窪美澄さんの新たな代表作
2020/08/30 23:24
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生と切り離せない家族と性を扱った短編集。親を棄てる娘、歪な同棲、世間的にアウトな人間関係でもそれを変にドラマチックに扱わない所が窪さんの妙で、世界には当事者にとっては充たされた関係がある(時に当事者にとっても充たされないけど)ことを教えてくれる。
長編「アニバーサリー」のように永い時間軸を扱った比較的静かな作品もあれば、連作短編集「夜のふくらみ」のように短くとも熱さのある作品もあって、窪美澄作品の入門編的な一冊でもある。カバーデザインも刷新されていて、陰の中に光が差すような窪さんの作風にあったモダンな良いデザインだと思う。
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短編集。読んだことあると思ったらそのうちの1篇はアンソロジーで既読でした。
たぶん窪美澄さんの作品はアンソロジーでしか読んだことがなかったのでがっつり読んだのは初めてです。性愛が多いですがエロティックだとは思わなかったです。性は生と繋がってる、とあとがきで書かれていましたがそんな感じでした。
既読のおばあちゃんの過去話と、「父を山に棄てに行く」と「インフルエンザの左岸から」の裏表の話が好きでした。
う〜ん…と思った「バイタルサイン」ですが、まんまとタルコフスキーの『ノスタルジア』は観たくなったし、alice auaaかな?と思ったお洋服は好きでした。
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掌編に近いものもある短編集.
「父を山に棄てに行く」 父親の入所の手続きに奥多摩にある山奥の老人介護施設に行く途中で,いろいろ回想する話.
「インフルエンザの左岸から」 老人介護施設(おそらく1話目と同じ施設)で亡くなった,ろくでもなかった父親の葬儀にまつわる回想.
「猫降る曇天」 黒のタートルネックを着た美女と3.11と黒猫の話.
「すみなれたからだで」 中学生の娘のことで老いを感じた母親が,娘がデートに行ったことをおじさんになった夫に話して・・・.
「バイタルサイン」 窪先生らしい(失礼)かなりHな描写もある,義父と関係を持った娘の話.
「銀紙色のアンタレス」 夏大好きの男の真君(16才)が,夏休みにおばあちゃんちに行った時のひと夏の恋バナ.朝日ちゃんがかわいそう.
「朧月夜のスーヴェニア」 家族からはもうボケたと思われているおばあさんの,戦中の思い出.結構エロイ.スーヴェニアは「お土産」と暗記していたのだけれども「思い出で」という意味もあったのか.
「猫と春」 ついてきた猫と暮らすようになって,彼女が出て行って,猫を捨てたら,彼女が猫を連れて帰ってくる(本当に帰ってきたのだろうか?).
「夜と粥」 同棲していた彼女が出て行ってしまって,落ち込んでいる女性の話.
「あとがき」によると男女の違いがあるが,2話目は1話目の続編とのこと.また,読んだ時の印象の通り,この2作は窪先生自身のノンフィクションに近い作品らしい.この2作も興味深かったが,「バイタルサイン」,「銀紙色のアンタレス」,「朧月夜のスーヴェニア」がお気に入り,特に面白かった.
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好きな作家だから期待していたのに、かなりの期待はずれだった。
朧月夜のスーベニアを除いては、何が言いたいかわからない。結局何なんだ、というモヤモヤした感情が残り、読後感が最悪。
窪美澄さんは性描写が多いのは承知の上で読んだが、それにしても多すぎる。何を読まされてるんだという気になる。そのボリュームが多すぎて、大事なところが伝わってこない。
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8編からなる短編集。
窪さんの自伝的な話もあります(あとがきより)
20頁程度の短い話もありますが、密度の濃い話も多く読み応えがありました。
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初読み作家さん。性愛をテーマに入れた作品のイメージがあったが、そのことについてあとがきで書いていて、フムフムと思う。デビュー作、それに続く数作のイメージはその本が売れれば売れるだけ鮮やかなものとなってしまうから、読み手の方もとらわれすぎないよう意識して気をつけないとなー。
9編の短編集。『バイタルサイン』がインパクトあった。抜け出せないぬかるみのような愛が、時を経て生死の境にたどり着き、"私"にもたらしたもの。
「私の願いは、生のある間、自分の体がまだ熱を持っているうちに誰かを愛することだ。」
夏の恋がほろ苦い『銀紙色のアンタレス』もよかった。
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初の窪先生。
人間から切り離すことのできない性と愛
表題作の短さが逆によかったし、いい意味で詰め込まれてるなと思う。
色濃く性を表す作品もあれば、ほのかだけど確実な感情のはじまりとか、心の機微みたいなものが正直に描かれている。
抗えない性というものの虚しさと儚さと尊さが沢山入っていました。
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久しぶりにどっぷり小説の世界観に浸れました。
『バイタルサイン』『朧月夜のスーヴェニア』秀逸。
別の作品も読んでみたいと思える作家さんに出会えて幸せです。
