霧の彼方 須賀敦子
著者 若松英輔
生涯にわたり信仰と文学の「コトバ」に共振し、『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』『ユルスナールの靴』など、晩年に稀有な作品を遺した須賀敦子。...
霧の彼方 須賀敦子
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商品説明
生涯にわたり信仰と文学の「コトバ」に共振し、『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』『ユルスナールの靴』など、晩年に稀有な作品を遺した須賀敦子。高い評価を得たエッセイや訳書のほか、没後も詩集や書簡集も含めて刊行が続いた。これらの作品を生み出した69年の生涯は、さまざまな「コトバ」に支えられていた。キリスト教への入信、2度の欧州留学、カトリック左派の流れを汲むミラノのコルシア書店での活動、夫ペッピーノとの出会いと別れ、帰国後に没頭した貧困者支援のエマウス運動、そして文壇を刮目させた初のエッセイ集の上梓――。同じキリスト者である著者が、同じ情熱を以て須賀敦子の「たましい」に迫る、圧巻の評伝。[本文より]イタリアに渡り、コルシア書店で働く以前は本を読み、書店に関係するようになってからは翻訳に従事し、ときに本を売った。帰国後、彼女は研究者となり、再び本を読み、そして、あるときから自ら本を書くようになった。信仰を抜きにした須賀敦子を語っても、蝉の抜け殻を見るようなものだが、本との関係を無視した言説も同質の幻影をもたらすだろう。信仰と書物、ここに流れる雄渾な歴史が須賀敦子の土壌だった。
目次
- 第一章 書かれなかった言葉/第二章 不得意な英語と仏教/第三章 人生の羅針盤/第四章 二人の聖女/第五章 母の洗礼/第六章 夢幻のカテドラル/第七章 レジスタンスの英雄/第八章 終わらない巡礼/第九章 ペルージャへの招き/第十章 文筆家の誕生/第十一章 ローマと新教皇/第十二章 ダヴィデ・マリア・トゥロルド/第十三章 ミラノへの階梯/第十四章 ある幼子の物語/第十五章 言葉という共同体/第十六章 エマニュエル・ムーニエと『エスプリ』/第十七章 内なるファシスト/第十八章 ほんとうの土地/第十九章 悲しみの島/第二十章 ゲットとウンベルト・サバ/第二十一章 川端康成と虚構の詩学/第二十二章 二度の帰国/第二十三章 ダンテを読む日々/第二十四章 見えない靴、見えない道/第二十五章 トランクと書かれなかった言葉/あとがき/人名索引
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須賀敦子の信仰生活を中心に追った優れた評伝
2020/09/21 20:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
須賀敦子の評伝はいくつかあるが、これはカソリック神学や文学に詳しい著者でなくては書けない彼女の信仰生活を中心とした評伝である。戦争の記憶のまだ残る50年代、60年代日本でもヨーロッパでも、より良き社会はどう造るのか、人はどうやって心正しく生きるのか、というような理想主義的な雰囲気が社会にあった。政治、経済活動ではなく宗教界にも色濃くあった。須賀敦子はそうした大問題を愚直に問い続け、エマウス活動のような実践を行い、そして珠玉の文学を残した。私たちが忘れかけていた、.たましいの琴線に触れる文章は須賀敦子のような心正しい人でないと書けない。その信仰生活を辿った力作の評伝である。
評伝というより須賀敦子論
2021/12/28 14:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
須賀敦子の伝記ではなく、須賀の生涯と作品を辿りながらの若松英輔による須賀敦子論である。須賀になじみのない人はまずは『須賀敦子の方へ』(松山巌著)などに目を通してから本書に取りかかった方がいいだろう。