独ソ戦 絶滅戦争の惨禍
著者 大木毅
「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。日本人の想像を絶する独ソ戦の惨禍。軍事作戦の進行を追うだけでは、...
独ソ戦 絶滅戦争の惨禍
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商品説明
「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。日本人の想像を絶する独ソ戦の惨禍。軍事作戦の進行を追うだけでは、この戦いが顕現させた生き地獄を見過ごすことになるだろう。歴史修正主義の歪曲を正し、現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。
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兵器一覧と人物評伝ばかりの軍事史に飽き足らぬ向きに是非
2024/03/29 04:04
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は250頁に満たないながらも、
手堅い作りの研究書です。
本文には、東部戦線における情勢変化に応じた
独ソ両軍の配置図が随所に挿入されている他、
巻末には詳細な解説付きの参考文献目録と
簡便な用語集も収められており、
自分の興味関心に沿ってこの分野を
深堀りしたい方にとって、打って付けの一書でしょう。
著者ヮ、日本における当該分野の研究水準に不満があり、
少なからず物申したいように見受けられます。
その思いが発露したかのような部分が、
文献目録で守屋純氏の訳書の誤訳部分を
槍玉に挙げている箇所です。
なお、本文中でヮわざわざ当該箇所を
訳し直して引用する、といった念の入れようです。
忘れずに付け加えておきますが、
この時代に、この主題を扱い、
このような何のひねりもない表題を付けて、
2020年3月時点で10万部以上も売れた本に
仕立ててしまった、岩波書店の編集者、
永沼浩一氏の手腕にも座布団一枚。
独ソ戦の底なしの恐ろしさは、国の別に関わりなく、同じ人類として知っておく必要がある。
2019/11/05 22:38
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソ連は1939年の段階で、1億8879万3000人の人口を有していたが、第二次世界大戦で戦闘員866万8000ないし1140万名を失ったという。軍事行動やジェノサイドによる民間人の死者は450万ないし1000万人、ほかに…800万から900万人…。健康なドイツ国民で、ゲルマン民族の一員であれば、ユダヤ人をはじめとする「劣等人種」、社会主義者や精神病者といった「反社会的分子」に優越しており、ゆえに存在意義を持つ、という仮構は、そうした溝を覆い隠していく。「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。想像を絶する独ソ戦の惨禍。現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。
史上最悪の支配者同士が激突したら、こうなるわな
2021/04/29 21:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者のよると、独ソ戦は「通常戦争」「収奪戦争」「絶滅戦争(世界観戦争)」の三つが並行するかたちで進められたという。そして、健康なドイツ国民は(ゲルマン民族)は、ユダヤ人やソ連に住むスラブ人などの劣等人種、社会主義者や精神病者といった反社会的分子に優越しているんだというヒトラーの考え方が「通常戦争」での優勢が危うくなると「収奪戦争」「絶滅戦争」の比重が大きくなっていったのだという。スターリンとヒトラーという人を簡単には信用しない歴史上まれにみるファシスト同士の戦争は、お互いに失敗は部下のせいにしてその部下を粛清するという恐ろしくよく似た構造の中で繰り広げられた凄まじい数の死傷者を生んだ戦だった。そして、そのファシストに媚びをうりつづけてきたイエスマンたち(戦後、彼らは命令されて仕方なくと口を揃えて抗弁するのだが)同罪だと私は考える。
さすが岩波新書と言わしめる独ソ戦の背景を簡潔にまとめた1冊
2020/11/04 18:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
太平洋戦争での悲劇的な事実は特攻や玉砕など多くの書籍で紹介されていますが、ヨーロッパを主戦場とした第二次世界大戦に関してはそれ程多くありません。
本書はドイツとソ連との攻防を深堀し、かつ予備知識の乏しい人でも読み通せる貴重な1冊です。
