とんでもない現実
2021/01/30 21:25
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
元々のエクソダス(Exodus)は旧約聖書の「出エジプト記」を指すもので、今では大量の国外脱出にも使われている言葉だそうだ。筆者がたどった米墨国境の町では「ノーボーダーウォール!」というシュプレヒコールはあっても「ビルドザットウォール!」と壁建設を叫ぶ人に会っていないという、世論調査では4割近くの人が壁建設に賛成だというのに。国境近くの町の人たちは、壁が交易や家族の再会を妨げて米国とメキシコを敵対させてしまうことを知っている。でも遠くの人は移民と付き合いがなく、不満のはけ口にしがちだということらしい。アメリカにパスポートさえあればビザなしで入国できるということが当たり前のように思っていた私にとってとんでもない現実を目の当たりにさせられた作品だった
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体当たりのレポというしかない。
アメリカという巨大な経済に吸い込まれる移民たちの命がけの道のりを、著者も命がけで辿る。
本書を読むと難民と移民の区別がむなしくなる。
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米国とメキシコ国境を仕切る「壁」の建設は、ベルリンの壁崩壊直後から始まったという。移民(不法入国)とは、政情不安・治安の悪化・貧困と様々な事情を抱えた人々が母国で生きることに絶望し、残された唯一の選択肢が命を懸けて国境を超えることにある。密入国者を検挙する側の「壁」の論理と相容れない難民問題を、経済格差と犯罪発生率が著しく際立つ中南米諸国の現状を人道的な視点からルポしている。つくるべきは「壁」ではなく「国境を越えなくても生きていける世界」だと著者は言う。そのためには何をすべきなのか、道程は遠く険しい。
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読了しての感想は、ショッキングの一言に尽きる
どの国に生まれるかでこんなにも違うのか、パスポートの違いで私は密林を歩かなくてもいい
日本に生まれて良かったと改めて感じた。
そしてこの本はもっと読まれて欲しい、米-中南米で何が起こっているのか、もっと日本人に知ってもらいたい。
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以下メモ
2016年大統領選挙を州別ではなく群別に見ると、国境地帯は民主党が勝っていた
→よく実態を知らない人が壁建設支持。なんとも滑稽
壁は越えれるので、壁建設はなんの解決にもならない
根本的には①アメリカで麻薬を求めさせない、②メキシコ 国内で雇用問題を解決
の2点が有効か。
JICA ラセイバ村 生活を改善するサークル活動
藤城一雄氏
自立出来るような支援を
SDGs「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」
日本も国内でSDGs達成への取組に注力しているが、その前に海外にも目をやるべきなのではないかと個人としては感じる。生改さんのように、ソフト面で日本が与えれることがいっぱいあるのではないだろうか。ただ資本援助を行うだけでなく、国境を越えなくても生きていける国を作る手助けができるのではないだろうか。
壁がしばしば問題になるが、国境を越えなくても生きていける世界を作りたい。このフレーズに強く心を打たれた。
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え、アメリカとメキシコの国境目指してアフリカとかアジアからも人がきてんの???
