中国人組織が「自由」なわけ
2020/02/09 22:16
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人の組織に比べてフレキシブルな中国人の組織。でも、それは個人のカラーが強く出るだけで、人の移動で組織も変わる。それがなぜなのかわからなかったけれど、この本を読んで疑問が氷解しました。
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中国関係の新書ということで買ってきた一冊。
中国の行動原理を伝統的家族観に基づく暗黙の社会秩序から読み解く。
確かに、中国にいると「家父長」ってキーワード今でも聞くなと思う。コロナ禍の家族のふるまいについてでも。
後半の広西や海洋進出の事例は、裏にそんな背景もあったのねとお勉強。
筆者は国際関係論の大学の先生。俺が学生の頃にはまだ周辺国だった中国がパワーポリティックスの世界の主役になっていると思うと隔世の感があるな。
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中国の対外行動について、中国の組織/中国人の組織における意思決定という観点から、中国の家族構成という概念まで掘り下げることによってつかもうという意欲作。
家父長的なトップの力があれば、統制されるが、家父長でありながら組織を締める力が無いと判断されると、下部組織が自由に/中央の統率無く権益拡大に動く。
これを、後者の例として胡錦濤時代を、前者の例として習近平を上げて解説している。
ただし、中央の統率が弱くなれば、中央の統率を失って下部組織が与えられた権限を拡大解釈して対外強硬路線に見える行動をとり、中央の統率が強くなっても、一度とった対外強硬路線を改めるわけでは無いということは、東シナ海をみても、南シナ海をみても残念ながら実証されているので、いずれにしても、「世界は(中国に屈しない限り)中国と共存できない」という哀しい現実が待っている。
「中華思想による対外拡張路線」が実在しなくても「ヒュドラのように下部組織が独自に権益を拡張することに寄る結果としての対外強硬政策」であっても、結果は同じだからなあ。
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中国の国内政治の視点から対外行動原理を説明する。伝統的家族観から組織や社会秩序の構造・特徴を捉えるという視点は興味深くはあった。
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特異な言動は国際秩序への野心や中華思想だけではわからない。指導者の意志、民族の家族観、統治システムなど多様な分析から明らかに
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本書は、中国の対外行動原理を、中国の国内政治の視点から分析している。特に、社会主義国でありながら市場主義経済を取りれるという「キメラ体制」を選択しつつも、70年間中国を統治し続けている中国共産党に焦点を当てている。
第1章で、全体の基礎作業として、中国がどのように世界を見ているかが論じられる。中国の世界観が「脅威」の存在を強調する傾向にあることが指摘される。
第2章では、社会組織の基盤となるものとして「家族」に着目する。フランスの社会学者エマニュエル・トッドの研究を参照して、中国の伝統的な家族制度を日本との比較で論じ、中国の社会組織や社会秩序の構造や特徴を捉えていく。それによると、中国の伝統的家族の形態は、家父長が強い権威を持つ「外婚制共同体家族」であり、それを反映して、中国の社会組織には、1)権威が最高指導者に一点集中する、2)組織内分業についてボスが独断で決める、3)同レベルの部署同市は上の指示がない限り助け合わない、4)トップの寿命や時々の考え方によって波が生じるので、その潮流を読もうとする、といった特徴があるという。中国共産党に当てはめると、「党中央」(党中央政治局常務委員会)という家父長の下に、党、軍、国家という3系統それぞれに多数の息子たちが並列する構図となる。
第3章、第4章は、家父長たる中国共産党トップのバイオリズムによって組織の動き方に波が生じる様子を、中国共産党の政治史を振り返りながら検証している。第3章は毛沢東時代を、第4章は鄧小平以降の「キメラ時代」を取り扱っている。
第5章、第6章は、中国の国内政治からその対外行動を考察するケーススタディである。第5章は広西チワン族自治区政府の経済行動を、第6章は国家海洋局の組織史を取り上げている。
終章では、これまでの議論に基づき、国内社会との関係性に考慮しながら習近平の対外政策を評価している。
著者自身が「研究者としての自分をなかば振り切り、専門分野を度外視して、できるだけ直感的な説明を心がけ」、「緻密な論理構成が求められる学術論文では書けないざっくりさで、中国社会がいつ、どうして特定の動きをするのか、そのリズムが中国の対外行動にどう影響するのかを自分なりに提示した」と述べているように、本書で開陳される伝統的な家族形態を基とした「中国の行動原理」は実証性の点で不十分であることは否めず(根拠として示されるのは著者が個人的に経験したエピソードがほとんど)、壮大な仮説といえるものだと思うが、しかし、非常に納得感のあるものであった。中国共産党トップの凝集力が中国政治においていかに重要かということが理解できた。習近平が正統派の家父長を目指しているということもよくわかった。
余談だが、「中国の組織は、部下たちが「この人を怒らせると怖い」と感じるようでなければ機能しない。中国の指導者に笑顔や親しみやすさは不要である」(76頁)という記述を読み、習近平がくまのプーさんに似ているというネット上の記述が当局により削除されているというエピソードを思い起こした。
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サブタイトルの「国内潮流が決める国際関係」、やはりこれが中国を知る為の第一歩になると改めて感じた。
キーワードは「外婚制共同体家族」、これは文化人類学の用語か?
