紙の本
今の米国を知ることができる良書
2019/10/12 15:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
トランプの大統領就任後の2年半に亘る地道な取材を通し、トランプ支持層の今をレポート。前作同様、今の米国を知ることができる良書です。
反エリートの空気は今も強く、ヒラリーのような富裕層が大好きな政治家は勝てないでしょう。一方、資本主義に幻滅した若者を中心に「民主的な社会主義」勢力が台頭。「反ヒラリー」で勝ったトランプが再選するか否かは何とも言えないようです。ポイントは経済。経済が下り坂になれば、トランプは負けるだろうとの予想もありますが、果たしてどうなるでしょうか。
嫌トランプだけで中身が空っぽな池上に代表されるテレビ評論家の話を聞くよりも、本書を一読した方が得るモノが多いでしょう。
紙の本
「彼ら」
2019/10/11 01:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:め - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えた時には、「彼ら」が「彼ら」とは思えなくなっていた。「私達」から最も遠いところにいると思ってきた、バイブルベルトの人々についても。それほど隅々まで、知ることの意義が詰まった本。前作に続き大変な労作。是非お手元に。
紙の本
多種多様の考え
2019/09/23 09:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
トランプは嘘つきで下品でクソみたいな人間であり、大統領としての品格はこれぽっちもない。トランプ支持者あるいはトランプに投票した人の多くはそう思っている。でもトランプに投票したのは何故か。単にトランプがバカでクソで、そのトランプに投票したアメリカ人もクソで愚かだと単純には考えられない。もちろん有権者も愚かな点は多々あるだろう。しかし、彼らも、真剣に政治や自分のことなどを考えているのだ。そのような単純でないアメリカを、本書は知らせてくれる。
投稿元:
レビューを見る
郊外の象徴 レビットタウン
みんな戦場から別人になって帰ってきた
共和党 かつてカントリークラブに集まるような経営者タイプの人々の政党 今は白人の労働者の支持をひろげている
民主党は労働者の政党 それが見識があり、高等教育を受け、裕福な人々の政党をめざす
かつて労組が民主党を一つに束ね、異なる社会階級、人種、地域を橋渡ししていた
2018/12 ニューヨーク州第14選挙区の民主党候補を決める予備選 28歳のオカシオコルテスが民主党No.4のジョセフクローリーを破った
投稿元:
レビューを見る
朝日新聞の記者が、ここまでトランプ支持者に寄り添う取材をしているとは、ちょっと驚き!トランプ現象を理解したくて読んだが、印象に残ったのは、2人のリベラルな著者へのロングインタビューの中で出てきた、民主党の変貌への言及。民主党は、ベトナム以後、「もはや労働者階級の政党ではない」路線を選び、「見識があり、高等教育を受け、裕福な人々の政党」になってしまった。ルーズベルトは、なりふり構わず、ダムを作り、インフラを整備し、多くの労働者を雇った。失業した労働者の側に立っていた。今でも、人々は、これはルーズベルトが建てたものだと認識できる。が、同じ巨額なお金を使って、オバマは、同じエリート層が運営している大銀行を助けた。言われてみると、そうだったなぁ。日本もそうだが、「労働者」に寄り添えるかどうかは、リベラルの課題。「労働者」のイメージも変わってきていると思うけど。
投稿元:
レビューを見る
ラストベルト地区、そして南部のバイブルベルト地区など、トランプ大統領を支持している固い40%の人たちをインタビュー。なぜあのような大統領に相応しくないとしか思えない人物が支持されているのか。2大政党に固定化した層、そして2大政党離れした人たち。そして若者の間では社会主義への憧憬が高まっているという。サンダースによるバーニー旋風そして2018年の中間選挙におけるオカシオコルテス下院議員の当選。米国社会の深刻な分裂状況が浮き彫りに分かるような気がする。1000人を超える人たちの生の声は迫力に富んでいる。特に福音的なキリスト者がなぜトランプを支持するのか。「トランプの人間性は確かに問題がある。しかし、恋人を選ぶわけではない、政治家を選ぶのだ」との言葉は説得力がある。
