戦争は女の顔をしていない
著者 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ , 三浦みどり
ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍し,看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った.しかし戦後は世間から白い目で見られ,みずからの戦争体験...
戦争は女の顔をしていない
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商品説明
ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍し,看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った.しかし戦後は世間から白い目で見られ,みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった――.500人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした,ノーベル文学賞作家の主著.(解説=澤地久枝)
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反逆する女神たち
2018/06/09 17:34
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦のソ連では多くの女性兵士が前線で戦闘に加わった。それは看護婦や医師、看護兵の他にも、歩兵、砲兵、工兵、あるいは狙撃手、飛行機パイロット、被占領地でのパルチザンなどもいた。彼女らは、女の兵士など要らないという司令官を押し切って熱烈に志願して軍に入った。そして戦闘の悲惨な現実を体験し、それでも勇敢に勤めを果たす。もちろん戦地での恋愛もあり、戦後になって結婚した者もいた。だがほとんどは戦後は軍にいたことを隠し、普通の女性として生活することを望んだ。
そして数十年が経って、彼女らへのインタビューを試みたところ、堰を切ったように話し出したというのがこの本ということになる。時間が彼女たちを少しだけ自由にさせていた。だがこのインタビュー集はソ連において出版は困難だった。ペレストロイカの時代になって、検閲を経たのちに出版され、ソ連崩壊後に削除なしでの出版がかなったというもの。それでもなお、その内容に多くの抵抗があったという。
ソ連ーロシア人にとって、あの戦争は勇敢な英雄の物語でなくてはならなかったが、女性たちの見た戦場では、無残な死体が散乱し、傷病兵も医療が追いつかずに次々に死んでゆく。物資は不足し、彼女らはだぶだぶの戦闘服と、だぶだぶの靴で、次の任地までは泥だらけになって、ひたすら歩いていくしかない。勲章につながるはなばなしい活躍もあったが、悲惨な光景を徐々に受け入れるように彼女たちの精神も変わっていく。男たちにとっての戦争は、そんな現実はなかったものとして、ひたすら栄光のみが存在したものでなければならなかった。そうでなければ戦争の正当性、つまり体制の正当性が否定されてしまうことを分かっていた。
第二次世界大戦=大祖国戦争が神聖な位置づけにされるのは、新しく生まれた共産国家にとっても犯すべからざるような神話が必要だったというのが、たとえ矛盾であったとしても、妥協のない徹底抗戦を選択したスターリンは本能的に気づいていたのではないだろうか。ソ連がぼろぼろに傷ついて崩壊した後も、神話はまだ効力を発揮していることが、その直感を支持している。
しかし神話に登場する女神たちは、作られた理想のままではない、生身の人間であろうとすることを隠さなかった。それは現代の必然だ。神話が変容していくように、国家も変容していく。世界の変化は、この最初の原稿の中に予言されていたはずだが、どんな神話でもそれが神話であると気づくまでには、長い時間がかかるのだろう。
500人以上のソ連の女性従軍者から聞き取った戦争の真実です!
2019/02/01 16:48
9人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソ連では、第二次世界大戦で100万人以上の女性が従軍して活躍したと言われています。しかし、戦後、そうした女性が従軍していた事実はひた隠しにされ、本人も絶対にそのことについて口を開こうとしません。一体、なぜなのでしょうか。本書は、500名ものソ連の女性従軍者から聞き取った情報をもとに、第二次世界大戦という戦争が一体何であったのかを再考した画期的な書です。
雪
2021/08/25 19:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いろは - この投稿者のレビュー一覧を見る
何もない広場に立っているところに雪のように言葉が、文章が、降ってきた。ひとつとして同じかたちはない。雪はどんどん降り積もる。気づくと雪の中に立っている。
いや、そうではない。初めから積もっていたのに今まで見ていなかったのだ。
この本を読んで、知らなかったのだということを知った。知らなかったことを知ったなどとは言えない。ただ、知らなかったということが分かったのだ。
この本はそういう本だ。
私たちは英雄じゃない、舞台裏にいたのよ。“今はクリミヤに住んでいます……花が咲き乱れています。私は毎日窓から海をながめています。でも、全身の痛みであえいでいます。私は今でも、女の顔をしていません。よく
2021/08/21 11:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
関係性の中で、独り言も発せられざる言葉も生み出される。
世界が変わった時、言葉は速やかに反応するのだろうか、遅れて順応するのだろうか。叫び声や悲鳴、笑い声は、このような時に沸き立つのではないか?