本論とは別にあとがきにも興味深かった。特に最後の二節、行うは難しではあるが、やはりとても必要な事。
サブタイトルに惹かれたら読んでみて下さい。頭にはイメージ出来ていても、なかなかまとめられない人にオススメ。文章にまとめてくれています。
JR名古屋駅コンコース LENDYⅢにて購入。
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著者の主張は前半、以降は、、、
その例示とはなっていないような、、、
家父長制で中国の政治を語りきるのはなるほどと思う反面無理もある気がする。
しかし、中国扱うと「キメラ」という表現が出ること多いな~誰もがその矛盾、二面性に興味を持ち研究対象となるのか??
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隣の国だけど、実はあまり中国の政治制度など詳しい事は理解していなかったので、勉強になった。
中国は家庭でも職場でも家父長が絶大なる権力を握っていて、構成員それぞれが個々に家父長と契約している為、構成員同士が協力し合う事は珍しいとの事。
家父長の力が強ければ統率が取れて、優れた集団として機能するけど、家父長の力が弱くなると裏切りが起きたりする。また家父長の言うことに従っておけば事が進むので、構成員達は自分達でモノを考えて行動する事が希薄になってしまうデメリットがあるなどなど。
日本と似てる部分もあるけど、違いも多い。
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国内力学が対外行動を決める。その国内力学が、トップの関心を争う競争をベースにしている。さらに、その根底には、トッドの言う「外婚制共同体家族」の性質が横たわっている。そう言われると、確かに、中国の支離滅裂に見えた対外行動が、了解可能になるように思える。
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第一章と終章の内容が特に面白い。
中国人の思考回路を知るのには、いい内容だと思う。
日本は戦後(1945年以降)か、明治以降からの国際関係で物事を判断するが、中国は4000年の歴史感で判断する。国恥の100年と彼らが言うように、欧米に屈辱を受けた1世紀を覆そうと習近平は、必死。
よく考えたら、日本は欧米(特にアメリカ)の影響が強いから民主主義の思考回路だけども、世界で民主主義は少数派である訳で、国際ニュースを見る際にも意識したい点。
以下、メモ。
家父長制ではなく、共同体。
日本:縦に長い階層的権利構造。
中国:ボスを頂点に、残りは平たい構造。
そのため、中国は互いの仕事にかんしょうしない。それぞれボスに仕事を与えられているという考えが強い。日本のように問題が起きた時に、相互に連絡を取り解決しようという方法が取られにくい。
問題が起きた際は、組織内で揉み消す、解決する。出来ない場合もボスに過小報告する。
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多くの中国人は、近隣国が中国の文化にひれ伏して朝貢してきたと信じている。そして道徳的な優位性や文化の力によって世界からリスペクトされたいと言う願望が強い。経済力や軍事力によって大国の地位を得ることは、中国人にとって十分ではない。
中国人の世界観では陰謀論がきわめて強い。そして中国共産党は人類の明るい未来「和諧世界」実現のための崇高な任務を負っているということになるのだが70年経っても国内に多くの問題点があるとすれば理論上、「人類の不満」の主な源を国際情勢に求めざるを得ない。
尖閣諸島秋の漁船衝突に端を発する日本に対するレアアースの禁輸やTHAAD配備に対する韓国への不買運動など中国はそれが制裁だったとは認めていないが近隣国は中国の意に沿った行動をとるべきとの考えが強まっている可能性は否定できない。この辺りの感覚は親日的な中国人でもアメリカの陰謀説を唱えたりするので自分たちがどう見られているかに無自覚なのだろう。
