紙の本
『行動経済学の使い方』
2019/10/18 21:21
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伝統的経済学では説明しきれない人間の“不合理な”意思決定
たとえば
老後の貯蓄が必要だと思っていてもなかなかできない
宿題や仕事の締め切りがあるのにそれを先延ばししてしまう
ダイエットの計画は立てられるのに実行できない
など
本書は、行動経済学の知見を活用して人間の意思決定を合理的でよりよいものにするためめのヒントを紹介する
人間の意思決定のクセを説明する行動経済学の4つの観点(第1章)
・プロスペクト理論(確実性効果と損失回避)
・現在バイアス
・社会的選好
・ヒューリスティックス
合理的な意思決定に導くキーワードは「ナッジ」(第2章)
《行動経済学はいまや「使う」段階に来ているのだ。》──カバー紹介文より
医療・健康活動への応用(第7章)、公共政策への応用(第8章)の解説にはなるほどとうならされる
記述の正確さとわかりやすさを両立した岩波新書らしい一冊
紙の本
人間の意思決定は必ずしも合理的とは言えない
2019/10/30 16:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
望ましい行動を促すために、どのように制度設計や説得を行うべきなのか、ナッジを中心に論じる。バイアスやヒューリスティックスなど非合理的な行動の特性を持つ人間に、自由な選択を確保しつつより良い意思決定をうながす(=ナッジ)方法が紹介されている。伝統的な合理的経済人の仮定に物申したい方は是非。血液型による性格の差異はないのにO型の人がよく献血をするという調査結果はおもしろい(私もO型でよく献血するので)。行動経済学ブームがきているか。この本を読んだら、ちょうどタイミングよく文庫化された『行動経済学の逆襲』をはじめ、『セイラー教授の行動経済学入門』、『実践 行動経済学』『ファスト&スロー』あたりを読んでみるのもおすすめ。
紙の本
読みやすい
2019/10/27 09:54
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
行動経済学の基本が、わかりやすく解説されていて、よかったです。私たちの生活を豊かにしてくれるように願います。
紙の本
ナッジとはなんじゃ?
2019/10/14 21:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
行動経済学とは、一般になじみのない用語であると思われるが、経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法らしい。本書の趣旨は、この行動経済学を活用した、ナッジの作り方の解説にある。行動経済学的知見を使うことで、強制することなく、選択の自由を確保しながら金銭的インセンティブを用いないで、自ら人々の行動がより良くなるように促すデザイン・仕組み・制度をナッジという。例えば、節電を促すナッジで、周りの人の電力使用量と本人の電力使用量をグラフにして通知することが有効であったのは、人々の社会規範に従うという特性を利用したからである。脳死の場合の臓器提供に同意の登録を促進するナッジでは、「自分が臓器を必要になったときにもらいたいなら、あなたも貢献しませんか」という互恵性に訴えるメッセージが効果的だった。
働き方を変えるためのナッジ、医療・健康活動へのナッジの活用、公共政策へのナッジの応用等多くの事例を交えて、人々のより良い行動を引き出す手法が紹介されている。多くの読者にとって、ナッジを作る立場になることは少ないだろうが、様々な意思決定を求められる場合、条件・状況提示のされ方のちょっとした違いで、判断が大きく変わってしまう、時として不利な判断をしてしまうことがあるということを知るだけでも本書を一読する価値はあるように思われる。
紙の本
行動経済学をどのように応用するか
2020/02/25 00:51
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:積ん読太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
行動経済学というと、どうしても様々なバイアスに目がいきがちだと思う。
でも「経済学」を称している以上、
単にマーケティングにとどまらず、
様々な経済分野における人の意思決定を説明できるのでは?とも思う。
本書では、仕事、医療、税制、社会保険などに、
行動経済学の知見が応用できることが示されてます。
また、より良い意思決定を行うには、
ナッジが有効なことが記されてます。
本書を参考に、自分の行動や、経済ニュースを
行動経済学の視点から捉えることができるようになれれば
面白いと思いました。
紙の本
具体例が豊富で役立ち感がある
2019/12/16 11:13
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投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
行動経済学から得られる知見の具体的な生かし方を解説した書。自由な選択を確保しつつ、人々のより良い意思決定につなげる「ナッジ」の作り方を明らかにする。仕事や健康、行政における応用例は具体的である。ナッジ設計のチェックリストもあり役立ちち感がある。
