白の闇
突然の失明が巻き起こす未曾有の事態。「ミルク色の海」が感染し、善意と悪意の狭間で人間の価値が試される。ノーベル賞作家が「真に恐ろしい暴力的な状況」に挑み、世界を震撼させた...
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商品説明
突然の失明が巻き起こす未曾有の事態。「ミルク色の海」が感染し、善意と悪意の狭間で人間の価値が試される。ノーベル賞作家が「真に恐ろしい暴力的な状況」に挑み、世界を震撼させた傑作。
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感染症の恐怖
2021/11/16 14:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎日新聞の書評を読んで興味を持ち読了。
コロナ感染症により社会が大きく変わろうとしている今、20数年前に目が見えなくなる感染症を物語にした小説があった。
しかし、この物語は想像を超える内容だった。
政府による感染者の隔離、そこには盲人たちの世話をする者はいなく、隔離された人達で生活をするように強要される。
出入口は軍隊が見張り、施設から出ようとする盲人を射殺するよう厳命されている。
施設内は食料が乏しく、衛生面も最悪な状態。
水もない、新しい衣服もない、トイレも使えない。
遂に施設内は一部の人間により暴力と略奪による世界となる。
施設の火災により感染者たちは外の世界へ脱出するも、世界は盲人の世界に変わっていた。
この物語にはひとりだけ目が見える女性が存在する。
この女性により7人の仲間は生き延び、人間らしい生活を保ち、人間性を維持する。
しかし、見えているからこそ自分が皆んなの目になり、皆んなを助けなければと考える姿は痛々しい。
そして自らも目が見えなくなりたいとも考えてしまう。
見えないからこその真実。
見えないからこそ分かるひとの心。
見えることによって、私たちは見えなくなってしまっていると、作者は語りかけてくる。
ノーベル文学賞受賞サラマーゴ作
ポルトガル人作家によるノーベル文学賞を受賞した作品です!
2020/05/20 11:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ポルトガルの作家ジョゼ・サラマーゴ氏が1998年にノーベル文学賞を受けた作品です。受賞理由として、スウェーデンの王立アカデミーは、想像力、憐れみ、アイロニーに支えられた寓話によって我々が捉えにくい現実を描いた、と高く評価したということです。内容は、町の交差点に信号待ちしている車の列が続いています。その最前列の車を運転する男は突然目が見えなくなり、パニックに陥るというところから物語が始まります。信号が青になっても車は動きません。後続車のドライバーたちが次々に騒ぎ出します。その時、一人の親切な男が失明した男に代わって車を運転し、男を家まで送り届けるのですが、実は、この男の正体は失明した男の車を乗り逃げしてしまう泥棒だったのです。同書は、極限状態における人間の理性と感情、個人の尊厳と公権力の冷酷さなど作者は余すところなく「人間」を描き切った作品と言えます。ぜひ、ご一読ください。
暗示するものは何か
2020/04/27 09:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
衝撃の一作だった。目が見えなくなるというのは、ある意味では命に関わる様々な感染病よりも恐怖だということを思い知らされた。
この小説は、失明した人々たちを通して様々な人間の困苦とその対応について問うていると思う。サスペンス的な要素もあり読み応え満点であった。
激しく心を揺さぶられた
2023/08/19 09:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちゃーりー - この投稿者のレビュー一覧を見る
激しいショックを受けた作品であった。容易なミステリーの導入に始まり、激流に飲み込まれるように引き込まれていくと、時間を忘れて読み耽ってしまった。
ただのミステリーではなく激しく心を揺さぶられる恐怖、不安、など人の持つ原初的な力にショックを受けて、読後しばらくは動くことができなかった。
これまでこのようなレビューを書いたことがない私に、筆を取らせた。それは思いを書くことで自分の感情を少しでも伝えることができればと思ったからである。
絵空事とは思えない小説
2022/05/04 22:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ禍の時代、「白の闇」が私に与えた影響は強烈だった。もちろん、この小説は突然目が見えなくなるという病が蔓延するという話なので、コロナとは共通しているようには見えないかもしれないが、サラマーゴ氏自身が「まず全員が失明したら、つぎに何が起こるのか、目が見えることを前提として考えられ、つくられた文明社会、その中で暮らすわれわれが視覚を失ったら、『極めて暴力的な、私自身をもぞっとさせるくらいの真の恐ろしい暴力的な状況』になるのではないか」と警告していたように、コロナが蔓延したのは東洋人が悪いという思想に凝り固まった黒人がアジア人に暴力を振るう事件が頻発に起きていることを思うと、絵空事とは思えない小説ということがわかるから余計に恐怖を感じる
人間という存在の真の姿
