風に舞いあがるビニールシート
著者 森絵都
あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関...
風に舞いあがるビニールシート
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商品説明
あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり……。
自分だけの価値観を守って、お金よりも大事な何かのために懸命に努力し、近づこうと頑張って生きる人たちを描いた6編を収録。
解説・藤田香織
※この電子書籍は2006年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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春風に乗ってやってきた 『風に舞いあがるビニールシート』
2011/04/15 13:24
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
季節の中で一番好きな季節は、と聞かれたらわたしは春と答えるだろう。
春は別れと出会いの季節、なんとなく不安でくすぐったい。
本棚を整理していたら、一年以上前に購入した『風に舞いあがるビニールシート』を見つけました。
直木賞作品と他5編の短編からなる本書は、すべて良質の作品でした。
風に舞いあがるビニールシートを懸命に追っていたエドの死から始まる『風に舞いあがるビニールシート』は、心を揺さぶられる作品でした。
高い理想を持ち賢く生きてきた里佳は、国連難民高等弁務官事務所に転職した職場でエドと出会い、二人は結婚をします。
しかし里佳の思い描くぬくもりのある家庭は、難民地で暮らすエドをしだいに追いつめていくのです。
たがいを思いやるがゆえの別れは永遠の別れとなり、里佳を苦しめます。
一条の光にたどりつくまでの里佳の情感を描いた短編は著者・森絵都さんの力量を感じる作品でした。
人間の本質は変わらない。しかし愛し合わずにいられない。
これぞ傑作。
2011/02/06 11:40
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ルーティーン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この短編集が森絵都の作品の中で一番好きかと言われたら迷いが生じるが、森絵都の傑作作品はと聞かれたら直ぐ様この作品を差し出すだろう。
全6編味の異なる作品で構成されている。音楽でいう所のアルバムが曲そのものだけでなくその組合せや順番が嵌って初めて一つの素晴らしい作品になる(と私は思っている)ように、小説達はそれぞれの人生を書き上げつつも作品として一本の筋を通している。
中でも『鐘の音』『風に舞いあがるビニールシート』、この二小説は群を抜いている。知性、鋭い洞察力、優れた感受性。そしてそれを纏め上げる冷静な分析力。彼女が兼ね備えている才能の豊富さに感嘆せざるを得ない。風に舞いあがるビニールシートでは、涙どころか嗚咽さえ我慢しきれなかった。
彼女の小説が齎す涙は、悲しく、せつなく、そして幸せで温かい。不思議な感情だとは思えど、それが人間なのではないかといつも一人で納得している。
彼女の潜在能力は留まり、尽きることを知らないのだろうかと改めて思った。彼女の作品を何冊か読んだ上でこの作品を手に取るとさらにのめり込めるかもしれない。
何度も繰り返し読みたい作品である。
「読み応え」というのでしょうか、重量感と心地よさの同居。
2012/04/15 17:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のちもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
前に、『架空の球を追う』を読んで「森絵都さんは長編の方がベターかも...」と思っていました。そして本書は、直木賞受賞作品ではありますが、「短編」です。これも同じような感想に至るのか...
まったく異なりました。非常に「濃厚」な作品です。どの編も「濃い」のです。長さは確かに短いのですが、それを感じさせない、というかそれを越えた何かがある、というか。通常の日常生活とは少し離れた世界(国連の仕事や、仏像を修復する仕事など)を生業としする主人公を描く人間ドラマや、一般的なシチュエーションでありながら、「普通の人」の普通のヨコガオを描きながら、遠い昔の出来事を思い出させてもらったりとか。
いろいろな「世界」が繰り広げられます。これらが1冊の本に収まっている、というのをいつか忘れてしまいそうになるほど、個性的で魅力たっぷりの編が。だから短編であることが故の「消化不良」はまったく感じられません。かなりの秀作ではないかと思います。
人それぞれ、いろいろな思いを持って、いろいろな環境の中、生きていきます。それぞれの人が向かうべき「幸せ」はそれぞれ表面的には異なるけれど、「幸せを追い求める情熱」は誰も一緒なのかもしれません。大切なモノはなんなのか、ということではなく、大切なモノを追い求めることそれ自体が大事であることが、伝わってきます。
個人的には、仏像の修復師を主人公にした「鐘の音」が、ググっときました。最後の最後を主人公の「決め台詞」で締める、というパターンが妙に心地よい。背中がゾワっとくる感じです。これを小説で、1冊の中に何度も「決めて」くれちゃう著者の手法、みごとです。もちろん、表題作も感動です。どれも「はずれ」は一切ありません。
「人間が生きていく中で、『大切だと信じること』 を大切にする」という共通項を貫きつつも、主人公も様々、もっている仕事もさまざま、どれかに「自分に近い」ストーリーを見つけることができるかと思います。この世界に浸る時間を、つくってみても価値があると思います。
【ことば】残念ながら人間、そうそうひと思いに大人にはなれないものだと...思った。昔日の青臭かった自分との決別を図りつつ、望むと望まざるとにかかわらず失われていくその青臭さにどこかで焦がれている。
人生の「折り返し」を意識する頃になると、同じ風景であっても「往路」で見た風景と「復路」で見るそれとは違って見える。そして走り方も変えなきゃいけない。そんな気がするんだ。往路の反省はする必要はない。ひとつだけ、少なくとも折り返し地点まで来たのは「自分の脚で走ってきたから」ということを強く自覚すればいいのだ。
暑苦しい男と女がたくさん登場しますが読後は爽快な気分になります
2020/04/04 21:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作を含み6作品が所収されている。主人公と彼・彼女を取り巻く人たちは「大切なもののために、懸命に生きている」と解説の藤田氏は語る。そうとおりで彼らはそばにいたら、きっと暑苦しいだろうな思う人だらけだ。「器を探して」の主人公・弥生、「犬の散歩」の主人公・恵理子、「守護神」の主人公・裕介そしてニシナミユキ、「鐘の音」の主人公・潔とその師匠・松浦、「ジェネレーションX」の主人公・健一と取引先の社員・石津、「風に舞いあがるビニールシート」の主人公・里佳の元夫エド、これだけ体温の高い人たちが大勢登場するが疲れない、それはどの話にでてくる大切なものがそれぞれに違っているためだろう。この作品集が第135回直木賞を受賞しているのは当然の結果であろう
直木賞受賞作
2019/11/05 20:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作の「風に舞い上がるビニールシート」、「鐘の音」など短編とは思えないほど読み応えがある6編。長編を読んだような満足感がありました。
すとんとしたオチがある
2017/09/10 09:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編を書くのは難しいとよく言われるが、どの作品も読みやすく、最後にすとんとしたオチがあるように思えた。きれいすぎる、うますぎるオチと感じられる話もあった。表題作はNHKドラマを見ており、今回原作を読むことができて光栄に思う。『犬の散歩』が印象に残った。
人生で「大切なもの」とは何か?を問い続けた感動の短中編集!