独ソ戦と太平洋戦争との違いはその規模、戦争の目的に顕著に表れています。太平洋戦争での日本の戦闘員の戦死者は約230万人、非戦闘員の死者は約80万人と言われ、合わせて300万人もの人々の命が失われました。十分に悲惨な数字ですが、独ソ戦の犠牲者は桁が違います。ソ連側の戦闘員戦死者は1000万人超、非戦闘員の犠牲者も1000万人を超え、ドイツも戦闘員は500万人、非戦闘員は200万人以上が命を落としました。
ここまで犠牲者が増えた遠因として、次のように解説しています。
ヒトラーとスターリンという歴史的に見てゆがんだ世界観を持った指導者による戦争であったことから、戦争の目的が相手国の軍事力にダメージを与え、後に外交努力によって自国の主張を認めさせる「通常戦争」ではなく、敵国の土地や食料を収奪する「収奪戦争」、さらに相手の民族自体を根絶やしにする「世界観戦争(絶滅戦争)」へとエスカレートしたこと、当時の独ソ国境線が数千キロにもおよび、そのあらゆる領域で戦闘が行われたことなどです。
戦闘の推移を解説している部分は、やや冗長な印象も受けますが、ドイツ、ソ連の政治体制や軍事に対する考え方等が簡潔にまとめられており、非常に参考になりました。これらを裏付ける様々なデータや歴史的事実を分かりやすく紹介している本書、さすが岩波新書だなという印象です。
史上最大の戦闘
2019/07/24 09:56
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
独ソ戦は、第二次世界大戦史いや史上最大の戦闘といってよいでしょう。本書は、独ソ戦を知るのにベースとなる基本書と言えるでしょう。どのように戦争が行われたかを知るには、分かりやすい一冊です。しかし、独ソ戦に付随するホロコーストや捕虜の問題、パルチザンなどの問題には触れていません。それらを知るための被本書と位置づけた方が良いでしょう。実際に、私は、独ソ戦の激戦地であるクルスク南方の平原やスモレンスク、レニングラード(現ペテルブルク)に行きました。クルスク南方には、戦車戦にもってこいの平原が広がっています。いまでも、地面を掘ると戦車のキャパピラーやヘルメットの残骸や鉄十字勲章などが出てきます。そのドイツ軍の勲章は、モスクワなどの骨董店で売られています。
凄すぎる
2021/05/31 11:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいてめまいがした。
ドイツもソ連も時の最高権力者は暴君。その指示で命を奪われた人々の犠牲が多すぎる。こんなことがあっていいのかということを確認する作品。
あまりにもむごい
2020/03/09 07:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
独ソ戦がいかようにして泥沼になったのか、それを様々な角度から見た本。
もちろんこの本だけで語り尽くせていない部分は多いと思うけど、今までの通説に異を唱える部分は多い。
全体主義国家間における生存戦争
2023/12/06 16:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦における最大の激戦である、ナチスドイツとソ連間の戦争についてドイツ軍人に関する著書の多い大木氏が新書にまとめている。 ナチス政権は、第一次世界大戦の敗戦の結果としてのヴェルサイユ体制の否定として、「大砲もバターも」という政策を実施したが、この政策は世界恐慌に喘いでいた国内経済を復活させたが、必然的に財政赤字を招いた。 普通の政権であればどちらに重点をおくか選択するところだが、ヒトラーは政権を維持するために近隣国へ進出する選択を行った結果、第二次世界大戦を招く結果となった。
このドイツのバルバロッサ作戦に至る過程を読む限り、検討を重ねた結果というものでも無く、結構杜撰である印象を受けるが、そうでなければ対英戦を行いながら、独ソ線も始めるという選択は採れないだろう。 しかしながら、ソ連の独裁者スターリンはドイツの侵攻を予測する情報を信用しなかった結果、緒戦における大敗を招くが、自らの猜疑心により「赤いナポレオン」トハチェフスキー元帥に代表される赤軍幹部の大粛清を行ったことも影響していると考えれば自業自得と言うべきだろう。
当初はドイツ優位だった戦況も、ソ連が体制を立て直すにしたがって膠着し、スターリングラード攻防戦におけるドイツの敗戦以降は膠着し、やがて連合国軍のイタリア上陸以降ドイツ軍は戦線維持が精一杯という状況に陥り、最後にはドイツ軍の戦線崩壊に至る。 それにしても、この全体主義国家間における生存戦争は凄まじい、ドイツ国民の生活水準は戦時中も占領地域からの収奪により敗戦間際まで保たれていたという点で、ナチスとドイツ国民は共犯関係にあると大木氏は説明する。 そこら辺が、島国でありながら制海権を奪われて窮乏生活を余儀なくされた日本国民とは趣がことなるが、もし制海権を維持できていれば、東南アジア諸国から収奪していたのだろうか。 一方ソ連側でかの「雪解け」の作者の文学者エレンブルグが兵士にドイツ女性を凌辱するのを奨励するようなプロパガンダを展開していたのは知らなかったが、彼もスターリンの粛清の中を生き抜いた知識人である。
