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編者の頭木さんのアンソロジーは小説だけではなく詩や漫画が入っていてジャンルレスなところが好き。
今回の「ひきこもり」アンソロジーには、なんと私の大好きな詩人萩原朔太郎の作品が二つも入っている!(詩と随筆) うれしい。
「死なない蛸」は子供のころに読んで強烈な印象を残した名詩。筑摩書房の『変身ものがたり』というアンソロジーにも収録されているし、いろいろな見方ができそう。自分は幻想実を味わいつつも、閉じ込められ忘れられたものの恨みは永久に滅びない……という教訓的な読み方をしていた。
知らない作品の中で印象的だったのは
ロバート・シェイクリイ「静かな水のほとりで」
梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」
どちらもSFだけど、味わいはかなり違う。上は静謐で下はドタバタ。
しんみりするのは上。
人間の勝手さにひどいなぁ、となるのが下。
なんだか、この感じわかる、となったのは
ハン・ガン「私の女の実」
現実的な希望を叶え得なかった女性が人外のものへ変わっていく、といっても恐怖的小説なイメージではなく、もっと静かな……という像は私の頭の中にもあって、ああ、ここに具体化された作品があった、という気持ち。
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頭木弘樹さん編の短編集。切り口がさえていて、とてもおもしろく読んだ。
ウロボロスを超えた?萩原朔太郎「死なない蛸」怖。
カフカ「ひきこもり名言集」ここまでひきこもりで、結婚を考える恋人がいたっていうのがある意味すごいよ、カフカ。
三年寝太郎のような「桃太郎」立石憲利 こんなバージョンあるんだねえ。おもしろい。
星新一「凍った時間」は初めて読んだ。それとも忘れてたのか? 世界を救ったのにせつない。
ポーの「赤い死の仮面」は、コロナの状況下で読むと、慄然となる。翻訳も抜群の冴え。
梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」は、「冷たい方程式」の笑える悲惨版。
宇野浩二「屋根裏の法学士」はまさにひきこもりニートの話でたいへん身につまされる。
ハン・ガン「私の女の実」植物になる話って、ほかにも読んだことある気がするけど、そのなかでも異常に生々しい。
シェクリイ「静かな水のほとりで」小惑星でロボットと「ふたり」淡々と日々を送る人の話。ロボットに少しずつ言葉をおしえて、少しずつ会話が成立していき、でもやがて人は老い、ロボットも老朽化し……。しんとした美しさがしみて涙した。これがいちばん好きだったかな。
萩尾望都「スロー・ダウン」感覚遮断実験の話。すべての感覚を遮断したとき人はどうなるのかという話をとてもリアルに。
上田秋成「吉備津の釜」これも読んだことがあるような気がするけど思いだせない。こわー。髪だけってのが生々しくておそろしい。
巻末の頭木さんの解説もよいです。
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カフカに親近感。絶望名人読んでみようかな。
<収録作品>
死なない蛸/萩原朔太郎
ひきこもり名言集/フランツ・カフカ
桃太郎/立石憲利(編著)
凍った時間/星新一
赤い死の仮面/エドガー・アラン・ポー
病床生活からの一発見/萩原朔太郎
フランケンシュタインの方程式/梶尾真治
屋根裏の法学士/宇野浩二
私の女の実/ハン・ガン
静かな水のほとりで/ロバート・シェクリィ
スロー・ダウン/萩尾望都
ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話/頭木弘樹
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引きこもり経験者の編者が引きこもりをテーマに編んだアンソロ。12編。
普段はなかなか読まないタイプの話が読めるのが楽しいよね。
おもしろかったのは「凍った時間」と「フランケンシュタインの方程式」かな。
星新一先生の「凍った時間」は星新一らしさ全開で好き。ラストの報われない感じもいい。
「フランケンシュタインの方程式」はバカミスならぬバカSF(そんなのないかな)でものすっごく軽くて読みやすい。もうね、酸素ボンベが味噌になっていた時点で笑っちゃった。笑いごとじゃないけど。
