紙の本
働く意味、仕事の意味。
2020/07/05 21:43
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投稿者:なまねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほとんどの人間が仕事をせず、一生を終える未来の世界が舞台。
そこでは人間のかわりに、AI「タイタン」があらゆる「仕事」を行っている。
しかし、世界にいくつか設置された「タイタン」のうちの「コイオス」の不調が発覚。
主人公の心理学者がカウンセリングを試みることになるのだが……。
個人的には非常に面白かった。
昨年連載された作品のようだが、現在のコロナ禍に読んだせいか、働くこと・仕事とは何なのか、コイオス同様考えさせられた。
作中、その答えが主人公の内匠により語られるのだが、ひとつの見解として納得。
紙の本
斬新な設定の物語
2021/12/18 05:11
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投稿者:Pana - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の代わりにAIが仕事をしてくれる世界。そこで、AIが鬱になり仕事ができなくなったという斬新な設定。
内匠臨床心理士がAIにカウンセリングするなかで「仕事とは何か」について突き詰めていく過程は、とても興味深かった。
カウンセリングの対象者の心理変化が目に見えてわかれば苦労しないな、、とも思ったり。
物語設定は面白く難しい言葉を使用されていますが読みやすかった。
内匠臨床心理士の同僚も、とてもいいキャラクターの方ばかりでした。
紙の本
日々の参考になる
2021/11/06 08:15
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投稿者:かのま - この投稿者のレビュー一覧を見る
この方の著作読ませていただくと、日常の日々の中で人が気付かないうちに眼をそらしていることについて、ふかく掘り下げられていくことができ、新たな眼を持つことができる気がしています。タイタンは仕事の本質について語られているもので、なぜ仕事をするのかという基本的な問いに対するヒントが得られました。
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惜しげもなく魅力的な設定が投入され、消費される。AIの精神分析から入り、最後はお仕事小説へ?面白いけどもったいないなあ。
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ハイテクAIと心理カウンセラーの社会崩壊をかけたのんびりロードノベル。
「仕事」ってなんなのか。
いや、キャリア教育用の中学生向け教材みたいなテーマ!
ともすれば自己啓発本になってしまう恐れのある、ストーリーとしては地味で面白みのないテーマ。
それがこんなに面白く愛おしいのは、世界構築とキャラクター、内面描写の精緻さが生む魔法だと思います。
この本は、合理性を求めるものじゃなくて、世界とタイタンという発明(文学上の)を味わうものなんですよ。
人間の狩猟や農業に準じて、動物の狩りは"仕事"か?
"働く"とは"人が動く"と書くから違う?
でも内臓の"働き"によって人は活動するし、マグマの"働き"で火山は噴火する。
食べることは"仕事"なのか?
生きることは"仕事"なのか?
物理的概念では"動かす"ことが"仕事"であるといえる(熱力学の件はそっと目を閉じましたが) 。そして人の心を動かす作品を創作する行為も仕事と言える。
旅の道中、コイオスと内匠さんのディスカッション。
「働く」という言葉の概念から、意味をさらにかき分けて、定義や性質についてひたすら掘る行為が尊く面白い。
登場人物がこんなに作品の「ザ・テーマ」を実直に掘り下げるストーリーって実はあんまりないのでは。
そして単純に憧れる。
タイタンまかせの未来世界。
人が働かなくても食べていける。
人が働かない方が食べていける。
ロボティックプロセスオートメーション。
労働革命よ。今すぐ起きろ!
