川上さんの短編集
2011/03/07 09:15
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ざらざら』(川上弘美、新潮文庫)を読んだ。
川上さんの短編集。
図書館で単行本版を借りることができたが、少しでも川上さんの本の売り上げに貢献できれば、と思い、文庫版を購入した。
初期のころの突拍子もない展開というのはそれほど多くはないが、この人にしか出せない「味」というものが存分に出ている短編集だと思う。
恋愛を描く作家でファンに女性が多い作家という方が多いのかもしれないが、川上さんの描き方は男の僕にもそれほど違和感がない。それは「男/女」というものを越えた「人間」としての「悲哀」のようなものが描かれているからだと思う。また、ときに登場人物のことをいじらしく思ったり。
たしかに今、日本語でこういう小説を書けるのは川上弘美さんしかいない、と思う。作家は作品において、唯一無二であって、初めて作家だと思う。
日常のなかでぼやけていくもの
2017/02/22 16:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きよし - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説と日常は切り離されて考えられることが多い。というより、日常を感じさせる小説が近年少なくなってきているようにおもう。
私たちの日常とは、とるに足らない感情がゆるやかに流れていく日々である。わざわざ認識しようともしないような喜怒哀楽や、他人に話すまでもない気持ち、そういうものが続いてゆく。
しかし本当は、少しだけ悲しくてもちょっとだけ嬉しくても、自分の感情のことは大切にしたいものだ。そんなときに川上弘美さんの小説を読むと、「うれしい」の一歩手前の、なんだかよくわからないがホッとするようなあたたかな気持ちをすくいあげて言葉にしてくれている。
だから時々読み返したくなるのである。
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川上弘美さんの小説を読み終わると、毎度のことながら時間がしばらく経つまで、その世界観にどっぷりとはまりこんでしまう。文章のリズムのせいなのだろうか、どっぷりと浸かってしまったときは一気に読み込んでしまうのに、足先だけをほんの少し浸けたくらいでは読み進めるのは容易ではない。チーズや漬け物と似ている、発酵されゆくほどに浸かりきってしまう。その独特さ。毒毒しさに。
初期の作品ではゆったりとした中に棘を隠していて、少し気を抜いてしまえば刺されそうなほど攻撃的だったのに、今回読んだ「ざらざら」は沼の底にいるような、おどろおどろしい雰囲気がして呑み込まれそうになる。
それにしても解説の吉本由美さんのいう通り、川上弘美さんは男の子をかくのがうまい。彼女が所々で登場させる男の子(高校生以下)には、実の所私も結構どきどきさせられている。
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二十三の短編からなる本。読み始めてしばらくは、実に下らないと思いつつ、それでも一編一編が短いので読み進むうちに妙な面白さに心地よくなる。そうなれば作者の思う壺なのかもしれないが、なんだか知れぬ心地よさがあるのだ。何処にでもありそうで何処にでもなさそうな、普通のようでいて普通でなさそうな。そうか、こんな会話をしている女達がいるのか、などと納得してみたり、とにかく面白さに嵌ってしまった。中でも好きな三編は、「山羊のいる草原」修三ちゃんがいい! 「椰子の実」これはちょっと泣ける。
「月火水木金土日」ちょっと不思議なとこが異色といえば異色。
わたしは、この三話がお気に入りだった。読む人によってそれぞれのお気に入りが見つかりそうな、そんな楽しい短編集だ。
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川上弘美は初期の「神様」や「蛇を踏む」のように幻想的な感じの作品が好き。本作収録では「月火水木金土日」だけがそういう感じ。
ただ、この短編集を読めるのは人の描き方がうまいから。人って、何かあった時にすぐ怒りとか悲しみとかにいかないと思う。そういう時もあるけど。ドリカムの歌詞「抱いた膝に次々にこぼれるしずく、そうかわたしずっと泣きたかったんだ」みたいに、自分の感情にすぐに気がつかないような、そういう描き方がうまいと思う。
ふわふわとしたマシュマロの中に悲しさ苦しさ、嬉しい、楽しい、怒り、そんな感情がくるまれている、そんな短編集だ。
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雑誌『クウネル』に掲載されていた短編。
言われてみれば一部覚えがあるような。
「えいっ」と杏子と修三ちゃんが好きです。
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いい!好きだー しばらく離れていたけどやっぱり好きだ。
いま、読むからかしら。
センセイの鞄びいきの私としては、こういう恋愛もののがしっくりくる。
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ひとつひとつの話はあまりインパクトがなく、寝て冷めたらストーリーを忘れてしまいそう。
ただ、ところどころの表現や思想はやはり秀逸。
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断片的だと思った。別にいい話でもないし、特に感動させようとしてるとかでもない。
だからかな。何となく鞄の中に入れっぱなしにしておきたくなる感じ。
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弘美嬢の短編が23篇も読めちゃいます。
やはり川上弘美。今作もラスト直前に「月火水木金土」という短編で『これでよろしくて』と同じ仕掛けがなされています。
この仕掛けは一体何なんでしょう?? 儀式??
「びんちょうまぐろ」「同行二人」「椰子の実」「桃サンド」が良いです。
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いろいろ目線。思い当たる時間を過ごしてきたし、こんな時間を過ごすのだろうかとぼんやり思った。 春の色のオレ目線が新鮮で良かった。
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さらりと読むことができて、でも十分楽しむこともできて、いいなってカンジ。
この著者ならでわの不思議さが、いい方向で効いている印象。
ショートストーリーで積み上げられる「何か」の雰囲気も素敵。
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久しぶりに手に取った小説はやはり川上弘美。
クウネルで連載していた時から単行本化を楽しみにしていた。
短編だからということもあるけれど、すごくさらっと読める…読め過ぎるかも。日曜の午後にはぴったりだけど。
吉本由美さんの解説も良かったです。
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いつも読むほどに怖かった川上作品が、あれ?怖くない?
それは私が変わったから?それとも川上作品の新しい側面が出たから?
解らないけど、きっとどちらもなんだろう。
女は進化する生き物なんだな、きっと。たぶん。
じっくりと夢うつつを漂いながら生きていく川上の女たち。
恋したり、うだうだ言ったり、人を大切に思ったり、嫌いになったり…
「びんちょうまぐろ」
「山羊のいる草原」
「パステル」
「淋しいな」
「笹の葉さらさら」
「草色の便箋、草色の封筒」が好き。
特に秀逸なのは「びんちょうまぐろ」「パステル」かな。
キャラクターがいいのは「草色〜」
「淋しいな」は…女の作品って感じがする。
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昔の恋愛や、淡い思い出がフラッシュバックするような短編集。ほろ苦くてほのかに甘い。そのストーリーに合うように、表記に気を配っているところがたまらない。