記憶は五感と感情と、関係性と時間の無数の断片として焼き付けられる。
言語化することは、輪郭を与え秩序を与える。
言語化の代わりに、匂いや手触りにまとめあげる人もいるだろう。
そしてさまざまなものに、記憶は紐付けされる。
癒しとか赦しは常に限定的にしか作用しない。とても小さいので、人を包み込むことはできない。全てが癒やされるとか、あなたは赦されたのですなどという人は、人間をちっぽけなものと思っているんだろう。
痕跡は消えたりせず。いつでも蘇ってくる。
戦争に組み込まれることで、それまでの日常は異質なものに変貌する。親しき隣人は、別の世界を生きて来たのだ。
現実は、経験の積み重ねで成り立ち、ここの現実は、周囲の人々の経験やメディアを通して、つながり合う。
物理的距離、時間的距離によって、あるいは文化的距離によって、現実は分断される。
戦争は、たやすく、日常を粉砕する。
つなぎ合わされた日常は、持続した日常とは別物で、現実に戦争が混入するならば、決定的に戦争に染まるのであり、戦争の色が抜け落ちることはない。
”みんな、その女の人から逃げていきました。その人は狂っていたのです。だから話すことができたんです”
”私は、そういう人たちに頼む、話してください……黙っていてはだめ。悪魔には鏡を突きつけてやらなければ”
これは著者の言葉だが、記憶の鏡に映る悪魔は己の顔ってことも多いだろう。沈黙を責めることはできない。
憎悪は正当である。
パルチザンに加わった者たちは、正規軍よりも凄惨な経験をしてきたものが多い、彼らは子供をスパイにし、爆弾を運ばせ、抵抗した。
相手を人間と看做さないこと、あるいは、大義のために、家族の愛情を踏み躙り、我が子を危険に晒すこと。
赦し、キリスト教の基本概念は、ここで意味を持つのだろうか?
汝の隣人を愛せよ。
それは、このような事の後にも、成り立つのだろうか。
”戦後、アウシュヴィッツやダッハウのことを知ったの。そんなことを知った後でどうやって赤ん坊を産めます?でも私は赤ちゃんができていました。”
戦争は不幸を憎悪を生み出す。高揚感を生み出す。これらが、戦争機械を駆動していく。
一旦動きはじめたなら、戦争機械が、人々を操作する。
そこでは個性や自由は粉砕される。
ミキサーに似ている。すり潰し混ぜることは、機能であって、目的ではない。機械に目的はない。
憎悪は欲望か?
暴力はおそらく快感だ。
”私たちの指揮官のところに五人のドイツ娘がやってきたの。みんな泣いていたわ……産婦人科が検査して、その子たちはあそこに引き裂かれたような怪我をしてた。パンツは血だらけだった……その娘さんたちは一晩中暴行されたの。兵隊たちが行列していた……
録音しないで……テープを止めて……本当なの!全部本当よ!”
”戦車の列が子供たちを押し潰して行く。子供たちは跡形もなくつぶされた……その光景を思い出すと今でも気が狂いそうになるよ。でも、人々は戦争を耐え抜いていた。戦争のあとでも気は狂わなかったんだよ。戦争の後で病気になった。”
”世界のどこかにあたしたちの悲鳴が残されなければ。あたしたちの泣き叫ぶ声が”
”人間には心が一つしかない、自分の心をどうやって救うかって、いつもそのことを考えてきたよ。”
ところで、男たちは、女性たちの何を見てきたのだろう。
まさに壮絶
2020/05/26 17:36
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソ連軍に女性兵士がいたことは知っていた。パイロットもいたことは知っていたし中には狙撃兵もいたとは聞いていた。しかしこんなに大勢いたとは!まさに驚異的だ。
彼女たちの経験したことに較べると,サイパンや沖縄の悲惨ささえ児戯に思えてしまう(っていうのは不謹慎だけど)。それだけドイツ軍が残虐だったということか。
共産党の宣伝に騙されていたというのもあるだろうけれど,純真な愛国心でもあったのだろうと思う。深く尊敬するとともに,戦後彼女たちが味わった差別に胸が痛む。と同時にこのようなとんでもない国(ドイツ)と同盟を結ぶという愚かな決定をした戦前の政治家を恨む。
話は変わるが,60年くらい前ソ連はそれなりに輝いていた。というか日本のマスコミが今と同じように変更して讃えていたわけだが,ガガーリン少佐の伝記とかを貪り読んだものだ。なんかその頃のソ連へのほのかな憧れの気持ちを思い出した。
タイトル読み。
2023/08/17 16:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
男性と女性。
戦場を駆けた者と、帰りを待っていた者。
戦前と戦後。
パルチザンと正規軍隊。
狙撃銃や高射砲を操り戦闘に参加した者と、パン焼きや洗濯女としてのみ存在を許された者。
あらゆるところで境界を引かれてしまった女性の姿がここにある。
余談かもしれないが、ウクライナの大地が旧ソ連領内でも肥沃なことは知っていたが、まさか土を略奪されていたとは知らなかった……。
戦争は女の顔をしていない(岩波現代文庫)
2023/08/07 08:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:n - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソヴィエト・ロシアいずれも国民が政府に異を唱えることは全くできない。たとえ、つらくても死ぬことになろうとも。間違った共産主義ならぬ「マルクスレーニン主義」を維持する政府に従わないといけない。日本人は知る必要がある。愛国的な保守が行き着く先は何かを。残念ながら、今の自民党も統一ロシアも結局はヒトラーとやっていることは同じなのである。そして、それで得をしているのは一握りの国会議員と企業の幹部たち。国民の多くはそのことを知らないし知らされない。