アメリカとイギリスは、ナチスドイツを潰すためにソ連を支援したが、その結果として全体主義国家であるソ連の東欧支配による東西冷戦を招く結果となったのは歴史上の皮肉である。 ナチス政権は十数年で崩壊したが、ソ連による質の悪いマルクレーニン教はその後半世紀近く継続したのである。
ところで大木氏はこれまでにロンメルとグデーリアンというドイツ軍人についての著書を出版しているが、独ソ戦のハリコフ攻防戦の「後手の一撃」のマンシュタインについても書いてくれることを今後期待したい。
史上最も凄惨な戦い
2022/06/01 20:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:青い鳥 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦で最も激しい戦いとなった独ソ戦。
ソ連軍の死者は2000万人以上、ドイツ軍の死者も数百万以上に達した。
これだけの激しい戦いにもかかわらず、独ソ戦の真実は戦後長い間隠蔽・歪曲されてきた。ドイツ側では、ヒトラーに責任を押し付ける為、自らの責任逃れの為の戦記本や回想録などが数多く出版され、ソ連側では、共産主義勢力の輝かしい勝利をアピールすべく、ソ連軍に都合の悪い事実は徹底的に隠蔽されたようです。
くり返す
2022/04/29 10:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第2次大戦中のナチス・ドイツのヒットラーと当時のソ連のスターリンの間で激しく闘われた戦争である。どっちもどっちで結局のところ、反ドイツで欧米を味方につけたソ連が勝利するが、スターリンの野望がエスカレーションしていく。軍事戦に介入しすぎた二人の素人軍人の指示と悲惨な戦場での実態。世界観戦争と大祖国戦争。21世紀の現代はウクライナ侵攻中のプーチンはスターリンとヒットラーを合わせたのものか。
絶滅戦争の実態
2022/04/03 12:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦については、教科書でも習い、映画や文学などで触れる。しかしよく知っているようで何も知らない。
この本を読んで、そう実感した。
泥沼化し「史上最悪の惨戦」ともいわれた独ソ戦について、筆者が精緻に事実を積み重ね、先入観やバイアスのかかったイメージをときほぐしていく。
とても勉強になる、真面目な本だ。
勉強になりました
2022/03/14 13:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:iha - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒトラーとスターリンという二人の独裁者がぶつかった独ソ戦の始まりから終結までが詳細に描かれている新書です。その桁違いの惨劇にただただ絶句です。
通常戦争から絶対戦争へ
2021/09/05 22:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
独ソ戦を戦史としてだけでなく、イデオロギー闘争、資源、労働の収奪と相手の絶滅を企図した別の様相をもった戦争として捉える試み。戦勝国であるソ連は共産主義が闘いに勝ったプロパガンダとして喧伝し、敗戦国であるドイツでは国防軍をヒットラーに無能を押しつけることである意味で神聖化さえする工作が繰り広げられた。テーマをくみ取るには小冊なので食い足りないが、素人には十分なレベル。
新書版では無理か?
2020/03/22 10:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒトラーとスターリンという世界史に名だたる二大悪人のイデオロギー戦プロパガンダ戦という観点からの記述を期待したが、やや期待外れ。
話の進行上、戦局の推移にも触れざるを得ず、そちらの方にもかなりページ数を取られてしまった感じがする。
史上最大の犠牲者を出した戦いだけに、ひとつの切り口だけからに記述でも、新書版サイズにまとめるのは無理か。
意外と中立的…
2019/08/15 18:58
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波新書だからスターリン礼賛の偏向書籍かと思っていたら期待を裏切られた。淡々と独ソ戦の経緯を記述している。批判の矛先はパウル・カレル。国防軍をナチスから切り離してヒトラーの介入がなければドイツ軍が勝っていたとの戯言を書きまくったという。本書によるとドイツ参謀本部は,一般に思われているほど賢くなくて,ソ連軍は作戦勝ちだという(ちょっと言い過ぎか)。まぁ,負けるべくして負けたドイツ軍というところ。防衛研究所の研究者らしい客観的な筆致。正直少し退屈だった。