美しい罪とラストに号泣
2020/11/15 15:32
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投稿者:HIRO - この投稿者のレビュー一覧を見る
優しすぎる主人公モリオ。美しすぎる犯罪。
声が出るほど泣きました。
モリオがバイトする店のミステリアスなカリスマセラピスト、モリオが知り合う謎のホームレス、夜の仕事をする女友達、モリオの理解者である幼馴染み。
そして、モリオが運命的に出会った紫織。
登場人物たちの行動が絡み合い、最後は見事な伏線回収とともに最高のカタルシスが待っています。
人生に悲観的だった青年が守るべき光を見つけ、罪を犯すことで再生していく様子を丹念に描いたヒューマンミステリー。傑作!
暖かなミステリー
2021/11/29 16:24
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投稿者:おいな - この投稿者のレビュー一覧を見る
斎藤千輪さんのグルメ小説を何冊か読んで他の作品も読んでみたかったのと、満月珈琲店で知った桜田千尋さんのカバーイラストの作品を読んでみたくて購入しました。
想像を遥かに上回る作品でした。
純愛ミステリーは正直読まないのですが、本作のような優しさが溢れるタイプは意外に好きだなと思いました。
読み終わった後に表紙のカバーイラストを見ていると、作品の情景が思い出され、上質な映画を見たような暖かい気持ちになりました。
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投稿者:ママさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
感動の嵐でした。心優しい登場人物ばかり…
どうかみんなが幸せになって欲しいと思ってしまうとっても素敵な小説でした。
登場人物のキャラが立ってて、良かった
2022/11/03 20:39
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投稿者:みえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
途中、あまりに優柔不断な主人公にイライラしたりもしたけど、ストーリーとしては、とても良かったです。さすがに、その巡り合いはないかな。綺麗事過ぎるかな。でも、映画やドラマにしたら、感動するのかな?出来すぎなラストで、個人的にはあまり感動しなかった。
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第2回双葉文庫ルーキー大賞受賞作。
表紙の鮮やかさや雰囲気を想像するにライトノベルのような感じかなと思っていました。しかし、思ったよりも大人向きで、苦さの残る爽やかさを残しつつも、なんとも言えない焦ったさや狂おしさを感じました。
主人公は、守生光星。少年時代、父が誘拐事件をおこす。誘拐したのは、幼馴染の桐子。借金をしたがために桐子の父親に身代金を要求。そこから歯車は狂っていった。父は、その直後、事故死し、光星は養護施設へ。
加害者の息子として、ひっそりと暮らす光星は、ある日、墓で何かをしている少女を発見。その後、ある出来事でまた少女と会うことになり、次第に二人の関係が近づいていきます。しかし、その少女は桐子の娘だったことに後に気づくようになります。その後どうなっていくのか。事態は次第に悪い方向へと進んでいきます。
序章は、ある罪を犯したということで、交番に出頭する場面で始まり、その後、何もなかったかのように穏やかな場面に変わるので、「今の何?」と思いました。後半になって、その事実がわかるので、序章と繋がった瞬間、切ない気持ちになりました。
ミステリーというよりは、ヒューマンドラマに近かったです。自分が誘拐を起こした訳ではないのに自責の念にかられる光星の気持ちが、繊細に描かれていて、どこか幸せになってくれという思いで応援したくなりました。
全体的に「再生」をテーマにしていて、登場人物たちが自分自身の「場所」を見つけるために模索している姿が垣間みられます。