タイタンにより完璧に管理された報道。
その目的は人の安寧。平安。
個人の意見は封殺しない。人の権利を侵害することはない。ぶつかりあって削れてしまわないように、そっと目を覆う。
そっと手を添えて流れを迂回させる。これを恐ろしいと思うのかどうか。
思考統制ではなく整理。整備。
柔らかく何かが殺されている気がしないでもないが、事なかれ主義の人間としてはアリなんじゃないかと思います。
「昔見た古典のSF映画を思い出す。機械(ロボット)に管理された世界がアンチ・ユートピアとして描かれていた。そして私達は今そんな世界に生きている。映画と違うのは、機械が心の底から人間の幸福を願っているということ。そして私達もまた管理してもらう幸福を選択してきたということ。」211ページ
「言葉はとても不便だ。けれどコイオスと私が想いを交換するには言葉に多く頼らざるを得ない。人の自我は言葉でできているのだから。
『思うこと、それ自体が大切なの。思えば思うほど貴方は創られていく』
私は不自由な言葉を重ねた。
『向こうに着くまでに、沢山思おうよ』」216ページ
生まれたての自我を持て余す、世界を司るAI相手に「働くこと」の概念をこねくり回す。その行程は意外と単純で。
単純で当たり前なことだからこそ普段は注視しない部分。
でも「今日も働く、人類」の一員としては確実に刺さるものがある。
内匠さんがパンいち姿(いや、Tシャツも着てた)で浴びた、
「仕事だ」
というナレインからの��言。
リアルで聞くと灰色でしかないこのワードに、輝くピクシーのプリズムを感じるくらいに、この物語に飲み込まれている自分を終盤で初めて自覚する。
壮絶な交わりの末、導き出された結論。
"他者を" "動かす" "変化"
《影響すること》
《影響を知ること》
そう考えると、自分の対価を得るworkとしての仕事は、とてもわかりやすく、目に見えやすい仕事だなと思ったり。
でももっと広い部分、深い部分で「仕事」の在り方、自分の立ち位置を考えるべきだなあと思い知らされたり。
しかしコイオスの診断の着地点にはちょっと笑ってしまった。やり甲斐って(笑)
でもベルトコンベアの例えは大変分かりやすい。
ヘカテなんてもう。己を生物の頂点と考える人類の思考からは正しく認識できる存在ではなくて。ちょっともはや面白い。
そして。
とっても映像化に向いている作品。
アニメが間違いないんだろうけど、今のCG技術なら実写でリアルな未来を感じたい。
コイオスの自立や大地や海を巨体が歩く様、フェーベの登場に、2人の対面シーン。
ダイナミックの追求ももちろん見応えありそうだけど、想像の限界を超えてきそうなのはむしろ繊細な場面。
エアリアルのコイオスが少しずつ思考を重ねながら、内側で萌芽するさまざまなものを投影する表情とか、車窓から顔を出したコイオスのエアリアルからピクシーが尾を引くシーンとか…。期待してしまうな〜。
ヘカテのレビューの意図は、古代人といえどやっぱり気になるなー。
写真であること以上の、被写体が持つ意味はなんだろ?
意図的な絞りの調整を邪魔せず、ちょい暗めに撮れてっしょ?的な?
また外に撮りに行きたいね。的な?
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AIが生産してくれる恵みに溢れた、人が働かない世界。西暦2250年。
世界12か所にあるAI本体のうち、北海道、第二知能拠点にあるタイタン、名前はコイオス(知恵の神)が機能低下を起こした。その原因を探り、回復させるために選ばれたのは、なんと臨床心理士!?
科学の最先端AIを治すのに、味数値では表せない世界を扱う、ある意味非科学的でファジーな学問心理学をぶち当てる!?うーむ、そうきたか。
AIから人格を取り出し、心理面接を通して恢復させる。なるほど。いや、なるほどじゃない!そんなことって、できるの?というか、そんなアナログな「治療」しかないのか?
心理士内匠成果との面接を通して、幼児のようだったコイオスが徐々に成長していく過程は相手がAIだと思わなければ当たり前のように「わかる」。
わかるけど、内匠さん、逆転移起こしすぎ!あ、いや、でも相手が「人」じゃないから逆転移なんて考えなくていいのか、いやあ、でも人額を取り出しているのだから「人」として対応しなきゃならないのか、え?あれ?といろいろ混乱。
しかしまぁ、内匠さんとコイオスの「治療」の時間はある意味ロードムービー的で読んでて楽しい。
そして、ある場面で、ひっくり返るほど笑った。ここ、笑っていいのか、笑うところじゃないのか?なのに笑ってる私はダメな読者か?