行動経済学の基礎も紹介しているので、初学者にも役立つ書に仕上がっている。ある程度知識を持っていれば、読み飛ばしても差し支えない。紹介するナッジは、例えば仕事については、労働意欲を高めるナッジ、労働時間を短縮するナッジ、長期失業をなくすナッジ、女性取締役を増やすナッジ、長期目標を達成するナッジなどが並ぶ。行政では自然災害時の予防的避難のナッジや租税のナッジ、健康・医療関連ではがん検診受診率向上のナッジや治療法選択のナッジ、ジェネリック薬品利用促進のナッジ、臓器提供のナッジなどを紹介する。
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意思決定の特徴
確実性効果と損失回避でなりたつプロスペクト理論
カーネマン、トベルスキー
確実性効果 確実なものとわずかに不確実なものでは、確実なものを好もう傾向がある
損失回避
プレーミング効果
現状維持バイアス、保有効果
時間割引率の特性である現在バイアス
現在バイアス 計画はできるのに、それを実行するときになると、現在の楽しみを優先し、計画を先延ばししてしまう
他人の効用や行動に影響を受ける社会的選好
他人の利得から効用を得るという利他性、親切な行動に対して親切な行動で返すという互恵性、不平等な分配を嫌うという不平等回避
利他性 純粋な利他性、ウォーウグロー
合理的推論とは異なる系統的な直感的意思決定であるヒューリスティック
合理的思考には思考費用がかかる。そこれヒューリスティックと呼ばれる直感的意思決定を利用する
サンクコストの誤謬
選択過剰負荷、情報過剰負荷
平均への回帰
ナッジ 軽く肘でつつく
リチャード・セイラー 選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する
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行動経済学の基本から始まり、それを活かすためのナッジの説明や具体例が示されていて日常で活かすためのヒントを得られる
リスクの感じ方
利得と損失時で異なる
利得時は確実なものを選ぶ
損失時は不確実なものを選ぶ
損失回避
参照点からの差に価値
フレーミング効果
表現の方法で決定が変わる
利得を強調
損失を強調
保有効果
参照点が変わる
現在バイアス
現在の利益を優先
比較する機関の長さによって影響は異なる
コミットメント手段
適切な目標設定
互恵性、利他性
ヒューリスティックス
近道による意思決定
サンクコスト
回収不可のコストにとらわれるか
意思力
精神的、肉体的負荷による決定力の低下
情報過多、選択過多
平均回帰
平均回帰に因果関係を見出す
利用可能性
正確な情報よりも手に入りやすい身近な情報を優先
代表性
似たような属性をもとに判断
アンカリング
無意味な数字でも最初に与えられた数字を参照点にする
メンタルアカウンティング
対象の範囲を狭くして考える
同調性
多数派の行動を参照点とする
極端回避性
両端の選択肢よりも真ん中を
プロジェクションバイアス
現在の状況を過度に未来に投影
ナッジ
規制やインセンティブを用いることなく人の行動を予測可能な形で変える仕組み
意思決定の仕組み
意識的
バイアスを取り除く
無意識
重要性を認識させる
能動的
受動的、自動的
対象が得ている情報の量は
どのような助言、知識があれば意思決定できのか
意思決定のフィードバック
すぐに反応あるのか
遅れて反応するのか
意思決定時の心理状況
感情的な場合か
意思決定にエネルギーが必要か
意思決定時の環境は
一人か
他の人の影響は受けるのか
分かりやすく
情報を詰め込みすぎない
手間がかからない
人の注目を集めるか
面白いか
社会規範の利用
多数派の行動を強調
互恵性
意思決定のタイミング
フィードバック
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はじめに
第1章 行動経済学の基礎知識
1 プロスペクト理論
リスクのもとでの意思決定/確実性効果/損失回避/フレーミング効果/保有効果
2 現在バイアス
先延ばし行動/コミットメント手段の利用
3 互恵性と利他性
社会的選好/互恵性
4 ヒューリスティックス
近道による意思決定/サンクコストの誤謬/意思力/選択過剰負荷と情報過剰負荷/平柊への回帰/メンタル・アカウンティング/利用可能性ヒューリスティックと代表性ヒューリスティック/アンカリング効果/極端回避性/社会規範と同調効果/プロジェクション・バイアス
第2章 ナッジとは何か
1 ナッジを作る
軽く肘でつつく/行動の特性を考える/行動変容を本人が望んでいるか/ナッジの選び方
2 ナッジのチェックリスト
Nudges/EAST/MINDSPACE
3 ナッジの実際例
老後貯蓄の意思決定/自然災害時の予防的避難/ナッジは危険なのか?
第3章 仕事のなかの行動経済学
1 三つの例から
バイトのシフトをどう入れるか/タクシー運転手の行動予測/行動経済学で解釈すると/プロゴルファーの損失回避
2 ピア効果
優秀な同僚が入ってきたら/スーパーマーケットのレジ打ち/競泳のタイム決勝
第4章 先延ばし行動
1 賃金について考える
参照点による効果/伝統的経済学による年功賃金の説明/行動経済学による年功賃金の説明
2 バイアスに着目する
失業期間を短くする/長期失業を防ぐナッジ/社会保障給付申請の現在バイアス/長時間労働と先延ばし行動
第5章 社会的選好を利用する
1 贈与交換
贈与交換で生産性は上がるか/負の贈与の影響/贈与のイメージを意識させる
2 昇進格差はなぜ生まれる?