投稿元:
レビューを見る
1050人ものインタビューはすごいと思った。
白人労働者階級や帰還兵の考えを知れて参考になった。
リベラル派のエリートと白人労働者階級の間にある溝は相当深いものに思えた。
寛容で多様性に重きを置くアメリカとは違う側面を知れた。
景気が良く失業率が低い状況はトランプ大統領の再選にどこまで有利に働くのか注視していきたい。
投稿元:
レビューを見る
ラストベルトから新南部まで、トランプ支持者の当選後の話を聞いて回ったルポ。
民主党支持からトランプ支持に変わった労働者の多くは、トランプの政策を支持して、次もトランプに投票するという意見が多いようだ。
民主党が労働者の意見に耳を傾けなくなってしまい、エスタブリッシュメントな人達の政党になってしまった事がその大きな要因と思われる。
左派の候補者の政策は極端で、民主党主流派の支持は得られず、サンダースではトランプに勝てないだろう。困ったものだ。誰でもいいからトランプを引き摺り下ろして欲しい。
投稿元:
レビューを見る
トランプ就任後、共和党が勝った地区や中間選挙で民主党勝利に変わった地区などでのルポ。その土地に生きる人々に、なぜトランプに投票したのか?2期目も入れるか?と聞いて返ってきた生の声を読むことができる。
個人的にはとてもいいルポだと思った。短いインタビューではなく、その人の生い立ちにも踏み込んだからだと思う。識者インタビューも収められていて、「白人男性は列に並んでいたのに、移民や女性が前に割り込んだように感じている」という説明がとっても腑に落ちた。
投稿元:
レビューを見る
いわゆるエリートが闊歩するNYやワシントンでなく、庶民が暮らす労働者の街を巡ってトランプ大統領政権下のアメリカの実情を探る著書。
米国民主党員が前回選挙の敗因として挙げた「トランプが『今晩のメインディッシュは大きくてジューシーなステーキ(=労働者の雇用、賃金といった経済問題)です』と売り込んでいる時に、民主党は『メインはブロッコリー(=LGBTQ優遇や移民難民救済、BLM)。健康にいい』と言っているように聞こえてしまった」という例えが言い得て妙。
国民が本心で望んでいることを外してしまったと。だから本来民主党側であった人々もトランプ支持に回ったという。
また、トランプが勝ったのでなくクリントンが酷すぎたという意見も多い。あと、トランプの政権運営は支持するが人格が下品だから人前で支持していると言えないという意見も。
トランプ大統領の支持・不支持の大まかな理由が見えたような。2019年9月発刊なのでコロナ後の評価がどう変わったかは興味ある。その審判が明日からの大統領選で明らかになる。その前に読めてよかった。
あの反日反トランプで定評のある朝日新聞記者が結構公平な目で記述しているのが意外といえば意外。
様々な人種がアメリカの理念の下に溶け合うるつぼであったはずが、今は英語も話さず各人種の価値観を維持しようとするサラダボウル状態になっている。それをトランプ大統領は「アメリカグレートアゲイン」の号令で一つにまとめようとする。
しかもその給料は1ドル。残りは全額寄付してるという事実はもっと知られていいと思う。
投稿元:
レビューを見る
前作に続いて丹念な取材が積み重ねられた作品。副題のラストベルトに加えて、深南部の超保守的なバイブルベルトについても1章分が割かれることで、米国社会の多様性が浮き彫りにされる。
トランプへの投票理由としてしばしば話されるのが、「ヒラリーが嫌いだから」ということだ。1970年代以降に民主党がエリート主義化し、白人ブルーカラーの声に耳を傾けなくなったことが、トランプ当選の背景として指摘されている。
投稿元:
レビューを見る
本作は、トランプが大統領になった後の取材をもとにしたものです。