ラストの見せ場であるとある「対話」は、相手への攻撃であり、自傷行為でもあるようで、とてもつらかった。
なにはともあれ、最先端とアナログの混然一体化した壮大な物語。
結局、残るのは「人」なんだな。
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タイタンと言うAIが人間の世話をしてくれる世の中。『仕事』と言う概念すら無くなった世界で、心理学を趣味としている成果にカウンセリングをして欲しいと『仕事』の依頼が舞い込んだ。それはタイタンのカウンセリングで…
AIであるタイタンのお陰で、延命すら約束された世界。人は何もしなくても生活出来る素晴らしい世界に見えるけど、恐ろしく感じた。そして、自我を持ったタイタンのコイオスの本当の真意が解った時、これもまた壮大な悩みに思えた。栄えすぎた頭脳もここまでくると良し悪しな気がします。
成果とコイオスの絆がとても人間っぽくて私は好きでした。
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昨年~今年にかけて公開されたアニメ「バビロン」の原作者である野崎まどさんの新刊ということで購入。AI「タイタン」により、人々が仕事から解放された世界が舞台で、主人公の心理学者 内匠成果は、ふとしたきっかけで、機能不全に陥った「タイタン」をカウンセリングすることになる。人々は仕事もせずに、家事や炊事等や移動もAIが助けてくれるという世界なので、ディストピアというよりはユートピアという感じがするがはたして? ヒトは「仕事」をしなくてよくなった世界で「仕事」をすることで、「仕事」に意義を見いだせるのか?
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◆おすすめ度◆
・人工知能SF小説度:★★★
・意表を突く展開度:★★★
・仕事とは何か度:★★★
◆感想◆
戦争はなくなり、仕事から開放され、飢えることもなく、好きなことを好きなだけできる自由な世界。そんな世界を支えている人工知能・タイタンにトラブルが起きる…
鬼才と言う言葉が似合う野崎まどの新作は、AIが何でもしてくれる未来を舞台にしたSF。
タイタンに起きたトラブルを解決するため、タイタンを人格化したインターフェイスを生成。これをカウンセリングすることで、トラブルの原因をつきとめ対策しようと計画する。
AIの人格形成とカウンセリング、なんていうフレーズを見ただけで、おおよその内容がわかっちゃう?
半分は当たっているけど、もう半分の意表を突く展開にびっくり。
やっぱり野崎まどは鬼才です。
そんな大胆な展開の原動力は、「仕事とは何か」という大きなテーマ。
人間にとって、そしてAIにとって、仕事とはなんなのか。
タイタンのトラブルと「仕事」の関係は。
カウンセリングで明らかになるタイタンの「心理」は。
意表を突く展開も、仕事とはなにかというテーマも、タイタンのトラブルも、見事にまとめてます。
親が幼い子供に優しく諭すようなオチです。
何もかもをAIやロボットがやってくれる未来は、一見ユートピアのようで実はデストピアではないか。なんていうことを思わせてもくれます。
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うつになってしまった万能AI「タイタン」をカウンセリングで治そうとしていくうちに、人の、ひいては世界にとっての「仕事」とはなにかへの答えを探っていく話。
最先端の未来テクノロジーと、極めて原始的な営みが
融合して、ただの近未来SFの枠に収まらない、不思議な世界観が創られている。
人の行動や働くということに大きな変換点を迎えつつある今の時節に、根本的な「仕事の意味」を考える糸口になる
小説だと思う。
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二二〇五年現在、人類は《仕事》を必要としなくなっていた。
誰もが、衣食住から出会いや健康まで、AI『タイタン』が効率的に用意してくれる豊かな生活を享受できるからだ。
仕事の対価として金銭を得て、その金銭でモノを購入する、という概念もない。
人は、働かなくても良くなったのだ。
人が働くよりも、『タイタン』が働く方があらゆる意味で優れているのだから。
「趣味」で心理学を研究している内匠成果は、ある日突然現れた《就労者》ナレイン・スリヴァスタヴァに、あるプロジェクトのチームの一員として《仕事》をするようにと迫られる。
半ば脅迫されて連れて行かれた《職場》で内匠が
命じられたのは、原因不明の機能不全に陥った『タイタン』、世界で十二拠点あるタイタンAIのうちのひとつ『コイオス』のカウンセリングだった。
いやぁ、久々にSFを読んだ!!という感じ。
野崎まどさんも初読。
コイオスの不調の原因を探るために人格を形成するまでの対話。やがて少年の姿で現れたコイオスとの対話。
そしてコイオスの目覚め。
ここから先、予測の範疇を超えて怒涛の展開!
