ゆっくりさよならをとなえる(新潮文庫)
著者 川上弘美
「いままでで一番多く足を踏み入れた店は本屋、次がスーパーマーケット、三番めは居酒屋だと思う。なんだか彩りに欠ける人生ではある」。春夏秋冬、いつでもどこでも本を読む。居酒屋...
ゆっくりさよならをとなえる(新潮文庫)
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商品説明
「いままでで一番多く足を踏み入れた店は本屋、次がスーパーマーケット、三番めは居酒屋だと思う。なんだか彩りに欠ける人生ではある」。春夏秋冬、いつでもどこでも本を読む。居酒屋のカウンターで雨蛙と遭遇したかと思えば、ふらりとでかけた川岸で、釣竿の番を頼まれもする。まごまごしつつも発見と喜びにみちた明け暮れを綴る、深呼吸のようにゆったりとしたエッセイ集。
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食べ物で例えれば、「おいしいもりそば」のようなエッセイ。するするっと頭に入ってくるのに、印象に残って味わい深い。
2004/12/07 23:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家川上弘美氏のエッセイ集。日常的な、些細なことを書いているようでいて、ものすごく面白い。
例えば、「突然スパゲッティーナポリタンが食べたくなって、困った」(p.52)という一文から始まる「ナポリタンよいずこ」(pp.52-54)とか、生牡蠣を一度に十個も二十個も食べておなかをこわし、それでも七十個も食べてなんともなかった友人の話を聞いて悔しくて、また食べてしまう「生牡蠣とキノコ」(pp.61-63)とか。文章から感じられるユーモアが、なんとも楽しい。
それから、作家として名を成すだけの人には、やっぱり特殊な感性と、それを文章にする才能があるんだなあと思った。
例えば川上氏は、子どもの頃ハンカチでものを包むのが好きだった、という。
「一つのものを包み終えて、しばらくは、手の中でもてあそんだり撫でてみたりする。しかるのちに、息を潜めて、結び目を解く。
その瞬間が、いちばん好きだった。結び目を解く、その瞬間」(p.188)
この、ちょっと読むとなんでもないような文章が、どうして読む者の心に引っかかるように書けるのだろう、この人は。
「しょうがパン」のような忘れがたい味わい
2005/05/20 15:59
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
川上弘美さんは短い期間、明石に住んでいたことがある。「明石」と「明石ふたたび」という2000年の3月(朝日新聞)と7月(「本」)に発表された二つの短い文章を読むと、川上さんが明石に住んでいたのは「神様」でデビューする数年前、昭和が平成に変わったほんの少し後だったことがわかる。「海に近い土地である。空気が、明るい。人も、明るい。」「いくばくかの時間その土地に住めば、人は知らず知らずと土地の空気に染まる。その土地が明るい空気を持っていたなら、人は自然に明るいほうへと寄っていくのではないか。」私はもうかれこれ二十年近く隣町の垂水というところに住んでいるから、川上さんと同じ「明るい」空気をすっていたことになる。「明石に住んだ短い期間、私の血は澄んでいたように思う。胸はいつも新しい空気に満たされていたように思う。」この一文だけで『ゆっくりさよならをとなえる』は私にとって特別な本になった。どこから読み始めても、どこで読み終えても、「しょうがパン」のような忘れがたい味わいが残る(「しょうがパンのこと」)。「生きる歓び」がしんじつ実感できる(「爪切りも蠅も」)。でも「しょうがパン」て、いったいどんな味なんだろう。
本音のエッセイ
2023/05/15 22:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
川上弘美さんの、本音が聞こえてきました。しかしまぁ……小説家の感性はすごいな。同じことを繰り返したり、他人は決してやらないことをしてみたり。好奇心も強いし。こういうことを、なんの抵抗も無くやるような人だからこそあの作品が生まれる…