中国社会の組織は伝統的な家父長制、強い権威を持つ父親と平等な兄弟という構造を持っている。これは政府にも会社にも共通する。共産党中央が親で党と軍と国家行政系統が兄弟に当たるが兄弟間では組織的な協力関係はなくそれぞれが親の権威に従う。胡錦濤政権では家父長の力が弱いと見られたため軍の突き上げに合い対外関係はむしろ緊張した。弱い家父長の下では兄弟達は自分たちの利益確保に走る。これは会社でも同じことが起こる。中国のリーダーとは恐れられ嫌われる存在なのだ。そして強い権威に対しては忖度が兄弟達の行動を決める原理となる。
2017年ダボス会議の基調講演で習近平は「グローバルで自由な貿易と投資を発展させ、開放性のなかで貿易と投資の自由化と簡便化を進め、保護主義反対の旗を鮮明に掲げていく」「中国の発展は世界のチャンスだということ、そして中国は経済グローバル化の受益者であり、さらにそれに貢献する存在だということだ。」中国共産党の最大のオリジナリティは、共産党の名前を掲げながら計画経済をあきらめ、自由主義経済ー彼らの伝統的な呼び方では資本主義経済ーに走ったことであろう。習近平は強い権威で国内を押さえて、国際的に尊敬される存在を目指している。真面目にだ。恐れられ嫌われることと尊敬されることは中国の組織では両立する。近隣国が中国をおそれ嫌うのは尊敬される過程ということになってしまう。
習近平体制は相当長期に続く可能性はあるが、強力な家父長を失ったあと中国社会は必ず拡散の方向に向かう。そして何がどうなるかだ。
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「おれが中国を世界一の大国にするんだったらこんなことしないわ、なぜこんな振る舞いをするんだ?」って疑問に答えてくれる本。面白いし斬新で大変勉強になった。
中国人は中国は本質的に平和的な存在だと認識しているようで、政府の突然の強硬な言動をとる理由が理解できるとのこと。それを明らかにしようとする。
中国人の世界観を単純に中華思想の一言で片付けることはできず、中華帝国の喪失感や性悪説に基づいた徹底したリアリズム、支持される陰謀論といった様々な要素がある。
ユニークなのが中国の外交政策に家族制度の違いという視点から分析を加えている点である。エマニュエル・トッドの『第三惑星』で扱われたアイディアを使っていて、中国の外婚性共同体家族制度が外交政策を決定づける国内のダイナミズムを規定しているとしている。
そういった家族制度に由来する仕組みの実例として、成功例である高広西チワン族自治区と失敗例である解体されていった国家海洋局を紹介している。
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著者の生々しい体験が論理の基盤にあるから読んでいて面白いものの(中国にいたことがある人間なら読んでいて頷くはず)、それゆえの議論の弱さも見えてくる。
ごくごく強引に要約すると、
(1) 中国社会は家父長制であり、中国文化は家父長制で説明できる。(それ以外の要因は?本当に家父長制家族的?家族制度が社会を決める?)
(2) 中国政治制度は家父長制とよく似ている。(家父長制で説明できない特徴もあるのでは?共産主義国家、全体主義国家はどれも家父長制と似ている部分があったりするので?)
(3) つまり、家父長制が中国の政治制度を作ったのだ。(なぜ台湾は民主化できたのか?外婚制ではないが同じ家父長制の日本はなぜ民主主義なのか?なぜ他の家父長制でない国も全体主義国家を作れたのか?共産主義国家制度から中国国民への影響を過小評価していない?、、、)
どれも、ほんとう?
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良い本に出会いました。正に題名のことがキチンと書かれています。学者らしくキッチリと説明されてあり(本人は「直感的」「ざっくり」と書いてありますが、素人の私にはギリギリ。巷に溢れ返る安っぽいイデオロギーからの思い込み◯◯論とは違います。)、腹落ちした一冊でした。家父長と子供たちとの関係、三つの交わらない「系統」、そしてこの二つの組み合わせでの行動原理。これから中国のニュースをこういう視点から眺めてみます。