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p70 エンパイヤ empire, ND USジプサム破綻 89405という郵便番号は抹消された
p97 ウィリアム・オスラー 1905の演説 労働者の体力は40代でピークを迎え、60代に向けて下行する。さらに60代になったらクロロホルムで始末したほうがマシかも知れないという笑えない冗談をいった (クロロホルムスピーチ)
p103 ボブウェルズ CheapRVLiving.com
p106 アラスカ大地震
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第93回アカデミー賞作品賞・監督賞・主演女優賞をはじめ、各賞を受賞して話題となった映画『ノマドランド』の原作本。映画の方は脚色を含むが、原作はノンフィクションである。
ノマドとは、本来、遊牧民を指す。本書では、アメリカで、定住せずに自家用車に寝泊まりしながら、臨時の仕事を渡り歩く人々(多くは高齢者)を指す。
2008年、サブプライムローンの破綻で多くの人が家を失った。中でもリタイア世代は、十分な公的年金も得られず、満足な職にも就けずに路頭に迷うことになった。施設に入るような金はない。若い世代も自分の生活で手一杯であったり、そもそも頼れる親族もいなかったり。そうした彼ら・彼女らのうち、車に寝泊まりすることにした人々がいる。そして例えば、アマゾンの倉庫で働いたり、テーマパークで働いたりする。クリスマスシーズンはギフトの出荷の需要が高まり、夏のレジャーシーズンは行楽施設に働き口ができるなど、実はこうした仕事は季節に依存するのだ。昔であればホーボーと呼ばれた季節労働者のように、彼らは仕事のある地に移動して、一定期間働き、また移動していく。そうした中で時には友情が育まれ、生涯の友を得ることもある。
昔と大きく違うのは、「車」があることだ。自家用車とはいえ、多くはRVと呼ばれるキャンピングカーである。雨風がしのげて、空調や調理機能、場合によってはシャワーなど、ある程度の装備もできる。安全面でも野宿やテントよりは安心だろう。
ジャーナリストの著者は、ノマドの暮らしに興味を持ち、彼らの中に飛び込んでいく。
最初は「訪問者」としてだが、それでは真の実態がつかめないと、自ら車を手に入れ、ノマド暮らしを体験しながら彼らを追う。
こうした生き方を「敗残者」のものといってしまうのは簡単だ。確かに一面、そうしたところはある。人生設計が甘く、社会のセーフティネットからも外れてしまったという見方もできる(背後には、予想の出来ない社会の大きなうねりがあったわけだが)。
だが、彼ら自身は意外に明るい。ノマド暮らしのノウハウを語り、助け合う。集会で集まっては互いに連帯感を高める。食べ物を分け合い、手に職のあるものはそれを提供する。美容師であれば髪を切り、大工仕事が得意であれば必要なものを作る。共同体のようなつながりも生じる。
ノマドの中には、一般的な建築物としての家やインフラに頼ることなく、持続可能な暮らしを追求しようとするものもいる。
この暮らしはある種、サブカルチャー/カウンターカルチャー的なものでもあるのだ。なるほど彼らは社会の主流ではない。けれど、社会の主流がいつも正しいわけでもない。
誇りをもって、希望を胸に、彼らは進むのだ。たとえ困難な暮らしの中にあろうとも。
ノマドたちに人気なのが、ジョン・スタインベックが愛犬のチャーリーと旅する道中記『チャーリーとの旅』、ジョン・クラカワー『荒野へ』、ソロー『森の生活』などであるという。脈々と続く、自然や旅へのあこがれも確かに背後にある。
1つ興味深いのは、実はこうしたノマドたちは大多数が白人であることだ。
車上生活は、やはり不��な目で見られがちだ。移動の間、どこででも一夜を過ごせるわけではなく、下手なところには駐車できない。時には警察の職務質問も受ける。そうした場合に、「ギリギリ」白人ならば許される場面は確かにある。
これもまたアメリカの一面だろう。
長い目で見ると、ノマド生活はやはり許容されない方向に向かうのではないだろうか。
とはいえ、彼ら・彼女らが車中で目指す「自由」には、一握りの真実が混じっているようにも見えるのだ。
アメリカの歴史と現実を背負いながら移動生活を送るノマドたち。その姿は、アメリカに留まらぬ、普遍的な問いを孕んでいるようでもある。
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ノマドとは遊牧民や放浪者を意味する英語。アメリカの現代のノマド,ほとんどが白人高齢者であり,住む家を持たず車上生活をし「ワーキャンパー」として働く。かつての中流階級の人々が不可能な選択を迫られた結果だという。アメリカ社会をみつめるノンフィクション。2021年アカデミー賞作品賞受賞。
