはトリックとして面白い試みだとは思う。著者の企みも理解できる。
でもっ!でもっ!!!
ちっともスッキリしないのだ。やられたーーーっ!!!という爽快感がない。
先が気になってそれなりに楽しく読めたのだけれど、最後の最後が消化不良。これを持ってきちゃったらなんでもありでしょ?!と突っ込みたくなるようなラストだった。
でも、最後に露呈する著者渾身のトリックは、好き。
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投稿者:藤枝 雅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレしちゃうので、レビューも何も書けない気がするのですが…
それほど、さらっと触れるのが難しい作品。
ただ一言言えるのは、昔あった漫画「ハイスクール奇面組」の原作のようなショックを受けた…ということ。
ただ、後味の悪さは「奇面組」とは比べ物にならないくらいに酷い。
「ハサミ男」に次ぐ、読んで後悔した小説。
最初から最後まで気分の悪くなる内容。
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2009/9/26 ジュンク堂住吉シーア店にて購入。
2018/2/4〜2/7
3年ぶりの歌野作品。いやいや、またまたやられました、歌野流の大仕掛に。この作品はどういう仕掛けかと探りながら読み進めるも、解説で杉江松恋さんも書いているように、目前の展開が気になってどんどん読み進めてしまった。うまい!
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どんでん返しを得意とする著者の文庫新刊
とりあえず結構不快なオタク像設定の主人公がロリマゾ属性の引きこもり無職中年というところがもう凄い
物語の中のオタクは40代に突入する時代ですか
ただ中盤戦は推理と事件の急展開を迎え、はらはらさせる
そして最後に著者の必殺どんでん返しが…
どんでn… … つーか
料理食べ終わってから実はそれロウ見本でした見たいなお話
そして後味悪い
駄作ではないんだが、こう誰にも勧められない感じの本
下手に勧めたら相手から受けるのはいわれのない誤解か変態扱いくらいしか期待できない
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ライトな感じの文体でね~~
ちょっと読んでて厳しいものがありました(笑
登場人物もそれぞれ個性的+強烈で
割と堅い現実的な話が好きなわたし的には
しんどかったりしたんですが
面白かったよ^^
歌野さんの面白い所は途中まで引っ張ってたものを
ガラっと崩しちゃう所かな??
えっ…てなる場面が結構序盤にくるのに
それでも最後まで持っていけるのはすごい。
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同じ歌野晶午の「動く家の殺人」が面白かったので、購入。
本屋の本棚から引っ張り出したときはビックリしました
これ歌野晶午作品だったのか…!
よく平積みになっているのを見ましたが、表紙を見て勝手に恋愛小説だと勘違いしていました
なんかこの表紙、歌野晶午のイメージとは程遠いんですが…
以下、多少のネタばれを含みます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中身を読んだら、さらに驚かされました。
表紙を見直して「これ、米澤穂信作品じゃないよね?」と確認してしまいました
なんとなくライトノベルチック…
主役の冴えないオタクがシンデレラストーリーよろしく成長していきます…
えぇっ?なに?!どういうこと?!歌野晶午って商売相手(読者層)変えたの?
しかも現実的にありえないようなことが(科学では説明できないようなことが)起こるし、あまりに「美少女アニメオタクが好きそうな展開」が続くし…
さらに、何度も文中にさりげなく、今までの読者の想像を覆す描写が出てきたりして、世界がぐんにゃりぐんにゃり歪んでいく感覚にとらわれました
ラストは、「あぁ、そうだよね」というカンジでした
全部に納得できる説明をつけるとしたら、これしかないよなぁ…
そこまでめちゃくちゃな展開だったので、ラストでいっきに現実的になって、少しほっとしました
現実は苦いですが
でもこの手法がアリなら、結構なんでもアリなんじゃないかと思いました
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様々なトリックを畳み掛ける演出はさすが。中盤ちょっと中だるみはあったけど、最後のオチもキレイに決まっていて満足。
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とても不思議な、私にとっては読みにくい本だった。
ギャル(?)用語で小さい文字がたくさんちりばめられてたり
展開がよくわからなかったりで
どっぷりはまれなかったのも原因かも。
「葉桜の~」の方がおもしろかったかも。
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歌野作品にすっかり慣れてしまった身なのだから、最初から身構えてしまう。それはわくわくした行為で、粗探しとはまったく違う。どこでわたしを引っ掛けようとしているんだ? ここか? ここか? と探りながら、もちろん見つけてしまっている。そして、その名のついた章を読み始める。さて、いったいどんな手段でわたしたちを騙してくれるんだろう?
