紙の本
女だけでもしあわせ
2023/11/21 17:07
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人類の進化の果てに、女性は性行為の後に男性を「食べる」ことをしないと妊娠しなくなった未来。それを当たり前として生きる男女がいて、疑問に感じる男女がいて、物語になる。どんなに好き合ってもやっぱり他人同士、と冷めた部分とだからこそ切ないし求めずにいられないと、熱い感情とが行き交う「ピュア」。
シスターフッドの万華鏡のようでもある「バースデー」や「To The Moon」、「ピュア」と対になる「エイジ」 、静かな狂気をひそませた「幻胎」など不思議な世界へ連れていってくれる。
紙の本
ちょっと古いかな、と感じなくもない
2023/04/07 11:11
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投稿者:天使のくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作は「SFマガジン」に掲載されてちょっと話題になった作品。ぼくも銭湯小説『メゾン刻の湯』の作者ということで、掲載時に読んだ。女性が男性を食べないと妊娠しないという世界の話である。
ジェイムズ・ティプトリーJrの「愛はさだめ、さだめは死」という短編と比較する人は多いと思う。でも、「ピュア」は、生物学がテーマのSFではない。むしろ、他の作品も含めて、女性の生きにくさをSF的な設定を利用して描いているのではないか。女性が男性を食べるというのは、生物学的な要請ではなく、極端なジェンダーとしての結果となっている。また、「ピュア」に描かれた女性同士の絆は、現実のホモソーシャルな男性社会の裏返しではないかと思う。だから、そうした現実認識の一方で、ストーリーそのものはわりとシンプルなラブストーリーとなっている。そこが、弱みでもあり共感を得やすいしくみでもあるんだろうな。
なお、ぼくの中ではそもそも「愛はさだめ、さだめは死」への評価は低い。生物学がテーマのSFとしては、アイデアのみで掘り下げが足りないんじゃないかと。「汝が半数染色体の心」から「一瞬のいのちの味わい」にいたる、生命の持つ本質的な残酷さと心理の深さに比べると、どうしても劣るんじゃないか、と。
「バースデー」は主人公の親友がいきなり性転換して恋人になろうとする話。FTMの話のようであるけれども、それはセクシュアリティというだけではなく、やはり女性としての生きにくさが反映されているのではないだろうか。そうでなければ、性転換する必要などなかったはずだ。
「To The Moon」における、女性だけの世界へのあこがれもそう。あるいは「幻胎」では、一方的に妊娠・出産から逃れられない女性。
女性の生きにくさをあらためて説明することもないのかもしれないけれども。でも「ピュア」を例とすれば、学校においては名簿にも示されているように、女性は男性の後という位置に置かれ、スカートの制服を強制させられている、といった刷り込みがある。その裏返しとしての世界だ。
正直に言えば、このテーマでもっと奥深く入り込んでいけると思うのだけれども、表面的な気がしないでもない。同時に、現在なお、表面的な部分で共感が得らえてしまうような、社会そのものの進歩のなさも感じてしまうのである。
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早川書房「note」歴代アクセス数第1位を記録した小野美由紀さんによる5作収録の短編集。全作品共通して「性」について描かれている。表題の「ピュア」は未来の世界の話で、人工衛星で暮らす女性たちが地上の男性たちを食べることで妊娠する世の中を描いた強烈な表現の寓話作品、女性を視点に描かれているが、短編最後の「エイジ」は「ピュア」と連作短編的につながっており、こちらは男性を視点に描かれているのも面白い。すさまじくぶっ飛んだ世界感だが伝えたいことは交じりっけない純粋そのもの。
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noteで話題なった短編収録。
男女のパワーバランスが逆転し、男は女に「食べられる」だけの存在となってしまった世界。
私が食べるとしたら、やっぱり愛した男がいいな。
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近未来な設定のSF短編集。進化した女性達は人工衛星に住み、敵と戦い、妊娠を義務付けられていた。妊娠する為には地球に住んでる男達と性行為をし、行為後に男を食べてしまう必要がある…。その他4作。
ダイナミックな設定のSF小説ではあるが、短編であることや、流れる文章で、あっという間に読み終わる。泣きたくなるような綺麗な表現が散りばめられている。
いずれの作品も、男女の性別の枠組みの中で生きなければいけない息苦しさや、性別を超えた人間同士の助け合いについて書かれている。食べてしまわないといけない男性に好意を抱いてしまったら?親友がある日性転換して男になったら今まで築いてきた関係はどうなる?