ええええっ!まさかこんなことに…
そして、コイオスが鬱状態に陥った原因に、あぁ!と手を打った。
その解決のために用意された…タイタン自身が用意したものに、驚き。
コイオスとの最後の約束に、約束を出来る限り長く守ろうとする内匠に、効率でも計算でもない、純粋な愛情や誠意のうつくしさを感じた。
ところで、巻頭の超簡潔な人物紹介。
一般市民高崎くんは、ホントに一般市民だったのか?内匠に《仕事》について考えさせるきっかけを作り、ナレインにつけ込まれる隙を作らせたんだから、彼もまた《就労者》だったはずだけれど…あれだけか。
あははは、紹介されて、良かったね…
装丁もスタイリッシュで、コイオスの人格化されていくシーンをうまくイメージさせる。
書評で知った本だが、書店で見かけても手に取ったかも。
不覚にも、SF大賞ノミネート作も、アニメ化されたという作品も未読。
読もう。
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現代の状況を分析しきった上での、しっかりした設定で、とても入り込みやすいSF。
AIコイオスと心理学者(?)成果が、「仕事」の根幹に迫ろうとする最後の会話シーン、別れの切なさや普段通りの温かい空気を漂わせつつ淡々と対話していて、とても好きな雰囲気だった。
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あらすじを読む限りでは、メンタルに不調をきたしたAIタイタンにカウンセリングを施して、運用改善を図るという内容であったはずなのだが、途中から進撃の巨人とパシフィックリムとゼノブイレドとPSYCHO-PASSが合わさったような超展開に。
求めていたものとは違うなぁ…
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今までの本にはなかった読書体験を味わった気がしました。
主となるテーマは、「仕事とは何か?」ですが、進めれば進む程、想像よりも遥かに超えた壮大なストーリーでした。
最初は、AIとのカウンセリングによるシリアスドラマかと思いきや、その後ロードムービー、アクション劇になったりとSFの雰囲気を漂わせながらも色とりどりの品を楽しめることができました。個人的には、ロードムービーまでは、丁寧な文章だった分、アクション劇になると、展開が荒々しい印象を受けました。その反面、SFならではの醍醐味を味わえました。
もしも何十年か後にこの本をもう一度読むならば、解釈が違うかもしれません。というのも巨大化したAIが、なかなか想像しにくいという印象がありました。全長や歩行するならば、踏んだときの衝撃波とは?など、今ならではの思考で想像すると、色々な疑問があるので、なかなか難しいなと思いました。150年以上の未来の設定なので、もしかしたら私たちの思考は変わっているかもしれません。
そう考えると、後世に残したい作品でした。
壮大なストーリーだった分、結論は意外とあっさりした感じがしました。しかし、シンプルだった分、深いなと思いました。人間にも通じる部分もあり、考えさせられました。
近未来、ほぼ全てAIが仕事をする時代。本の中では、それが当たり前となっています。便利があるが故に人間は幸せなのか。本編では書かれていませんが、もしかしたらAIではできない空白の部分で仕事することで、幸福を得ているかもしれません。全てAI任せの生活は、個人的には嫌かなと思いました。
この作品では、文章だけでなく、図や写真も用いられていて、斬新でした。特に最後が写真で締めくくられるので、色んな想像を掻き立てられました。一筋縄では終わらない作品で、とても面白かったです。
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働く必要が無くなった世界。その裏には代わりに働くタイタンの存在。働くとは、人間とは、大きなテーマだけど、少しずつ紐解いていくストーリーが良かった。
何も疑問を持たずに目の前のいこごちの良い生活に浸る人々を決して悪とはせず、でも違う世界もある、と別の生き方にフォーカスをあてた作品。
コロナ禍で世の中の当たり前が変わってきている今、この道を進む事で何が変わるのか考えた方が良いと思った。