地図見ながら読んだからえらい時間かかった。
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アメリカ前大統領のトランプは以前、メキシコとの国境に壁を作ると宣言した。国境の壁といえばベルリンの壁であり、もはや冷戦時代の遺物というイメージ。
結局、様々な批判や問題があふれ、壁はできないまま、トランプは失職した。が、この壁発言によって、移民たちの侵入はアメリカ国内の大きな問題となっていることを世界中が知ることになる。それどころか、中南米諸国で暴力と貧困から逃れたい人々にとって、壁ができる前に行動を起こさなければと、アメリカへの移住を後押しする結果となった。なんとも皮肉だ。
著者は何度も中南米を訪れ、徒歩やヒッチハイク、列車でアメリカを目指す移民たちの行動を取材。移民たちは入国審査がずさんな国に入り、そこから陸路でアメリカやメキシコなどの豊かで平和な国を目指していた。
そして、2018年。これまで国境を越えようとする人々は少数でひっそりと移動することが当然だったのに、1000人を超える人数が集団で行進をはじめた。それは聖書に記されるエジプト脱出の民「エクソダス」に例えられる。
今後、アメリカには、より多くの移民が堂々とやってくるのだろう。おそらく壁や軍隊などのリアルな力は役に立たない。「国境のない世界」を本気で考えるときなのかもしれない。
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日本に住んでいて不平を垂れる人を見かけますが、今でも日本がどれだけ平和で住みやすいかを確認する事になる一冊です。同じ地球上で生きながらも生まれた場所、居る場所が異なるだけでこれだけの惨状を被る事になるとは。
米前大統領が壁を作る事に意欲的に取り組んでいたのも、本気半分/選挙・在職期間中の政治的パフォーマンス半分な気がしています。センシティブな問題な為に代表が長期的なアピールをする事は、火に油を注ぎ続ける事と同義であり、またこの現状を世界的に知って欲しい傍ら、知られてしまうと密航ルートが公になり余計な死体の山を築く事になりかねない、という二律背反が潜んでいる問題です。なので、この一冊でも描き切れていない部分があるという所までは想像した方が良いのでしょう。
巻末で語られる「国境を越えなくても生きていける」「誰も置き去りにしない」という言葉のなんと空疎な事よ。
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アメリカとの国境を越える、トランプ政権になり、大きな壁が立ちはだかる。野獣と呼ばれる列車に、飛び乗り、国境に向かう人々は、ホンジュラス、エルサルバドルのマラスという集団が国に影響を及ぼすところまで来ている。マラスに入らなければ殺すと脅され、一家を連れて逃げる。国境までの命懸けの逃避行。そこに同行した記者の目から見たレポートは、生々しい部分もある。色々、記者だからこそ言えないこともあるのかもしれないが、一日がどれだけスリリングなのか、そして、命を削る旅なのか、そのあたりももっともっと凄まじいものだったと想像する。深夜特急に感化された若かりし頃、思わずそのイメージで読んでしまったのが間違いだったかなとも反省。
メキシコとの国境にいくにあたって、こういう事実を知っているかどうか、非常に勉強になった。自分の目でもちょっとでも確かめてきたい。日本から遠い、そして想像つかない現実を、伝える本として読まれていくといいなと思った。
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多くの国や地域から、様々な方法でアメリカに入国しようとする人々。彼らを阻むために、メキシコとの国境に巨大な壁を建設すると公約し当選した大統領。だが、国境にはすでに壁が存在していた──。
そんな基本的な事実も知らずに、なぜ中南米やアフリカ、はたまたアジアから大勢が国境を目指すのかを理解できるはずもない。本書はその“なぜ”に迫る骨太なノンフィクションだ。生ぬるい日本に暮らす我々には決して理解できない厳しい現実が描かれている。
第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞受賞作。
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朝日新聞をお辞めになって、そのあとのコロナ禍でどうしておられるのかと気になったら、なんとウクライナ取材をしておられた。なんとすごい!
戦時下の国で、自分の身を守りながら取材するためには、資金がかかるだろう、会社持ちでなくなってどうされているのだろうと心配になる。
地中海を小さなボートで渡るシリア難民の人々の記事などは読んでも、中南米からアメリカに行く移民、難民の人のことは、「トランプの壁」まではあまりにも無関心、この本を読むまではあまり考えたことがなかった。
自分の国、自分の家に安心して家族と住めない、殺される、選択肢なく、命懸けで国境を越えようとする人の姿は、そこまでの危機ではない日本の私には想像がつかない。だからこそ綿密な取材をし、記事
や本にしてくださるジャーナリストの方には感謝するしかない。取材するのも命懸けだ。
確かにどこの国に生まれたかどうかで、人生が違いすぎるのはあまりにも不条理だ。
どの国に生まれても、母国で安定して家族と住めるように世界は進んでいかなければいけない。お金の問題なのだが、いくらお金を援助しても、お金だけではどうしようもない例がこの本にも出てきた。アフリカ等でも同じことが言えるのだろう。
そのお金を使って、その国の人たちが働く場所を作る、仕事を作る、子供たちが安心して教育を受ける環境を作る等、いっときではなく、継続的に、発展的に生きるお金の使い方をしていかなければならないと思う。
お金、お金と言ってるのが自分でどうなのかと思うが、貧困、富の偏りによる問題が世界中であまりにも多い。使いきれないほどのお金を持ってマネーゲームをしている人たちのお金が、こういうところに回っていかないのかなぁ。だって使いきれないでしょうよ、自分だけでは、と思う。
この私に何ができるのかと考えるべきところを、お金持ちのせいにしてしまったぞ、私。
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中南米からアメリカに渡る移民を追ったノンフィクション作品。こうした作品を読むと自分の全く知らない世界に驚かされる。
トランプ元大統領が掲げた国境の壁建設の公約。実際に壁建設に賛成していた人々は、国境から遠く離れた地域に集中していた。アメリカ人ですら知らない国境の実態、そしてその原因について鋭く切り込む本書の役割は大きいと思う。
こうした実態に日本が無関係というわけでもない。たとえば、本書では、エルサルバドルでのJICAの港湾建設や農村開発の取組について触れられている。こうした視点は、単にアメリカの国境の話が、アメリカとそこに隣接する国々だけの話ではなく、日本の開発援助の在り方にも大きく関係してくることを教えてくれる。
現場を丹念に取材してきた著者の熱量と圧倒的な現実が、しっかりと伝わってくるノンフィクション作品。
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移民の実態はこんなにも命懸けのひどいものだったとは.