女だからこうすべき、男だからこんな態度はしたらいけない等、性別の枠組みで苦しめられていないか。背景は違えど、登場人物の苦しさにどこか共感してしまう。コロナパンデミックで行き方、働き方が大きく変わっていく今だからこそ読みたい小説。
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「ピュア」「バースデー」「To the Moon」「幻胎」「エイジ」
そのままするりとSFとして読むもよし、イニュエンドゥなところを自分で解釈して楽しむもよし。
「ピュア」カテゴリー的にはヴァンパイアものにはいるような感じだが、ポストアポカリプス(終末もの)。遺伝子操作で女性だけ強くなり、繁殖には性交後に対象男性を捕食することにより妊娠するという性質になっているという設定。出生率が非常に低く、子孫を残すために、性交は”狩り”と呼ばれ、義務化している。ただ、そんな世の中なのに口調や悩み事は現代の女子高生的で違和感はある。設定がSFで面白いながら、普通の恋愛小説。「エイジ」はそのスピンオフ。
LGBT「バースデー」性虐待をうけていた女児の幼馴染がエイリアンになった「to the moon」近親相姦「幻胎」と、かなりセンセーショナルな内容と表現が多いが、全て薄皮一枚隔てたような隔離感があって、生々しさが少ない。よって、妙な読みやすさはあるかと思う。
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女性が狩をする。狩の獲物は、「人間の男性」。その方法はカマキリと同じだ。赤子を宿すためには男が必要なものの、必要さえ満たされれば、あとは用無し。
怖い?酷い?仕方がない?
食われる方はたまったもんじゃない。
でも、そうなってしまったなら、それを受け入れる他に、ない。
いやいや、待て待て、主人公はそうしなかった。
男と、男の子供を大事にしたいと思っていた。
どんなに腹が減っても、どんなに欲望があふれそうになっても、我慢した。
「愛」を知った。
そんな生き方しかできなくても、我慢しきれなかったとしても、守りたいと思った気持ちは偽りない。
実は本作、描き下ろしの最終話と話がつながっている。
エイジの過去を知ると、彼がどうやって生きてきたかわかる。
「純粋」、それは残酷でもあり、希望でもある。
神は残酷で慈悲深い。そんな相反する二つを持った「女性」の生きる世界を描いたSFだ。
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愛し方は世界の法則が変わっても大きな違いはないのだと読みながら感じた。
性別格差がひどくなればこの物語のように女性は他の星に行って戦いを学び、子供を孕むために元々いた星に帰る世界になったら少しゾッとする。
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ようわからんけど、読んだ。
小さいときから、体と性があわず、男性の性になったちえ。ひかりが好きなのは好き。変わらない。ひかりも。
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なんて濃い物語だ。エロくもあり、グロくもあり、性と生の描き方に衝撃を受ける。これがフェミニズムSFというものか。本当に大切な人とどう関わっていくか、これからの人と人との関わり合いを考える上で読むべき一冊だろう。
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とても面白かったです。
性欲のままに愛することを否定して美しい愛を求めることは、命を繋ぐことも否定してしまうのか。
どうであれ、これから人類がどう発展しても愛情は尽きることはない気がしました。
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気持ち悪い印象が残ってる。
表紙からしておっぱいだし。
会話が若い人ので、違和感を感じる。でも後十年後とかは、このような会話の小説が主流になるのだろうかと思ったり。
あれ、でも作者85年生まれだと、それなりの年齢か。
セックス描写も気持ち悪くて、勃たないし。
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男を食らって妊娠する進化した女という生命体SF、近親相姦に性同一性障害の百合
アブノーマル極まれり、だけどこんな形のピュア―も存在するのかも、しれない
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交尾が本体の生死に直結したり、食ったり食われたりするのは、多様な生物の世界では珍しいことではないと思うけど、人間にあてはめると急にあまりにも非現実なことに感じる。ここまで思考を飛ばした話を世に提示した小野さんに脱帽してしまう。
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進化した女が性交が終わると男を食べるように進化した近未来の話の表題作を含む短編集。幼なじみの性転換手術、自分の卵子を提供して発見された昔の人間のDNAと受精させて未知の生命体を作ろうとする科学者、ある日突然変異し月人となってしまう症状、表題作での男側からの物語、とどれも異色の作品。
読み始めはこの不思議な世界観にびっくり、ちょっと村田沙耶香の「生命式」を思い出すような発想だなと思う。読んでいくうちに、どの話も少し発想元
がわかるような気がして、「生命式」のぶっとんでる感覚とは少し違うかな?と。
そこまでは入り込めなかったかな、私には少し若かったかも。