でも、印象に残ったのは「私の女の実」この話、すっごい印象に残る。読んでいるときもイライラするし、読後感もよくないんだけど、なんかいつまでも棘が刺さっている感じ。
再読していいなぁっと思ったのは「静かな水のほとりで」かな。自分の生活スペースに名前つけて、ロボットにも名前つけて、三人(?)でのんびり過ごす毎日。うん。なんか、主人公はきっと最後まで幸せだったんじゃないかなぁと思う。
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ひきこもるとは、いったいどういうことなのか? 究極のステイホーム・ストーリーズが‼️部屋の中で、何が起きるのか? ひきこもっている間に、人はどう変わってしまうのか? 「ひきこもり」をテーマにした斬新なアンソロジーが誕生しました。編者は、『絶望名人カフカの人生論』『絶望名言』『食べることと出すこと』などで知られる頭木弘樹。病のため、十三年間のひきこもり生活を送った編者ならではの視点で選ばれた必読の名作群【目次】
◎萩原朔太郎「死なない蛸」/◎フランツ・カフカ「ひきこもり名言集」/◎立石憲利「桃太郎――岡山県新見市」/◎星新一「凍った時間」/◎エドガー・アラン・ポー「赤い死の仮面」/◎萩原朔太郎「病床生活からの一発見」/◎梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」/◎宇野浩二「屋根裏の法学士」/◎ハン・ガン「私の女の実」/◎ロバート・シェクリイ「静かな水のほとりで」/◎萩尾望都「スロー・ダウン」/◎頭木弘樹「ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話」(上田秋成「吉備津の釜」)/あとがきと作品解説
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【収録作品】ひきこもっている間に忘れられる-散文詩 「死なない蛸」 萩原 朔太郎/ひきこもり願望-ドイツ文学「ひきこもり名言集」 フランツ・カフカ(Kafka,Franz) 選訳/頭木 弘樹 /鬼退治に行かない桃太郎- 昔話「桃太郎 岡山県新見市」 編著/立石 憲利/差別によるひきこもり-ショートショート「凍った時間」 星 新一/感染を避けるためのひきこもり-アメリカ文学「赤い死の仮面 The Masque of the Red Death」 エドガー・アラン・ポー(Poe,Edgar Allan) 新訳/品川 亮/ひきこもりによる物の見え方・感じ方の変化-エッセイ 「病床生活からの一発見」 萩原 朔太郎/部屋から出られない苦しみ-日本SF小説「フランケンシュタインの方程式」 梶尾 真治/ニートのつぶやき-大正文学「屋根裏の法学士」 宇野 浩二/ひきこもりと植物-韓国文学「私の女の実 내 여자의 열매 」 ハン ガン (韓 江) 初訳/斎藤 真理子/究極の孤独-アメリカSF小説「静かな水のほとりで Beside Still Waters」 ロバート・シェクリイ (Sheckley,Robert) 新訳/品川 亮/ひきこもり実験の結果-漫画「スロー・ダウン」 萩尾 望都/番外編「ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話」 頭木 弘樹
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ロバート・シェクリイの名があったので手に取ったが、「人間の手のまだ触れない」で読んでいた作品だった。
編集者の頭木弘樹氏の解説で、このコロナ禍、「絶望図書館」の次はこの「閉じこもり図書館」です、とあり、閉じ込められた状態、の作品を氏の観点で集めたのだった。氏自身、大学生の時に難病になり寝たきりになったとある。氏の小説観は、まずは自分にひきよせて読むこと、自分にとってどういう風に読めるか、そこが肝心なのだという。
「凍った時間」星新一 (「ちぐはぐな部品」所収)
工場で事故にあい、脳以外は機械になったムント。ロボットは全部が機械だが、ムントのようなのはサイボーグなのだという。顔はプラスチック、声も合成、人々の好奇の目に耐えられず地下で暮らしている。ある日電話も不通、TVも映らなくなり地上に出ると、革命軍が反乱を起こし、人々は一定時間気を失っている。目にさらされなくなったムントは久しぶりに外の空気を吸うが・・ 最初から最後まで悲しい空気、っていうのは星新一にはめずらしい。
「フランケンシュタインの方程式」梶尾真治 (「地球はプレイン・ヨーグルト」所収)