話し言葉の戦記。
2022/06/21 17:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次大戦に従軍した女性たちの証言。
地図や年表で語られる歴史とは違った、血の通った人間の生の証言集。
多感な年頃に、また分別ある大人として愛国心で従軍し、死と隣り合わせの戦場で生き残り、復員した後、男性たちと違って女性たちは沈黙を続けた。
根気強く著者は女性たちを訪ね、また女性たちはかたくなだった口を開く。
何層もの記憶の一部、の集積
2022/05/22 18:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K - この投稿者のレビュー一覧を見る
膨大な数の証言だが、語られなかった記憶も個々人の中に何重にもあるのだろう。途方もないことだ。
ここまでの語りを引き出した著者の辛抱強さ、執念深さに凄みを感じる。
多くの十代の少女が年齢を偽ったり、断られても断られても司令部に何度も食い下がったりして、自ら戦場に行くことを望んだということに驚かされる。
そしてまた、彼女たち自身想像してもいなかったであろう戦後の冷遇のされ方がとにかく辛い。
あらゆる意味で今読むべき1冊
2022/05/06 11:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:子供の頃は本のムシだった - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソビエト連邦は第2次世界大戦中、すべての軍務に女性兵士が任務に就き戦場で戦っていた事は知られていたが、勝者であったにもかかわらず戦後国威掲揚の下ほとんど明かされる事の無かった、彼女達の当時の赤裸々な思いと、戦場で生き抜いて故郷に戻った彼女達の悲哀。
多くの国で女性が軍務に就く今日、彼女達の経験談は決して過去の物語ではない。
そして、今この時彼女達が守ってきた子供達が戦火を交える悲劇・・・。
元赤軍伍長の「ところが、どうよ・・・・・・え? またまた、殺し合っている。一番理解できないことよ・・・・・・いったいこれはどうゆうことなんだろう? え? 私たちってのは・・・・・・」この言葉が鋭く胸にささる。
ロシアは大国なり
2022/04/26 20:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:太郎末吉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『同志少女よ、敵を撃て』を読まずにこちらを読んでください。
私からのお願いです。
医療関係の方はPTSDが月日を置いてどのように出るのか考えながら読むといいでしょう。
戦争は白兵戦ありますから怖いよ。日本の武士は合戦で切りあいしてる、昔の日本は怖かった。
小さな声を集めて、「戦争」を描く
2024/08/04 18:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
第2次世界大戦で従軍した、旧ソ連の500人以上の女性から話を聞き、小さき声の集めることで、「戦争」とは何か、その真実を浮き彫りに為ていく記録文学。
戦争から帰還した旧ソ連の女性たちは、その痛みから、戦争について長く口を閉ざした。
その痛みに著者が寄り添うとき、明かされる一つ一つの言葉は、戦争を伝える大きな流れとは少し違う、ディテールだ。それが、戦争のリアルを突き付ける。
戦争の真実
2022/11/06 13:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦の時の女性兵士の実態について、興味深く読むことができました。戦争の真相に迫っていて、素晴らしかったです。
訳文の滑らかさに助けられて重い内容をなんとか読み進む
2022/08/10 20:49
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
漫画版を読んで「先祖返り」するように、
辿り着いて繙いてみた本です。
いやあ、記述の生々しいこと。
やっぱり原典にあたってみる価値はあるものです。
志願兵だった彼女たちの殆どが、第二次大戦後は
従軍経験を表に出さず、一般人として生きていく
ことを選んだ理由が切ないですね。
露軍による独人女性に対する戦時性暴力に
ついての証言も収録。
戦争の実態と、戦後の時間
2022/07/24 06:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の主な内容については語る必要はないだろう。
女性が戦争にどうかかわるか、どのような扱いをされ、何を感じたのか。
戦時期の日本とは全く異なるソ連の女性たちの体験を知ることができる。
戦争からインタビューまでの時間が体験者にとってどのような意味を持っていたのかも読み取れる気がする。
ただ、1冊の本として決して読みやすいわけではない、とは思う。