少女との出会いをきっかけに次々と起こる出来事に優しくもあり、切なくもありました。恋とは違う愛するがゆえに守りたい気持ちが、文章から伝わり、純愛だなと感じました。
一方では、少女の一途な気持ちが巻き起こしたことによって、登場人物たちの運命も変わるような側面とも解釈できるなと思いました。
そして起こるべくして起きる序章に繋がる犯罪。さらに切なくなっていくので、胸が痛い思いでした。当事者と世間とのズレに焦ったく、読んでいて歯痒い気持ちがずっと続いていました。
最後は「傷」が残ったけれども、幸せになってほしいなと思いました。
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Twitterのプロモーションで気になったので。
こんな優しい犯罪があるのだろうか。
一人の少女の「これから」のために今後の自分を犠牲にできるだろうか。
それを彼はやってのけた。
彼には負い目があった。
自分の父親が犯罪者だったこと。
知らなかったとはいえ交流を持った少女が、かつて父親が誘拐した少女の娘だったこと。
そして、父親の事件で彼は……
だからこそ、今度こそ、彼は自分の身を投げ打ってでも、これから少女に降りかかるであろう厄災から守ろうとした。
それが自分のエゴだろうと。
少女はまだ中学生。
だから、色々な面が幼い。
今の自分の行動がどんな結果をもたらすか見えていない。
それは致し方のないこと。
まだまだ失敗してから学ぶ時期だ。
ただ状況が悪すぎた。
彼女はただ逃げたかった。
自由になりたかった。
十代の世界はまだ小さくて、見えない世界も多いけれど、その小さな世界の中で生きないといけない。
だから息も詰まる。
学校は監獄で、両親は彼女に優しくなかった。
ただ彼の所にいるときだけ、彼女はのびのびとできた。
ただそれを世間は許してはくれなかった。
「だから僕は君をさらう」本当に秀逸なタイトルだと思う。
彼の今の精一杯がこれだった。
必要なことだった。
それが世間一般には犯罪と言われることでも。
ただ彼の世界そのものは、決して悪くはなかった。
普通ではないけれど、彼を理解してくれる友人も知り合いもいた。
彼が何故罪を犯したのか、読み解こうとしてくれた人がいた。
理解してくれた人がいた。
それだけでも救いだ。
結局は誰もが一人では生きていけない。
そして、いざという時その絆が活きるのだろう。
その大切さにも気付かされた。
そして、いくら離れても切れない縁もある。
彼が犯罪者になろうと、彼女との縁が切れなかったのは、それが必然の縁だったからだろう。
相棒のサックスとも。
名曲に載せてのラストシーン、余韻もまた素晴らしい作品だった。
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第二回双葉ルーキー大賞受賞作。
悲しい嘘が守るもの。
どうして「僕」は「君」をさらったのか。
何もかも失くした13歳からの長くて暗い生活。16年間、流されるように、だれとも深くつながらず、ただ、ひっそりとサックスだけを友として。
そんなモリオの前に突然現れた少女紫織。変化していく生活、そしてモリオの心。
あぁ、モリオの周りにいる男たちの、なんと優しい事か。将弘の、ケンさんの、その優しさと深い愛情に涙が止まらない。そしてモリオの周りにいる女たちの、しなやかな強さよ。彼女たちの強さにどれだけ救われたか。
そしてそして、モリオと紫織。二人の間にあった秘密。お互いに知らなかった秘密。あぁ、このラスト、美しい。
父と子の36歳。もう、飛び越えていいよ、と、モリオにそっと言ってあげたい。
守ろうとしたもの、そして守りたかったもののための悲しい嘘。
でも本当は守られていたのかもしれない、ずっとずっと。
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主人公モリオはなぜ、慈しんでいた少女・紫織をさらうことになったのか。真実がわかった瞬間、優しすぎて哀しすぎるモリオの犯行に涙が溢れた。
モリオの周囲にいる男女も、それそれが痛みをかかえていて、だからこそ優しくて強い。
この著者の人気作「ビストロ三軒亭シリーズ」とはタッチこそ異なるが、根底にある優しさは同じ。
ラストの美しさと感動は圧巻!