そして今はコロナもあってもっと厳しい状況だと思う.
来られる国にもそれを拒む理由がある.どうすればみんなが幸せになれるのだろう.
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移民キャラバンの映像を見てもメキシコ人としか思ってなかったが、実態や過酷さを知ることで現実の理解に厚みが出来たように感じる。これぞノンフィクションの醍醐味。
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【まとめ】
1 エクソダスの出現
2018年10月13日、中米ホンジュラスから「キャラバン」と呼ばれる移民集団が、幹線道路を占拠しつつ北上を始めた。はじめは1,300人から始まった隊列が、メキシコに入ってからは7,000人規模にまで膨らんだ。サンペドロスーラから20日に第2陣が、サンサルバドルからも29日に第3陣、31日に第4陣が出発した。人数も広がりも空前の規模になった。
これに対し、トランプはツイッターで「我が国に対する侵略だ」と非難し、中米3カ国に援助停止を突き付けてキャラバンの阻止を要求する。「軍が待っているぞ!」と投稿し、実際に5,000人を超す兵士を米国とメキシコの国境に派遣した。
彼らは圧政と不平等のために国を逃れた移民だ。
移民は普通目立たないよう行動する。コヨーテと呼ばれる仲介人に金を渡し、メキシコや米国へ不法侵入する。その間、当局の検問を避けるために山道に入り、強盗や性的暴行に遭う被害が後を絶たない。しかし、このキャラバンはわざと目立つように行動し、集団で進みながら、警察と堂々と渡り合っている。権利を主張しながら堂々と行進することで、世界の目が自分たちに向くようにしたのだ。
しかし、彼らの存在は沿道の住民の反発を招いた。彼らは不衛生で、物乞いをし、ゴミを辺りに捨てる。周辺地域の治安が急激に悪化したことで、近隣住民には激しい反発と警戒、不安が渦巻いていた。
移民への支援活動をしてきたサンチェスはこう語る。
「グアテマラに入ったところから手に負えなくなり始めた。制御も、指示も、組織化も、誰も何もできない状態だった。我々も助けようとしたが、あまりにも、あまりにも人数が多すぎた」
キャラバンの先導者であったフェンテが逮捕されたことで、「生みの親」の手を離れ、突然変異して巨大化し、自らの意思で行動する。これまでとは異質で規格外の新たな移民集団は、「約束の地」を求めて大量脱出した旧約聖書の出エジプト記になぞらえて、「エクソダス」と呼ばれるようになった。
2 壁を築くことに意味はあるのか?