もはや、歌野晶午はミステリ作家ではない。こういったカテゴリわけ自体が古いのかも知れないけれど、彼は純然としたエンターテインメント作家だ。本作の語り口を見れば一目瞭然。時代を汲み取り、読者を心地よく騙して読後の充実感を与え、だからといってミステリ要素を忘れるでもなく、さらに人間本来のゆるぎない部分にまで入り込もうとする。そしてなにより、それがうまい!
物語自体は佳作だと思う。でも、この話をここまで読ませる作家、ほかにいるのだろうか?
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やめられないとまらない。完全アタマがトリップ+スパーク。
歌野晶午ってすごゥィでそ。
・・あぁまずい、絵夢に乗り移られる!!!
女王様と私、という意味深なタイトルにひっかかった人に、
歌野晶午初心者にはことさら声を大きくして言いたい。
心して、読め。
主人公は44歳の引きこもり・・とはいえ本人にはその認識はなく、週一で吉牛にも行くし
アキバに月一でも行くから自分は引きこもりではないと断じている。
今日は妹・絵夢を連れて、日暮里(!)でデート。
そこでいきなり黒い帽子に全身黒づくめの洋服の攻撃的なXXからいちゃもんを付けられ・・!
絵夢のしゃべる独特な言い回し、メールの女子高生チックな表現方法、
時おり挟まれる主人公のおたく口調の蘊蓄。
ちょっと見イマドキのストーリー展開で、
おたく中年が女王様に振り回されるのを読者は高みから見物することになる。
ところがいきなり、物語は急転する。
詳しく書くとネタばれ一直線なので避けるが、最初の女王様の出会いの軽いジャブ、
女王様との主従関係の転換でボディーに衝撃、女王様に迫る魔の手のあたりでフック、
とどめにテンプルにストレートをもらった後に、中空でもう一度アッパーをもらう羽目になる。
で、気がついたら観客席にいた自分の目の前に降ってきたのはずだぼろの自分、という感じだろうか。
この、いつの間にか立場が反転しているというか、
いつしか自分の見ていたものが目の前で変化する感覚は、すげえぞ。と、言いたい。
以下、ミステリとかこの手の話が好きな人にはネタばれの可能性あり。
自称・ミステリマニアは読まない方がいいかもしれない。
・クラインの壷(井上夢人)
・イニシエーション・ラブ(乾くるみ)
・慟哭(貫井徳郎)
・ハサミ男(殊能 将之)
あたりと同じ芸風。
一気にGを感じたいなら勧めないが、あえて併せて一気ヨミし、
作者の思惑通りにだまされるカイカンを味わいつくすのもまたよし。
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この表紙の絵とても素敵だ~。
最初のたたみかけるような小細工の嵐はたまらなく引き込まれました。
でも中盤で「実はこうなんだよ・・・」が書かれてしまってから急激に冷めてしまった。
まぁ最後の最後でどんでん返すのに必要だったんだけど、私的にそれはちょっと微妙でした。妄想ネタは十分なのに(笑)
でも仕掛けに関しては、今までの歌野さんの作品の中では一番素晴らしかったと思います。
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期待よりは…って感じ。
しかし三笠さんが好きすぎて困る。どうしようもないぐらい惚れた…。勝手にシュンっぽいイメージを膨らませてた。
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数馬の世界なのかと思った瞬間、なーんだ、ってしらけちゃったけど、やっぱそれだけじゃ終わらないよね。
葉桜〜ほどではなかったけど、なかなかおもしろかったー
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とにかくおもしろくてどんどんページをめくってしまいました。
妹の絵夢の話し方と若い女の子からのメールには読みづらさを何度も感じましたが(笑)
最初からだまされすぎる!!
沢山の伏線が一本につながった瞬間の気持ち良さ!
やっぱりミステリーが好きだと実感。
そしてこんな人やこんな子がまわりにいたら怖いなぁと感じました(笑)
人に勧めたらこんな本読むの!?とか思われてしまうかもしれないけど、まぁ騙されたと思って読んでみてください。
他の歌野作品に手を出そうと思える契機となりました(^ω^)
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44歳のニートおっさんが主人公。
いつも少女フィギアと一人二役で話しながら生活してる。
両親には暴力をふるうこともあるこの男が
ある少女(女王様)と出会うことから事件に巻き込まれて
……探偵物だったらヤだなぁと思ったらオチは違う所に。