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過去に起きた誘拐事件の加害者の息子と被害者の娘が主人公。
過去を知っている男と何も知らずに慕う少女。微妙な距離感の二人に再度事件が。
恋愛物だろうか? 純粋に良い話だった。
大切な人を守るために取った主人公の優しさに心打たれます。
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父親が誘拐事件の犯人であることと、それに自分も関わりがあることに後ろめたさがある主人公。ヒロインはその事件の被害者の娘という、かなり重たい設定。
しかもモノローグでヒロインの紫織はもうこの世にいないかのような表現をされていて、のっけから心が沈むような面持ちにさせられます。
けれど作中の雰囲気は、紫織の子供っぽい言動や将弘と葵の性格などもあって、どちらかというとライトなもので、設定とモノローグの重さとは真逆のもの。
その雰囲気に加えて序盤から中盤にかけての展開は青春ぽさ満載で、このままハッピーエンドになって欲しいと思うのですが、中盤から少しずつ不穏な流れに傾きはじめ……
守生にその意図は全くないけど、誘拐犯扱いされても仕方がないほど“状況証拠”が揃いすぎてて、逃れられない状況になってしまい、紫織と分かれざるを得なくなってしまうのはとても切ない。
けれど、そのシチュエーションがあったから桐子の父・紫織の祖父との会話が生じ、守生は過去を清算できたような気もします。切なく、辛いけれど「良かった」と思える、印象に残る名場面だったと思います。
そしてエピローグ。もし映像化されたら、二十歳になった紫織は顔を見せないままのシーンになりそう。そんなビジュアルが思い浮かぶ素敵な結び方で、心地よい満足感とともに読了できました。
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タイトル買い。
たまに読む純愛。
ミステリー要素も少し含み退屈しない。
冒頭での犯した罪の告白で彼は何を犯したんだろう、、、。とヒヤヒヤしながら読んだ。
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大切な人を守るために、敢えて罪を犯す物語
子供の頃に父親が誘拐犯となり、引き渡しの際の逃亡で事故死して以降は養護施設で育った守生光星
サックスプレイヤーを目指していたが、現在の収入源は偽のパワーストーン作りと管理
守生はとある日の夜、墓地でお墓を開けようとしていた一人の少女に出会う
また別の日にモデルガンで撃たれた鳩をきっかけに再会する二人
そんな少女の抱える秘密、光星の過去のめぐり合わせ
果たして、守生は何故犯罪を犯したのか?
守生光星 29歳
紫織 14歳
父親が誘拐した娘の名は桐子
守生の幼なじみであり、初恋相手でもあった
冒頭で描写される出頭前の様子
タイトルからも、守生が紫織を誘拐するのだろうという予断で読み進める事になる
中盤の、守生に紫織が懐き、また守生も過去の後悔を思い出して慈しむ様子は何とも切なくなる
そして、後々に起こるであろう事件と、もしそれが起こった際に誤解を与える状況証拠に不穏なものを感じる
事件の概要から、世間の人が想像する背景
事件そのものもダメージだけど、関係者にとってはその世間のイメーに方が後々までの障害になり得る
フィクションを色々と読んでいるけど、事件の背景に世間が知らないような事情が隠されている物語の場合、普段自分が如何に予断を持ってニュースから情報を摂取しているかを自覚する
守生がなぜ罪を犯したのか?何をしようとしたのか?がわかるところでは、その想いに胸が苦しくなり、ボロボロ泣けた
守生にとってこれは恋ではないでしょうし、適切な言葉が見当たらないけど、「庇護愛」とでもいう感情だろうか
あと、自分の居場所を見つめるための物語にも思える
それは守生と紫織だけでなく、他の登場人物達にとっても
ケンさんが何故ホームレスになったのかという理由もちょっと切ない
まぁ、何だかんだ言って守生のための場所を作ってくれたのはよかった
将弘も守生の友達というポジションで居続けるための思考とかが推測できる
誘拐事件で世間が抱く印象
フィクションで挙げると、流浪の月(凪良ゆう)、無理(奥田英朗)でも取り扱われている
でも、実際に女の子の誘拐事件が報道されると、いくらそういった行為が「なかった」とされていても、世間は「あったんじゃないの?」という下衆の勘繰りをしがち
だからこそ、守生のとった行動の意味と目的に気づく時に、その犠牲心と相手を想う気持ちで泣ける
あと、ものすごく下衆の勘繰りなのは自覚しつつ
執筆された時期が巻末に記載されてあるのは何かの意図を感じる
まぁ、邪推ですね
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純愛ミステリーというものをあまり読まないのだけれど、とてもよかった。
主人公の過去、そこからくる彼の生き方、本当にこのままでいいのかと自問自答。
まっすぐに見つめる、天真爛漫に見える彼女、彼女の背景もまた苦しいもの。「居場所はあっても、生きていく場所がない、独りにしないで…」
牛脂と卵とネギのチャーハン。
シンプルな料理が彼ら二人を繋ぐものだった。
昔、怖くて守れなかった初恋相手への贖罪。
大切な人を守るために考えた優しさからくる行動、嘘。警察にも裁判でも自分が作ったストーリー以外は知らないといい続ける。彼女を守るための強さ。
どんな相手にも調子を合わせ、本音を隠して不協和音にならないように生きてきた守生。(少しずつ変化する。自分の声に逆らう。)
裁判、逮捕後など皆、それぞれの方法、やり方で守生を守ってくれた。
たまたま知り合ったケンさんと友だちの将弘の存在がいい。
葵と守生が、あることをきっかけにやりとりする場面、本音を語るところもいい。