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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はSARSやエイズなどの流行を念頭にかかれた本に、新型コロナについての章を追加したものである。
日本語には有気音がないため、飛沫が飛びにくい、清潔すぎると逆に感染症のリスクがある、強すぎるウイルスはむしろ流行しないなど興味深い内容が多かった。
新型コロナに関しては、行き過ぎた予防よりメリハリをつけて行動するなど教えられるところが多かった。
紙の本
あらゆる層の人が知見を高め、活かすべき
2020/05/31 16:44
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投稿者:アラン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書のメインは、病原体の伝播経路、
特にSARS、新型インフルエンザ、エイズの特徴・感染予防を説くことにある。
補章で新型コロナが取り上げられている。
新型コロナ感染防止のためには、まだ分からないことは多いと留保しつつ、以下のとおり述べる。
・日本人の清潔行動文化を国民が意識し、かつそれを効率的に活用すること
(マスク、手洗い、箸、握手でなくお辞儀、風呂、家で靴を脱ぐ)
・特に、マスク、手洗い、閉鎖空間で大声を出す集会を避けることが重要
なぜなら、感染経路は口であり、
飛沫・接触(手)・空気媒介感染(塵埃)で感染する可能性があるから。
新型コロナは、日本・世界全体の問題であり、
あらゆる層の人々が感染症について知見を高め、
それぞれの立場で活かしていくべきである。本書はその大きな一助となるだろう。
紙の本
感染症対策は予防が大事、ただし事前の対策が不可欠だ
2020/05/17 13:38
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投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、副題にあるように感染症の「広がり方と防ぎ方」について書かれている。「治療よりも予防が重要である病気が、感染症なのだ」と。そして、日本人の居住環境と行動文化を他国と比較することによって、日本では「日常生活のなかで病原体に感染しにくい状態に保たれている」と結論付けている。かなり説得力がありそうなので、ぜひ本書で確認し、新型コロナウイルスの感染予防に役立てて欲しい。
ただ、「増補版へのあとがき」で、「日本人はコロナ危機をうまく乗り切るのではないだろうか」と楽観しているが果たしてどうだろうか。
この間の「非常事態宣言」の「解除」に向けた動向をみれば、「感染防止」よりも「出口戦略」なるものに引きずられている。政治的な判断を誤れば、瞬く間に第二派が来ることだって考えられる。
さらに、著者は、「新しい病気が発生したら、即座に原因究明をおこなう体制が必要なのだが、それが日本には欠けていた」が「方向転換した」という。2006年12月20日初版の記述だが、その後どうなっているのだろうか。公衆衛生機能も、保健所機能も、医療提供体制も、政治によって縮小・統廃合されてきたのが現実である。
「救える命も、救えない」という危機的な医療提供体制のもとで、さらなるパンデミックが起これば大変なことになる。楽観視するのではなく、次の流行に備えた医療提供体制、保健所・公衆衛生機能の拡充をすすめることが必要ではないのか。
そして、「感染しない」「感染させない」ための生活様式にともなう自粛要請への補償も欠かせないだろう。政治の責任が間違いなく問われているだろう。
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コレラから新型インフルエンザまで、多様な感染症をわかりやすく解説したロングセラーに、新型コロナウイルスの解説を加えた増補版。
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感染の予防と制圧。人が何に意識すべきか?感染の仕組みを知り、皆が協力して行動すれば感染のリスクは下がる。
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SARSウイルスは、咽頭で少量増殖してから、血液を介して肺や腸管へ行き、大量増殖すると考えられる。香港では、アパートを訪問したSARS患者が浴室内のトイレを使い、ウイルスが含まれていた便が排水管を落下した時に、飛沫が管内に発生した。換気扇を回していた浴室の床の排水口から飛沫が吸い出され、階段部分から上の階や他の棟へも拡散したと考えられる。この団地で、二次感染を含めて300人以上が感染した。
病原体は、長期的には人間との共生に移行すると考えられている。短期的には、病気がうつりやすい条件があれば強毒化し、うつりにくい条件では弱毒化する(イーワルド)。
リンパ球にはBとTの2種類がある。Bリンパ球は抗体をつくり、Tリンパ球は、Bリンパ球を助けて抗体をつくらせる。ヘルパーTリンパ球には、2種類ある。ウイルスや細菌に対しては、Th1が応答し、Bリンパ球がIgG抗体をつくるのを助ける。花粉、ダニにはTh2が応答し、Bリンパ球がIgE抗体をつくるのを助ける。
日本人のA型肝炎ウイルスの抗体保有状況によると、1950年代以降に生まれた人は抗体を持っていない。水道水の塩素消毒が普及して、ウイルスがいなくなったことを意味している。
ウイルス外側のタンパク質には、16種類のヘマグルチニン(H)と、9種類のノイラミンさん分解酵素(N)がある。通常のインフルエンザでは、ウイルスのタンパク質を開裂させるトリプシン様酵素が存在する気道や腸管のみが感染する。ヘマグルチニンの開裂部位に変化が起きると、細胞内の酵素によっても開裂が起こるようになり、全身で感染する。この高病原性ウイルスH5N1によって、1996年から2019年までに東アジアで450人が死亡している。いまのところ、強い咳を起こさないが、気道粘膜で局所感染を起こし、咳によって伝播する変異を起こすと、新型インフルエンザとなる。
スペイン風邪は、ウイルスが肺胞で増殖してガス交換ができなくなり、窒息死をまねいた。咳による飛沫によって感染は広がった。
タミフルは、ウイルスが細胞外に出る時に細胞膜上のノイラミンを分解する酵素の活性を阻害する。ノイラミン分解酵素は、すべての亜型のインフルエンザウイルスが持っている。
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◯大分コロナウイルスも落ち着いてきたと思われるが、今一度、感染症についての本を読んでみたいと思い手にする。