二人乗り宇宙船で火星へ荷物を運んでいるが、酸素ボンベが故障し、1人分の空気しかなくなった。そこでとった方法とは・・
二人の会話で、自分達の状態を古典SFの「冷たい方程式」のケースだとあり、ほかに「解けない方程式」、「たぬきの方程式」、「破砕の方程式」もあるんですよ、というのが出てくる。「破砕の方程式」は読んでいた。ここがちょっとおもしろかった。
「スロー・ダウン」萩尾望都 (「半神」所収)
何十年振りかで読む萩尾望都。ひとりで密閉空間にいる、という実験をしている青年。
「静かな水のほとりで」ロバート・シェクリイ(アメージング1953.11月号 「人間の手のまだ触れない」に収録されていた。)
閉じこもりというと、すぐ回りに人がいるのに自分ひとりだけ狭い空間に、というのを想像するが、これは、ある星に男とロボットだけ、男はロボットに会話を教え、長い年月を暮らす。宇宙空間の、この星に1人なのだ。
ほかにポー「赤い死の仮面」、宇野浩二「屋根裏の法学士」(「中学世界」大正7年10月)など
2021.2.5発行 図書館
「冷たい方程式」トム・ゴドウィン(アスタウンディング1954 )
「解けない方程式」石原藤夫(SFM1968年4月号掲載、『画像文明』(ハヤカワ文庫)に収録)
「たぬきの方程式」(筒井康隆 SFM1970年2月号掲載、『国境線は遠かった』(ハヤカワ文庫/集英社文庫)に収録)
「破砕の方程式」アーサー・C・クラーク (1949年Thrilling Wonder Stories誌に掲載、SFM1977年3月号『前哨』(ハヤカワ文庫)、『太陽系オデッセイ』(新潮文庫)に収録。前者の訳題は『破断の限界』、後者の訳題は『ひずみの限界』、1994年映画版『スペース・トラップ』公開)
頭木さんのブログ
https://ameblo.jp/kafka-kashiragi/
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昨年最初の緊急事態宣言になった時、まっさきに思い出したのは『赤い死の仮面』だった。
一番強烈と感じたのは『死なない蛸』かなあ。
『フランケンシュタインの方程式』は悩めるテーマなのに、ユーモアSF的な語り口が楽しい。元ネタ?の『冷たい方程式』も読んでみたくなった。
『私の女の実』はやはり『菜食主義者』を思い出してつらくもなった。
『静かな水のほとりで』はアイディアとしてはさほど突出とも思われないのに、妙に印象に残って後をひく。
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「ひきこもる」をテーマにしたアンソロジー。小説、エッセイ、漫画。洋の東西、時代も様々。ひきこもらざるを得ない昨今、読んでみた。小説は、SFというかショートショート的なものが多かった。引きこもって一人で読むと、ちょっと怖いかも。
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13年間のひきこもり経験のある著者の選ぶ「部屋から出られない人のための」アンソロジー。私はひきこもるタイプではないけど、今までにない視点で物語を読むことができて、とっても満足です。
引き篭もり止めたら、こんな楽しいことがあるよ、というような物語は12のうちひとつもありません。引き篭もるとこんな新しい発見があるよ、という話がほとんどです。ひきこもり部外者には、ひきこもりたちの声にならない声の代弁を聴いた気になります。朔太郎やカフカや星新一やポーや萩尾望都が、代弁をやってくれている。
私としては、岡山在住の日本民話の会会長立石憲利さんが採取した「鬼退治に行かない桃太郎」がお気に入り。完全岡山弁で、みんな意味わからんところもあるじゃろうけど、とっても身近じゃった。
萩尾望都の「スローダウン」(1985.1発表)。一度読んだはずなのに、ひきこもり漫画として紹介されると、おゝそういう見方もあるのか!と発見。その見方から見ても物凄く秀逸な作品なんだとビックリしました。五感全ての感覚を遮断した部屋で暫く過ごさせる実験。それをやると、「現実感覚」が変化していく、と頭木さんは言います。そういう時にふっと現れた「人の手」が特別なものになるという。頭木さんは、「どうしてあの感覚がわかるのか」「天才恐るべし」と書いています。「一度きりの大泉の話」を読んだ今、なんとなくわかる気がするのです。
