心優しい少年と彼に心をとかされた友人たちの物語
2021/02/26 20:46
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投稿者:ぷちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯に「十二国記」の泰麒は、小公子のセドリックの影響を受けていると書かれていたので、興味を惹かれて手に取りました。
読み出したきっかけは、別の本のファンだという上記の理由からでしたが、読み始めてすぐに主人公セドリックの人柄の虜に!
心優しい彼の行動や言動にはいっさいの嫌味がなく、どんなに癖のある登場人物たちも彼をかわいいと思えてきてしまい、何かをしてあげたいと心を動かされていきます。
彼の優しい心からくる行動や言動が、どんな物語を紡いでいくのか、続きが気になって、ページをめくる手がとまりません。
きっと翻訳をなさった川端康成先生の言葉の選択も、読者がセドリックの人柄の虜になる一因なのだと思います。
とにかく、作中のセドリックの言葉のすべてが優しく、かわいらしく、素敵です。
読む本に移行する時期に
2022/01/17 11:53
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投稿者:ないものねだり - この投稿者のレビュー一覧を見る
絵本から読む本に移行する時期に、手当たり次第片っ端から読む本の一冊。一度読み終わると「さ、次。」、で他の本に移るので、内容への大人の議論は大人の議論。子供への影響は、あまり心配しなくても良いのではないだりうか。
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川端康成 訳と知らなくて購入してビックリ。
ひら仮名が多く読み易い!セドリックに振り回される伯爵の様子が面白い!美しい日本語を味わえた。
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子供の頃に読んではいるけれど、川端訳を読んだのは初めて。美しい日本語で綴られた、美しい物語。
心が弱っているとき、ささくれ立っているときに、温かい気持ちにさせてくれる、優しく元気を与えてくれる本。
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性格もみためもいい完璧な少年が金持ちで性格もネジ曲がっている爺さんを変えていくってどんなファンタジーだよ?とネジ曲がった私がツッコミする余裕もないテンポと文章の美しさよ(川端康成訳)。児童文学の金字塔。米英文化比較で語ってほしいものだ。
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「十二国記」の小さい泰麒は小公子セドリックの影響を受けていますの帯に、山田章博の装画、川端康成訳とくれば、手に取らずにいられないでしょう。子供の頃アニメでみた記憶がありますが、本を読むのは初めてかもしれない。
セドリックの純粋さ、そして信じる心にとても感動し、何度もグッときて泣きそうになりました。大切な事を思い出させてくれる名作ですね。事あるごとに読み返したい一冊です。「2020新潮文庫の100冊」
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有名な児童文学だけど
子どもの頃読んでなかったか
読んだけど忘れてしまったのか
こんな話だったんだと
気持ち良く楽しめた
こんなふうに顔も綺麗で心も美しく
無邪気で勇気もある完璧な子どもなんていないよ
と言ってしまえばそれまでだけど
いつも笑顔で人に親切にすれば
周りも自分も幸せになれる
とは思うよね
小野不由美さんの
小さい麒麟がこの物語の影響を受けていると聞いて
なるほど〜と思った
川端康成の翻訳は
多少古くさい日本語のところもあったけど(笑)
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『小公子』(1886)は、『小公女』(1905)と並び、フランシス・ホジソン・バーネット(1849-1924)の代表作です(もう1つ、よく知られている作品に『秘密の花園』もありますが)。
金髪の巻き毛で人懐こいかわいい男の子、セドリック。父を亡くし、母と一緒にニューヨークで暮らしています。質素な暮らしですが、素直なセドリックは、優しく美しい母、多くの親しい人々に囲まれ、幸せな日々を送っています。
ある時、イギリスから驚くような知らせが届きます。セドリックはドリンコート伯爵である祖父の跡継ぎとなり、イギリスのお城に迎え入れられるというのです。セドリックの父は伯爵の三男でした。若くしてアメリカに渡った父は、祖父の知らぬ間に母と結婚していました。アメリカ嫌いだった祖父は激怒し、親子の縁を切ってしまいました。しかし、長男・次男が不慮の事故で亡くなった今、伯爵家を継ぐのはセドリックしかいないというのでした。セドリックは伯爵家の次期当主、フォントルロイ小公子となるのです。