トランプ支持者(大統領になる前は支持していた人)への取材がメインですが、著者はトランプ支持者という訳ではなく、なぜトランプなのかというような立場であり、トランプの発言の誤りや支持者の誤解も適宜指摘しているため、バランスのいい構成になっていると思いました。
前作と本作を読んだことで、アメリカ大統領選挙関連のニュースや記事の捉え方も大きく変わりました。
色々論点はあるでしょうが、福祉制度や雇用創出といった課題に対する政策に注目していきたいなと思いました。
トランプは移民排除や貿易協定の見直し、オバマケアの廃止などをアピールしていましたが、今回の大統領選挙はどうなるのでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
外交史やってる人間からすると、
アメリカの国内問題ってどうしても
忘れられてしまうエリア。
アメリカの内政の歪みを垣間見れてとても面白かった。
「トランプは原因じゃなくて結果」
そんな事を言う人がいたけど、本当に納得する。
一人一人に分析できてないから大方の選挙予測ははずれたわけで。
移民の問題とか日本にも起こりうるし、
イギリスはアメリカと同じような様相だし、
なぜトランプは生まれ、支持され続けているのか、
を人に焦点当ててるこの本は一読に値する
投稿元:
レビューを見る
トランプ当選後のラストベルト(中北部州)とバイブルベルト(南部州)でインタビュー取材した本です。ラストベルトの経済凋落や労働者の失業という現実は今の日本と合わせ鏡。労働者の党だった民主党に職を失った製造業労働者は完全に愛想を尽かしており、次もトランプにという。決してトランプが彼らの生活を回復させているわけではないのにこのような状況が。何が彼らをそう思わせているのか、ぜひとも読み取り、現在日本と比較してみて欲しいと思います。
また、現代アメリカを憂う2人の著名なジャーナリストにもインタビューしています。この部分だけでも現代アメリカの抱える病理を理解できると思います。
投稿元:
レビューを見る
p.68 大学生トロイの悩みに大きく共感。
「なんでそんなに分裂しているんだろう。どっち側も「自分たちの党は〇〇でなければならない」という思い込みが強すぎる。... 僕は、二つの「心の狭い」人々に挟まれていて、ちくしょう!という気分だよ」
p.192 Listen, Liberal! (Thomas Frank)
Q.なぜ多数派であるはずの民主党が負けるのか?
... 世界の左派政党も、その後、アメリカの民主党の後追いをやった。当時(ベトナム戦争の時代)の民主党は、「見識があり、高等教育を受け、裕福な人々の政党」を目指した(結果、白人の労働者階級の離反を招いた)。
なぜか? ①こうした層が政治献金を出すから。②こうした層がベトナム戦争について正しい判断をしていたから(一方で労働組合はベトナム戦争を支持していた)→ その後70s-90s の民主党は自己変革を繰り返す
グローバル化・オートメーションの勝者の側に回った民主党と、敗者の側に回ったトランプ。勝者は「不可避だ」と言い逃れようとするが、本当は他にも手立てがあった。
民主党が勝つには、労働者階級に訴えられる、サンダースのような候補が必要。サンダースは本当に「リベラルすぎる」のか??
p.264 Arlie Hochschild "The deep story behind the right wing sympathies"
アイデンティティ・ポリティクスの欠点:
1960年代の社会運動は、人種横断的・宗教横断的で倫理的な問題に取り組んでいた。...トランプを支持する人々に呼びかけるには連合体を形成する必要があるが、アイデンティティ・ポリティクスは連合体を形成する際の最大の障害の一つ。「私は黒人」「アジア系だ」「レズビアンだ」「女性だ」といった主張が活動を支配するようになるのは、何かが決定的に間違っている。
トランプと同じく、労働者階級の心を掴む「民主的な社会主義」現象 オカシオコルテス、サンダース
p.293 左派の抱える問題: その教授はマルクス主義を学んだような研究者かもしれないが、労働者階級と会話ができなくなっている。