競争選好に男女差はあるか/マサイ族とカシ族での実験
3 多数派の行動を強調する
女性の取締役を増やすナッジ/無断キャンセルを減らすナッジ
第6章 本当に働き方を変えるためのナッジ
1 仕事への意欲を高める
際限なく続く仕事/「シーシュポスの岩」の実験/意味のある仕事
2 目標と行動のギャップを埋める
達成できない目標/実行計画を書き出す/量ではなく時間で/合理的行動の落とし穴/習慣化できるルールを作る/次善の策がベストの策
第7章 医療・健康活動への応用
1 デフォルトの利用
ナッジで変える健康活動/大腸がん検診の受診率向上ナッジ/ワクチン接種率の向上ナッジ/オプト・イン/終末期医療の選択
2 メッセージの影響を考慮する
利得フレームと損失フレーム/治療法の説明
3 成果の不確実性を考慮する
ダイエットのナッジ/ジェネリック薬品への切り替え
4 臓器提供のナッジ
イギリスでの実験/日本での実験
第8章 公共政策への応用
1 消費税の問題
重く見える消費税負担/同じ税負担でも消費行動が変わる/誤計算バイアス/軽減税率はなぜ好まれるのか/軽減税率は補助金と同じ��軽減税率の行動経済学
2 保険料負担の問題
一般の人の理解/伝統的経済学での理解/現実はどちらか
3 保険制度の問題
公的年金・公的健康保険の必要性/モラルハザード/法案提出と損失回避/少数派として意識させる
4 O型の人はなぜ献血をするのか
血液型性格判断/献血行動と血液型/血液型の特性に着目する
おわりに
文献解題
https://www.iwanami.co.jp/book/b473156.html
http://blog.livedoor.jp/yamasitayu/archives/52259826.html
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読もう読もうで積読でやっと読んだ本。聞いたことあることも多いけど、わかりやすく定義の説明がされてる。
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行動経済学的知見を使って人々の行動をよりよいものに誘導しようという考え方である「ナッジ」の優れた入門書。
「バイトのシフトをどう入れるのが効率的か」、「無断キャンセルを減らすためにどのようなナッジがあるか」、「目標と行動のギャップを埋めるためにはどうすればよいか」、「臓器提供の意思表示を促すにはどんなメッセージが有効か」など、実証研究の成果に基づく豊富な事例が紹介されていて、非常に興味深かった。政策的含意に満ちた良書である。
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行動経済学的に人間がとると予想される選択と、相手の行動を変えるためのナッジという概念は面白かった。
大衆に対するナッジと個人に対するナッジがあると思うんだけど、実際僕らが使えるのは後者で、それは"参照点"を変えて選択させるというのが良さそうだなと感じた。
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行動経済学的な「考え方」を政策的な「使い方」として例示している。生活者としての個人が応用できるような「使い方」に関しては、同じ現象も、表現方法で違って聞こえるので、「間違わないようにしましょう」、「だまされないようにしましょう」といった受け身的な使い方での指南書である。読み物として、面白い。
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カーネマンとかアリエリーとかの文庫本を読んでたので、理解はすんなり。この二人の著書に比べると、はるかに簡潔に、わかりやすい言葉で説明している。
さすが、大竹先生。
こういう文章が書けるようになりたい。
行動経済学だけでなく、文章面でも推奨図書だなあ。
推奨図書が多すぎて、誰も読めないぞと。。。
日本の大人の勉強量がアジアで一番少ないらしいが、うちの部署は違うぞと。
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興味深いと思ったのは
私は献血が好きでよくするけど
献血した人の血液型を見ると
統計的にO型の人の献血割合が高い。
(血液型性格診断は根拠がないから関係ない)
「O型の血液はどの血液型の輸血にも使える」というところからO型はの人は他の血液型より献血しやすいようだ。
献血をする人は普通よりも利他性が高いが、↑の事実があるならば、O型の人はより社会貢献ができると考えて、献血するという。
なるほどー!
自分に現在バイアスがかかっているのを知っていて、コミットメント手段を利用する人→賢明な人
自分に現在バイアスがかかっていることを分からない人→単純な人→結果的に先延ばし行動をとってしまう
自分が他人の為になる行動を取った時、その行為そのものが自分を幸福にする事→ウォームグローという
ナッジ→軽く肘でつつくの意味
人間が意思決定をする時、様々なバイアスがかかっているが、その歪みを良くしていこうという事。但し金銭には頼らない
サンクコスト→埋没費用
取り戻すことは出来ない、すでに支払った費用。
費用でなくても対価(努力、行動)でも。
サンクコストにこだわりすぎて他の重要性を識別出来なくなる