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映画「ノマドランド」を見て、この本を原作にしたということを知り読んでみた。
本の帯にあった「希望は路上にある」といった言葉が色んな意味を持ってこだましてくるかのような、作品だった。
作者がそれほど多く自分の感想をはさんでいない、その裏側から巨大な不安のようなものも感じられた。
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ホームレスとは違う、季節労働を生業とする車上生活者に密着したノンフィクションです。
住所を持たずにキャンピングカー等で放浪し、過酷な労働で食い繋ぐ人々がアメリカには沢山います。
原因は各々の経済的なものですが、その後の社会による保障は無く、低賃金の労働力として位置付けられてしまいました。
彼らはもう元の生活には戻れません。
我々の多くが普通と思っている世界から隔絶された生活を選んだのです。
これからホームレスやノマドが増えるのか、保障・救済されるのか、他人事とは思えません。
生きるとは、生活とは何かを考えさせられた一冊。
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映画「ノマドランド」を見てきて、原作本が図書館にあったので見て見た。映画はフランシス・マクドーマント演じるファーンを主人公に、おおむね60歳以上の高齢の車上生活者を追ったもの。映画は主演のフランシス・マクドーマントとデヴィッド・ストラザーンの他は皆実際のノマドの人たちだということだが、この本ではその中のリンダ・メイを主軸に追っている。
映画に出てきたリンダ・メイその人の写真が載っていた。リンダ・メイは64歳で、シングル・マザーとして二人の娘を育て、車上の人になるまでは娘家族と暮らしていたが、狭いアパート暮らしで、物理的にもベッドが無い、玄関を入った所のソファーに寝ていたが、娘家族だけで出かける時(毎回全員で出かけるわけじゃない)は、リンダのソファーの前を通る事になり、「娘家族はおばあちゃん抜きで楽しむのを悪いと思っているんじゃないかしら、と心配に」なり、取り残されたような気分になり、車上に。・・主演じゃないので映画ではリンダの事情はわからなかった。リンダは自身の子育て時、その娘も貧困の連鎖が起きている。
映画を見てもそうだが、トレーラーハウスでの生活は自由だといっても不便だし危険だ。要はお金だ。お金があれば、それぞれ家を建てて住めるんだろうなあ、という気がした。映画では車を運転できる高齢者が描かれていたが、動けなくなったら車上生活は終わりになるんだろう。
2018.10.20.初版第1刷 図書館
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自己責任の行き着く先の寂寞とした荒野で、それでも人生を楽しもうとする誇り高い人たち。惨めと思う人もいるだろうし、年老いてからの肉体労働はキツい。白人以外には選べない道でもありそうだ。経済的に踏み止まれていれば違う生き方もあっただろう。それでもより良い生き方をしようとする強さ。
ノマドの生活にロマンを感じてしまいつつ、苦いものも感じる。社会保障、自己責任、労働と搾取、人が人に抱く不安、差別。
自分の人生で大事なものってなんなのか、ちゃんと分かっていたい。
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アメリカで車上生活をしながらキャンプ場やamazon倉庫、農場などの期間限定の仕事(肉体労働)を渡り歩くノマドと呼ばれる人のルポである。ノマドの多くは、経済的に困窮した中流階級であった白人たちである。著者は実際に車上生活や労働、ノマド達との生活を体験し寄り添った形で記述されているが、肯定しているかといえばそうでもない。他に選択肢があればそちらを選ぶだろう。ノマド自体は日本ではあまり起こりそうにないことだが、amazon倉庫の労働は日本でもあると思うとぞっとした。
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中流階級の暮らしが追い詰められ、車上生活に。
アメリカの格差社会の広がりは決して他人事ではない。
ここには、苦しい生活の中でもタフに生き抜く人達。
ささやかな暮らしの中にも喜び楽しみを見つける人達。
さらには大きな夢を叶えようと頑張る人。
今の社会の辛さを綴りながらも、どこかに希望を感じさせる描きかたに勇気付けられる。
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翻訳は良い。アメ車の名前と、土地名が多数出てくるので、これがわからないと、実感に欠ける読書になるが、いちいち車の名前を google するのはたいへんだし 仕方ないか。白人ホームレスの話で,読んでいていて 元気の出る本ではない.