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性と生と死を扱った短編集。表題作は登場人物と同世代の読者にとっては、ドキッとさせられる内容。窪さんの作品は、綺麗事ではない苦しみや悲しみがいつもそこにあって、心の底の方を揺り動かされます。
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ブクログのフォローさんの本棚から到達。
初めて読む作者だったが、赤裸々に性と生について書かれた短篇集。不思議感と納得感があります。
楽しめたので他の作品も読んでみたい。
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「父を山に棄てに行く」此の言葉を聴いた時から気になっていた本でしたがやっと手にして読んでみて、彼女の才能に感謝です。
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性(生)をテーマにした、短編集。
バイタルサイン、母の再婚相手と娘の話。
この手の関係性はどうしても好きになれない。
文章は嫌いじゃないが、毎回、窪さんの作品はあまり題材が好きになれない。
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一瞬でも燃えるほどの恋愛と、いつまでものぺーっと、ほんのりと想いを寄せる。どちらが幸せなんだろう、そんなことを思った。人には贈れる愛の量が決まっているのかな…。どんな恋愛でも、私は「死んでもいい…」なんて思ったことがないし、それどころか「怪我さえしたくない。」と思うくらい。人生を懸けられるほど、他人に想いを寄せられる恋愛に、少し憧れを抱いた。
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3回目のワクチン接種で久々の高熱を出して、40手前にして少しずつ体質も変わったりして、自分の身体なのにうまくコントロールできなくて、それでも社会人には「自己管理」が求められる。あの時誰か、面倒を見てくれる人がいたら、わたしはもう少し早く回復できたはずなのに。
生きるって大変だ。人生って理不尽だ。
長年「すみなれた」はずの自分の身体なのに、全然「すみなれてない」。
久しぶりに読んだ窪さん作品。
ちょっとエロめの作品を含んだ短編集///
これだ、こういうことだ!
先日、マハさんの作品で感じた物足りなさ。
やっぱりわたしにはこういう、じっとりとした湿り気とか闇とか、そういうものが必要なんだ。
一番印象に残った作品は、『バイタルサイン』
どこかで望んでいる。都合よく続けているこの関係を、誰かにぶち壊して欲しい。取り返しがつかないほどにぶち壊して欲しい。自分ではもう止められないところまで来てる。だけどその、「誰か」には会いたくないし立ち向かいたくもない。結果どうにもできないまま都合のいい関係は続いてく。
大人になると、自由に選択できることが増える。それはそれでとても素晴らしいことだ。だけど、自分の意志しか存在しないぶん、だらだらと続く関係は、そこに物理的な何かが、鉄槌のようにぶち込まれない限りどうにもできない。気持ちだけでは、どうにもできない。
『朧月夜のスーヴェニア』
第二次世界大戦禍を生きる男女の恋物語。
遠くの国で始まった戦争は、まだ終わりを見せない。
先日93歳になったばあちゃんは戦争を振り返って「今テレビでやっているような、そんな状態だった」と言う。
この作品の中で描かれていることが、ばあちゃんが経験した学徒動員の話とまるで重なっていて、主人公と同じくらいのタイミングだったんじゃないかと、ばあちゃんの話で辿ったのと同じ軌跡で文面を追う。
まるで体験したかのように情景が浮かんでくる。
「早く結婚しすぎた」「もっと洋裁をやりたかった」と嘆く祖母。
結婚する相手を選べないし顔も見たことがない人と結婚する時代。
その人とセックスをして子どもを産む時代。でも、別の人とのセックスが忘れられなかったら。
戦争は戦争としてあるけれど、その中でも日常生活は営まれていたのだ。そこにフォーカスした作品。
異国での戦争が、早く終わりますように。
一つ一つの短編によって作品が違うから当たり前なんだけど、文章に主人公がいきうつされていて、主人公の言葉やリズム、テンポで作品が読まれる。すると、読む速さも空気感も変わってくる。
するすると読んでゆける『銀糸紙のアンタレス』
しっとりと主人公の感情をなぞるように読む『猫と春』『夜と粥』
連作短編集のように始まる『父を山に棄てに行く』『インフルエンザの左岸から』
少しだけバタバタとした日々の中で、短編は読みやすくてよかったなぁ。
久々にエッセイを書きました。
この作品のタイトルにもなっている「からだにまつわる」エッセイです。
https://note.com/tattychannel/n/n9ba9e8e938f3
よ��しければご覧ください。
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16歳の男女のすれ違う繊細な恋心にドキドキし おばあちゃんの家や海、龍宮窟の風景が絶えず脳内映像で浮かんでいた「銀紙色のアンタレス」
16歳の少女と46歳の義父とのインモラルな関係をハードに描いた「バイタルサイン」
同居する彼女と猫の様子が思わず目に浮かんで来る読後感の良い「「猫と春 」
家族に認知症と思われている老婆の戦時中の恋愛を描いた「「朧月夜のスーヴェニア」は人間の生と性が味わい深く心に残ります。
バラエティーに富んだ作品集で短編ながらも読みごたえのある1冊でした。