セドリックと母は戸惑いながらもイギリスへと渡ります。しかし、いまだに母のことを認めていない祖父は、セドリックのみを家に迎え入れ、母は近くの別の家に住まわせます。セドリックは大好きな母と離れて淋しくてなりませんでしたが、持ち前の素直さと明るさで、頑固で自分勝手な祖父の心を徐々に溶かしていきます。
どんな人にも分け隔てなく接するセドリックは、貧しい人たちにも親切にして彼らを助け、領地の人々もそんなセドリックを愛するようになります。ケチで尊大だった伯爵もセドリックのやさしさに触れ、困っている人たちを援助するようになっていきます。
ところがそんなある時、伯爵の長男の嫁とその息子と称する親子が現れ、こちらが正統のフォントルロイ小公子だと主張します。もしそうであれば、セドリックは伯爵にはなれないことになります。さぁどうなるのでしょうか。
古くから親しまれている「小公子」の物語、こうして読み返してみると、起伏のあるおもしろいストーリー展開です。
伯爵は頑固で癇癪持ちです。3人の息子のうち、長男・次男は今一つ出来が悪く、三男を愛していたのにちょっとしたすれ違いで縁を切ったまま死に別れてしまいます。初めて会う孫は本当に愛らしく素直で、頑なな老伯爵の心もほぐれていくのです。このままめでたしめでたしとなるのかと思うと、もう一山、というのもおもしろいところです。
紆余曲折がありながらもハッピーエンドに落ち着く全体の構成も安心感があり、ああよかったねと誰もが胸をなでおろすことでしょう。
三人兄弟、思わぬ幸運と何だかおとぎ話のような趣もあります。
セドリックがちょっとよい子過ぎて、いささか現実味がないようにも思うのですが、ここは素直にほほえましい彼の魅力を受け入れるべきなのでしょう。
何せ、フォントルロイ小公子は読者の心も射抜き、挿絵に描かれた黒のベルベット製で白いレースの襟のついた服は、フォントルロイ・スーツとして大流行、母親たちはこぞって自らの幼い息子に着せたといいます。また、英語でFauntleroyというと、一般名詞として「(過度に)丁寧で身なりのよい子」を指すようで、その大ヒ���トぶりがしのばれます。
バーネットはもともとイギリス生まれですが、10代でアメリカに渡ります。本作はアメリカで爆発的にヒットし、のち、イギリスでもよく売れたようです。
セドリックのニューヨークの友人がイギリスの貴族についてやや偏見を持っていたり、伯爵がアメリカを見下していたり、といった描写もあるのですが、当時のアメリカとイギリスの距離感を想像させておもしろいところです。
各国語に訳された本作、邦訳もさまざま出ていますが、新潮文庫版は川端康成訳を採用しています。川端名義ですが、実際のところ、共訳者とされている野上彰が大部分を手掛けたといってよいようです。
「小公子」という絶妙の訳は川端・野上のオリジナルではなく、元々は、原作刊行のわずか4年後(明治23年)に邦訳の連載を始めた若松賤子(しずこ)によるものです。原題はLittle Lord Fauntleroyですが、これをすぱっと「小公子」としたセンスはすばらしいと思います。のちの「小公女」(Little Princess)と対になるところもよいですね。
こうした時代背景や翻訳事情にも触れた巻末の鴻巣友季子の解説も読みごたえがあり、作品世界が広がります。
*以下、蛇足ですが。
おじいさんはドリンコート伯爵(Earl of Dorincourt)ですが、セドリックはドリンコート小公子ではなく、フォントルロイ小公子(卿)(Lord Fauntleroy)と呼ばれます。イギリスの爵位はいろいろ細かい決まりがあり、跡継ぎになる人には儀礼上の爵位が与えられるもののようです(英王室のウィリアム王子もケンブリッジ公爵の称号も持ちますし)。これは当主の副次的な爵位名を使うもののようで、そのため呼び名が異なるのかと思います。
本作の場合、ドリンコートは苗字というより地名であるのかもしれません。お城の名前もドリンコート城ですし、ofが入っていてドリンコート「の」伯爵となっていますし(紅茶の名前の元になっているグレイ伯爵(アール・グレイ)はEarl of Greyではなく、Earl Greyです。これは姓なのかな・・・?)。
バーネットの記述がどこまで正しいのかよくわからないのですが。
いずれにしてもドリンコートもフォントルロイも何となく高貴そうな感じはしますね。
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新潮の100冊フェアより。