2023/12/27 14:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある日一人の男が突然視力を失う。伝染性だったのか、人々は次々と白い闇に包まれていく。見えなくなることでこの世界、そして人間という存在の真の姿が浮かび上がってくることになる。
一人を除いて・・・
2022/04/22 16:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
死んだら目が見えなくなる。だが突然失明という死因が加わったらどうなる?感情の発散、不幸と悪事の際限、組織といったことを詳細にシミュレーションした大人が読んでも怖くなる書。
「疫病小説」「ディストピア小説」「思考小説」
2021/12/29 15:04
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ禍、かつて見た「感染症」をテーマにした二つの映画を再度見た。一つは『コンテイジョン』(2011)。タイトルContagionとは「接触感染」の意味。発生源が不明で、感染スピードが早く、致死率が高い新型インフルエンザにより世界中で死者が急増するく。場所が足りず、都会の公園などに死者を埋葬するシーン、感染源を調査する医療従事者の死などが生々しく描かれていたが、コロナ禍では現実になったのである。また、デマと陰謀論の拡散、買い占めや都市封鎖なども描いた「パニック映画」で、ワクチン開発と感染症との闘いという映画ではない。現実がクロスした映画であった。
もう一つの映画は、『ブラインドネス』(2008)。日本人夫婦訳役で伊勢谷友介と木村佳乃が出演していた。本書が原作である。作者はポルトガルのノーベル賞受賞作家。「ペスト」と並ぶ傑作「疫病小説」として高く評価されている。2001年翻訳出版されたが、文庫で新装再出版されたので、映画とともに読んでみた。
突然視界が真っ白になり「ミルク色の海」が拡がり失明する原因不明の感染症がある都市を襲う(最初の感染者は自動車を運転していた伊勢谷友介!)。政府は感染者、そしてその「濃厚接触者」たちを非人道的な形で隔離し、軍の管理下におく。登場人物に名前はなく、明かされるのは「職業」だけ。最初の患者グループと濃厚接触者が収容された施設では、配給食糧を巡る目の見える人と失明した人との争い、そして患者が増えてくると、ゾーン間の争い、このような部分社会でも生まれてくる支配者と支配される関係、そして権力闘争暴力の発生、と目が見える人の社会と同じことが起こる。物語の中心は「伊勢谷」を最初に診断した眼科医の妻で、唯一目が見えるのだが、それを隠して最初の患者達に寄り添って助けていく。窮地に立たされた時、人はどのような行動に走るのか、他者への想像力・思いやりを保てるのか、そこには静かなユーモア、また登場人物の人間味あふれる相貌が描かれていく。
しかし感染拡大とパニックは収まらない。原因もわからず薬の開発もできない。政府の感染症対策は「後手」(どこかの国と似ている)に回り、時を追うにしたがって抑圧的・暴力的なってゆくが、結局街の全住民が「白い病」に罹患し、ついに社会秩序は崩壊してしまう。例えば、全員目が見えないので、羞恥心が無くなって街のいたるところで排泄をしてしまう。当然街中は悪臭が漂う場所となってしまうのだ。また、「所有」というシステムは意味がなくなり、そこに居る・それを持っているということがこの社会での「所有」となってしまう。この本は「ディストピア小説」でもあるのだ。
文庫でも1頁を超える長い文章が、かつ、まだ続くのか、と感じるほど段落は変わらず、他の小説では一章に匹敵するほど延々と続く。しかも対話を表示するための引用符は使われない。これらの作者独特の文体の特徴は翻訳でも再現されている。そしてこの特徴的なリズミカルな文体が実写なら目をそむけたくなるような場面も読ませる。
結末は、原因が解明されないまま最初の患者から視力が正常に戻っていく。原作では唯一罹患しなかった眼科医の妻は、今度は自分か、とつぶやく。しかし映画では妻役のジュリアン・ムーアは、何も言わずに、また、喜びを分かち合うわけでもなく、一人佇む場面で終わる。原作とは違って、唯一目が見えるという「権力」を失った喪失感を表現していると見たのだが、どうだろうか。
2021年に出た「だれも死なない日」は「不死」を扱う。本書と同じように、これによって社会システムがどのように変わっていくのかを考える「思考小説」でもある。
視覚のパンデミック
2020/12/31 01:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある日車の運転中の男が突然に失明する。その周りの人々も次々に視力を失い『白い闇』の世界に突き落とされる。失明した一部の人々は収容所に監禁されて地獄のような生活を送る。外の世界でも次第に病気が蔓延していきとうとう正常な視力を持つ人間がいなくなってしまう。陰々滅々な内容で視力を失った人間がどのような状態に陥るかをこの作者の奇怪な想像力で、それにただ一人だけ視力を失わない「医者の妻」の助けも借りて言葉によってそうした世界を見せつける。『トリフィドの日』というイギリスのSF小説も似たようなモチーフを使っているが、こちらの方が絶望的で生々しい。こうした症状が発生した理由は追及されないし人間もただそれを受容するばかりでなすすべがない。小説のラストでは意外なことんび人々が視力を取り戻し始めるのだが、そんなおぞましい世界を「医者の妻」以外の人物たちも見ることを強いられるのではハッピーエンドとは言い切れない気もした。とてもおもしろい小説だったが、割り切れない読後感。