◯感染症対策において、我々のような普通の人たちが普段の行動を心がけることが一番重要であると再認識した。日本人の潔癖とも言える性格が、コロナウイルスの感染拡大防止に寄与していると思うと、ものは見方、考え方で変わるのだと感じる。
◯旧版の最終章が性感染症について書かれており、意外な気もしたが、著者は母子手帳についても著作がある点、母子保健の分野との関連性で捉えると納得である。
◯昨今、オンラインでのピルの処方が議論されているが、エイズの視点を持ち込んだ場合、また方向性が変わっていたかもしれない。そもそもその視点での議論がされていたのか疑問である。やはりものは見方、考え方で変わる。
◯また、旧版の途中で、マスクを全国民に配布することが提言されている。今の状況を著者が見たときどう思うのか興味深い。この本を読むと、改めて、マスクに高い信頼性を寄せることになるが、今般の状況を踏まえると、政策的には配布のタイミングが遅すぎたのかもしれないと思う。
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今更ながらですが、感染症についての基本的なことがよく整理されて分かりました&おさらいとなりました。文章も読みやすい良書。
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感染症の権威による感染症の解説本の新型コロナアップデート版。SARSの時点でマスクの重要性や集団免疫に言及している点はさすが専門家なのです。「新型コロナアップデート版」と書いていますが、新型コロナ関連の情報は少ないので、「感染症について正しい知識を持つ」という視点で読むといいと思います。新書なのでサクッと読める点もよいのです。
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http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB30262550
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まさに流行り本に手を出す典型的な浮動層を地で行っておりますが、久々に面白かった。
内容が時事ネタであることも手伝ってはいるものの、この手の内容を素人が楽に読めるというのは、著者の著述力が成せる業。こういう本が地道に広がっていけば、そのうち騒擾する方々も自然と淘汰されるというもの。
とりあえず手洗い・マスク、基本中の基本ということで。
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感染症について手広く分かりやすく書かれているだけでなく、疫学の専門的な人材の育成、サーベイランス体制の確立、性習慣における安易な欧米追従(ついしょう)へ警鐘を鳴らすなど、いま(2020年)まさに必要とされている提言が盛り込まれていることに驚いた。2020年に猛威を振るった新型コロナウイルスのことを考えれば、O-157やBSE, SARSを経た2006年に書かれた本書の提言がそのまま問題になってしまったということは、悔やまれることだろう。
コレラ、天然痘、結核、風疹、スペイン風邪といった歴史的に世界中で猛威を振るった感染症や、スノウの画期的な疫学調査や、塩素溶液による手洗いの重要性を訴えたゼンメルヴァイスといった人間の努力による感染症の防止というのはあらゆる本で取り上げられる内容ではある。
そのなかでもこの本が面白いのは、感染症を清潔化という文明史的な視点からとらえていることと、それと関連して人間の行動変容に着目しているというところだと思う。イーワルドの進化論的な説明も紹介されていて興味深い。人間社会が危険な感染症を防ぐようなかたちに変化してくると、毒性の弱く感染の広まりやすいものが残ってくるという。病原菌からすると、伝播しにくい社会(接触が少ないなど)では、宿主を殺してしまったのではそこで感染が止まってしまう。したがって、宿主を生かさず殺さず、行動してもらうことで感染を広めようと言うのだ。新型コロナウイルス (SARS-Cov2) はもちろんその代表例である。
本書の問題意識は、2003年に世界で猛威を振るったSARSにおいて日本人の患者数がゼロだったのはなぜか、ということにあって、これは日本人の生活習慣や発声法の違い、あるいは排水設備などさまざまな理由が考えられる。そこからマスクの効用についても論じられている。マスクは患者が着用することで拡散を防止するということはすでに広く知られているが、飛沫拡散防止という点では2層の紙マスクでも十分に減速効果があるとのことである。
そしてエイズなど性感染症の予防について警鐘を鳴らしていることも無視できない。日本は外国に比して高いコンドーム使用率を誇る。それは避妊はもちろん性器が傷つくのを防ぎ性感染症を予防することからも望ましいことだった。日本のセックスは清潔なのである。(冗談)
コンドームの普及していない外国において避妊のために多く用いられるのがピルであるが、これを日本にも取り入れようとする動きがあるという。分かりやすく言えばコンドーム文化の破壊といえよう。これにはもちろん利害が関係している。ピルを普及させたい製薬会社に物申せない感染症専門家という関係は、「ビッグ・ファーマ」などを読むと一層末恐ろしいことである。
ページ数としては薄いながら、かなり読みごたえがありました。
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感染症について概観。本編は少し前のものだが、新型コロナウイルスでも、対策は大きく異ならないことがわかる。予防が大事といことも。
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感染症の基本的なことがよくわかる。文体も読みやすく、よい本だと思います。新型ウィルスに関する補章も今となっては、報道等で皆理解していることではあるが、きちんと書かれていて、基本的な対処法は感染症全般に対して、不変であることを知ることができ、今一度気持ちを引き締める意味でも、基本的な指南書としての役割があるのではないかと感じた。
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系統立ててわかりやすいように配慮された構成で良かった。ウィルスが宿主を殺さないように弱毒化していく事や動物から人に感染する場合宿主の動物をウィルスが守っているように捉える事が出来る事などその生存戦略は大変興味深かった。また増補部のCOVID-19情報も参考になった。