ドストエフスキーの『白痴』思い出しました。たしか『謎解き〜』で読んだ話だと、ムイシュキン伯爵を「完全に美しい人」として書こうとしたそうな。
むしろ小公子セドリックの方がパーフェクト少年な感じがします。
とはいえ、そんなものはさておき、仕事が忙しかったので可愛い少年に癒されました。
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児童文学として有名ではあるが、大人が読んでも十分楽しめる作品。
むしろ、世の中を知り、社会を知った大人にこそおすすめしたい。
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十二国記の泰麒のキャラクターに影響を与えたという小公子セドリック。表紙は十二国記の山田章博さん。
バーネットといえば秘密の花園と小公女。小公子のお話は読んだような知らないような忘れたような…という感じだったのでちゃんと読んでみました。
無邪気で愛らしく優しく見た目も天使のような美しさで誰からも愛されるセドリックが、ワガママで嫌われ者の伯爵の祖父の心を溶かし、周りの人たちをも幸せにする読後も優しい気持ちになれる有名なストーリーですが、川端康成訳の日本語もとても美しいです。確かに、十二国記の泰麒と似ているところが多いと思います。
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小学生の頃、このお話を祖母に教えてもらって、
図書室の隅にある古くて分厚い本(少年少女世界の名作文学でした…!)を読んでから、
本が大好きになった思い出がひとつ!
昔から変わらない、暖炉みたいにホッとする素敵なお話。
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皆さん多分一度はよんでますよね。私も小学生の頃読んで、子ども達が小さい頃買ったのを再び読んで、今度は川端先生の訳で読み返しました。
気難しいおじいさまがセドリックの無邪気さややさしさにほだされて、やさしいおじいさんに変わっていく。最後は嫌っていたアメリカ人の嫁の良さも認めて一緒に暮らす…というストーリーの主軸は覚えていたのですが、偽者が出てきたのは記憶になかった。
たぶん子どもの頃は省略されてる本を読んだのかもしれないですね。そして、偽者事件を解決するのにセドリックのニューヨークのお友達が一役買っていたのも面白かった。あの二人のお友達、なかなか味がありますね。
解説を読むと、実際に翻訳したのは野上彰って人だったようですね。川端先生はおそらく…翻訳された日本語を編集したのかな?と思います。川端先生の名前のほうが本が売れるからでしょうね。その証拠に印税はすべて野上さんに渡していたようです。
翻訳で一つ引っかかったのは、使用人達がセドリックを「小公子さま」と呼び掛ける点。タイトルとしては定着しているので変える必要はないと思うけど、小公子ということばが日本語の文章の中に紛れているのが、何か不自然に思える。原文がどうなっているのかわからないけど、(Lordかな?)他に何かいい表現はないのかなと思う。
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「老人の凍った心をも溶かす幼児の真心」というのは児童文学として良い。礼儀正しさ、思いやり、高貴なる義務は誰しも子どもに教えたいものだから。
しかし、そもそも貧しい人々を生み出す構造の問題に踏み込んだ展開にならないのは書かれた時代の、上流階級の出身である作者の限界か。
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アメリカに生まれた少年・セドリックは、大好きな母や周囲の人々の細やかな愛情に包まれ幸せに暮らしていたが、名も知らぬ貴族の祖父の跡継ぎになるためイギリスへ渡ることとなった。祖父は意地悪で傲慢で、アメリカという国を嫌っていたが、セドリックの純真さに心動かされ、次第に変化していく。だがそこへ真の跡取りを名乗る者が現れて──。川端康成の名訳でよみがえる児童文学の傑作。
子供の頃に読んだ名作。小公女は結構序盤がお先真っ暗なイメージでしたが、こちらは比較的前向きに進んでいくので、穏やかな気持ちで読み進められました。セドリックが泰麒のキャラクターに影響を与えていたなんて!確かにそういう目線で見るととても似ている・・・!!そして何よりびっくりしたのが、翻訳が川端康成!?どうやらもう一人、実質翻訳した方がいたとあとがきで知ったけれど、それにしてもすごいな。自分で名作を書くだけでなく英語力もあったのか。硬い文章を書いている印象だったので、ここまで読みやすくて現代文学と変わらない言葉遣いや自然な言い回しに驚いた。彼がバーネットの作品を子供たちに紹介したいと思うくらい気に入ったんだなと思うと、何だか微笑ましく思える。