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翻訳者はあとがきに「そんな危機感を抱かせるにもかかわらず、本書の読後感は意外に明るい。」と記している。ノマドの人たちのたくましさ、自然を利用した、自然に還ろうとする前向きな姿勢に学ぶべきことはまだまだある、というのだ。
でも正直なところ、私の読後感は暗い。それは映画を見た時の終わりのない旅路を見ながら思ったこととはかなり違う。
映画における昏さは、「孤独」をかかえながら車で放浪する人たちが、アマゾンで更なる搾取にあい、プライドの最後の糧として不治の病の治療を拒否したり、荒野の中でのアースシップ建設に挑むといった悲壮感にあったように思う。
でも今はサブタイトルの「漂流する高齢労働者たち」というところにいっそう不安をかきたてられる。
阿部彩の「日本の相対的貧困率の動向:2019年国民生活基礎調査を用いて」科学研究費 助成事業(科学研究費補助金)(基盤研究(B))「貧困学」のフロンティアを構築する研究」報告書(2021)』などを読むと、日本における高齢女性の貧困率は事実相当なレベルに達しており、それは高齢女性の大半の就労率によって示されている。
そこにはソローの『森の生活』が入り込む余裕は到底ない。現状での高齢女性の運転免許証の保有率、必要な情報を得ていけるだけのPCスキルに関しても、アメリカとは極端に違う。
セーフティネットをつくることも「自己責任」であったアメリカとは異なり、日本ではある程度まで行政サービスを利用することはできる。しかし、そこに限界が見えてきている現在、そういう体制があることだけを楽観視することは到底できない。
「ノマド」には、様々な理由から有色人種が見られないという。そして白人であっても「不可触賎民」と見做されることが少なくないともいう。
日本社会の極めて浅い「自己責任中心主義」と「排他主義」は「ノマド」に社会的価値を与えることは決してないと思う。
昏い、暗い、本だと思う。
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数ページ読むとすぐ飽きてしまい、スムーズに読み進められなかった。自分にとってどうでもいい描写が延々と続く所が結構あった。
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映画を観て、この世界に興味を持ち読んでみた。
とても分厚くノンフィクションなので読み応えたっぷりなんだけど隅から隅まで読んだわけではなく、乱読に近いかな。
リンダの写真があったけど、映画に出ていたリンダそっくりで本人なのかな…。
ワーキャンパー(キャンピングカーで移動しながら働く人の意)という人々がアメリカでは相当数いてしかも高齢(60歳以上)の女性が多く、年金が少なく家賃の負担がない車上生活をせざるえないという理由らしいけど、リンダに限っていえば、生活能力が高くコミ力も高くタフ。
楽しんでヮーキャンパーを謳歌しているようにも見える。
映画のファーンのモデル?
ホームレスではなくハウスレスという矜持を持っている。
広大な土地があるアメリカならではの生活スタイルなのかも。
(日本でもちろんいるけどね。)
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"私が目にしたのは、人間というものは人生最大の試練の時でさえ、もがき苦しみながらも同時に陽気でいることができる、ということだ。" 233ページ
読み終えた今、なんとも言えない気持ちになっている。訳者あとがきでは「読後感は意外に明るい」とあるが、私はちょっと…
読み始めは、経済的に困難な状況に置かれても、仲間たちと助け合いながら逞しく生きる姿に感心し、そうはなれないであろうペーパードライバーの自分を悲しんでいた。客観的に見て辛い状況であろうとも、本人たちがプライドを持って生活を出来うる限り楽しみ、自由を謳歌しているのなら、それは幸せだと思った。
でも、だんだん読み進むうちに「やっぱり大変じゃん。好きでやっているわけじゃないし。」と思うとアメリカよ、国としてどうなんだいと思えてきた。
日本とは車文化も土地の広さも自然の状況全く違うので比較はできないが、日本だとどうなるのだろうかと考えた。
訳者同様、他人事とは思えず、若い頃想像していたのとは違う老後の生活を送るであろう自分の老後をしみじみ考えた。
映画「ノマドランド」も見たい。
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ジェシカ・ブルーダー著&鈴木素子訳「ノマド」、2018.10発行。サブタイトルは「漂流する高齢労働者たち」。ノマド。1年に何億円も使って世界中を旅しながら暮らす人、場所と時間に縛られずインターネットとパソコンでどこでも仕事をする人、一日中仕事をし夜は自分の車の中で眠る人、いろんなノマドが。2000年代に入り新種の放浪生活者が出現。一番大きな出費(住居費)を削り車上住宅(避難所と移動手段)に移り住んだノマド。ホームレスではなくハウスレスと称しているとか。愛犬キャバリアと暮らすリンダ・メイ64歳を追いかけた作品です。