2016/12/18 09:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、直木賞受賞の表題作ほか、全6の短編中編を集めた森絵都氏の代表作です。本書の中には、有名なケーキ職人の下で働く女性、捨て犬の新しい飼い主を見つけるボランティアに従事する女性、フリーターであり、夜間大学の学生でもある青年、仏像修復師をやめ家具屋に努めた中年男性、毎日をやりがいもなくあきらめた気持ちで働く中堅社員、国連で難民救済に取り組む若者など、多様な人物が登場し、それぞれ年齢や性別、職業は違うのですが、いずれもが「大切なもの」を求めて人生を生きていきます。大切なものを選ぶ過程で葛藤が起こりますが、その葛藤が本書の中で生き生きと描かれており、読者を惹きつける大きな特徴となっています。人生を再考したい時には最高の一冊ではないでしょうか?
短編集として読まねばなるまい。
2017/05/26 23:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
手に取った理由はシンプル。
直木賞をとった作品であることと,印象的なタイトルであること。
六つの短編からなる。
1.器を探して,ケーキ屋さんのお話。
2.犬の散歩,犬を飼う話。
3.守護神,夜間大学の話。
4.鐘の音,仏像修復師のお話。
5.ジェネレーションX。
6.風に舞い上がるビニールシート,国連職員のお話。
テーマに沿った六つの物語。
直木賞をとったのは短編集としてであって,表題作が代表で
戴冠されただけとの印象である。
いつか実現できたらいいな,興味があるけど一歩踏み出せないな
という夢を現実にした物語。
知らぬ間に実現していたり,夢見て取り組んだのに敗れたり。
自分の考えをまとめて,一歩進んだり。
主人公のいろんなステージが用意されている。
自分は,今,夢のどの辺にいるの? そんな事を考えさせてくれる。
表題作は一番印象的であるが,ビニールシートの動きが活き活きと
思い浮かびすぎるため,逆に比喩するものが掴みづらかった。
表題作が直木賞を取ったんだからという固定観念を外せば,
得るものは大きい。
第135回直木賞受賞作
2018/05/04 07:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
アフガニスタンで殉職した夫との日々を振り返る、ひとりの女性を描いた作品が傑作です。国際社会を舞台に大きな仕事に取り組みながらも、ささやかな幸せを祈っているのが心に残りました。
はずれがない短編集
2015/11/05 12:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はやはり表題作が一番好きですが、どれも短編とは思えないほどの読み応えがあります。人間心理を深く掘り下げていると感じました。
当たり外れいろいろ…。
2023/04/12 17:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひねって書いてあるような作品には、戸惑いも感じました。
もっとスッキリ読後感爽やかというわけにはいかないのかしら。
風に舞いあがるビニールシート
2022/07/14 17:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作は以前、TVドラマで見ました。
ドラマは、重くやり切れない思いが残りましたが、文章で読むと、やり切れない話には変わりないのですが、こう言う話だったんだ。と思いました。
本で読んで良かったです。
2人の愛は確かに読み手に伝わりました。
「守護神」「鐘の音」「ジェネレーションX」は観点が面白かったです。
3作品目ぐらいからようやく慣れた
2020/06/02 15:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:deka - この投稿者のレビュー一覧を見る
出だし2作品はこの作者になじめず頑張って先に進んでいった。なかなかこういった人いないよな・・・・と思いつつ読み進め、ジェネレーションXでようやくそうだよね~という気持ちを抱けた。最後の直木賞作品もちょっと想定しにくい話でちょっと同感とかできない作品だった。この作者の作品をもっと読んでみればよさがわかるのかもしれないけれどちょっとすぐには次の・・・とは思えない。
切ない
2016/10/24 13:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saya - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集。レビュー結構良かったのですが、私はちょっと苦手でした。幸せな気持ちになれるお話が少なかったです。特に表題作の風に舞いあがるビニールシートは切なすぎました。