「小説を読んで、心に残るフレーズがひとつでもあれば、それはもう読む価値はあった」と頭木さんはいいます。大きく肯首します。アンソロジーというものは、それを手助けする格好の方法だろう、と思います。頭木さんが多くのアンソロジーを編んでいるのはそういうことなのでしょう。
本書は、ひきこもりの方も読めるように、本と電子版同時発行だそうです。
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梶尾真治作品が含まれるアンソロジーということで購入した。特に「ひきこもり」に興味がある訳ではない。ただ、昨今のコロナ禍に伴って外出自粛を余儀なくされる中、実際の現状には所謂ひきこもりに共通する面もあり、作品の幾つかには共感できるものもある。やはり、今の自分はひきこもりなのだろうか。まあ、現在のひきこもりレベルは人に迷惑をかけるものでは無いので良しとしよう。
梶尾作品は有名な「フランケンシュタインの方程式」が収録、その他には星新一「凍った時間」、萩尾望都「スロー・ダウン」が収録されている。
その他で気になったのは、韓国女流作家のハン・ガン「私の女の実」、立石憲利「桃太郎」、ポー「赤い死の仮面」。
物理的に一つの空間に閉じこもる、閉じ込められる、自ら周りに隔壁を作る、いろいろなひきこもり方があるが、鬱屈した気持ちを自力で昇華できる力を持つ人であれば、一時的なひきこもりなら脱却できるだろう。本書はファンタジー的要素を持つ作品が殆どなので、ひきこもりの具体的解消に対しては何ら助けにはならない話ばかりだ。
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タイトルだけで買った本
装幀もキリッとしてて好み
アンソロジーって読んだことなかったかも
どのお話もよかった
ハンガンの話とシェクリィの話が特によい
実はどっちも読んだことなかったので
読めてよかった
ドタバタしてるのもあれば
シーンとしてるのもあるし
バラエティーに富んでてうまく集めたなぁ
己の本の読み方に足りなさを感じて
ちょっとしょんぼりしたりもした
よかったよーって
人にオススメするほどではないので
星は4つにギリギリ届かない3つ
そっと隠しときたい本みたいな…
そんな感じ
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とりとめのない精神論。人間って生き物は、昔から変わらないんだ。結論なってない。いろんな意味で無限∞。
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12編のアンソロジー。しかも、内容は、ひきこもり。
館長(編者)のいうことには、自身の引きこもり生活、コロナによる生活の変化など、そういった好む好まざるに関わらず、狭い世界に閉じこもる生活を否定も肯定もせず、その中で起きる心の変化を自分に引き寄せて読んで欲しい、とのこと。
私自身はスポットライトの当たる場に出たこともあるし、良くも悪くも目立つらしい(友人、同期曰く)。
しかし、内向的な性格で、趣味といえば、読書(漫画や雑誌含む)、美術鑑賞で、1人でいる時間が至福。
だからコロナで外に出られないことの何がそんなに苦痛なのかよくわからなかった。
なんだったら今まで、「友達多くてスポーツ大好き」みたいなのがいいみたいな風潮に違和感を覚え、なんでそいつらばっか持て囃されるんだ畜生めざまみろと、隠キャまっしぐらだった。
さて、本書では萩尾望都「スロー・ダウン」、エドガー・アラン・ポーの「赤い死の仮面」、星新一の「凍った時間」シュクリィの「静かな水のほとりで」ハン・ガン「私の女の実」が印象に残る。
最初の三つは言わずもがなの面白さ。
ポーの物語は、迫り来る死の恐怖を描いており、これぞ、といった感じ。
感染症の恐怖というのは、人類が恐れる数少ない恐怖、しかし逃れる術がない恐怖。
まさに、今にふさわしい。
ハン・ガンは、韓国の作家。
韓国文学はこれまで児童書数冊しか読んでこなかったので、新しい世界だ。
「静かな水のほとりで」は、藤子・F・不二雄の短編を思い起こさせる、物悲しい物語だ。
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この編者のアンソロジーならまた読んでみたいと思った。編者自身の文体も文学的で心地よい。
紹介されていたハン・ガンが気になった。他の著書も読んでみたい。
アンソロジーって、あまり手に取った事が無かったけれど、自分なら辿り着かないであろう作家の本を知る事ができて面白いものだな。