筆者は、移民問題の専門家、カリフォルニア大学教授のデビッド・フィッツジェラルドに、「どこに行けば壁支持者に会えるのか」と疑問をぶつけた。
彼の答えはシンプルだった。「まずは国境から離れなければなりません」。国境から遠く、白人が多数を占める田舎町に行け、というのだ。
「国境のそばに住む人たちは、壁が交易や家族の再会を妨げ、米国とメキシコを敵対させてしまうことを知っています。でも、遠くの人は移民とつきあいもなく、あらゆる不満のはけ口にしがちです。反移民感情が最も強いのは、移民が最も少ない地域なのです」
米国際平和研究所上級客員研究員のアレクサンドラ・ノヴォスロフは、現代世界で急増している壁を「グローバル化した世界のパラドックス」と表現する。
「グローバル化で、国や暮らしが変わってしまうという不安が生まれました。国境を開いていく自分たちの独自性が失われてしまうと考える人たちは、目に見える堅牢な建設物である『壁』で国境に再び印をつけて、自分たちの伝統に回帰したいと考えたのです」
しかし、国境を越えるあらゆる難題が壁で解決できるというのは幻想ではないのか。
「政治家は、移民などの問題の複雑さを説明したがりません。国民が理解できないと思っているからです。そして、最も簡単な答えが壁を建てることなのです。安全になった感覚をもたらし、政府が国民に対して、問題に取り組んでいる印象も持たせられます」
その先に何があるのか。
「壁で問題は解決しないので、人々の怒りが増幅する悪循環が生まれます。感情的に怒れば怒るほど、真の問題解決は遠のいていくのです。最もしわ寄せを受けるのは、移民と壁の近くで暮らす人々です。行き来が難しくなり、家族が分断されて、あらゆる問題が生み出されます」
3 暴力によって、壁に向かう難民が生み出される
若者たちで構成されるギャング組織『マラス』は、中南米を中心に拡大を続けている。
エルサルバドルでは、マラスの犯罪に手が負えなくなった警察当局が、マラスと直接取引を行った。
「警察内にも反対意見はありましたが、強硬策の失敗もあって、当時のフネス政権の政策として停戦することになりました。政府とMS13、18番街の間で、2012年から1年半です。非常に短期的な成果を狙ったもので、犯罪を抑える効果は長続きしませんでした」
「マラスが殺人事件の件数を減らす見返りに、刑務所に入っているリーダーが外部と連絡をとれるよう政府が便宜を図ったのです。マラスにとっては、リーダーが刑務所内からみかじめ料徴収の指示を出せるメリットがありました」
犯罪組織の優遇に市民の反発は大きく、14年に発足したセレン政権は方針を転換し、停戦を破棄した。すると途端に殺人発生率は60人台に跳ね上がった。米国とメキシコの国境に家族連れや子どもの移民が殺到し始めたのもこの年だった。翌15年の殺人発生率は一気に100人を超え、断トツで世界最悪の数字となった。
そして政府は再び力ずくで押さえ込む姿勢を強める。16年に非常事態を宣言し、治安特別措置を発動して軍の投入に踏み切った。
「マラスを全員スタジアムに詰め込んで、皆殺しにしても問題は解決しません。社会的不平等や貧困、教育機会の欠如といった、マラスを生み出す要因は変わっていないからです」
ではいったいどうすればいいのか。
「必要なのは、貧困地域に投資することです。教育と医療の質を向上させ、雇用機会をつくる。政府がすべきことをするのです。投資をしなければ何も変わりません。お金を選挙運動にばかり投じるのは無意味です。不平等に立ち向かう必要があるのです」
そして、この国の現状に耐えかねた人々は、暴力を恐れて米国へ逃げる。移民の多くは、家庭や地域社会の中核を担うはずだった働き盛りの世代だ。両親が米国に去った家には子どもと祖父母だけが残され、家庭や地域社会の「空洞化」が進んでいく。
あらゆる問題をたちどころに解決する「特効薬」などは存在しない。港ができればシンガポールになれると夢見たエルサル。壁ができれば治安も麻薬も雇用も、問題はすべて解決すると説くトランプ。ともに考え方の根っこは同じだ。
目の前の現実は、複雑で根深くて、変えるには気の遠くなるような努力の積み重ねが必要で���頑張っても解決できないかもしれない。だからと言って、特効薬幻想にすがったり、それをふりまいたりするのは、現実逃避をしているだけだ。目を背けている間に問題はさらに深まっていく。目の前の小さな一歩を踏み出すことからこそ、現実は変わり始める。
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南米からの移民の話と思って読み始めたが、アメリカを目指して世界中から移民が押し寄せていることなど、自分がいかに無知だったかを認識させられた。
より豊かな生活を求めて、という経済的移民はわずかで、文字通り生きるために命を賭して、危険な道行きを重ねる追い詰められた移民たちの姿に、胸が痛む。